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第十三話「きたみけ三姉妹VS」①

「あ、あの……もう、タイムリミットなんですけど……私、もう帰っていいですか? 一応、言っときますけど、私に戦えとか、ルール違反だし、そんなの想定してないんで、戦力外ですよ? なので、戦いになるようなら、私は一切手出しはしませんからね?」


 相変わらず、ヘタレな感じのライブラさん。


「……ライブラさんには、何も期待してないけど、ここで帰るのは、無いんじゃないかなぁ……。まだ、色々聞きたいこともあるし、せっかくだから見届けていったら?」


「あー、そうですよね……。ここまで介入しちゃった以上、中立でも何でも無いですからね……。あの、ホントに見守るだけなんで、危なくなって助けを求められても、どうしょうもないですからね? ああでも、後ろーくらいは出来ますからね!」


「だから、見届け役だけでいいよ……。ここで負けるようじゃ、わたしもそれまでだもん。話の続きがあるなら、後ほどって事で頼みますね」


 こんなんでも、神様みたいなもんだしね。

 見届け役って事で、見守ってくれるなら、どんな結果になっても受け入れてくれると思いたい。


 考えてみれば、ライブラさんって、加護もご利益も全然期待できそうもないけど……。

 見守るだけの神様ってのだって、それはそれで、別にいいのかなぁ……なんて思ったりもする。 


 本来、神様とかっているのかどうかも、定かじゃないし、余計な手出しも口出しもしない。

 ……ただ、人々の暮らしを見守ってくれると、皆がそう思ってるからこそ、神様ってものも意味が出て来る。

 神様ってものに存在意義があるとしたら、そんな小さな心の支え、戒めとして……本来、そう言うものなのだと。


 どっかの神社の神主さんから、そんな話を聞いたことがある。


 ……罰や加護も、ご利益すらない……。


 けど、それで誰かが困るかと言えば、別にそんな事はない。


 人々もいつも神様が見てるからって、そんな風に思ってくれれば、少しくらいは悪いことする人だって減るだろうし、見守ってくれて、ささやかなエールでも送ってくれてる。


 そう思い込むだけで、途切れそうな気力が持ち直したり、もうひと頑張りとか出来る……そんな事もあるかもしれない。


 ライブラさんみたいな役立たずでも、それはそれでありなんだなと……そんな風に思った。


 ……そして、ほどなくして時間が動き出す。

 

 お姉ちゃんは、わたしの身体から抜けて、ライブラさんと並んで、少し離れたところで、所在なげにフヨフヨ浮いてる……やっぱ、オバケって気楽で羨ましいな……。

 

 わたしは、すでに自分の身体に戻ってる。

 身体に戻るのは、物凄く簡単で魂の抜けた状態の身体に触れるだけで、戻れた。

 

 まどかさんは、時間が動き出した直後、そのまま椅子から立ち上がったんだけど。

 一瞬で髪型や雰囲気が変わって、場所も移動したわたしを見て、首を傾げてる。

 

「あれぇ? シズルちゃん、隣りにいたはずなのに、いつのまにそっちに……それに、なんか雰囲気違わない? んー、ちょっと髪伸びた……? え、なんで?」


 お姉ちゃんが、わたしの身体に入った名残なのか、微妙に髪の毛伸びてる。

 肩の所で切りそろえてたのに、前に持ってくると胸の辺りまである……さすがにこれはひと目見て解る……よねぇ。

 

「あ、うん……ちょっとしたパワーアップイベントみたいなのがあってだね……」

 

「なにそれ? よく解んないんだけど……。それより、敵襲かなにかがあるって……どう言う状況なの?」

 

 そう言えば、そんな話の途中だった。

 けど、状況はそんなに変わってない……当初は、ライブラさんの警告のつもりだったけど。

 

 実は、別口のが接近中だったと言う……お姉ちゃんの予知も、ライブラさんと言う大物に気を取られてて、勇者の方までは気が回らなかったみたい。

 

 予知能力っても無敵の力じゃないってお姉ちゃんも言ってたけど。

 こう言うこともある……肝に銘じておくべきだろう。

 

「ああ、ごめんね……まどかさん、とにかく警告っ! 今から、三人組の女子高生勇者だかなんだかが、こっちにやってくる。……一応、話し合っては見るつもりだけど。立場的に、こっちと相容れない感じだろうから、戦うハメになるかも……そのつもりでいてっ!」


「三人? それも同じ勇者……ゴブリンやオークよりも、確実に手強そうね。クマさん達がいればなぁ……もしかして、あの上の方でクルクル回ってるのがそう?」


 ……まどかさんが指差す先には、三つの光が連なって、上空でクルクルと何かを探すような感じで、旋回してる様子が見えていた。

 

 何を探してるかなんて明らか……この広場も建物も上から見たら、かなり目立つ。

 案の定、こっちへと向きを変えて近づいてくるのが解る。


「まどかさん、とりあえず下に降りよう……今は、やるだけやってみよう。相手のほうが人数多いけど、クマさん達もアレ見て、戻ってくるかも知れない。とにかく、クマさん達が戻ってくるまで、なんとかして時間を稼ぐ……その方針で!」


「……あら、時間稼ぎって……ずいぶんと気弱ね。シズルちゃんの強化魔法で、私をパワーアップさせてくれれば、結構なんとかなるんじゃない? まぁ、ここは大人に任せて! 女子高生なんて所詮は若造……年季の違いってのを思い知らせてあげるわ!」


 ……自信満々って感じのまどかさん。

 でも、まどかさん……本来、メイスの勇者で、勇者としての戦闘力なんて、ほとんど無いんだけど。


 でも、本人の腕っぷしが黒帯レベルだから、強化魔法で強化した上でなら、相当強い。

 ひょっとしたら、戦闘系勇者相手でも、やってくれるかもしれない。

 

 でもさー。

 味方が妙に強気って、それ……なにげにフラグなんだけどさ。


 お姉ちゃんに、自力で頑張ってみると息巻いては見たものの……なんだか、とっても先行き不安。

 ああ、なんか……悲観癖が出てるなぁ……こんなんでどうするんだっての。


 急いで、下まで降りると、わたし達が出てくるのに合わせるように、上空を飛んでた光がカクンと曲がって、物凄い速さで、広場に落ちてくる。

 

 結構な勢いだったらしく、地面の苔が吹っ飛んで、地面がえぐれて、築いてあった煉瓦の壁がいくつか崩落する。

 

「あたた……やっぱ、この流星って操縦難しいね……。減速が間に合わなくて、思いっきり墜落した……危うく残機減るかと思った……HPは……げげっ! 結構、減ってる……! ポーション、ポーション!」


 土煙の中から、ショートカットで赤髪の槍を持った騎士っぽい子を姿を見せる。

 

 槍の勇者……赤いブレストプレートにニーハイブーツみたいな金属製の靴。

 腰回りの鎧がミニスカートみたいで、ちょっと可愛い。

 

 鼻の頭にバンソーコー張ってて、ソバカス顔の日焼けした肌の健康的なスポーツ少女って感じの子。

 なんと言うか、主人公タイプでレッドって感じ?


 ステータスを呼び出して、自分のコンディション確認して、落ちた衝撃でHPが削れたらしく、嘆いてる……まぁ、クレーター出来るような勢いで降ってきたんだから、そんなんで済む方がおかしいと思う。


 なんだか、慌ててポーション頭からかぶってるけど……ん? 回復魔法持ちとか居ないのかな。


「サキ姉……だから、もう少しセーブしろって言ったのに……着地の時は、こんな風に停止寸前まで、減速しないと……街中とかで今みたいな調子だったら、大惨事だっての」


 ワンテンポ遅れて少し離れたところに、ふわりと降り立ったのは、姫カットの黒のロング、メガネをかけて理知的な雰囲気の女の子。

 

 弓を持ってる様子から、彼女が弓の勇者?

 

 槍の勇者と違って、優雅さを感じさせる革鎧っぽい軽装で、複雑な紋様の入ったライトグリーンのマントを羽織ってる。


 けど、レオタードみたいな感じで、太ももむき出して……なんと言うか、いわゆるハイレグ?

 ……ちょっと際どいカッコ?


 なんか勇者のコスチューム……それも女性のって、こんなんばっかり! 同性と言えども、目のやり場に困るよ?


 実際、わたしだってケープコート脱いだら、ぴっちりスパッツ&お腹丸出しタンクトップなんて言う、恥ずかしいカッコだしねー。


 けど、槍の勇者の子の鎧……赤とか独自カラーのような感じもするので、デザインとかカラーリングくらい変えられるのかも?


 それはともかく……新手の弓の勇者は、グリーン? 

 なんと言うか、雰囲気的には、委員長とかあだ名付いてそうな感じ。


「ごめんねー! マキちゃん……どうも私ってば、細かいことは苦手なんだよね……。あれ? そう言えば、ユキちゃんは? どこ?」


「ユキなら、後ろの木の隙間に降りたみたい……まぁ、流星自体、発動とナビゲーションしてくれたのは、あの子だしねー。さすが、精密コントロールは見事なもんね! やっぱ、なんだかんだで、あの子優秀なのよね……。なんかもう、こっち来てから、ずっとあの子に頼りっぱなしなのよねー。お互い、たまには姉らしいとこを見せないといけないでしょ……そんな訳で、くれぐれも下手打たないでね!」


「なるほど、さすがユキちゃんだね! とりあえず、早速お出迎えしてくれてるみたいだから、名乗りの一つでも上げさせてもらおうか……! やぁやぁ、アタシらは、王国直属勇者三姉妹、北見家長女のサキ! 「紅蓮の刃」とは、このアタシのことだ! お見知りおき願おう!」


「……わ、私は北見家三姉妹……次女のマキ……「翡翠の風」の異名もあります。……って、なんか名乗りとか、微妙に恥ずかしいんだけど……これ」


 ……なるほど。

 ショートカットの子は、北見サキって言うらしい……もうノリノリって感じ。


 一応、見た感じ、年上だから、さん付けて呼んだほうがいいのかな?


 見た目通り、体育会系……いわゆる脳筋系?

 

 良く解らないけど、この二人、姉妹なんだ……あんまり似てないけど。

 姫カット委員長は、マキさんとかいうらしい。

 

 休み時間とか、本とか読んでそうな感じだけど、口調は何となくガサツって感じで……。

 もしかして、見た目は真面目そうだけど、中身はそうでもないとか、ギャップ系?

 

 もう一人……ユキちゃんとか言うのがいるみたいだけど、どうも魔法使い系らしいし、早々と姿を隠してる……森の中の離れた所に着地して、一人だけ姿を見せようとしない。

 

 偏見だけど、赤、緑と来たからには、ユキちゃんってのは、黄色か青だね。

 この二人は、高校生とかそんな感じに見えるけど、末っ子となると、わたしと同じ中学生かも?

 

 この流星って言う長距離移動魔術を使いこなして、発動とナビ担当……とか言ってる様子から……もしかして、支援系魔法使い?

 

 支援系魔法なら、わたしも使える。

 この流星……教えてもらえたりとか、出来ないもんかな。

 

 自分で操縦出来るっぽいから、行ったことないところには行けませんとか、そんな制限もないっぽいし……。


 はい! 流星! とっても、覚えたいっ!

 自由への扉……むしろ、鴨が葱を背負って来たとかそんなかも?

 

 それにしても……戦いになるかも知れないのに、呑気におしゃべりとか、なんとも、お気楽な感じなんだけど、どっちもすでに勇者モードのコスチュームになってる時点で、いわば臨戦態勢。

 

 もちろん、わたし達も下まで降りてくる間にすでに勇者モードに変身してる。


 持続時間は、長くて30分位だけど……向こうも似たようなもんだろうし、HPが無くなったり、時間切れで解除されても変身回数残ってれば、即座に再変身すれば、済む話。


 使いどころさえ間違えなければ、それだけ持てば十分……。


 ……双方、ゆるゆるな感じではあるんだけど。

 この時点で、お互いやる気だと、明白に語っているようなものだった。


 とにかく……戦いは避けられない……その想定は崩さず、相手の観察と情報収集に専念しよう。


 戦いが始まってから、そんな事をやってるようじゃ遅いんだ。


 幸い相手は、交渉の余地ありって感じで、呑気に話ししてるから、今のうちに、可能な限り向こうの情報を集めて、整理しよう。


 戦力推定と、考察……攻略法、その手の軍師的な役割は、魔物相手の時はわたしが担当してる。


 支援系魔術での援護……バフ撒きしたら、割と手隙になるから、自然とそんな風になった。

 それに大抵の魔物はお姉ちゃんが知ってるんで、こそこそ隠れて援護しつつ、攻略法を皆に伝えるって感じ。

 

 当然、きっちりハマるんで、皆はますます、わたしに頼る……なんか、そんな構図が出来上がってる。


 今回は、魔物じゃなく同じ勇者が相手……この事前情報収集は、この戦いの明暗を分けるくらい重要……話し合いは、まどかさんに任せて、私は観察と考察に集中する……。


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