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第十話「勇者&魔王システムはお手軽簡単」①

 まず、私達のこの勇者システム。

 これは、昔存在した神性存在……神様が作り上げたもの。

 建前上は、人々を守るための力。

 

 勇者の武器……そして、それを振るうに最適な人材、異世界人を召喚するシステム。

 

 それは知ってる。


 けれど、その対になるものとして、魔王システムと言うものが存在し、その管理者……仮に「超魔王」とでもしておく。


 そんな存在がいるのだと言う。

 

 そいつについては、未だに現存しているのだという。

 

 ……要するに、何人もいる魔王と呼ばれる魔族の王達。

 

 ただの魔族をそんな魔王に仕立て上げるシステムの管理者……それが「超魔王」


 その超魔王こそ、お姉ちゃんが戦って相打ちになった魔王だったのだと言う。

 

 それは言ってみれば、もう一人の神様のような存在。

 

 ……おい、こら待て。

 

 なんで、そんなのに喧嘩売ったんだ? 姉よ。

 なんか聞いてた話と違うぞ?

 

 で……。

 この二つのシステムは、相反し敵対するようになってるらしいのだけど。

 

 勇者システムは、その製作者にして、元締めの神様が全くの第三者……神狩りの魔王ってのに討伐された。


 この神狩りの魔王ってのは、良く解らない存在で……別次元の存在らしいんだけど、調子こいてる神様とかがいると、それを狩る……神様の天敵みたいな存在らしい。


 もっとも、神様不在の世界なんてなると、大抵無軌道なまま破滅街道まっしぐらになるので、そうならないように、自分の配下みたいなのを置いていくんだとか。


 ライブラさんも、そう言う意味では、その神狩りの魔王の配下と言える。


 アフターケアのつもりなのかも知れないけど、善意でって感じは全然しない……その行いが正しいのかどうかも、わたしではなんとも言えない。


 まぁ、とにかくこの世界からは勇者システムを使って遊んでた馬鹿な神様は居なくなった。

 限定的ながら、その管理権限を持ってた王様も馬鹿の暴走で、結局亡くなってしまった。

 

 そのせいで、もはや47人も召喚しちゃった勇者たちは、完全に野放し状態。

 

 他の勇者達は、あの時作られた即席パーティ単位で、王国内の有力者のもとや、国外の様々な勢力に流れて、それぞれ保護されたり、勝手に町に入り込んで、割とよろしくやってるんだとか……。

 

「ん? どう言う事……あの時の転移魔法って、割とデタラメにあっちこっちにばら撒かれたと思ったんだけど、そうでもなかったの?」

 

 流石に思わず、口を挟む。

 

「いやぁ……転移魔法って、予め転移先決めないと、発動しませんから。当然、王様も転移先はちゃんと配慮して、王国の辺境とか温厚な隣国とか、その辺の割と人里近くへ飛ばすようにしてたようなんですよ」


「……ここらへんのどこが、人里近くの安全地帯なのか、こっちが聞きたいんですけど? 錬成術がチートじゃなかったら、わたしらまとめて遭難してゲームオーバーだったところなんだけど」


「いや……ですので! 本来、こんなジャングルのど真ん中に墜落するとか、起きようがないはずなんですよ。ちなみに、この辺一帯、数十キロ単位でまともな人里なんてありませんし、死の森とか言われてるようなところなんで……まぁ、動かなくて正解ですね! うん、賢明でなにより!」

 

「……もしかして、これって……結構イレギュラーな事が起きてる?」


 転移魔法が正常に動作しなくて、わたし達は要らない苦労をしている。

 そう思ったら、無性に怒りもこみ上げてくるのだけど……。

 

 メンツに恵まれたこともあって、そこまで苦労したかと言えば、そうでもない。

 武器のレベルも皆、平均30超えくらいになってて、他のグループに劣ってるかと言えば、そうでもないと思う。


 まぁ、他がどうなってるのかとか、しらないんだけど!

 

「ですですっ! コレはあくまで、私の勘なんですけど……お姉さん、なんかやりませんでした? 確か、貴女……転移魔法の使い手でしたよね? 幽体状態でも、魔術への干渉は出来なくもないですからね……」


 ライブラさんがそう言うと、お姉ちゃんすっと視線を逸らす。

 

 ……何やったのかまでは解らないけど、この分だとなんかやらかしてる。


 隠し事なんて丸わかり……その程度には、わたしも姉の第一人者を自認してるのだ。

 

 なんてこった!

 初っ端からベリーハード設定だと思ったら、姉のやらかしだったのか!

 

 これは酷い……って言いたかったけど……。

 お姉ちゃんのやった事は、自動的に許されるのだ。

 

 試練とか深慮遠謀とか、ふかーい理由があるに違いない……きっとそうだ。

 それに、保護されてとか生ぬるい環境で、ダラダラ武器のレベルアップに励むより、生きるか死ぬかのサバイバルの日々。

 

 生ぬるい現代人たるわたし達を、否が応でもこの過酷な世界で生き抜くに足る程度には鍛え直してくれた……これは間違いなく事実。


 お姉ちゃんは常に正しいっ!

  

「そ、そうね……。転移魔法の軌道制御くらいなら、出来ると思ったんだけどね。微妙にコースズレちゃったのよね……。ほら、転移魔法って複数の魔術を組み合わせて、自動的に順次発動するパッケージ魔術でしょ? 私、ああ言う複合魔術みたいな細かい事とかって苦手なのよねー」


 ……転移される時、お姉ちゃんが転移魔法に要らない干渉した結果、途中で墜落した……どうも、そんな感じらしい。


 言われてみれば、途中でカックンって感じで失速した感じはしてた。


 ……お姉ちゃんやらかした……。


 洒落抜きで危うかった。

 

 いや、マジで。

 こ、これはどうフォローすべきなのだろうか。

 

 まぁ、とにかく……。

 結果的に、わたしらは無事遭難、異世界サバイバル状態……。


 本来、こうはならなかったと考えると、やり場のない怒りが湧いてくるのだけど。

 

 それはもう考え方次第。

 

 強制的とは言え、魔物との戦いや、過酷なサバイバルの日々。

 お互いの持つスキルと能力を活用して、生き残るための戦い。

 

 なにより、錬成術フル活用だったけど、逆を言えば、微妙だった錬成術の強力さを実感できた。

 

 他の勇者達は、それなりに上手くやってるっぽいけど、当然ながら、誰も統率してないし、強い力を持つものってのは、その存在だけで、カオスを呼び込む……そう言うもの。

 

 アンコントローラブルな事には変わり無いって事。

 

 勇者は、武器にもよるけど、はっきり言って、一般の兵隊なんか束になっても軽く蹴散らされる程度には強い。

 

 それが一切、統制取れて無くて、あっちこっちに散ってしまったこの状況。

 嫌な予感しかしないのは、気のせいかしらと。

  

 一方、魔王システム……。

 その元締めの超魔王がお姉ちゃんに封印されちゃったせいで、やっぱり野放し状態。


 割と際限なく、ゴブリンだのオークみたいな雑魚モンスターがドバドバ巷に溢れてるのは、そのせい。

 

 あっちこっちに飛ばされた勇者達が、現地人にあっさり受け入れられたのもその辺が理由。

 ソレくらいには、野放図に雑魚モンスター祭りが各地で開催中……。

 

 おまけに、中途半端に魔王システムを制御して、勝手に魔王の使徒……勇者の魔王サイド版みたいになってるのがいて、あっちこっちで調子こいたり、好き放題やらかしてるらしい。

 

 しかも、魔王システムの恩恵を受けられるのは、魔族だけに限ってない……人間の身でも、力を譲渡される形でなら、魔王の使徒になれてしまう。

 

 その一人が、例の骸骨司教……確かに、強化魔法とか使ってたような……。


 この辺は、ライブラちゃん情報。 


 その気になれば、世界中のどこにでも瞬時にワープして、相手にさとられずに、観察することが出来るんだとかで、かなり詳しく今の情勢を把握しているようだった。

 

 どうみても、ぽんこつなんだけど、そこら辺は腐っても調停者。

 要するに、情報収集能力だけ見れば、ライブラちゃんは軽くチートレベル。

 

 もっとも、単体では、文字通り見てるだけなんで、はっきり言って微妙。

 

 神狩りの魔王様とやらは、こんな微妙なので、神様の代役とか務まるとか思ったのかなぁ……。

 もうちょい……こう、使える存在を置いていってくれれば、良かったのに。

 

 ただし、可愛さは抜群。

 同性から見ても、そう思うくらいだから、多分相当なもん。

 

 でも、下手にこう言うのに、世界に干渉できるだけの力を与えてしまうと、第二の増長神とかなりかねないから、わざとこんな他力本願あるのみの、中途半端な存在にした可能性もある。

 

 ちなみに、ライブラちゃんの話だと、中には、魔物を軍勢規模で揃えて、国家単位で喧嘩売ってるプチ魔王みたいなのとかもいるらしい。

 

 そんな訳で、47人の勇者と、魔王システムによって、大量生産されつつあるプチ魔王達が群雄割拠すると言う、カオスな状況が爆誕しつつあるんだとか。

 

 おぅ……大変だ。

今日で平成も終わり。


明日から令和編、はっじまっるよー!

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