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第九話「ゆるゆる神、降臨?」②

「……この、何もかんも停まってるのは、何事? そもそも、アンタはなに? 胡散臭すぎて、どうしょうもないって自分でも思わない? とりあえず、そこから動かないで……」


 とりあえず、まどかさんをかばうように、ナイフを構えたまま、一歩前に出る。

 

「胡散臭いのは否定し出来ないかなぁ……。それにしても、そっちのお姉さんは……なんで、時止の結界の効果が及んでないの?」


 変なのが不思議そうに訪ねてくる……ん? お姉ちゃんのことか。

 そう言えば、普通に動いてるね……まどかさん固まってるのに。


「そう言えば、そうね……。お姉ちゃんって結局、どうなってんの?」


「……前も言ったけど、今の私は、シズルに取り憑いてるようなもんなのよね。実際、召喚術ですら対象はシズルだけに及ぶはずなのに、私も一緒だったじゃない」


「なるほどね! つまり、わたしとこいつ以外は皆止まるはずが、お姉ちゃんもしっかり巻き込まれてた……そう言うことね! 良かった……こんなのと二人きりで向き合うなんてことにならずに!」


「な、なるほどですね……。どうりで、君だけやたら準備良かったり、イレギュラーな行動を連発してたと思ってたんですけど、こう言うことだったんですね! と言うか……まさか、その姿……そこのお姉さん。……先代の剣の勇者? 魔王を統べるものは、次元の狭間から幽体化して逃げたみたいだから、要注意とか言ってたけど、こんな所にいたなんて……!」


 今気づいた……こいつ……お姉ちゃんが見えてる?

 なんか、勝手に驚いてるんだけど……説明しなきゃ駄目なんだろうか。

 

「あら、君ってば、私が見えるんだぁ……。ほんと、ヤバいね……何なのさ、君? なんか、透けてるけど……もしかして、ご同類?」


 お姉ちゃんの言葉で、わたしもこいつが半透明だって事に気づく。

 な、なにこいつ……本物のオバケ?


「そうですねー。実は今の私って、実体を持たない……言わば、霊体みたいなもんなんで、お姉さんが幽霊なのだとすれば、割と似たような存在って訳なのですよ。そう言うわけで、お互い何もせずとも認識可能って訳です。いやぁ、お姉さんのことも探してたんですよね……ちょうど良かった!」


 黒いのは、何故か妙に得意そうにそんな事を口走る。

 ……なるほど、そう言うことなんだ。

 

 確かに、微妙に透けてるし、気配が感じられない……。


「いいこと聞いちゃった! そう言う事なら、こっちも殴れるって事なのよねっ! シズル! そんな訳で、ここは私に任せなさいっ! ふふんっ! この必殺の姉パンチで、軽く成仏するのねっ!」


 ……ご同類と聞いて、即座にぶん殴る気満々な姉。

 

 お、おぅ……元々、暴力的なところはあったんだけど、異世界でそれが悪化したような……。

 止める間もなく、お姉ちゃんが黒いのに殴りかかろうとする!

 

「ちょっ! ストップ、ストップ!」


 ……いや、やる気ないって言ってる相手に、問答無用で、武力行使とかどうなの? それ。

 向こうも両手を掲げて、やめてーみたいなポーズで固まってる。

 

「喰らえっ! 破ァアアアアアッ!」

 

 正拳突きの構えからの渾身のお姉ちゃんパンチ。

 

 ドゴ、パリーンと言うようなものすごい音がして、ガラスみたいなのが飛び散って、お姉ちゃんも正拳突きのポーズのまま、固まってる……。

 

 黒ローブさん、どうやら、お姉ちゃんのグーパンをなんとかしのいだって感じ。

 目も瞑って、頭抱えて、如何にもド素人って感じながら、今のを防ぐとか、やっぱ普通じゃないね。


「……はわわわっ! ぼ、暴力反対っ! ああ、もうっ! 手出しできるとわかった瞬間、問答無用で殴りかかるってなにそれっ! って言うか、対霊防御結界を6重で張ったのに、一気に4枚吹っ飛んで5枚目も半壊……霊体、おまけに素手なのに、その攻撃力っ! ちょっとおかしくないですか?」


「へぇ、霊体用の防御結界、それも6重なんてのを、ノーモーションで瞬時に展開とか、やるじゃない……一歩、踏み込みが甘かったか……でも、質量のない霊体だから、こんなもんか……けど、今ので感覚掴んだよ! 次は確実に仕留めるっ!」


「ギ、ギリギリセーフッ! むしろ、紙一重ですって! そんなやる気に満ち溢れないでっ! 暴力反対ですっ! 私は、常々この世界には、愛ってものが足りてないって思ってるんですからっ! とりあえず、停戦しましょーっ! お話し合いきぼーっ!」


 そう言って、どこから出したのか白旗振って、土下座する黒いの。

 それなりに、凄い相手っぽいのに……。

 

 なんて……低姿勢なんだ……。

 

「お姉ちゃん、ストップ。ここは穏便に……ね?」


 とりあえず、姉を止めよう……ゴースト同士の超級バトルならぬ、一方的な蹂躙戦とか、もういいよね?

 と言うか、向こうは戦うすべとか、やる気も無さそうだし……。

 

 白旗掲げてるくらいだから、無条件降伏ってみなして良いんじゃないかなー。


「……シズルに免じて、グーパンは勘弁してあげるわ。何か話があるって事なら、聞いてやろうじゃない。ただし、変な真似したら、宣戦布告とみなすからね!」


 そう言って、偉そうに足を組んでわたしの座ってたビーチチェアに腰掛けるお姉ちゃん。

 

 まぁ、多分演出なんだろうな……この場で偉いのは誰かってのを、明確に示してる……つもりなんだろう。

 

 お姉ちゃん直伝、異世界交渉術。

 とりあえず、相手ぶん殴って、力関係をはっきりさせた上でお話し合いすると、何かと楽。

 

 ……なんてこと言ってたけど、まさにそんな感じ。

 相手が同じ土俵だと解った瞬間、武力行使の挙げ句この態度……。


 まさに、姉っ! この人、異世界だろうが全然ブレてない……さっすがっ!

 

 ……まぁ、色々とおかしい理屈なんだけど。

 この世界は、力こそ正義って感じらしいので、ソレも一応あってる……のかなぁ?

 

 多分、それ……お姉ちゃんだからこそ、通じるやつだと思うんだけど。


 でも、効果はあったみたいで、相手も土下座体勢から、そのままちょこんと正座。

 うん、解ってるね……お姉ちゃんの話を聞くときは、それが基本なんだよ。


「よろしい……では、次に顔くらい見せなさい。まったく、暑苦しいカッコして、何考えてんだかね」

 

 お姉ちゃんの言葉に従い、変なのがローブのフードも外すと、中から長い銀髪と犬っぽいタレ耳を頭に生やした女の子が出て来る。


 おう、ケモナーとか……何気に始めてみた。


 目もタレ目でなんと言うか……弱そう。

 むしろ、可愛らしいゆるふわ癒し系。


 これまで、超胡散臭いって思ってたけど、こんな癒し系の女の子だと解ると、さすがにやる気が削がれる。


 実際、とっても無害な感じで、にぱーと邪気のない笑顔で、チラチラとこっち見てる……。

 尻尾も生えてて、嬉しそうにブンブン揺れてる……なんか、触ったら凄く触り心地良さそうなんだけど、触れるのかな?


 なんか、見るものを和ませる感じで……どうしたもんか……お茶くらい出す?

 

「すみません。いきなり姉が暴力的で、正直、ホントすみませんね……」


 一応、こっちも相手に合わせてみる。

 とりあえず、謝る……だよね?

 

 こっちもお姉ちゃんとの間に割り込む形で、向かいに正座して、三つ指付いて、深々とお辞儀。

 わたしの感覚だと、ギルティなのは姉だ……間違いなく。

 

「……これはこれは、ご丁寧に……。って言うか、妹ちゃん、お姉さんになんか言ってあげてっ! 話し合いを所望って言ってるのにいきなり、グーパンとかひどくないですかっ!」


「あはは……。これがこの世界での交渉術なんだとか……。わたしがなんか言って、姉がなんとかなるなら、きっと世の中は、もっと幸せに満ち溢れた世界になるんだろうなぁ……って思いますよ?」


 ……その時のわたしの表情は、きっと仏様のようだったんだと思う。

 犬耳黒ローブさんが、うわぁ……みたいな感じでこっちみてる。


 お姉ちゃんは、テヘペロッみたいな感じで、自分のデコをコツンと叩いてる。

 色々、身に覚えはあるらしい。


 知ってた……姉はいつだって、確信犯なのだから。


「お姉ちゃんはこう言う人。わたしが何言っても無駄……だから、怒らせちゃダメ。ここまではOK?」


「オッケーです。お姉ちゃん、ヤバい! 超ヤバいですっ!」


 お姉ちゃんをヤバい人呼ばわりするなって、言いたいけど、この子の目線ではそうなるのも仕方ない。

 はっきり言って、弁護のしようがないので、ここは潔くスルーっ!


「えっと……まずは、こっちの質問に答えて欲しい。アンタ、なにもの? こんな時間停止とか、対霊結界だの、トンデモ技使ってくる幽霊って時点で、普通じゃないよね?」


「うん、私の名はライブラ。なんて言うかな……要するに、この世界のバランサー的な存在……こう言えば解るかな? ちなみに、幽霊ってのは例えで、物理的実体を伴わないって意味では、一緒ってだけなんですよ。なんで、お塩とか除霊とか効きませんよ? たぶん」


 世界のバランサーって……まさか、神様っ!? 

 それなら、納得だ……それに、この出会い……。

 

 もしかして、超重要イベント?

 

 色々理不尽チート授与とかで、勇者シズルの伝説始まったってなるかも?

 なんだか、この子の背後に後光とか見えてるような気がしてきたっ!


「……要するに、神様的な? 良かったぁ……この世界の神様って、滅ぼされたって話聞いてたけど、一応、いたんだね! あ、会えてうれしいです! あ、ジャックフルーツとか食べます? 美味しいですよ?」


 ……思わず、敬語になる。

 さっきまで、まどかさんと摘んでた巨大フルーツ、ジャックフルーツの切れっ端を差し出すと、ライブラさんも嬉しそうにつまんで、ひとくち食べてぱぁっと顔を輝かせている。

 

「美味しいっ! なにこれーっ! いやぁ、私……神様とは、ちょっと違う感じなんで、お供え物とかもらえないしで……。こんな扱い受けたの初めてです……あ、ありがとうっ!」


 なんか、手を握られる。

 けど、神様とはちょっと違うって……あれ? もしかして、期待したのと違う?

 

 となると、どう言う立場なんだろ……? 

ライブラちゃんは、むしろ正統派ヒロイン系。(笑)


ちなみに、シズルは長年の刷り込みで、ユズルが何やっても、勝手に納得して、許容するようになってます。

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