バレンタイン4
兄さん、聞き捨てならないよ。
それって私もってこと?
「レナもデュシーも、当然オルブロンもだから。全く」
「そう言えばデュシーさんは?何時もならオットリとした笑みを浮かべてレナ達の側に居ることが多いのに」
見掛けていないと言うニキ様にあれ?っと思う。
ニキ様が家に居る時って何時の間にかデュシー姉さん居たね。でもね、普段は居ないのよ。娘のティナちゃんを構っていることが多いからだろうけど。
だから私には居ない状態が普通、通常状態だったりする。
「ニキ様あのね。デュシーお姉ちゃん、ニキ様とレナお姉ちゃんとの仲を認めたから来ないみたいよ~」
はい?
認めた?
ディラン兄さんが「ああ、成程ね」って呟いて居るけど、どういうコト?
「そうか、やっと認められたってことかな」
「私より上のお姉ちゃん達は、えっと、ゲシュウって男の人に苦労したからね。だからデュシーお姉ちゃんは男性であるニキ様を相手にして大丈夫かなって、心配して様子を見ていたみたいなの」
…成程。
だからニキ様が来る時は姉さんが居たのね。
デュシー姉さん普段はのんびりしていておっとりしているように見えるけど、そう言う所は確りしているみたい。子供を産んでから以前とは違って、少し逞しくなったのかもとは思っていたけど、こういう所は意外と確りして居るんだなぁ。
それだけ心配掛けてしまったって事なのだろうけど。
「ニキ様、レナお姉ちゃんを宜しくお願いね?」
「ああ、わかった」
「義理の妹になるのだからオルブロンでイイよ~」
「あー…それは、フォーカス様に聞いてからかな」
んん?それは聞き捨てならないけど?と思って居たら、急に頬を染めてデレデレしだしたオルブロンが、
「えへへへ、そうかな?やっぱりそうなのかな?」
「…クリスマスや新年以降、何となく雰囲気違っているよな」
「ヴィル様がやたらと「息子のフォーカスを宜しく頼む!」と押しているしね。私としては年齢が違い過ぎるという理由で、オルブロンには接触は控えて欲しいのだけどね?」
ディラン兄さんそれ多分無理。
「いーや!私はフォーカス様と仲良くなりたいし、初恋だし!将来は結婚したいの!」
ほらね。
フォーカス様に関してはオルブロンも計算高くなるし、何より既に『女の顔』になっているもの。まだ8歳なのに、私の妹であるオルブロンは年齢を通り越して末恐ろしい。
「だけどねぇオルブロン、相手は元の血筋が良いとは言え…いや、ウチも似たようなものだからどうこう言えないが。と言うか血筋云々と言うのは言いたくないが…あー何が言いたいかと言うとだな、その……初恋は中々実らないって言うぞ」
「ディランお兄ちゃん、ニキ様やレナお姉ちゃんに面と向かって言える?」
「……ナンダカ、スイマセン」
ニキ様の方を見ると、ディラン兄さんの方をジットリとした目で睨んでいた。
ニキ様って、あ~…うん。
つまり、私とのことは初恋と。そういうコトなのかな。
そして私もこの世界ではニキ様が初恋ってワケで。
自覚してしまうと、これはこれで恥ずかしいわ。
「まぁ何だ。レナ、オーブンは後で届けるから受け取ってくれ。それで、その、ああ、えーと…」
ガリガリと頭を掻き出すニキ様。
薄っすらと頬が赤い。チラリと此方を見た後に視線を彷徨わせて居るのは、どう言い出したら良いのか戸惑っている…いや、恥ずかしいのだろう。
目線を合わせると、それまで照れていたらしき顔を急に引き締め、
「聞くのが後になってしまって本当にすまん。改めて聞くが、14日はレナの予定は開いているか?」
「出来たら最初に聞いて欲しかったのだけど」
少し意地悪かな?と思ったけど、兄に先に許可を得るより私に最初聞いて欲しい。
最終的に兄に許可を得るのはいいと思うけどね。
「ニキ様脳筋過ぎてお姉ちゃんに聞くのを忘れていたの?減点10~だよ、ね?レナお姉ちゃん」
「あーやらかしたな、減点10点か」
「そうだよ。んーでも許可かぁ…よし。お兄ちゃん、私も14日お出かけするね!」
「フォーカス様のところかい?」
「フォーカス様の許可を貰ってないから、聞いてくる!」
「何時も行っているから特に許可得なくても大丈夫な気がするけど、ねぇ」と呟いたディラン兄さんの声はオルブロンには既に届いて居なかった。
「何と言うか、猪突猛進だよね。…末っ子の将来の為に家庭教師付けようかなぁ」