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バレンタイン3

「レッティーナお嬢様、オルブロンお嬢様、このまま40分程で焼き上がりますよ」


「わーい!やったね」


「料理長に頼んで良かったわ…」


「いえいえ、お役に立ったなら良かったです」



ガルニア家のオーブン、旧式過ぎたーっ!


学園の食堂のオーブンも火入れから結構大変だったけど、管理が火魔法を使う人が補っていたから火力調節が楽だった。


だがしかーし!


このガルニエ家のオーブン大変だわ!


火を入れてオーブンの中で薪を焼き、中が熱くなって来たら取り出し。オーブンの部分の入り口の温度を計測。


とは言え、料理人の勘だけで計測…。


それからやっとバターケーキを入れる。でも気を付けないとイケナイ。このやり方は温度の上がり下がりがあるから迂闊に中を開けて様子を見ることが出来ないし、更にケーキは時間を掛けないと中まで火が通らない。



一応私達が館入居する時に修理したらしいけど、オーブンの方は従者達が『最低限』に『使えるぐらい』に補修していただけ。


つまり、この館が出来た数百年前である初代(多分)ガルニエ家からある、かなり古いオーブンのまま。


前世で言う所の竈と電気オーブン程の違いがある。


どれだけ古いって言うの…。


そこで料理長の登場である。


彼曰く、「勘」で焦げ付くかどうかわかるそうで。


つまり。どんなに入口付近に置いて置いても、『料理人の勘』に頼らなければ、オーブンの温度が高すぎて焦げ付きそうだったとのこと。



「旧式ってコトは、今は最新式があるの?」


「魔導式というオーブンがありますね」


「兄さん!」


「ハイハイ、レナにオルブロン、予算が足りたらね?」


「幾らするのかな?」


「お嬢様、確か小さいのなら10万ゴル位だったと思います」


「それならシドニー姉さんの所に売ってないかな?私の貯めたお給料でも買えそうだし」


「お姉ちゃん、私もお小遣い出すよ」


「あのね、妹達。それぐらいなら予算あるから気にしなくて大丈夫だからね?ジーニアスも稼いで居るのだし」



ソコで今迄黙っていたニキ様が口を出した。



「バレンタインに贈ろうか?」



―――…高価過ぎないだろうか…



「いや、一応俺貴族の子息だし。というか、それぐらいの金額なら貴族なら普通だろ?」


「ええっ!」


「オーブン贈るのは普通じゃないけどな。でも贈り物だし。レナが欲しいなら贈るぞ」


「いやいやいや、でも、え?高価過ぎない?と言うか豪華すぎなきが」


「こんなものだろ」


「元庶民暮らしだった私には、非常に高価な品です」


「あ~…その辺は、まぁ、うん。レナはほら、俺の…恋人だからな。今まで特に欲しいものってレナは無かったし、出来たらその…役立つものをプレゼントしたいし…」



話しているうちに恥ずかしくなったのか、ドンドン顔が赤くなっていくニキ様。


耳まで赤くないですか?


それと同時に、冷やかすオルブロン。


対象的なのがディラン兄さんかしら。何だか生暖かい眼差しを此方に寄越すのは止めて欲しいわ。向けるのはニキ様じゃなくて、何故私なの?ああもうっ!赤くなっていくニキ様可愛いって思っていたのがバレた?そうなのね~!


見事に存在感を消し、空気に為っている料理長を見習ってディラン兄さん!その生暖かい眼差しは嫌すぎるし、恥ずかしいから!



 * * *



そう言えば私、この国のバレンタイン知らないのよね。


乙女ゲームの方ではバレンタインについてのイベントがそもそも…あれ、どうだったっけ?あったかな?もしあっても日本みたいに『女性が男性に告白&チョコレートを上げるイベント』みたいなものだったっけ?


もしかして、この国って違うのかしら?


フランスだと男性が女性にプレゼントをするのが一般的だったし。


台湾だとバラの花をプレゼントするのが常識。しかも個数によって愛の言葉が違うとか。


イギリスはカードを贈るらしいし、イタリアはデートプランを練って、更にプレゼントを選んで、オシャレな場所でディナー…勿論バラの花束付き。甘い言葉を添えて、とか。


苦行か。



「他の国はわからないけど、この国だと好きな人に告白+プレゼントとか、恋人にプレゼントを贈るものだね」



ディラン兄さんに聞くと、デート付きは大抵恋人同士が行うらしい。


成程ね。イタリア式っぽいなぁ。



「好きな人に贈るっていうのが一般的だな」



うんうんと頷くニキ様。


そしてチラリ、と此方を見詰める。


うーん、その眼差しは…まぁ、察しは出来ます、はい。


ただ熱を帯びた眼差しはちょっと勘弁。これ、後で確実にオルブロンにからかう材料になるだろうなぁ。ウチの末っ子、中々の悪戯っ子だからネタ提供したくは無いのだけどしょうがない。



「という訳で、14日当日は朝の11時からレナを貸し切りってことで。予約しておくが良いかディラン殿」


「仕方ないね、でも日が沈む前には帰してね。僕も心配になってしまうし、何より弟…ジーニアスには後で決闘挑まれるかも知れないけど。まぁそれはそれで、時間守らなくてもありそうだね。はは、覚悟してね」


「うへぇ」


「大丈夫!ジーニアスお兄ちゃんのお茶に腹痛の薬入れておくから!」


「それだけは止めて、切実に止めて。ジーニアス当日警護だからっ!」


「平気だよ、決闘する日に飲ませるもの」


「やめて!一家の大黒柱弄るのは止めて!毒を盛るのも止めて!」



オルブロン容赦無いものね~…


過去長男カイデン兄さんに及ぼしたオルブロンの被害は、私の知っている限りでも中々エゲツナカッたし。私が王都に来てからも実家に居たオルブロンは何度かやらかして居たらしいから…



「大丈夫!カイデン兄さんみたいに『悪意ある仕返し』じゃないから」


「それ十分問題あるからね?あと、ジーニアスはオルブロンにとても優しいだろう?だから勘弁してあげて」


「それじゃぁ下剤で」


「十分問題あるからね!と言うかレナもニキ様も止めてあげてっ」


「と言われても、俺の味方してくれているからなぁ」


「そうよニキ様。ディランお兄ちゃん、『人の恋路の邪魔するやつは、馬に蹴られてナントやら』というじゃない。だから私がジーニアスお兄ちゃんに成敗を」


「それは例えだよ、比喩だよ!強調とか誇張とかだよ!と言うかジーニアスに成敗って止めて!」



ディラン兄さん必死だなぁ。


…これ、自分もやられたら困るからって言うのもありそうだね。



「え~」


「『え~』じゃないからオルブロン!」



仕方ないここらで妹を抑えるかと思ったら、此方を向いたオルブロンがニヤリとした笑みを浮かべている。


ああ、これは…



「ディラン兄さん、オルブロンに遊ばれているわよ」


「なっ!?」


「えへへ~ばれたぁ♪お兄ちゃんゴメンナサイ。つい遊んじゃった~」


「お前なぁ…」



ぐったり項垂れたディラン兄さんにじゃれ付くオルブロン。


いいけど、手に持った木ベラはうっかり兄さんに付くと汚れてしまうから、台に置こうね?ディラン兄さんのその服、新調したばかりだった筈だから、尚更ね?



「全く『妹達』には敵わないよ…」


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