水を運ぶ男
太陽の光が刺さる。真っ黒になるまでずっと働いているこの現場の男達は、汗を流し、バケツで水を汲み、ダムに水を貯めるという仕事をしている。
「なぜこんな事を。」
1人の男は疑問を持った。自分の仕事を無意味だと思ってしまったのだ。しかし、周りのみんなはあれよあれよという間にどんどんと水を運んで行く。
「どうした。なぜ水を運ばないのだ。」
男は反論する。
「なぜ水を運ばなければならない?」
すると、もう1人の男は
「みんながそうしているだろ。それに理由を求めるのは間違っている。ここでは水を運ぶ事が常識なのだ。」
そう言われた男は嫌々働き続けた。そして、月日は流れ約20年が経過していた。男は水を運ぶ仕事に慣れてきて、経済的にも余裕ができ、結婚もして子供もできた。
するとそこに、有名な吟遊詩人が町にくるという噂を聞きつけ、男は町の酒場に向かった。
詩人の歌は有名なだけあってとても感動した。詩人が歌を歌い終え、帰ろうとするところを男は引き止め詩人と一緒にお酒を飲む機会を作った。
「あなたはどのような仕事をされているのですか?」
そう詩人は尋ねてきた。
「水を運ぶ仕事さ。」
男は答えた。
「なぜ水を運ぶのですか?」
男は一呼吸おき、
「ここの町の男はほとんどが水を運ぶ仕事をしているのさ。だから俺は水を運んでいるんだよ。」
と答え、さらにこう問う。
「あなたはなぜ吟遊詩人を?」
「私は、もともと歌が好きで私の作った歌で人を幸せにしたいと思ったのです。私は人と触れ合うのが好きなのですよ。」
そういった彼の目は光に満ちていた。男は思った。詩人と俺は全く違う。相容れないと。
そして男は数十年後、死の淵にこう思った。
「俺の人生はいったい。俺は何をしたかったのだろう。」
クリぼっちにならずに今年はすみましたが、友達とのクリスマスでした。もう年末。平成も終わってしまいますね。悲しいです。




