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第6話 はじめての人間

ラチェットは草一本生えていない、乾いた大地を歩いている。

容赦無く太陽が照りつけ、喉はカラカラだ。


必死に足を動かして歩いていると、目の前に小さなテントが現れた。


ラチェット

「あのぅ、どなたかいらっしゃいますか?


「ようやく来たようだな。


天幕が開いて、ウェルズが顔を出した。


ラチェット

「あ、あ-----ウェルズさん!


ウェルズ

「暑いだろ、入れ。


ラチェット

「ありがとうございます。


中に入ると、ウェルズが冷たいお茶をついでくれた。


ラチェット

「ウェルズさんは死んでしまったと思っていました。


ウェルズ

「ははは、わしは首を切られたくらいじゃ死なんよ。


ラチェット

「良かった。


ラチェットはほっと胸をなでおろした。

そして、お茶を一口飲んだ。


ウェルズ

「ところで、お前は本当にエルヴィアの王になりたいのか?



ラチェット

「------。

私は、卑しい、人に愛されるに値しないものです。

こんな私の体で喜んでくださる方がいるというだけで嬉しいのです。

王様なんて、私なんかに務まるとは到底思えませんし、

なりたいなんてこれっぽっちも思いません。

ですが、二ブラさんは私がいるだけで戦が起きないとおっしゃっていました。

こんな私がたくさんの命を救えるなら、私は何を捨ててもそれを選びます。



ラチェットは頬を赤く染めて俯いた。


ウェルズ

「ふむ、お前はお前が思っている以上に王様に向いておるかもしれんぞ。


ラチェット

「そんなこと-------。


ウェルズ

(こやつの母親はエルフじゃ。

故に、無意識で魅了する魔力をばらまいておる。

敵にも 味方にも好かれるということは

なかなかの力になろう。)


ウェルズ

「いやはや、エルヴィア王がハーフエルフ、これは滑稽じゃ!

わしも力を貸すゆえな。

ラチェット、さあ-----


ウェルズはラチェットの目を手で覆った。






フレア

「答えてもらおうか。お前達は誰の命令でラチェットをかどわかした?


ベッドでぐったりと眠っているラチェットの側で、

二人のエルヴィア人と4人の王子は睨み合っている。


二ブラ

「かどわかそうとしたのはどちらでしたかね。


トルク

「おい、俺らを誰だと思ってるんだ、このやろう!


トルクは二ブラの胸ぐらを掴んだ。


グラインダー

「もうちょっと静かに話せないのか?

ラチェット様が起きるだろうが。

このくそ王子。


トルク

「ああ!?


グラインダーとトルクが至近距離でガンを飛ばし合う。


ブロワー王子

「暑苦しいな、外でやれよ。


フレア王子

「宰相二ブラ、いったい誰がラチェットを見初めたのか?


二ブラ

「ふう、ストリッパーとしてラチェット様をお連れしたわけではございません。


フレア王子

「ほお------

ラチェットに夜の相手をさせるためではないということか。


二ブラ

「これは、エルヴィアでもまだ一部の人間にしか知らされてないことですが。

まあ、つまり国家機密なんですが。


フレア

「ふむ


二ブラ

「話さなければ、このまま殺し合いになりそうですからね。


二ブラはため息をついた。


二ブラ

「ラチェット様は王位継承者なのです。


フレア

「な-----

トルク

「なんだとう!

レシプロス

「む-----

ブロワー

「へ------


二ブラ

「つまり次期エルヴィア王になられるお方なのですよ。


グラインダー

「わかったら、金輪際ラチェット様には馴れ馴れしく触らないでくださいよ。

王子様がた


フレア

「王だと?


トルク

「王って、じゃあもう、ラチェットを抱けないし俺のものにもできないのか?


グラインダー

「ああ、陛下は俺たちの王様だからな!


グラインダーはドヤ顔をした。


トルク

「そんな。


フレア王子

「いや、まだ信用できぬ。

私はラチェットが王になるまで見届けよう。

エルヴィアまでラチェットについて行く。


トルク王子

「お、俺もだ!


レシプロスもうなずいている。


ブロワー王子

「面白そうだ。


二ブラ

「そういうと思ってましたが、

まあーお好きにどうぞ。


グラインダー

「まったく暇な王子さん達だぜ。


その時、ラチェットが小さな声を出して寝がえりをうった。


ラチェットに皆の視線が集まる。


ラチェットの隣にはよぼよぼの老人が添い寝している。


とっさにトルクは掴んで壁に投げつけた。


トルク

「うらああーーー


二ブラ

「ウェルズ、生きていたのか?


ウェルズ

「イタタタ、何をするんじゃ。

まったく。


トルク

「こいつ、俺が殺したはずだ。


ウェルズ

「なんのことかのう?


ラチェット

「ん-----あ


ラチェットは目を覚ました。


レシプロス

「ラチェッ、ああ、私の可愛いラチェラチェ!


レシプロスはラチェットに抱きついて頬ずりした。


レシプロスのキャラの変わりようにみんな唖然としている。


ラチェット

「あ、レシプロス様、お久しぶりでございます。

あ、あのう、お髭がこそばゆうございます。


レシプロス

「そうかそうか、こそばゆいでちゅか。

ラチェたん。


またもスリスリし始める。


レシプロス

「今夜は私と一緒に寝まちょうね。


トルク王子

「ちょっとまった!

おい、レシプロス離れろ!

ラチェットは今夜から俺が添い寝して守る。

なあ、ラチェット。


フレア王子

「いや、ラチェット、私の側が安心だろう?


ブロワー王子

「くくく、俺は5人でもかまわないぞ



グラインダー

「おい、いい加減にしろよ。

さっきから聞いてればラチェット様は物じゃない!

おもちゃにするな!


ラチェット

「え、私は物ですよ?グラインダーさん。


グラインダー

「はあ?


ラチェット

「支配人が言ってました。

支配人は私が子供の頃

人形のようになる薬を飲ませたらしいのです。

たくさん飲ませて、いい人形になったといつも喜んでおられました。

人形だから何でも言われた通りにできるのですよ。


ラチェットは可愛く微笑んでいる。


「はあ----------------


みな、頭を抱えてため息をついた。




グラインダー「いいか、お前は、に、ん、げ、んだ。


グラインダーはラチェットの華奢な両肩を掴んで目を見つめた。


ラチェット

「え、私はまだ人間なんですか?


ラチェットは頬をピンクに染め、瞳を潤ませる。


フレア王子

「ラチェット、君は一人の人間だ。

人形になんかならなくていい。

誰かのいいなりになる必要はない。


フレアはグラインダーを押しのけて、

ラチェットの小さい手のひらを自分の手で包んだ。

とても悲痛な顔でラチェットを見つめている。


フレア王子

「ああ、だがこれだけは教えてくれ。

人間としての君は、僕のことが嫌いかい?


ラチェット

「え、フレア様を?人間の私------。


ラチェットはじっくりとフレアを観察した。


フレアはゴクリと唾を飲み込んだ。


ラチェット

「私はフレア様のこと大好きです!


ラチェットはにっこり笑って言った。


フレア王子

「ああ----------


フレアは泣きそうな顔をしてラチェットに抱きついた。


レシプロス王子

「ラチェたん、ぼくは?


トルク王子

「お、俺は?俺は?


ブロワー王子

「ラチェット俺は?


一斉に3人の王子が押し合って詰め寄る。


ラチェット

「えっと--------


ラチェットがまた念入りに観察し始めた。


グラインダー

「ラチェット様、本当の事言ってくださいよね〜


トルク王子

「黙ってろ!


ラチェット

「うん、私はレシプロス様、トルク様、ブロワー様も大好きです!

あ--------、だけどブロワー様が狼人間になるのは怖いから、

えっと嫌です。


ラチェットはバツが悪そうに目をそらした。


フレア王子

「狼人間だと!?

きさま、錬金術を使ってそんなものに。

許せん-------


トルク王子

「俺の曲刀で切り刻んでくれる


レシプロスもフードの中からすごい目つきで睨んでいる。


ブロワー王子

「ちょちょ-------、もうしないから、ね、

ラチェット、許してくれるよね。はは。


ブロワーはラチェットの後ろに隠れた。


グラインダーがブロワーの首の後ろを掴んで、引き剥がした。


グラインダー

「狼人間になって、ラチェットに何をしたって?


ものすごい殺気を出してブロワーを壁に押し付け、首元に剣をあてがった。


ブロワー王子

「ひ----わ、悪かったよ。頼む----


ラチェット

「グラインダーさん、やめてください。

お願いします!


ラチェットはグラインダーの腕にすがったと言うか、ぶら下がる感じだ。


グラインダーは舌打ちして、ブロワーを離した。


ブロワーは咳き込んでいる。


グラインダー

「ラチェット様のベッドに誰も近づかないでくださいよ。

近づいたら切りますんで。


グラインダーはドカッとベッドの脇に座った。


王子達は名残惜しそうにしながら部屋を出て行った。


ウェルズ

「フォフォフォ、ラチェット良かったのう。

人間になれて。


ラチェット

「人間----。わたし------。


ラチェットは嬉しそうに微笑んで手のひらを頬に当てた。


グラインダーはそんなラチェットの頭をポンポンと叩いた。


ラチェットは頬をピンクに染めて顔を伏せた。


その夜---------


ラチェット

「あの----、グラインダーさん、グラインダーさん。


グラインダーは床で眠っている。


ラチェット

「寂しくて、 眠れません。

隣で寝てもいいでしょうか?


グラインダーは起きる気配はない。


ラチェット

「グラインダーさん、じゃあ、寝ますね。


ラチェットは床に降りてグラインダーの隣に寝転がって、手を握った。


翌朝、4人の王子達が部屋に来てみると、

床の上でグラインダーが腕の中にラチェットを抱いて眠っていた。

王子達が激怒した事は言うまでもない。


















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