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第3話 はじめての友達

ラチェットは鍾乳洞の中を一人歩いている。


辺りはほのかにぼんやりと青く光り天井は広く、

いくつも鍾乳石がぶら下がっている。


しばらく一本道を進むと大きな蛇がとぐろを巻いて寝ていた。


不思議と怖い感覚はない。


大木のような蛇の身体にそっと触れてみた。


すると蛇の瞳がうっすらと開き、蛇の方から声が聞こえた。


大蛇

「誰だ。お前は。気持ち良い眠りを妨げたな。


ラチェットはびっくりして、座り込んだ。


大蛇

「お前----、人じゃないな。

なんだエルフか?

だが完全なエルフでもない。

ふむ、面白い。


大蛇は舐め回すようにラチェットをながめた。


ラチェットは恐ろしさのあまり声も出ない。


大蛇

「なんだ、怖いのか。

これはお前のイメージにすぎない。

俺の意識とリンクさせようか。


すると大蛇は氷のように溶け、ドロドロになり、

そのドロドロは再び人型になって固まった。


それは背中が曲がった小さな老人だが、瞳はまるで蛇とか爬虫類のようだった。

額には銀色に輝く飾りをつけている。


ウェルズ

「わしの名はウェルズじゃ。


ラチェットは大きく深呼吸した。


ラチェット

「ラ、ラチェット----。



ウェルズ

「エルフのできそこない、ラチェット。

俺を起こした責任を取ってもらおう。

お前の旅に私を連れて行け。

いいな。


ラチェット

「う、ウェルズさんを?


ウェルズ

「勝手に結界に入り起こした、お前が悪い。


ウェルズはラチェットを壁に追い詰めると手で逃げ道を塞いだ。


そして、しわくちゃの顔を近づけた。


ウェルズ

「ラチェット。返事は?


たまらずラチェットは


「は、はい。


と、答えた。


ウェルズは満足げにニヤリと笑い、自分の手のひらでラチェットの目を覆った。


その瞬間、ラチェットは夢から冷めた。


辺りは野宿した森の中だ。


二人の従者はもうおきて二ブラは固いパンをあぶり、

グラインダーは荷造りを始めていた。


二ブラ

「ラチェット様、目が覚め-----。

誰だ!


一人で眠っていたはずのラチェットの隣に、

薄汚れたローブをまとった背中の折れ曲がった老人が座っている。


グラインダー

「ラチェット様から離れろ!


グラインダーはすごい勢いで老人に襲いかかると掴んで投げた。


二ブラ

「何者だ!


二ブラはラチェットを背中に押しやって剣を構えた。



老人

「痛いのう。いきなり老人に何をするんじゃ。

わしはラチェットの友人ウェルズじゃぞ。

なあ、ラチェット。お前からもゆうてやれ。


ラチェット

「ウェルズさん!?


グラインダー

「友人だと?


二ブラ

「本当ですか?ラチェット様


ラチェット

「は、はい。

確かに一緒に旅をするとお約束しました。先ほど----。


グラインダー

「おい、じいさん。俺たちは遊びに行くんじゃないぞ。


ウェルズ

「ラチェットや、ラチェットや。


老人はよたよたと歩くとラチェットにしがみついた。


ウェルズ

「助けておくれ。あいつらがいじめるのじゃ。


そういうとラチェットの身体に甘えるようにすり寄った。


ラチェット

「二ブラさん、グラインダーさん、どうか私からもお願いします。

私がお世話をしますから。


老人は上目使いで瞬きしている。


二ブラとグラインダーは顔を見合わせて大きなため息をついた。


二ブラ

「しかし、馬がございませんよ。



その時どこからか裸馬がいななきながらやってきた。


ウェルズ

「おお、馬じゃ!


二ブラ

「きさま、魔導使いか。


グラインダー

「そうなのか!?俺、初めて見たぜ。


ウェルズ

「のんびりしてていいのかのう。何か近づいてくるぞい


グラインダーは地面に這いつくばって、耳をつけている。


グラインダー

「騎馬、20き。


二ブラはパンを袋に詰め、馬に乗り込んだ。

グラインダーもラチェットをじいさんからひっぺがして、

馬に乗せてすぐに走り出す。


二ブラ

「街道をそれてまくぞ。


グラインダー

「馬の速さが違いすぎる!追いつかれる!


追っ手が姿を現した。


服はカラフルな革製のポンチョ、

頭にはカラフルな紐を巻いている。


馬は独特の黒と白のブチばかりでものすごく早い。


グラインダー

「ああ、まずいぞ。草原の民だ。


次々に弓矢が放たれ、さすがに全部避けきれずにグラインダーの背に突き刺さった。


グラインダー

「ぐ----、


ラチェット

「グラインダーさん!


グラインダー

「くそ、毒矢だ。


グラインダーは馬の速度を落とし、気を失って倒れた。

二ブラはその隙に遠く逃げ去る。


ラチェットは馬からなんとか降りると苦しむグラインダーにとりすがった。


ラチェット

「グラインダーさん、しっかりなさってください!

ああ、どうすれば。


グラインダー

「お--にげください。


ラチェット

「嫌です!ああ、グラインダーさん!


グラインダーの顔はどす黒くなり、完全に意識は失われた。


ラチェットは大粒の涙を流している。


その時、ラチェットのそばに何か丸いものが転がってきた。

それはボールのようだったが、胴体から切り離されたウェルズ老人の首だった。



つづく







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