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胡散臭そうな男だな、というのが婚約者だという男を見た祐介の第一印象だった。
その男は、アルバートを見ると駆け寄ってきた。
「カーライル!どうしてこんなところに?」
「やあ、マホニー。大変な目にあったね」
ああ、と男は掌で顔を覆い、天を仰いだ。
「悪夢だよ。まさかメアリーが……私のせいだ」
「……そんなことはあるまい」
「いや、あの時メアリーを無理やりにでも引き留めておけば良かったんだ」
「……」
「ところでカーライル。そこの御仁はどなたかな?」
男の目線が祐介に向けられる。
「彼は、里見祐介、東洋からの留学生だよ。ユウスケ、彼はアレン・マホニー、僕の友人だよ」
「里見祐介です」
「アレン・マホニーだ。そうか、君がカーライルが熱心に支援している東洋人か」
「……」
どうやら貴族の中でも噂の種になってしまっているらしい。
祐介はアルバートを睨んだが、アルバートは素知らぬ顔でアレンを見ている。
「まあ、彼は僕の助手だから気にしないでくれたまえ」
「助手?」
「僕がこの事件を解決してみせようと思ってね」
「君が!?」
アレンの顔が驚きに染まる。
そして不自然な程狼狽え始めた。
「わ、わざわざそんなことしなくても良いじゃないか」
「何か不満なことでもあるのかい?」
「い、いや、そんなことはないが」
アレンは考えこんでいるようだったが、大きな声を出すのが憚られるのか、ぐっと低い声で言った。
「この事件は吸血鬼が関わっているような気がするんだ」
「吸血鬼?」
「ああ」
アレンは神妙に頷く。
「そうとしか考えられないだろう。メアリーが……あんなに傷つけられて」
アレンは俯いてそう答える。どうやら本気でそう思っているようだった。