そうだといいね
星空の綺麗な夜だった。
僕は生まれてからこの時まで知らなかったことだが、神秘的なものというのはとても美しいものなのだった。
だから彼女に一言だけ告げた。多くはいらなかった。たった一言だけが、大事なのだ。
「ありがとう」
単純な言葉だけど、大切な言葉だ。僕は、今までそれを知らなかったような気がする。
彼女は僕とは違って多くを語った。たくさんの言葉を連ねて、僕とコミュニケーションを図った。
「私たちの一生ってゴミみたいなものなのかもね。星空が光ってこの地球にそれが到達する頃には、たった百年しか生きれない私たちは皆死んじゃってる。むなしいよね。かなしいよね。なんでこんな当然のことなのに、こんなに悲しいんだろう。私は思うんだけど、きっとこの世界って地獄だよ。きっと前世で悪いことをしたからここに閉じ込められてしまったんだ。百年間の刑なんだ。だからね、せめてここが地獄だということを忘れられるように、星空のことなんて本当は忘れていたほうがいいんだ。全部、忘れれば、私たちは地獄も天国だと錯覚できるのかも。どうおもう?」
彼女の憂鬱を受け止めることは難しいと思った。こんな綺麗な星空にも地獄を見てしまう彼女は、きっと悲観的なのだと思う。だから可哀想なんだ。
でも僕は思う。きっとこの世が地獄だとしても、それは神様のちょっとした悪戯みたいなものだ。
だから。
「幸せって、案外近くにあるんだと思うよ。天国も地獄も、その人次第だよ」
そうかもしれない。そうじゃないかもしれない。
わからない。
だから、せめてあがきたい。そして神様にこう言ってやりたい。
「僕は言いたいんだ。ざまあみろってね」
「神様に?」
「いやそれだけじゃないよ。すべてにだよ」
「すごいね、君は」
「そうかな。単純明快なことじゃないか」
「私一人じゃ、そうは思えなかったな」
「思いが変わった?」
「うん。少しね」
「いろんな手段があるんだよ、きっと」
「そうだといいね」




