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19 攻め寄せる軍勢

19・攻め寄せる軍勢


 決行の日はやってきた。

 一応警察にも許可をもらって、僕らは集合地点である公園にスタンバッている。

 僕としては、あんなことをしてもみんな冗談みたいに受け止めるのではないかなあ、なんて思えるのだが、司上は妙に自信満々だった。

 それから、僕らにはちょっと変わった形のダーツが手渡されている。

 ひどく寸胴で、針の先端に穴が空いている。


「マッドPAを流し込むダーツだ。PERSもちょこっと混ぜてあるから、こいつは切り札だぜ」


 デモを止めにシェイプシフターたちがやってきた時のためのものらしい。

 ウィルスは即効性は無いが、マッドPAなら彼らの連携を乱す事もできるだろう。


「なんだよ、結局使うのか。危ないと思うんだけどなあ」

「そう言うなって。敵対する危ない奴は少ないほうがいいだろ?」


 それはそうだと思うが、こんな危険な手段を使うほどではあるまい。

 いや、どうだろう。

 いいのかな。

 人から言われるが、僕はそういう人道的方面には疎い。

 常識というものはあるのだが、うーむ。

 考え込んでいたら、今の僕のモラルの拠り所がやってきた。

 立夏さんである。


「はい、真崎さん。これは今日のお弁当です。紅鮭さんも、あまりで作ったものですけどどうぞ」

「ありがとう、立夏さん。開けてもいい? おおっ、アスパラのベーコン巻きかあ。こいつは旨そうだ」

「いやあ、すまんね奥さん。いや、将来的には義妹になるのかな、フフフ」


 紅鮭が気持ち悪い笑い声をあげている背後で、司上が物干しそうな顔をしていた。

 君はコンビニで買ってきなさい。

 そんなこんなで、ボーっと僕らが待っていると、じわじわっと人が増えてきた。


「あの、綿貫先生ですか」

「おっ! マジで綿貫いるじゃん」

「エッセイ読んでますよ! ドラマ化おめでとうございます!」


 どーもどーも。あ、撮影はご遠慮くださいっ。

 それにしても、どんどん集まる。

 集まってきては、みんなそこらここらに集まりを作っては、楽しそうに歓談している。

 僕はここで、用意していた旗をみんなに配った。

 デモというのは国旗を持ってやるものらしい。



「さあ、綿貫先生どうぞ」


 司上から拡声器を手渡されたので、僕は壇上に上がった。

 近所の酒屋から借りてきたビール瓶のケースである。


「皆さんこんにちは」


 こんにちは!と元気よく挨拶が返ってくる。

 僕の本を読んでくれている人たちも多いみたいだから、僕の乗りがわかっているようだ。


「今日はみんなで、デモをします。地図はこちらから配信してますのでアクセスしてください」


 みんな一様に携帯やスマホをいじりだす。

 大体全員ダウンロードが終了した頃を見計らい、


「この、A地点から、ゴールはC地点のビルになります。ここがマークのアジトですので、ここで抗議活動を行い、その後しばらくまったりした後で解散です。皆さん無事に家に帰るまでがデモです」


 はーい、と乗りよいお返事が返って来た。


「動画配信なんかは自由です。好きにやってください。ただ、バッテリーは各自で用意してくださいね。それから、危険な事があるかもしれません。その場合は各自の判断で避難してください」


 整然としたものである。

 一種のお祭りであったが、僕を前にした時、彼らはバラバラの個からまとまった群になった。


 将の器である。

 ぶぶぶぶぶ、と聞こえた気がしたが、誰もいない。肩には黒い粒が乗っていた。

 さあ、行こう。

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