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第二十話 鋼鉄の運命 ④



 計画の第二段階。それは直接飛空艇へと乗り込み、この戦いの首謀者と見られるホワイトを倒すこと。だがもう一つ目的がある。佐々木が命をかけて収集した情報によると、あの船の中に圭介の家族がいるとの事だった。それが祖父宗次郎か椿か、どちらであるかまでは分からなかった。

 捕虜としてなのか、あるいは高い技術力を無理やり使わされているのか。何にせよ、圭介の目的の内二つがあそこにはあった。

 飛空艇への突入は圭介のみが行うことになっている。それは、あの船が特殊な力場を発生させていることが原因であった。



「あの船は、端的に言ってしまえば私の能力で乗り込むことが出来ない状態にある。無論それは、通常の方法で突破することが出来ないという意味でもある。それがこの戦いを長引かせている原因だ」


「俺だけを行かせるってことは、つまり、俺だけが突破できる。ということですね」


「そう。あの船の周囲に展開されているバリアは特殊な磁場を作り出している。それはここから次元を越えてまで影響を及ぼし、あらゆる能力の透過を許さない、鉄壁の防護壁となっているのだ。そこで君の出番だ。君の量子演算器の情報解析能力で、あの磁場と同じ波形のものを作り出し、相殺する」



 佐々木は気絶しているPK1をやたら慣れた手つきで関節を外し、さらに複雑に縄で縛り上げている。これでは例え金剛力を誇っていたとしても、力が入らず縛めを解くことは出来ないだろう。ついでに装着している装甲も外そうとしたが、地肌にピッタリと吸い付いているために、外すことは諦めてしまった。無理に外せば肌の皮ごととれてしまう。



「ですけど、どうやって解析すれば」


「それを私に聞くのかい? 君は今、なんだって思い通りに出来るんじゃなかったか」



 圭介は佐々木の言葉で、ああそうだったとでも言うような仕草で、ポンと手を打ち合わせる。

 情報解析。あらゆる能力が圭介の意識を拡張していく。情報集積、解析は補助脳を介して行われる。量子演算器は未来をも予測する。その処理能力に持ってすれば、ものの数秒で解析することが可能だ。

 解析が終わると、ヤシロはすぐにジンライとフツノミタマを同期させて、圭介の周囲に力場を作り出す。脇で見ていた佐々木は、力場の影響が伝わってきたのか、顔をしかめてた。



「こ、こんな感じかな。まだ慣れなくて実感がわかないけど」


「……うむ、よし。名付けて次元フィールドと呼ぼう」



 切迫した状況にあって、佐々木はあくまでも自分のペースを崩そうとしない。あっけらかんとわけの分からないことを言い出した。



「こういうのは名付けるのが肝要なのだよ。名付けることでより認識することが出来る。君もこれから力を使う時は、なるべく名前をつけた方がいい。ちなみに私の能力はシンプルにジャンパーと名付けたぞ」


「そういうものなんですか……」


「名前を叫ぶと更に効果的だ。名付けは意味を与え、言葉は存在を与える。認識するというのはそういうことだ」



 ふと思い返す。片平教室のメンバーは、いったいどんな名前をつけているのだろうかと。チラリとアサギの方を見やる。彼女も自身の強大な力に、自分だけの名前をつけているのだろうか。



(帰ったら、聞いてみよう)



 帰る。それはつまり、全てに決着を付け、この戦いを終わらせるという事だ。何気なく思ったことだったが、それは思いの外圭介の心に重く響いた。

 ギュッと覚悟が決まる。あの場所には仇と家族が待っている。こんな馬鹿げた戦いなんて早く終わらせなければならない。そう決心する。



「どうやら準備はできたようだね。飛べるかい?」



 雰囲気の変わった圭介を敏感に察知し、佐々木が声をかける。



「はい。二人はこれからどうするんですか」


「そうだ、重要な事を言ってなかった。あの中に進入することができたら、まずはバリアの解除に動いて欲しい。そうすれば仲間を跳ばして直接乗り込むことが出来る」


「バリアの解除……」


「もしそれまでにホワイトと接触しても後回しだ。何よりもバリアの解除が最優先だ。いいね?」


「……覚えておきます」


「覚えておくだけじゃダメだ。ハッキリと宣誓してくれ。事は君一人の問題じゃないことくらい分かっているはずだ」



 ホワイトと接触して自分を押さえつけることが出来るのか。いや、出来るできないじゃない。押さえ付けなければならない。眼下では未だに戦いが続いていて、絶え間なく戦力が投入されている。それを打開する事ができるのは、今は自分だけしかいない。

 逡巡があったが、覚悟がそれを押しとどめた。



「分かりました。バリアの……解除を優先します」


「君には辛いだろうが、今はそれだけが頼りだ。私はこれから地上部隊の支援に回る。ついでにそこの鎧くんも地下で拘束しておこう」


「アサギさんはどうするんです?」


「彼女は……彼女はこれから独自に動く。私は私の役目を果たしに行くだけさ」



 因果律を操る彼女にとって、自分の身を守ることなど造作もないということなのか。

 病院での事が脳裏をかすめる。きっと異界から脱出できたのもその能力のおかげだったのかもしれない。だが、その後の彼女の疲労した姿は嘘ではなかった。もし、圭介が思っているものであったなら……。



(いや、大丈夫のはずだ。今は目の前のことに集中しなくては)



 圭介は意識を集中し始めた。自分が天高く舞い上がるイメージを強く持つ。鈍重ではなく敏捷な自分を描く。重力から解き放たれ、自在に飛ぶ自分を。

 徐々にイメージが形になってゆく。

 次の瞬間、圭介は地球上の誰よりも自由となっていた。




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