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栄木と和泉
テーマは『紅』でした。
大理石のように白く滑らかな肌。
そこだけ紅を引いたように赤い唇。
いつの間にかソファーで眠ってしまった和泉の顔を覗き込み、栄木はそっとため息を吐いた。
触れてはいけない果実ほど魅了されるのはなぜだろうか。
今、そっと唇を重ねても、彼は気付かないのではないだろうか。それならいっそ、ほんの少しだけ、触れてしまおうか。
そんな栄木の逡巡を知ってか知らずか、僅かな身動ぎと共に、和泉がふっと目を開ける。
「……栄木?」
ぼんやりと見上げる和泉の瞳は気だるげで、見とれる栄木はほんの少し反応が遅れた。
「顔ちかい」
「すみません」
慌てて退く栄木の様子に、なぜだか和泉は、子供のように屈託ない笑顔を浮かべた。