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栄木と和泉

テーマは『シート』でした。


 シートに凭れ、深く息を吐く。

 仕事が遅くなった日は、栄木の車で送ってもらうことの多い和泉は、助手席に身を沈めるなり、目を閉じた。

 栄木の運転だと、なぜか安心する。彼の運転技術もさることながら、隣に居るだけで、気が休まるのだ。どうしてそう思うのか、和泉には明確に答える術が無い。ただ、何となく、いつも何時の間にかそばにいて、何かと世話を焼いてくる栄木に、和泉は全幅の信頼をおいている。家族同様に思っているからなのか、和泉の特別な事情を全て承知しているからなのか、はっきりこれと言えるものを、和泉は思い付けなかった。

 ただ、なんとなく。

 いつも彼が、そばにいる。


 本社のあるメトロポリス・東京の中央に聳える巨大なタワーが見えなくなる頃、和泉は静かな寝息を立て始める。栄木はナビコンソールに手を伸ばし、洋楽中心のネットラジオから、インストルメンタルを集めた自分のプレイリストに切り替える。

 車内に流れるスローテンポのストリングス。

 栄木は和泉の横顔をチラリと見遣って、ふっと笑みを零した。

 どうやら、悪い夢は見ていないようだ。

 リニアの高架線の真下を行くハイウェイを、車は滑るように走る。一旦は下火となったタイヤ付きの自動車も、都市の至る所で振動に依る発電システムが配備された路面に改良された影響により、また需要が増えている。

 路面を走る僅かな振動が心地良いゆりかごになる。

 栄木はゆっくりと、アクセルを踏み込んだ。


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