王(ウォン)とミルラ
テーマは『ウィーク』でした。
ミルラは考古学者よりもファンタジー作家になった方が良いのではないか、と、時折思う。
ミルラ・ダンリーとジェームズ・王は幼なじみである。王の父と、ミルラの母が古くからの友人だった。家が近いこともあって、二人は小さい頃からよく遊んだ仲だ。いや、年下の王にしてみれば、よく遊ばれたと言う方が正しいかも知れない。
大学の考古学教室で院生をしているミルラは、夏休みの殆どを使って、教授のお供で発掘現場に行っていたらしい。王の顔を見るなり開口一番。
「私、細かい作業苦手なのよね」
「教授に同行してフィールドワークだと聞いていたはずだが……?」
王の困惑に、ミルラは不満げな顔で頷いた。
発掘調査を大雑把に言えば、掘って、直して、分析することだ。出土品の修復は重要な作業の一つだが、ピースが揃っているのかも定かでない立体パズルを組み立てるような、根気のいる作業でもある。
ミルラがせっかちな性格なのを、王はよく知っていた。
「まぁ、大変だったね。お茶でもどう?」
「ええ、いただくわ」
さも、当然と言わんばかりに、ミルラは王邸のリビングへとさっさと向かった。
王はこっそりとため息を吐き、有能な執事に目配せする。全てを承知している執事の白竜は、ミルラの好きなコーヒーとスィーツを用意してくれるだろう。
「あら、タツミ? 久し振りね!」
リビングから彼女の声が聞こえ、王は慌てて部屋に戻らなくてはならなかった。
ミルラが巽に何か変なことを吹き込みはしないかと、心配になったからだ。
いつでも、王の弱点は巽なのである。






