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巽とヒイロ

テーマは『トマト』でした。

 丸い、赤い、その実を、ヒイロは不思議そうに眺めていた。

ソファセットのガラステーブルの上に置かれた銀色のボウルの中いっぱいに、小さなトマトが盛られている。

 火竜のヒイロは、自分の身体より大きいボウルの縁にしがみつくようにして、中を覗き込んでいる。

 キュウと、小さな火竜は甲高い声で鳴いた。

「うん、真っ赤だね」

 ソファに寛いだまま、そんなヒイロを面白そうに眺めていた巽 幸星は、ヒイロの言葉に相槌をうつ。

 ドラゴニア・ドラゴンの火竜であるヒイロの言葉を理解出来るのは、彼のマスターと認められた者だけ。今は巽がマスターであり、ヒイロの言葉が解る唯一の人間である。遥か昔に地球に移住して来たと伝えられる彼らドラゴニアの神竜族は、昨今流行りの遺伝子操作で生み出された愛玩用の小竜とは違い、さまざまな超能力を持っている。テレパシーもその一つなのだが、何故か彼らは竜同志か、自らが選んだマスター以外とはテレパシーを通じさせない習性があるのだった。その代わりといっては何だが、彼らには人間の姿になる変身能力も備わっており、ジェームズ・(ウォン)邸の執事・白竜などは、風竜でありながら、殆どの時を人間の姿で過ごしている。勿論、その姿の時は普通に話も出来るどころか、英語も日本語も、恐らく他の幾つかの言語も、ネイティブもかくやというくらいに流暢の喋るのだ。

 しかし、ヒイロと、双子の兄弟のシュイロは、まだ若いせいか、上手く人間に変身出来ないらしい。何時だか試しに、巽の前で変身してみせたことがあったが、竜の羽と尻尾の生えた、悪魔みたいな格好になってしまった。あれには本人たちも凹んだようで、それ以来、巽は彼らが人間の姿になるのを見たことがない。

「チェリートマトだよ。知ってる?」

 ボウルの中から一つ摘まんで差し出すと、ヒイロは嬉しそうにパタパタと羽と尻尾を動かして、小さな前足でトマトを受け取った。

 その名の通り、チェリーくらいの大きさのトマトは、ヒイロの口と大して変わらない大きさで、竜は両手で抱えながら口の中に押し込んだ。

 モグモグと口を動かしながら、なにごとか呟いている。

「ふふ。美味しい?」

 巽の言葉に、ヒイロはまたモグモグ言いながら、尻尾を振った。

 どうやら、口に合ったようだ。

 巽は、自分も一つ摘まんで口に放り込む。トマトの香りと、チェリーのような甘さが口中に広がった。



おわーる。


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