言葉と態度
「えっと、どうしたの??」
自分の手を振り払った妻はすぐに後悔したように顔を歪ませると泣き出したのだ。
「いい加減にしてください。もうあなたなら私の家の力がなくてもやっていけるでしょう。別れても私の家がつてを失くすだけであなたにはメリットしかないじゃないですか」
そう、もう西園寺の財力はうちを上回っている。
もう離婚されても西園寺にとっては痛いところはない。
「離婚する気はないよ。なんで君のことも好きだし?」
「だから!!」
「別れる意味が分からないよ」
「……えっ?」
西園寺から今私のことを好きだという幻聴が聞こえたような気がするんですが!西園寺は困ったように首をかしげ私の涙を指で拭ってくれる。
その手つきは優しくて信じたくなってくる。
「だって、貴方には優奈さまがいらっしゃるじゃないですか…子供だって」
「うん、優奈と京本殿の間の子供がいるんだよ。優奈とは幼馴染だよ」
「天上の恋人って!!」
「うん、上手な演技でしょう」
そう言ってにこにこ笑っている西園寺の顔をはたきたくなったことは秘密です。
「そう思っていてもらったほうがこちらにはメリットがあったんだ。それだけだよ。といっても優奈のことは昔から面倒を見てきたからね。今の現状は心配なんだ」
西園寺が心配するほどに京本と優奈の関係は破綻している。
子供ができたのは跡取り関係に必要なものだからだろう。
京本は優奈を愛しているが、優奈はそうではない。
むしろ嫌っているようでそう考えれ今後その子供はそうなるのだろう…?
いろいろと考えてしまっている私に西園寺は急にその腕の中に引き寄せられた。
「今までにも優奈によく言われてきたこのなんだけど、女心に疎いようなんだ。言わなくもわかってもらえていると思ってしまう」
だから、君はもうわかってくれていると思っていたと西園寺が私の耳元に口を近づけて囁いてくる。
私はというと、急な展開についていけない。
「そういえば、僕は君に態度も言葉も示していなかったね」
申し訳ないと謝ってくるがその前に離してほしい。
そう思っても西園寺は今度は私を横抱きにすると歩き出した。
満面の笑みを浮かべながらその足は目的地に歩んでいく。
そう、私たちの寝室だ。
「で、どうしたら君のことが好きだってことは信じてくれるかな。態度も
言葉も示さないとね」
ベッドに私をゆっくりと降ろすと見惚れるような笑顔を浮かべて西園寺も上がってくる。
そして私は抵抗する暇もなく態度と言葉を好みでしっかりと味わうことになった。