97.ハンティング
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レオパルドとカーンシュタイン城跡の往路の中間地点には森がある。
魔王城と繋がるゲートを通って往復しているとこの森の存在が希薄になるが、あるものはあるのである。
森には食用となる動物等が生息しているが、森の奥まで行くと凶暴な魔物も生息しているので、近隣の住民も好んで奥にまでは行こうとしない。
レオパルドとクロノキア間の主要道路はこの森を避けるように作られている。
切り開く事も考えられたが、薮蛇になる事も考えられるのでその考えには至らずとなった。
ドラグノフお目当ての黒獣は、この森に生息しているらしい。
給仕姿の女性魔族が言うにはそうらしい。
それを教えてくれたコボルト族の彼女は、こげ茶色のセミロングの髪が風圧でボサボサに乱れているのに構わず、
さながらとても大切な物を再び取り戻せたような。
地面に四つん這いでへたり込みながら安堵の溜息を付く。
「あっ、あああぁぁぁ……! も、もう死んじゃうかと思っ……」
「んー、何処にいんのかな? 森の中か?」
恐怖の余り泣き出す一歩手前の彼女の様子などいざ知らず、目標を探して周囲を見渡すドラグノフ。
ドラグノフに摘み上げられた後、彼女はドラグノフと共に大空に飛び立つ。
レオパルドを後にし、早く食事の続きにありつきたいドラグノフは「ドラグノフの感覚で疾走」した。
この世界で空を飛ぶ事が出来るのは、翼を持つ者か飛行魔法を操れる者だけである。
空を飛ぶという体験を出来る者はそう多くないだろう。
当然コボルトである彼女も空を飛べる訳が無い。
そんな彼女が、色々規格外のドラグノフの隣に同伴し、ドラグノフの猛スピードに晒されたのだ。
勢い良く空に放り投げられ、そのままの速度で地面にぶつかるような光景が広がった事だろう。
これが怖くない訳が無い。
「さっさと行こうぜ? 森の中なんだろ?」
へたり込んだままの彼女を小脇に抱え上げ、森の中に向けて鼻歌交じりにまい進するドラグノフ。
「じ、自分で歩けますから! 降ろして下さい!」
また先程みたいに勢い良く飛ばれるのではないのかと想像し、必死に足をばたつかせて許しを請う魔族の娘。
冷静に考えれば枝葉が生い茂り、至る所に木々が密集している森の中を飛べる訳が無いのだからその心配は無いのだが。
無いはずである、多分。いくらドラグノフといえど木々を薙ぎ倒しながら飛ぶなんて事は。
「そうか? 早く行こうぜ、お日様が高い内に帰りたいしな」
要望に応じ、素直に彼女を降ろすドラグノフ。
意気揚々と槍を振りながら、森の中へと足を進めていった。
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森へと入るドラグノフ達に、大木の上から狙いを定め、鋭く光る眼光。
森の枝葉が日の光を覆い隠している為か、その姿は薄闇に溶け込み、上手く視認出来ない。
目標に狙いを定めた彼は、ドラグノフ達が更に森の奥へと歩を進めるのを見守る。
急いては事を仕損じる、彼は焦らず獲物が罠に掛かるのをじっくりと待つ。
そして、獲物に感付かれないように声ではなく、微弱な魔力を用いて奥に控えた仲間に合図を送る。
仮に目標が魔法に関する知識がある者でも、魔力量を抑えてあるのでそう易々と感知される事は無い。
獲物が奥に立ち入り、木々に阻まれそう簡単に逃げられなくなった所で襲い掛かる。
仲間に合図は送った、後は機を見て集団で囲えば逃げられない。
彼は歯をギラつかせながらニヤリと笑う。
また新たな同志が増える、彼はそう考えた。
――次代魔王陛下、サクリフ様を称える同志が。
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