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132.新たな世代、変わり行く人々

今回で最終回!

そして今日は僕の誕生日!

祝ってくれる人なんている訳無いぜ!

こんな所を見る位なら下を読んだ方が良いと思うよ!

 世情に置いて行かれた時は、酒場に立ち寄る事にしている。

 特に夕方位が一番良い。

 この時間帯は、一仕事終えた人々で込み合っており、賑わっている。

 当然人の口数は多くなり、自然と世間の事情も多数飛び交う。

 その話に聞き耳を立てながら、今の世界の情勢を頭に入れるのだ。


「お待たせしましたー。イカスミ飯とトマトジュースです、ごゆっくりどうぞ!」


 可愛らしいウェイトレスの服に身を包んだ給仕が、注文した料理を運んでくる。

 イカスミ飯はイカスミを米と混ぜ、更に焼きイカを刻んでそこに混ぜ込んだ料理だ。

 言うまでも無く、全体的に黒い。

 トマトジュースは……うん、普通にトマトジュースね。

 一口飲んで、そう感想付ける。

 軽くイカスミ飯に口を付けた後、人々の喧騒をバックコーラスに地図を広げ、そこに目を落とす。

 世界は今、大きく分けて四つの勢力に区分されているようだ。


 魔王の統治する魔族の地、レオパルド王国領。

 ファーレンハイト王家が名を連ねる最大勢力、聖王都ファーレンハイト領。

 熱砂地帯に居を構えた、ラーディシオン自治領区。

 厳冬の地を切り開き出来たと言われている、ロンバルディア共和国領。


 んんー? やっぱり聞き覚えの無い国が出来てるわね。

 相変わらずファーレンハイトは歴史が長いなとは思うけど、ラーディシオン地方とロンバルディア地方に国なんて無かったわよ?

 新しく建立された新興都市って事なのかしら、多分そうなんでしょうね。

 この街といい、引き篭もっていた間に今までに無い程に世界が様変わりしているのを痛感するわね。


「おい、ねーちゃん。メシ食う手が止まってんぜ?」

「あら、そういえばそうね」


 地図に目線を向けている間に、知らぬ間に対面の席に腰掛けている中年の人物に指摘される。

 言われてみれば一口手を付けて置き去りにしてたわね。


「腹いっぱいだってならこれから俺と一緒に遊ばねぇか? こう見えても俺ぁこの界隈じゃ顔が利くんだ、悪いようにはしねぇよ」

「折角のお誘いだけど遠慮しておくわ、やらなきゃいけない事が沢山出来てしまったし」

「まぁまぁ、そう言わずにさぁ」


 席から立ち上がり、私の肩へと手を掛け、酒臭い赤ら顔を近付ける男。

 ああ、何時の時代にもこういうチンピラはいるのねぇ。

 本当、何とかならないのかしらコレ。

 肩に乗せられた手をピシャリと払い除ける。


「邪魔だって言ってるのよ。女漁るなら売春宿にでも行きなさい」

「おいおい威勢の良いねーちゃんじゃねえか。ますます俺好みだぜ、だったら勝負と行くか?」

「勝負? 何のよ?」

「この街の下層部じゃ腕っ節がルールだ、文句があるなら闘技場でケリを付けるのが常識。知らずにこの下層部に来たとは言わせねぇぜ?」


 あぁ、そういえばそんなルールがあるらしいわね。

 そして挑まれた勝負から逃げる位ならそもそも下層部に来るなと。

 でもまだこの街の様子は見足りないしなぁ。

 面倒臭い。


「だったらそこの美しいお嬢さんに代わって俺様が受けて立ってやろうか?」


 会話に割って入る、若い男の声。

 声のした方向を見ると、そこには一人の少年の姿。

 年齢は15歳前後位だろうか? 身長はかなり低い、私の肩までの高さ位しか無さそうだ。

 ツンツンに尖った濃いブロンドの短髪で、その全身を黒い皮のコートで包んでいる。

 不敵な笑みを浮かべ、流れるような動作で私と男の間に割って入り、男と私の距離を遠ざける。

 まるで私を守るように。


「おいチビスケ、大人の会話に入るもんじゃねえぜ?」

「だあーるぇがチビスケだアアァァ!?」


 その自らの言葉を言い終える前に、少年は行動に移した。

 風切音がする程に早く鋭い鉄拳を、中年の男が反応出来ぬ程の瞬速で正確に鼻っ柱へと叩き込んだ!

 それだけでは済まず、中年の男はその一撃で宙を舞い、店内の床を転がるように滑って行く。


「殴るぞテメェ!」

「師匠、もう殴ってるでござるよ」


 御尤もなツッコミが、通路を挟んで隣の席で麺料理をすすっている女性から飛び出す。


「困ってる人を放っておけないライゼル様、優しくてステキですよ!」

「当然だろー? 俺様、世界中のレディの味方ですからー」

「じゃ、レディの私のお願いもちゃんと聞いてくれるんだよね?」

「お前がレディー?? ……お前はまずその可哀想な胸を」


 言い終わる前に、そのライゼルと呼ばれた少年が中年同様店内の宙を舞う。

 明らかに手加減無しの一撃を受け、黒衣の少年は板張りの壁に頭部から突っ込み腰まで突き刺さった。


「すいません、こっちの事は気にしないで下さい」

「あら、そう? 何だか良く分からないけどまぁそうさせて貰うわ」


 同様に隣の席に腰掛けていた薄い青髪の少女が、こちらに詫びるように話し掛けて来る。

 知らない内にお隣さんのゴタゴタに巻き込まれちゃったみたいね。

 それにしてもラーディシオン自治領区にロンバルディア共和国、か。

 どんな国か見に行かないとねぇ。

 新しい刺激は、心が死なない為には必要だし。

 何だか随分と面白そうな世界になってるみたいだしね。

 こういう時だけは、長生きするもんだなぁーって思うわ。



―――――――――――――――――――――――




 希望や愛、無念や絶望。


 酸いも甘いも入り混じり、感情渦巻く混沌とした世界。


 三千世界を巡り、数多の夢が世界を動かす。


 果てなく続くその先に待つのは、光か闇か。


 今はまだ、誰もその結末を知らない。





 夢は続く。


 この地に足跡を刻み続ける。








大邪神ちゃんと魔王さま


             Fin

くぅ~疲れましたw これにて完結です!


このお話はここで終わりだけど、

これで終わった訳では無いんだ

プロットちゃんと立て終わったらまた書き始めるよ

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