革命会議
少し経って店の中に入ったユナを待っていたのは、目をつり上げたキシルだった。
「遅え。ユナ遅えよ」
目をつり上げていた所で分かった事なのだが、キシルは怒りを声に含ませていた。
「あ…。ごめんなさい…」
「なんだ? 何かあったか?」
「いえ…。それよりも作戦会議を始めましょう」
「あ、ああ。けど、お前本当に大丈夫か?」
「はい…大丈夫、です…」
キシルはユナの力無い返事に不安を拭いきれなかった。
「キシルさん。早くしましょう」
「そ、そうだな…」
「キシルさん、ユナさんこちらです」
そう言われて店の奥へ行くミラを二人は追いかけた。
「始めます」
キシルは頭の中に多少の不安を漂わせながら、革命の作戦会議は始まった。
「これが一応の流れです」
精密な機械に革命の手順とも思われれるそれが写し出された。
「まず、二人はこの街に地下がある事をご存知ですか?」
「地下?」
ユナは何も思わなかったが、キシルは驚きを隠せていなかった。
「そうですよ。この街の中心にある一際高い建物。あの建物から地下に行けるんです」
「そうなのか。んで? 地下には何があるんだ?」
「ノーデットナイトメア」
「ノーデットナイトメアが…? この街の地下に?」
「ノーデットナイトメアって何ですか?」
ユナが口を開いた。
「ノーデットナイトメアってのはな、死にもしない壊れもしないはるか昔に作られた兵器の総称でな。ノーデットナイトメアは全部で七十二体いると言われている」
「死にも壊れもしない、か…」
ユナはなぜか何とも思わなかった。せめて、なんで自分はこんなにも何も思わないのだろう? と思うくらいだった。
「あの、いいですか?」
「ん? なんだユナ」
「この作戦変えた方がいいですよ」
「なんでだ? 悪い所は……分からねえが」
「まず、この国は革命を起こすべきでありません」
は? キシルとユナを含めた全員がそう思った。
「えっ!? ちょっ!? 私、何言って!?」
「そうだよ、お前何言ってんだよ」
「ち、違います! 今のは口が勝手に…」
ユナはいいかけて、途中でうなだれた。
「ユナ?」
「……さい」
「なんか言ったか? ユナ」
「うるさいっての! ってかあんたら分かってんの!? この国の地下と地下に眠るものたちを破壊しようなんてして。自殺もいいところじゃない!」
「ユ、ユナ?」
「なによ!? なにかあるの!?」
「お前の喋り方も気になる所だがそれは置いといて、どういう事だ自殺もいいとこって」
「ノーデットナイトメアは壊れる。そうだよ、あいつらは壊れるんだよ。壊れないのはコアだけ」
「そ、そうなのか?」
ここにいる全員が初耳だった。
「うん、それでそのコアを人間が触るとそのコアに飲み込まれその人間が新しく、ノーデットナイトメアになる」
「なっ…。そんなことって…」
くそっ! キシルは悪態をついた。
「つまり、ノーデットナイトメアは人間だ」