革命と意思と商人と
「は?」
「だから、革命です」
革命。キシルは色々な街でその運動に幾多も参加して来た。ある時は革命を成功させるため、またある時は失敗させるために。
「ああ、はいはい。やめておけ、お前の歳で参加していい物じゃーー」
「子供扱いしないでください!」
急に出された声の大きさにキシルとユナは驚いた。
「そりゃあキシルさんから見れば私は子供なのかもしれません。でもだからって…」
段々とミラの声は小さくなっていった。
「…だからってこんな国を放って置ません!」
久しぶりだな。この暑苦しいような正義感は…
少し昔の事を思い出しながらキシルはミラに聞いた。
「お前がそこまで言うんだ。何があるんだ? この国に」
「この国が闇を作り出してるんです…」
「闇?」
キシルは闇という言葉には嫌な思い入れがあった。しかし、それはキシルだけではなくユナもミラも嫌な思い入れとして心の奥底に閉まっていた。
「闇ってアレか? あの闇か?」
闇。数年に一度、一日だけ現れる現象である。この現象は世界の半分を飲み込みその中の人間を含む生き物を一定の割合分殺す。その辺りから闇は人喰いや暗殺ならぬ闇殺やら言われたりする。
「はい。その闇です。そしてこの国は今、最強の闇を作り出そうとしているんです」
「何?」
「その名は完全版闇。この闇はこの国を除く全ての土地を飲み込みその中の人間を含む生き物を殺すんです」
完全版闇。つまりは全範囲、即死系の現象。それを回避する事は…無理ゲーだな。
そうキシルは思った。
「だから、完全版闇が完成する前に私は革命を成功させないといけないんです」
「……キシルさん。私は参加したいんですよ。私の両親を殺した闇を作っているのがここならば!」
「そうだな。あいつをあの状態にしたのも闇だ…。分かった参加するぜ。狂ったような革命に」
まあ、もう狂い過ぎていて終わっている革命なのかもしれないが…
キシルの胸の中は色々混じり合っていた。
「詳しい作戦は店の中で話しましょう」
「ああ」
キシルはまた店の中に入っていった。
しかし、ユナは何故か入りたくなかった。なんだかこの店に入ってしまうと何もかもが後戻りできなくなりそうだ。と思ったからだ。退くなら今しかない。けれど、ユナには退く気なんてさらさらなかった。
「お父様、お母様。どうか私に力を」
闇には裁きを…
そう、信じてもいない神様にユナは祈った。
「あれあれぇ? ユナちゃんじゃあないかなぁ?」
「え?」
不意に呼ばれたので私は驚いて声の主を探した。
「あっ…」
「ひっさしぶりだなぁ〜。元気だったかい?」
声の主はラーシェ・プラズマ。ユナの従兄にあたる人で旅商人をしている。ゆったりな口調が何とも言えない人だ。
「ラーシェさん? どうしてここに?」
「ん? んー、偶然、いや必然かなぁ?」
「ラーシェさん、いつからこの街に?」
「この街からはもう二年くらい出てないよ…」
「え?」
ユナは二つの事に驚いた。二年? ラーシェは旅商人なのに…。もう一つは、口調がゆったりで無かったからだ。
「二年間、この街に囚われ続けた。俺はこの街を出たいのにな…」
「どういう…?」
「んー? ふふふふ、悪いねぇ、失言だったみたい」
そういつもの笑顔で言って、ラーシェは人ごみの中に消えていった。
「囚われる?」
ユナはその意味を理解できていなかった。