我検索中されど思考中 1(自分の居場所をしる)
森を抜けた先にあったものはアスファルトの道路でもなく、また同じ火山灰混じりの道が続いていた。
歩く事10分程で森は草原に序所に姿を変え、畑が見え始め、街の光源が加わり始めた。
だが、そのとき俺の内心は困惑と恐怖が渦巻いていた。
畑、畑、畑、なんでこんなところにあるんだ。この冨士の駐屯地の裏手で畑やってる所なんてあるはずない。
まだここは国有地だぞ。有るわけないんだ。
それに、光源があるようで全くない、なんだうっすらしたあの光、よく見ると電柱もない、見える光はまるで減光したライトの明かりか?なにかの統制訓練でワザと外に光が漏れないようにしてるのか?
頭の中に次から次に疑問が湧き出してくる。感情で頭がパンクしそうになる。目の前がチカチカする。
壊れそうな頭を冷やすため、大きく深呼吸しながら周辺を確認する。
ここがどこであれ、とにかく自分のいる場所を確認し知らなければ、もしかして自分のしらない山村があったのかもしれない。街にいけばなにかがわかるはずだ。自分で自分を勇気づけ、重い足取りだが前進を再開する。
畑を抜け、光源がしっかりと確認できる距離に近づけ、そして俺の困惑は最大になった。
まるで時代劇のように木の柵で周りを囲み、道の出入り口には門がある。そして門番が立っている。
もしかして、俺は映画の撮影現場にでもきたのか?困惑しつつ取り敢えず門番している人にでも聞けばなにか解るかもしれないと思い尋ねる。
「すいません、ここどこでしょうか?」
相手はうっすらと半分目をつぶっていた。そのため、こちらに気がついていなかったのかもしれない。
俺が話すと慌ててその場kら跳ね飛ぶと腰に付いていた剣を抜く
「てめえ、何もんだ?なにしに来やがった?」
門番はさっきの態度を誤魔化すように大きな声でこちらを威嚇し剣を向け怒鳴ってくる。
「あの、すいません道に迷ってしまって今いる場所が知りたいんです。映画の最中か分かりませんが教えて欲しいんですが」
「何いってんだおめえ映画ってなんだ、ここはオオツキ村だ、それ以外に村なんて有るはずねーだろが」
門番は威嚇の姿勢は崩さず一応知りたい事は答えてくれた。オオツキ村?村か、そうなると俺は全く別の知らない所を歩いていたのかってーーーーーーーーーーー、オオツキ村ってなんだよそんなのこの当たりにはねーぞ、いったいここどこだよ?
一人頭を抱えて、項垂れる。
門番はこちらの様子に困惑しているのか一応剣は下ろしたが気は抜いてない。眼光だけこちらに向けながらしっかとした口調でいう。
「お前いったいなに者だ?この村に何しにきた?答えろ」
「自分は陸上自衛隊10師団33連隊九条守士長です。行軍の際に道に迷いました。ここは静岡県側ですか?それとも山梨県側ですか?」
正直に自分の置かれている状況を話すと相手も一瞬考えたのかこちらをみて一歩後退し、剣をしまう。
「お前さんのいっている自衛隊っていうのはよくわからないが迷ったのは理解できた。取り敢えずお前さん一人か?もっと沢山いるのか?」
「いえ、一人だけです。できれば電話か何か貸していただきたいのですが」
「お前さんが一人だけなのはわかった。で、電話とはなんだ?」
話が噛み合っていない、何言ってんだこいつ、電話だよ電話、いくら映画の撮影でもそこまでボケル必要ないだろコノヤロウ。
内心いらだちを募らせながら口調を強くする。
「電話ですよ、いくら映画っていってもこちらはマジで迷子で困ってるんです貸してください。映画の最中に来てすいませんが早く連絡しないといけないんです。」
こちらの口調にかなり困惑しながら門番はじと目でこちらを睨む。
「おまえさんが何をいってるのか今いち判らん、映画だの電話だの知らん事を言われても困るんだが、取り敢えず、迷って気が立っているかも知れんが落ち着け、な、」
やさしく諭す様に言う言葉だが、俺からしてみればその言葉は困惑しか生まない。
「すいません、もっと上の監督かプロデューサーを呼んでいただけませんか?お願いします。」
こちらの言葉に門番はさらに?マークを追加して答える。
「さっきからお前さん知らない言葉をいうな、監督とかプロデューサーってなんだ?そんなものはこの村にはおらんぞ、お前さんの連れか?」
埒があかない、この門番役相当のプロかここまでするのかプロって、内心困惑から一種尊敬を持つがいい加減疲れてきたので取り敢えず中に入らせてもらう事にした。
「それでお前さんこれからどうすんだ?本来の目的地はどこなんだ?」
門自体は普通に入ってもよいと返事がきたので入るが門番が尋ねてくるので一応答える。
「明日には冨士駐屯地にいきたいのですが方向と距離を教えていただけませんか?」
「なあ、さっきからお前さん知らんことばかり言うんで困るのだが、富士駐屯地とはなんだ?」
「いや、富士駐屯地です。自衛隊の富士駐屯地、もしかして知りません?」
「すまんがしらんな、この当たり一体にはこの村以外ないぞ、確か10里程行った所に別の村はあるが徒歩だと一日はかかるぞ」
一応分かりましたと伝え村の中に入る。門番は寝るなら村長の家に行って旅人だと言えば軒先位貸してくれるぞと言っていた。それにははいはいと手を振り答える。
村の中は木造平屋だての家が軒を重ねている。屋根は板葺で藁葺きではない。内心ここはなんの映画の撮影所だと思い、ちらちら周りを見ながら歩く、周りには人影がなく明かりもなく閑散としていた。
少し歩くと他の家と比べ大きな家が見えてきた。村長の家はやっぱ豪華だなと思いながら一応間違っていないか確認のためにノックをする。
すると扉の一部が横に滑り誰かが顔をだす。
一瞬目が点になる。その顔は茶髪に赤い瞳、なのに着ている物は着物風、いったい何の時代劇だ?色々考えるがこの子一人で作品が特定出来なくなる。
「あのー、あんまりじっと見つめられると困るのですが。。。」
女の子はちょっと恥ずかしいのか目を逸らすが、こちらは正直思考中でそれどころではなかった。
「あのすいません、このセットで一体なんの時代劇を撮っているんですか?題名教えて戴けませんか?」
こちらの問いに女の子はきょとんとした顔をした。もしかしてこの子もか?
「すいません、映画ってなんですか?時代劇もどういう意味ですか?」
さっきの門番と同じ答えが帰って来て、こちらの苛立ちは高まる。
「ねえ、頼みます、こっちは結構切羽詰まってるんです。部隊とはぐれ、いまごろみんなして自分を捜索しているはずなんです。早く帰らないと大事になるんです。お願いします。連絡が取りたいんです電話を貸してください。」
頭を90度に曲げこちらの誠意をしっかりとアピールする。もしこれでまだ演技を続けるのならもう暴力に訴えるのも選択肢に入ろうとしていた。
しかし、結果は門番と同じだった。
「すいません、私無知なんで電話がどんなものなのか解らないんです。あなたが必死なのは様子で判るんですが・・・すいません」
どうなってんだ?いくら演技が必要っていってもこちらは国家公務員で国家機関のモンだぞ、いくら何でもこの扱いはおかしくないか?自衛隊に恨みでもあんのか?
そして、俺は一つの嫌なとても嫌な考えが浮かんだ。この選択肢は自分を拘束する、限定する、逃げ場を失なわせる、そんな考えだった。でも聞かないというもう選択肢はでてこなかった。
「すいません、今年の年号は幾つですか?」
「年号ですか?年号は確か東方歴1404年だったと思います。」
なにも疑問に感じる事なく少女は答える。
その返答にこちらは固まる。
ん?なんだ東方歴って?普通は日本史の年号って文明とか応仁とか時代事にあるだろ。なのに東方歴1404年ってなんだよ。聞いた事ないぞ。
「すいません、後ここの県名教えてもらえませんか?」
この問いをしたとき多分俺の声は震えて不自然に聞こえたと思う。正直この質問もしたくなかったのだ。
「私たちの国の名前はメイジンですよ、よく聞く名前でしょ?」
聞いた事ねーよそんな名前の国、日本じゃねえのか、いったいどこの地名だ?
「最後に聞きたいのですが、私は隣国からきたのですが道中にこの村の方に大勢の軍勢がせまってきているのみたので知らせようと急いできたのですが、なぜみなさん何も準備していないのですか?」
今言ったのは全て今考えた嘘っぱちである。嘘であるがこの反応で自分の考えは確信に変わる筈だ。
「ほ、ほんとですか?隣国といいますとコウライ国ですか?ありがとうございます。」
俺の言葉に彼女は慌てて中に戻ろうとする。しかし、俺は女の子の肩を引き留める。
女の子は俺の手を離そうとする勢いで中に戻そうとするがこちらも戻らせまいと踏ん張る。
「なんで肩を掴むのですか?あなたの情報は聞きました。今すぐに父に話さなければなりません。離してください。」
少し苛立ちの篭った声でこちらに視線を向ける女の子に俺は告げる。
「今のは嘘だ。ちょっと様子を見ようと思っただけだ、軍勢なんてきていないよ」
こちらの声に一瞬気配が変わった。落ち着いたのかなと思ったがそれだけではないようだ。
女の子は視線に若干苛立ちを込め、こちらを睨む。
「あなたなんでそんな嘘いうんですか?もし今の話を私が父に話ていたら大騒動になっていたところですよ?」
「嘘にも言っていい嘘と悪い嘘があります。その位弁えてください。」
女の子の声は怒りが混じっていたがそれは甘んじてくける。受ける事ぐらいしか出来ない。
急に膝に力が入らなくなった、背中の背嚢が一気に重くなる。そして全身に重くのしかかる。しかし、それを支える力はなかった。
俺はそのまま倒れ意識を失った。




