スターメモレアル☆たくと
「くらえ!トラウマー!」
「キャーッチ!!」
俺の名前は赤井正太郎、24歳。ヒーローをやっている。
今日も今日とて「美少女ヒーロー☆めもり」に変身して戦っている。
ちなみに今日の対戦相手は「過去に甲子園出場をかけた試合で平凡なセンターフライを捕れずにサヨナラ負けを喫した」という思い出を持つ青年から生まれたトラウマーである。
「んな簡単にキャッチされてたまるかあああー!!」
「キャーッチ!!」
「くそ!せっかく一撃入れたのに字面的にまるで攻撃を受け止められたことになってやがる……!」
初期に出てくる1話完結の雑魚キャラみたいな奴なのに!
「先輩」
「ぎゃあああ!!」
ちなみに今はどこからともなく現れた7歳年下の女後輩マネージャー、森めもり(17歳)に腕を後ろへクイッと曲げられて――
「って無理無理無理!ギブギブギブギブ!!」
「何やってるんですか」
「おもいっきりこっちの台詞じゃねーか!」
「容姿と口調がまるで合っていませんが」
「……いや、独り言くらいいいだろ」
それはまさしくお前のことだろう、とは口が裂けても言えない。
腕が裂けるからな。
「よくないです」
そう言って森は俺の腕を後ろへクイッと曲げてあと数センチで後頭部と密着――
「って無理です無理です無理です!」
「無理です?」
「いやできます!できますできます!だから腕は元の位置に!」
「では早く倒して下さい、こんな雑魚キャラのテンプレにどれだけ時間かけてるんですか」
時間がかかっているのはお前のせいだ、とは口が裂けても言えない。
腕が裂けるからな。
「いやそうは言ってもだな、めもりの必殺技ってそもそもあるのか?」
「あります」
「あるの!?」
「ヒーローですから。あるに決まっているでしょう」
「ぐっ……久しぶりにまともなことをさも当然のように言いやがる……!」
「何か?」
「いえ、特にありません。続きを」
「変身ベルトの中央にある星を右に回して下さい」
「こうか?」
森の言った通り星を回してみると、なるほど、90度横に回転した。
というかそんな機能あったんだ。
「おお……!?」
すると星が光り始めた。
「一体……どんな武器が……!!」
「……」
「……」
しかし一向に武器は現れない。
「……何も起きないけど」
「掛け声が必要です」
「そこまで律儀なの!?」
「右手を空にかざし、『集まれ星の光!スターメモリアルタクト!』と叫んでください」
ええー!?
何!?そこまでやらなきゃいけないの!?
「そうしなければ必殺技を放つための武器は現れません」
確かにヒーローが武器を出す時は決まって叫ぶ。が、しかし……。
「ぐぬぬ……」
しかし……!24歳にしてそれを叫ぶなんてそんな黒歴史確定なことを……!
「先輩」
くっ……だが必殺技なしでこの先手強い敵が現れたとて太刀打ちできるかどうかわからない……。
何より、このままでは俺は(森に)やられる……。
「先輩?」
「……ええーい!やったらああああああああああ!!」
「あ、集まれ星の光!スターメモレアルタクトおおおおおおお!!!!」
叫び終わると同時に変身ベルトの星が強い光を放ち、天を貫く。
「こ、これは……」
そして俺の右手には、ロケットランチャーが現れた。
そう、これがスターメモレアルタクト。
通称、SMAWロケットランチャー。肩撃ち式、多目的ロケットランチャーである。
盛大に台詞を噛むことで現れたこの非常に現実的な武器によってトラウマーは一撃で倒れ(というか吹き飛び)、俺は森に一撃で倒された(というか殺されかけた)のであった。