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無能王女と最強勇者伯~やめろ私は玉座に興味ない~  作者: たけすぃ


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最強勇者伯と無能王女1

 むかしむかし、だけど伝説になる程には昔じゃなくて、俺が爺さんから聞いた話では、みたいな感じで語られる程度の昔。

 俺のご先祖様は世界を救った。


 そう、皆ご存知の勇者だ。

人類の最終決戦兵器、理外りがい埒外らちがいの混ざり物。

 そうであれと皆が思ったから、そうであったというバケモノ。


 一応は騎士だったという話だが、たぶんこれは後から盛られた嘘で、本当は良くて兵士か傭兵で、真実は戦争に駆り出された平民だろう。

 そのご先祖様は人類種とは思えない強さで魔族と戦い、やがて魔王を倒した。


 人類はかなり危機的状況だったらしく。最後はご先祖様一行を魔王の前まで送り届けるのに大陸中の国が一致協力して纏まったらしい。

 そして勇者は魔王を倒し、世界は平和になった挙げ句にそれじゃあ折角だしこのまま一つの国家になるかという事で、このトゥロウサン王国が出来た。


 一つの国家になってしまえば、魔王を倒した後の世でどの国が勇者を保有するか悩まなくて良いよね、という事なのだろう。

 かくしてご先祖様はトゥロウサン王国で侯爵の爵位と領地を与えられ、末永く幸せに暮らしましたとさ、メデタシメデタシ。


 アッハッハ、死ね!

 まるで人を物扱いである。


 舐めてんのかって思う。

 俺の曽祖父そうそふは何を考えていたのかと思う。


 そんな道具か何かのように扱われたら俺ならキレる自信がある。

 でも俺は知っている。三代前はまだ家族の話がキッチリ伝わる程度の昔だ。


 勇者はデッカイ借りを作ってしまったのだ、現在のトゥロウサン王国の王家、フレネス家に。だから戦った。

 そして、その借りを返せないまま貴族に列せられた。


 おかげで今も借りを返せと体よく使われるのが、我が家トリック侯爵家だ。

 勇者伯なんて呼ばれる事もある。


 そして長男だからという理由で最もこき使われるのが――、この俺ショウ・トリックだ。

 本当はショウ・アブ・トリックだが、トリック家は家に爵位が付属する特殊な貴族なので、“~の(アブ)”が完全にただの無駄になっている。


 なので俺は省いてる。

 いやどうでも良いなこんな話。


 俺は捩じ切った小型竜種の頭を地面に放り投げた。

 何が悲しくて十六歳の若者が、国からの依頼で竜と戦わないと駄目なのか?


 しかも小型の、騎士団どころか冒険者でも倒せそうな竜である。

 完全に良いように使われている、しかも三代前の曽祖父が作った借りで。


 俺はもっと自由に生きたいのだ、青春したいのだ。

 何故にこんな他の奴でも出来そうな事で人生を浪費せねばならんのだ?


 納得できないイライラは、これが思春期かと思ったがたぶん違う。若者なら普通に先祖の借金で自由が無いのは腹が立つはずだ。

 正当な怒りだ! 若者に自由を!


 これも全て先祖が悪い、勇者が悪い。借りなぞ作るからだ。

 討伐証明の為に竜の死骸を倉庫ストレージに放り込みながら、いつもの文句を言っていたら、この日は良いことを思いついた。


 今の俺を苦しめているのが、先祖がフレネス王家に作った借りであると言うのなら。

 俺がその借りを返せば良いのではないのか?


 そうか、その通りだ。返そう先祖の借りを。

 俺が返済してしまえば良い、綺麗さっぱり借りを返してしまえば良い。


 そうすれば俺は自由になれる。

 いやぁこれ凄い思いつきじゃないか? どうして今まで誰も思いつかなかったんだろう? これが学校の成績には現れない個人の才能って奴か。


 俺は見え始めた自由への道に、心をウキウキさせながら家路についた。

 ここは辺境なので、走って帰らないと入学式に間に合わない。


 入学しても、どうせ王国から押し付けられる雑用でまともな学生生活なんて出来ない、そう思っていたが俄然学校が楽しみになってきた。

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