真実の鏡と絆の勝利
闇の勢力の本拠地、地下要塞の奥深く。葉月と八重、カイル、ミリアは、八重の救出を果たし、最終試練の場へ向かっていた。石造りの通路は冷たく、松明の光が揺らめく。壁には黒い鏡のシンボルが刻まれ、闇の気配が漂う。葉月は「叡智の書」を握りしめ、八重の手を離さない。
『八重が無事でよかった。でも、最後の試練……真実の鏡。導き手が言った「姉妹の秘密」って何?』
コミュ障の彼女にとって、未知の真実を直視するのは恐怖だった。分析好きな頭が、悪い想像を抑えきれない。
八重は姉の手を握り返し、震える声で言う。
「葉月、なんか怖いね……。でも、姉ちゃんと一緒なら、平気だよね?」
ポニーテールの先が揺れ、彼女の想像力が不安を増幅する。
『物語のクライマックスみたい。でも、事故の記憶が……怖い。』
カイルが剣を構え、先頭を歩く。
「よお、怖がってる場合じゃねえ! 闇のボスをぶっ倒して、鏡の前で願いを叶えるんだろ?」
彼の陽気な声が、通路に響く。ミリアが杖を握り、冷静に言う。
「導き手の予言……真実を直視するって。覚悟して、みんな。」
通路の先、巨大な扉が現れる。黒い鏡のシンボルが輝き、扉が自動で開く。内部は広大な円形の広間――鏡の間。中央に巨大な鏡が浮かび、周囲を黒い霧が包む。鏡の表面は水のように揺らめ、葉月と八重の姿を映す。
『これが真実の鏡……。』
葉月の心臓が早鐘を打つ。
だが、鏡に近づく前に、幻影が現れる。霧が渦を巻き、姉妹の過去を再現する。高速道路の事故現場。ひしゃげた車、割れたガラス、血だらけの両親。父の動かない体、母の不自然に曲がった首。八重の血まみれの顔が、葉月を見つめる。
「葉月……怖いよ……。」
葉月は膝をつく。
『やめて……見たくない!』
コミュ障の根源が蘇る。幼少期のトラウマ――小学校の発表会で、クラスメートの前で声が出せず、笑われた記憶。
『あの時から、人前で話せなくなった。八重と本の世界に逃げた。』
涙が溢れる。
八重も幻影に震える。
「姉ちゃん……事故の時、姉ちゃんの手を握れたから、死ななかった気がする。でも、私、いつも頼ってばかり……。」
彼女の記憶も蘇る。幼い頃、姉に隠れて泣いた夜。
『葉月が強いから、私、弱くてもいいって思ってた。コミュ障でも、姉妹でいれば平気って。』
幻影の中で、両親の声が響く。
「葉月、八重、もっと積極的に生きなさい。友達を作って。」
姉妹は目を合わせる。葉月が震える声で言う。
「八重、私、いつも本に逃げてた。コミュ障で、友達作れなかった。でも、八重がいたから、寂しくなかった。本当は、八重が私の勇気だった。」
八重が泣きながら応える。
「姉ちゃん、私も! おっちょこちょいで、失敗ばかり。でも、姉ちゃんの分析が、私を支えてくれた。双子の絆が、私の全部だよ。」
姉妹は抱き合い、幻影が消える。真実の鏡が輝き、試練が進む。
だが、広間に黒い霧が現れ、闇のボスが登場。巨大な影の怪物、黒い鏡を手に持つ。「来訪者よ、鏡の力は我々のものだ!」 声が広間に響き、霧が襲いかかる。
カイルが剣を振り、叫ぶ。
「葉月、八重、鏡を目指せ! 俺たちがボスを抑える!」
ミリアが(ファイア・ストーム)を放ち、霧を焼き払う。だが、ボスの力が強く、一行は押される。
葉月は叡智の書を開く。
「弱点は鏡! 壊せば倒せる!」
八重が想像力を働かせる。
「物語のラスボスみたい! 姉ちゃんと一緒に魔法を!」
姉妹が手を繋ぎ、コンビネーション魔法を準備。
「エテル・ライト・バースト!」
光がボスの鏡を直撃。だが、ボスが反撃し、闇の波動が一行を襲う。カイルが傷を負い、ミリアが倒れる。葉月が叫ぶ。
「みんな、諦めないで!」
コミュ障の彼女が、リーダーシップを発揮する。
カイルが立ち上がり、剣を振り上げる。「葉月、八重、信じてるぜ!」 ミリアが最後の魔法を放つ。「ヒール・ライト!」 一行が再結集。姉妹の魔法が再び輝き、ボスの鏡が砕ける。
「グアア!」
ボスが崩れ落ち、霧が消える。
鏡の前に到達。葉月と八重は、成長した自分たちを映す。
『コミュ障だった私たちが、仲間を信じ、戦えた。』 鏡が囁く。
「願いを唱えなさい。真実は、異世界での経験が現実を変えること。」
葉月が八重と目を合わせ、叫ぶ。
「家族を蘇らせて! お父さん、お母さん、私たちを私たちの世界に帰して!」
鏡が光り、一行は白い霧に包まれる。だが、その瞬間、闇の残党が乱入。
「鏡の力を渡せ!」
一〇体以上の影が襲う。大規模バトルが始まる。
葉月が叫ぶ。
「みんな、力を合わせて!」
八重がフレイム・トラップで敵を足止め。カイルが剣で突進、ミリアが風魔法で援護。姉妹は最後のコンビネーション魔法を放つ。
「エテル・ツイン・バースト!」
光と炎が融合し、残党を一掃。
光が収まり、鏡が消える。一行は現実世界へ。事故現場で目覚め、両親が生きている。姉妹は涙で抱き合う。
『成長した私たちなら、変われる。』