表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/12

真実の鏡と絆の勝利

 

 闇の勢力の本拠地、地下要塞の奥深く。葉月と八重、カイル、ミリアは、八重の救出を果たし、最終試練の場へ向かっていた。石造りの通路は冷たく、松明の光が揺らめく。壁には黒い鏡のシンボルが刻まれ、闇の気配が漂う。葉月は「叡智の書」を握りしめ、八重の手を離さない。

 

『八重が無事でよかった。でも、最後の試練……真実の鏡。導き手が言った「姉妹の秘密」って何?』 

 

 コミュ障の彼女にとって、未知の真実を直視するのは恐怖だった。分析好きな頭が、悪い想像を抑えきれない。

 八重は姉の手を握り返し、震える声で言う。

 

「葉月、なんか怖いね……。でも、姉ちゃんと一緒なら、平気だよね?」 

 

 ポニーテールの先が揺れ、彼女の想像力が不安を増幅する。

 

『物語のクライマックスみたい。でも、事故の記憶が……怖い。』

 

 カイルが剣を構え、先頭を歩く。

 

「よお、怖がってる場合じゃねえ! 闇のボスをぶっ倒して、鏡の前で願いを叶えるんだろ?」 

 

 彼の陽気な声が、通路に響く。ミリアが杖を握り、冷静に言う。

 

「導き手の予言……真実を直視するって。覚悟して、みんな。」

 

 通路の先、巨大な扉が現れる。黒い鏡のシンボルが輝き、扉が自動で開く。内部は広大な円形の広間――鏡の間。中央に巨大な鏡が浮かび、周囲を黒い霧が包む。鏡の表面は水のように揺らめ、葉月と八重の姿を映す。

 

『これが真実の鏡……。』 

 

 葉月の心臓が早鐘を打つ。

 だが、鏡に近づく前に、幻影が現れる。霧が渦を巻き、姉妹の過去を再現する。高速道路の事故現場。ひしゃげた車、割れたガラス、血だらけの両親。父の動かない体、母の不自然に曲がった首。八重の血まみれの顔が、葉月を見つめる。

 

「葉月……怖いよ……。」

 

 葉月は膝をつく。

 

『やめて……見たくない!』 

 

 コミュ障の根源が蘇る。幼少期のトラウマ――小学校の発表会で、クラスメートの前で声が出せず、笑われた記憶。

 

『あの時から、人前で話せなくなった。八重と本の世界に逃げた。』 

 

 涙が溢れる。

 八重も幻影に震える。

 

「姉ちゃん……事故の時、姉ちゃんの手を握れたから、死ななかった気がする。でも、私、いつも頼ってばかり……。」 

 

 彼女の記憶も蘇る。幼い頃、姉に隠れて泣いた夜。

 

『葉月が強いから、私、弱くてもいいって思ってた。コミュ障でも、姉妹でいれば平気って。』

 

 幻影の中で、両親の声が響く。

 

「葉月、八重、もっと積極的に生きなさい。友達を作って。」 

 

 姉妹は目を合わせる。葉月が震える声で言う。

 

「八重、私、いつも本に逃げてた。コミュ障で、友達作れなかった。でも、八重がいたから、寂しくなかった。本当は、八重が私の勇気だった。」

 

 八重が泣きながら応える。

 

「姉ちゃん、私も! おっちょこちょいで、失敗ばかり。でも、姉ちゃんの分析が、私を支えてくれた。双子の絆が、私の全部だよ。」 

 

 姉妹は抱き合い、幻影が消える。真実の鏡が輝き、試練が進む。

 だが、広間に黒い霧が現れ、闇のボスが登場。巨大な影の怪物、黒い鏡を手に持つ。「来訪者よ、鏡の力は我々のものだ!」 声が広間に響き、霧が襲いかかる。

 カイルが剣を振り、叫ぶ。

 

「葉月、八重、鏡を目指せ! 俺たちがボスを抑える!」 

 

 ミリアが(ファイア・ストーム)を放ち、霧を焼き払う。だが、ボスの力が強く、一行は押される。

 葉月は叡智の書を開く。

 

「弱点は鏡! 壊せば倒せる!」 

 

 八重が想像力を働かせる。

 

「物語のラスボスみたい! 姉ちゃんと一緒に魔法を!」

 

 姉妹が手を繋ぎ、コンビネーション魔法を準備。

 

「エテル・ライト・バースト!」

 

 光がボスの鏡を直撃。だが、ボスが反撃し、闇の波動が一行を襲う。カイルが傷を負い、ミリアが倒れる。葉月が叫ぶ。

 

「みんな、諦めないで!」 

 

 コミュ障の彼女が、リーダーシップを発揮する。

 カイルが立ち上がり、剣を振り上げる。「葉月、八重、信じてるぜ!」 ミリアが最後の魔法を放つ。「ヒール・ライト!」 一行が再結集。姉妹の魔法が再び輝き、ボスの鏡が砕ける。

 

「グアア!」 

 

 ボスが崩れ落ち、霧が消える。

 鏡の前に到達。葉月と八重は、成長した自分たちを映す。

『コミュ障だった私たちが、仲間を信じ、戦えた。』 鏡が囁く。

 

「願いを唱えなさい。真実は、異世界での経験が現実を変えること。」

 

 葉月が八重と目を合わせ、叫ぶ。

 

「家族を蘇らせて! お父さん、お母さん、私たちを私たちの世界に帰して!」

 

 鏡が光り、一行は白い霧に包まれる。だが、その瞬間、闇の残党が乱入。

 

「鏡の力を渡せ!」 

 

 一〇体以上の影が襲う。大規模バトルが始まる。

 葉月が叫ぶ。

 

「みんな、力を合わせて!」 

 

 八重がフレイム・トラップで敵を足止め。カイルが剣で突進、ミリアが風魔法で援護。姉妹は最後のコンビネーション魔法を放つ。

 

「エテル・ツイン・バースト!」 

 

 光と炎が融合し、残党を一掃。

 光が収まり、鏡が消える。一行は現実世界へ。事故現場で目覚め、両親が生きている。姉妹は涙で抱き合う。

 

『成長した私たちなら、変われる。』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ