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星の子供達

 僕等は久し振りに、本当に久し振りにこの場所に帰って来ていた。この開けた見晴らしの良い丘の上の草原は、地球の丸みを実感するには格好の場所だ。地平線なんて言葉がどんなに馬鹿げた物か、ここに居れば良く分かる。空と地を分ける境目が、きれいな弓型になっている。


 シートを敷いて、皆で持ち寄った食べ物やら飲み物やらを所狭しと並べて、誰に遠慮する事もなく、僕等は思う様、大いに語り合ったものだ。


 


 遠くに目をやれば、片側は折り重なりながら延々続いていく丘陵が見え、もう片側には、陽の光を浴びて、煌びやかに輝いている海の世界。丸い線に沿って、あんなにたくさんの水が地面にへばりついている様が面白くて、思わず歓声を上げると、誰かが飲みかけのコップを傾けて、宙に止めて見せた。



「ほら、こうすると水は自然と丸くなる。それと同じだよ。」


「でも、」


 別の誰かが海を指して文句を言う。



「こっちの方は水は地面にへばり付いているだけじゃないか。」



言われた方は、ゆっくりと水をコップに戻すと、言った。



「これだけ大きけりゃ、」



煙草に火を点け、煙を輪に吐いて続ける。



「水も土も大して変わりゃしないさ。」



 別の方向には、鉄骨をあれやこれやと組み合わせた遊園地が、遠くでミニチュア細工みたいに忙しなく動いていた。その中でひときわ目立つ観覧車だけは、止まってるみたいな動きでゆっくり動いていたけども。



 この場所で遊ぶことに飽きて来ると、皆思い思いの方向に散って行って、各々世界の端から端へと足を延ばし、北や南、西へ東へと取り寄せた物を見せ合って、自慢し合う。


 遊び疲れてその辺りに横になって、雲の流れを追って時を過ごしたり、そんな僕らに興味津々なのか、この世界を包んでる天球がゆっくりと降りてきて、やがて地面と挟まれる形になるのを感じながら昼寝したりと、各々気ままに時を過ごす。



 ただ、こうなって来ると、気が緩んだせいか、あちこちで問題が出て来て、寝相の悪い誰かが、足を伸ばし過ぎて、その先の丘陵を蹴飛ばして元あった処からずっと奥に追いやってしまう。おかげで、夕日が沈むところを見失って、何時まで経っても暗くならず、その後訪れる筈だった星空を楽しみにしていた誰かが怒り出して大騒ぎになったり、僕に至っては、ぼんやりしていた所為か、ついうっかり観覧車に手を伸ばしてカラカラ無意識に回していた物だから、さあ大変。それに合わせて、空が目まぐるしい勢いで昼になったり夜になったりと、周りは気の休まる暇もありゃしない。



「おいおい、余り無茶をするものじゃないよ!」



 誰かが堪らず声を上げる。



「なあに、構うもんか。」


 直ぐにまた別の声が上がる。



「そうさ、どうせ誰も気付きやしないさ。」


「そう僕ら以外はね。」


「何といっても僕等は、」


最後にに僕が締めくくる。



「星の子供達なんだから。」





おしまい


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