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こちら地球レーディオ:ペンギン局

 南極のとある場所。そこだけ雪も氷も無く、石混じりの地面が剥き出しとなった、半球状に抉れたその場所は、傾斜の強く、一度迷い込んだら二度と抜け出す事の叶わない巨大な蟻地獄を思わせる物だった。



 そんな周りと隔絶した地に、一羽のペンギンの変わり果てた骸が打ち捨てられた様に転がっていた。乾き切ってミイラ化したそれは、恐らく、仲間たちから逸れ、当てもなく彷徨う内に運悪くこの地に迷い込み、きつい傾斜に阻まれ、為す術も無くそのまま命を落とすしかなかった。



 小さな命の声に耳を傾ける者も無く、それでもその最後の一息の瞬間まで、ただ空を見上げながら来る筈もない助けを呼び続ける事しか出来ずに。



 巨大なアンテナの形状に似たこの地に降り注ぐ星々の光に交じり微かに届く宇宙線は、反射し、一所に集まって再び元来た宇宙に向けて勢いよく放たれる。



 それは永遠に近い時を彷徨い続けるのだろう。遥か遠く、空の向こう側、星々の世界を旅し続け、何時か天文学的な確率で受け取る事の出来る存在に行き会う迄、その孤独な旅は続いて行くのだろう。



 その中に微かに込められた、遂に聞き取られる事の無く終わった必死の呼び掛けが、今も何も存在しない空虚な空間に伝わって行く。



「アロー、アロー、こちら地球。ボクの声が聞こえますか、聞こえますか、聞こえますか……。」




                               終


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