復讐のはじまり
キーンコーンカーンコーン……。
放課後を告げるチャイムが鳴り、俺は門の外で遥花を待った。遥花は、二ヶ月前から付き合い始めた彼女だった。五分ほどたって、遥花がやってきた。
「あ、遥花。一緒に帰ろう」
「あ、ごめん快斗。今日塾だから無理。今度塾のない日に一緒に帰ろ」
「あ、ごめん……」
最近遥花の様子が変だ。最初は塾通いも応援していたが、最近はあまりにも遥花の態度がそっけなくて困っている。いつもならあきらめて一人で帰るが、今日は違う。なぜなら、今日はバレンタインデーだからだ。最近の遥花の様子を心配した俺は、もう一度振り向いてもらおうと、チョコを用意した。これを塾帰りの遥花にサプライズで渡そう。きっと喜んでくれるに違いない。
俺は遥花の塾が終わる時間に遥花の家の前に立っていた。あと数十分したら遥花が来る頃だろう。
しかし、いくら待っても来ない。終わる時間が一回りほど過ぎた八時頃、玄関のドアが、ガチャリと開いた。
「……!?」
そこに立っていたのは、遥花と、遥花と腕組みをした俺より年上だと思われる男だった。明らかにカップルといった雰囲気だった。
「えっ、あっ! 快斗、どうしてここに……?」
「……いや、バレンタインデーだから……、はい、これ」
俺はチョコを渡して立ち去った。
翌日、俺は教室でため息をついた。
「どしたの?」
声をかけてきたのは、隣の席の永瀬さんだった。
「いや……」
「遥花のこと?」
「……うん」
彼女と友達であった永瀬さんは、こう続けた。
「詳しく話してみな」
そうして、俺は一部始終を話した。
「あちゃー、やっぱり話すべきかな」
「なんのこと?」
「……昨日のこと。実は、遥花、浮気してる」
「はあ!?」突然の告白に、俺は動揺を隠せなかった。
「で、ででも、お兄さんとかの可能性は……?」
「ない。あいつ、意気揚々と自慢してた。ほんと、バカだよね」
遥花は別のクラスだが、永瀬さんはよく遥花のクラスに遊びに行っている。が、それを聞いた途端、俺の目から大粒の涙が溢れ始めた。
「ごめん!急に言われても困っちゃうよね」
そう言って、永瀬さんは俺の背中を擦ってくれた。
だいぶ落ち着いて、俺は顔を上げた。
「大丈夫?」
「うん、だいぶね」
「こんなときは、つらいことなんか忘れてリフレッシュしよう。ねえ、快斗くんてマ○クラやってる?」
「うん。やってるよ」
「じゃあさ、今日帰ったらフレンド申請して、サーバー教えるから一緒に遊ぼ」
「いいね。やろう」
こうして、俺と永瀬さんは通話をしながら毎日ゲームをして遊ぶ仲になった。
「そういえばさ」ある日のこと。
「遥花とはどうなったの?」
「あれ以来全然話してないけど」
「ならよかった」
「どしたんだよ?」
「いや、遥花の浮気の自慢が最近もっとひどくなってきて……、他の女の子にも自慢してるんだよね」
「ヤバいなあいつ……」
「うん。ほんとに。そこでなんだけどさ」
永瀬さんは言った。
「遥花に復讐しない?」
俺は同意した。