『カッター』
◇『カッター』
カードパックの開封作業には刃物があると便利だ。
通常、カードパックには素手でも開封しやすいような切れ込み等の仕掛けがある。
しかし万に一つも力加減を間違えてカードを傷めるリスクを考えれば、やはり刃物がほしい。
「虎門さん、カッターを貸してくれないかな?」
喫茶店のお手伝い中の虎門さん。
ふんわりとしたエプロンドレスがよく似合っている。かわいい。
今の時間は客足とぼしく、手が空いている様子なので声をかけてみる。
「よかよー、ちょい待っとってね~」
新弾のブースターパック開封をこれからはじめるという時に準備不足だと俺は反省する。
ここは虎門さんの自宅に隣接する、喫茶店だ。
カッターのひとつやふたつ、借りるくらい問題は……。
「これでよかー?」
刃物だ。
まんまる、大きくて、回転する、鉄製の。
ピザ用であるという一点を除いて、虎門さんの手にしたそれは正しくカッターだ。
「それは」
「ピザカッター」
「これは」
「カードパック」
「それを、これに、どう使うんだ……!?」
「あ~、う~ん、そやね~」
虎門さんはうーんと小首をかしげて、長考に入る。
虎門さんは長考しがちだ。
目に見えて、頭の回転が遅い。のんびり、とぼけている。
「そやったらこぎゃーんしてみたらどーね」
コルク製のコースターにカードパックを置き、まな板代わりにしてピザカッターを使う。
すると案外に切れ味はよかった。
敷物が必要でこそあれ、ハサミより使い勝手がいいかもしれない。
「いける、いけるぞピザカッター!」
「お~、冗談のつもりやったとに案外いけるもんたいねー」
「わかりづらいボケだな!」
コロコロスパッ。コロコロスパッ。
ピザ生地を効率よく切るための調理器具だけあって、なかなかいけるピザカッター。
しかし作業をつづけるうちに最大の欠点に俺は気づく。
「……これさぁ」
「どしたとー?」
「ピザ、食いたくなるんだが」
「へい、ご注文はピザですか?」
にこっと微笑む虎門さん。かわいい。
まんまる笑顔の虎門さんはピザカッターのようにきらりとまぶしかった。