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トレカよわよわ虎門さん   作者: シロクマ
【EP1~EP18】
1/21

『深夜開封』           ※【挿絵アリ】

◇『深夜開封』

 金曜深夜、午前零時すぎのファミレスで。

 俺と虎門さんは山積みになったとある“箱”を前にして互いに財布の紐を開いた。

 闇取引だ。


「お約束の品たい」


「……確かに。シュリンク包装も破られてない、新品だ。釣りは取っといてくれ」


 俺は一万円札を数枚、虎門さんに渡した。

 虎門さんはちろっと舌で指先をねぶって「ひー、ふー、みー」と念入りに確かめる。


「よかよー、これでそいは公知くんのもんとよ」


「ふっふふふ……」


 俺は笑った。この“箱”を手に入れた。


 トレーディングカードゲーム。その入手困難な予約商品の“箱”が五つ。

  この“箱”は希少なカードだけでなく、特製スリーブなど備品がついてくる限定生産商品だ。


 俺は虎門さんにも抽選販売に応募してもらい、当たったら高値で買い取る約束をしていた。

 購入は一人三箱まで。四店舗に応募して、俺は全滅、虎門さんは二つ当選した。

 虎門さんはちょっとしたラッキーガールだ。


「さぁ――開封だ!」


「開封や~」


 念願が叶ったのだ。こんなにうれしいことは滅多にない。

 あとは“引き当てる”のみ。


 十数分後……。


「あー、爆死たいねー」


「なぜだ、なぜ出なかった……! 【運命と牢獄の女神バスティーユ】、一枚も……!」


 お目当ての品が当たらず、俺はテーブルに突っ伏して絶望の沼に沈んだ。

 するとまねっこするように虎門さんもぺたんとテーブルに突っ伏して、横顔を覗き込んできた。


 にへっといたずらげに微笑んで。


「女神さまに嫌われとっとかもねー、こいつ彼女おるーって」


「はは、そりゃまいったな」


「どんまい、どんまい」


 俺はカードを片付けて、ファミレスのメニューを開く。

 するとおもむろに虎門さんは自分用にとっておいた最後の“箱”を取り出して、開封。


「あ、これ? 【運命と牢獄の女神バスティーユ】いうとは?」


 燦然と輝く超絶美麗カード。


 それは希望の光。

 そして絶望の闇。


 親しき仲にも礼儀あり。

 愛しき仲にも交換あり。


 俺は追い諭吉を覚悟して、財布に手を伸ばしたが、しかし。


「はい、あげる」


「――女神だ」


「うん、女神とよ?」


 その時、虎門さんの微笑みはプラズマシークレットレア仕様の女神様よりまばゆかった。

 虎門さんは俺の素敵な彼女だ。


挿絵(By みてみん)

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