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ゴーレムさんゴーレムさん  作者: 九重 まぶた
33/33

エピローグ

 いかにもな荒地に、いかにもな古城。黒いシルエットに蝙蝠群が飛び回る。不吉な風が、不安を運んでくる。そんな城の中の奥に玉座が一つ。

 玉座の前に三つの影。

 三つの影は玉座に座る人影に跪く。


「それで四天王が一角、アザリーが、そのゴーレム使いに倒されたと」


「はっ」


「そうか……。まあよい。替えはいくらでもおる。よいか、まずはそのゴーレム使いを草の根を搔き分けても、探し出し、殺せ。我が魔王軍の障害はすべてな」


「「「はっ」」」


 四天王達が魔王の命を受けたとき、古城に隕石が落下したような衝撃に石床が揺れた。


「なにごとか!」


 四天王が立ち上がり大扉を向かって言い放つ。それはその先に待機しているはずの部下に対して発した言葉であった。


 大扉がぎぎぎーっと開かれる。

 そこに姿を現したのは、一人の少女と一体のゴーレム。


「見つけた。あなたが魔王さんね?」


 他の四天王も立ち上がる。


「貴様何者だっ」


「私? 私は石神ラビ。ご都合高校の二年、石神ラビ。好きなものは、可愛いもの集めと、海外ドラマと……、ゴーレムさん。あとは――プロレスごっこ! ねえ? 遊びましょう?」


 玉座の前に突如現われた少女のその不吉な空気によって、魔王の表情がぴくりと動く。

 そして、古城に爆発音と破砕音、あらゆる破滅の音と阿鼻叫喚の叫び声が響き渡った。



                  エピローグ


「…きて、らび……び」


 暗闇の中、誰かが自分を呼ぶ声が聞こえている。


(私を呼ぶのは誰?)


 混濁した意識のなか、地震が起きたように体と一緒に意識が揺れる。


「んん……、だ、れ?」


 肩を誰か揺すっているのがわかる。声は……。


「起きてラビ? ラビ?」


(ああ、親友のモブ子だ……。なんだろう? ちょっと慌てた声?)


「ラビ? 先生、先生っ」


(……、せん、せい? あれ? 私、何してたんだっけ……っ)


「――先生っ?」


 がばっとラビは顔を上げる。はっと見回せば、そこは見知った教室の光景。クラスメート達の苦笑いの顔。モブ子も苦笑い。

 机には影が落ちている。

 ゆっくり見上げると、そこには角田先生の角刈りがぴくぴくと動いている。


「いしがみ~、この角田先生の授業中に居眠りとはいい度胸だな~」


 ラビも思わず苦笑い。


「廊下に立ってろー!」


「はいいーっ」


 教室内に笑いが起きる。

 いつの間にか眠っていたようだ。最近、夜遅くまで起きているせいだとラビはちょっと反省した。教室の窓からクラスメートが顔だし、くすくす笑っている。

 ラビは頬を膨らませプイッとそっぽを向く。

 窓の外はもうすぐ夕焼けに染まる頃合。お昼ごはんを食べていい感じにまったりして寝てしまったというのもあるだろう。五時間目の終わりごろは要注意である。

 チャイムが鳴り、先生には平謝りをしてようやく解放される。

 六時間目も終わりのチャイムが鳴り、学校が終わる。


「ラビ、帰ろっ」


 いつのものようにモブ子とモブ江が放課後の買い食いに誘いに来る。

 ラビは二人にもじもじと顔を赤らめる。


「その~、今日は、その都合が悪いといいますか……」


 二人はきょとんと顔を見合わせる。


「石神! 迎えにきたぞ」


 教室の入り口には池目君の姿。二人はじと目をラビに向けてきた。


「ちょっと、ラビー、いつのまに池目君とー」


「そ、そんなんじゃないのっ」


「そんなんじゃないって、この状況は言い訳無用よ! もう、ほら池目君待っているでしょ。いきなさいよ」


「ごめーん」


「約束、池目君のお友達を紹介しなさいよ」


 モブ子とモブ江はラビに詰め寄りブーブーと抗議する。


「わ、わかったよ~。じゃ、じゃあね、行くね」


 ラビは今だ子鳥が親に餌をねだるように文句を言っている二人に別れを告げ、池目君のところに駆け寄る。

 二人は学校の校門を潜り、裏山へと向かう。

 そこには、異世界への扉が開かれていた。


「あっ、そうだ。ゴーレムさーん」


「御意―っ」


 ちゅどんっと二人の元に着地する。


「いきましょう!」


「御意」


 二人と一体は異世界への扉へと姿を消していく。


「そうだ、池目くん。今日のバトルコロシアムの対戦相手は誰だったっけ?」


 池目君は手帳をパラパラと捲り、メガネの位置をなおしつつ答えてくる。


「今日は、魔王からの再再再再挑戦だな。ついこの間、石神のゴーレムにボコボコにされたのに懲りずによく挑んでくるものだ」


「きっと、前よりも強くなっているのよ魔王ちゃん。よーし、ゴーレムさん今回も暴れまくるわよ~」


「御意」


「でも、夜更かししないように今夜は一回きりの試合ね、池目君」


「もちろん。我が世界のチャンピオンに無理はさせられないからな」


 視界が拓ける。


 そこは乗っ取った魔王城を改築させたコロシアム。

 中央の闘技場では、カミルとアザリーの試合が行なわれていた。

 ラビが魔王をゴーレムさんのプロレス技でギタギタに打ち倒した後、ラビが提案したのだ。もし、この世界の覇権が欲しいのならば、私のゴーレムさんとプロレスごっこをしましょうと。

 そこから魔王の無間地獄が始まったのだが、それに賛同した他の魔族たちもバトルコロシアムに続々と参加を始め、このような形に行き着いたのだった。


「さあ、ゴーレムさん。私たちも楽しみましょう!」


「御意」



                   終わり

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