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ゴーレムさんゴーレムさん  作者: 九重 まぶた
30/33

魔臣ゴーレム

 そこは光に満たされまるで幻想の世界が広がっていた。

 散りばめられた星屑のような光が宙に浮き、空へと登っていく。夜空に浮かぶ星と重なり境界は消え、まるで星屑の中に迷い込んだようだった。

 池目君は呆然とその光景に佇でいた。


「キレイ……、池目君は私にこれを見せたかったのね」


「石神……」


 泉から七色の光が湧き上がっている。

 粒子がラビの元にじゃれつくように集まってくる。


「あれ? きゃっ、やだ、何これ?」


 ラビは体を包んでくる光の粒子にくすぐったそうに笑う。

 ラビに集まる光に池目君は言葉を漏らした。


「やっぱり、君は、選ばれし者だ。ぼくの目に狂いはなかった」


 ラビには何のことかよく分からなかったが、この光景どこか覚えがあった。とても幼い頃ここに来たことがあるそんな気がした。そしてそれは、見た目の綺麗さとは違った辛い記憶。

 でも、池目君がこちらを見つめてきているのがわかったので別の意味でドキドキしてきた。


「貴様がゴーレム使いか?」


 声は空から降ってきたようにおもえた。


 ラビはきょろきょろと周囲を見回し、二人の魔族に目を止める。二人は緊張した面持ちで顔をぶんぶんと振る。

 気のせいか? と視線を戻そうとする。


「上だ」


 ラビは顔をあげる。

 目に飛び込んできたのは、大きな黒い岩の塊の上に豆粒のようなモノが動いているのが見えた。


「ふわ~、ずいぶん高いところにいるわねあの人~。 ねえ、池目君」


 ラビが隣を見ると池目君は顔を真っ青にガクガクと震えている。


「どうしたの? もしかして寒いの? 私はそんなことないけども。池目君寒がりだったりして」


「ち、違う……、石神、君には見えていないのか? あれが乗っている物体を――」


「??」


 ラビは改めて誰かが乗っている物体に目を向けた。

 そして、ぎょっと目を見開いた。

 大きな黒い岩はよく見れば、人型をしており、乗っている誰か隣の大きな塊には眼光がある。それは見上げるほどのどでかいゴーレムだった。


「でっかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ」


 ラビは心の底から素直に驚きの声をあげた。


「ふわ~、こんな大きなゴーレムさん初めて見た~。このゴーレムさんはあなたのゴーレムさんですかー!?」


 ラビは肩に乗っている豆粒のような誰かに手を振る。


「そうだ。私の魔臣ゴーレムよ。世界最強のゴーレムだ!」


 ラビは耳に手をあて「ふむふむ」と頷く。


「ふぁわ~、私以外のゴーレム使いさんも初めて見ましたけど、なによりこんな大きなゴーレムさんは初めて~とーっても大きいですねー!」


 ラビは手をぶんぶんと振る。

 それに応えてというわけではないだろうが、誰かがゴーレムに命じ、どでかい腕が大気を押しつぶすように肩のところまで持ち上げられる。

 豆粒のようなモノがピョンっとその手の平に飛び移り、頭上からどでかい腕が下がってくる。

 ずずんっと腕が大地を揺るがし着地する。

 そして、ピョンっと先ほどまでは豆粒だった何者かが降りたつ。

 パープルの髪がフワリと波打ち、パープルのスカートがフワリと膨らむ。

 アメジスト色の瞳がラビを見とめるとにやりと嗜虐的な笑みを作る。


「魔王軍四天王が一席、アザリーだ。この軍を統括する指揮官よ」


 その言葉に池目君の顔色が変化する。まるで極寒の地に裸に布一枚で迷い込んだようにガタガタと震えている。

 一方のラビは慌ててお辞儀をする。


「あ、私、ご都合高校二年、石神ラビと申します。好きなものは、可愛いもの集めと、海外ドラマと、あとはごにょごにょ……」


 ラビが後はえーっとと頬に指をあて首を傾げている中、アザリーの視線は別を向いている。


「で? 貴様らどうやって復活した? 虫の息だったはずだが?」


 声を掛けられたのは、二人の魔族だった。


「アザリー……、我々はあなたの指揮下から外れる」


 アザリーは眉根をぴくりと動かした。


「……アザリー? 様はどうした? 確か、フジミノといったか?」


 フジミノの身長よりも頭ひとつ分は低いその少女は異様な威圧感をもち、二人の魔族を沈黙させる。


「っく……、我ら二人はあなたに反旗をひるがえすと言っているのだ!」


 フジミノが沈黙のプレッシャーを撥ね退けるように激昂した。

 アザリーは少しだけ目を見張りすぐに笑みとともに目を細めた。それは底冷えのする冷酷な目。

 フジミノは言葉に詰まったように再び黙ってしまった。

 一方ラビは首を捻り、頭を悩ませていた。


「えーっと、えーっと後好きなのはー、あ、そう! ゴーレムさんです。ゴーレムさん」


 ラビの呼びかけに「御意」と穴ぼこから飛び出してくるゴーレムさん。

 どすんと地面に着地し、ラビの隣に佇む。


「私のゴーレムさん。あなたのより小さいけど、とってもすごいのよ」


「ほう……」


 ラビのゴーレムにアザリーは目を細める。


「色んなことができるの。ゴーレムさんお願い」


「御意」


 ラビのお願いに、ゴーレムはさまざまな物に変化する。ラビは同じゴーレム使いに出会ったことで楽しくなり、自分のゴーレムはこんなことができるのと紹介していた。

 まるで同じ趣味を持った人と出会ったようなそんな気分。

 モブ子とモブ江とはまた違った友達の予感に、ラビは心をうきうきさせた。

 妄想が広がっていく。お互いのゴーレムを褒めあい、競わせ、成長させていく。こんなすばらしいことが待っているだろうことにラビは素直に喜んだのだ。


「では、私のゴーレムを見せてあげよう。魔臣ゴーレム」


「了解しました」


 少女の言葉に漆黒のゴーレムが動く。腕が振り上げられる。

 ラビは何が起こるのかとわくわくしながら見上げた。

 それはまるで空から降ってきた隕石のように落ちてきた。


「危ない石神っ」


 池目君が飛び出しラビと一緒にごろごろと転がる。

 落ちてきた漆黒の拳が、ゴーレムを押しつぶした。


「――――っ」


 ラビの瞳が愕然に染まる。

 腕が引き上げられると、そこにゴーレムの姿はなく粉々に潰された石片がめり込んだ地面に散乱していた。


「――ゴーレムさん!?」


 ラビが駆け寄る。

 時間が止まった。何が起こったのかよく分からなかった。さっきまでそこにいた。小さな頃からずっと一緒だった。


 ラビの時間が止まっていく。


「くふふふ。脆い脆いなあ~、貴様のゴーレムは。あっという間に粉々だ」


 アザリーがほくそ笑み、自身の自虐心を満たすように言葉を吐く。


「やはり『顕花の儀』を受けるは、この漆黒のゴーレムをもつアザリーを置いて他にいないようだ」


 ラビは戸惑いと哀しみを交えた視線でアザリーを見た。


「どうして? どうして、こんなこと」


 縋るような瞳で、なぜ自分のゴーレムが壊されなければならなかったのかラビは答えを求めるようにアザリーを見つめる。


「なぜ? 今、なぜと言ったか? くふふふふ、面白いことをいうな? 当然であろう、貴様も同じくこの泉に儀式を受けに来た者であろう! 儀式を受け、力を手に入れることができるのは一人だけ、貴様のゴーレムが邪魔であることは至極当然の話だろう!」


 アザリーの蹴りがラビのわき腹を蹴り上げる。


「――うっ」


 ラビの顔が痛みに歪む。


「貴様は負けたのだ! さあ、ここから去れ! いや、私がこの場で息の根を止めてやろう、くふふふ。ほら! ほら! ほら!」


「やめろ!」


 池目君の声が聞こえる。

 スノーウルフが飛びだし、アザリーに飛び掛る。

 フジミノが水をキューリーが黒い煙を放つ。


「魔臣ゴーレムよ」


「了解しました」


 そのすべてを漆黒のゴーレムの一度の振り払いで起こる突風で吹き飛ばされる。

 轟っという突風が森の葉を巻き添えに空へと撒き散らした。

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