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ゴーレムさんゴーレムさん  作者: 九重 まぶた
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再会

 池目君はスノーウルフの背にしがみ付き、水の流れを辿ってくれということだけ伝えた。

 水の流れが少しずつ太さを増していく。増していくとともに不可思議な光が入り混じっていることに気づいた。


「やっぱりそうだ。『顕花の儀』の伝説には光り輝く泉の中央で神から授かりし肉体を、神へと昇華させると伝えられている。この水の光。きっと『賢者の泉』の水が地下を流れてきているんだ。この道を辿れば、きっと」


 池目君は水の光によって照らされたその先を見据える。

 ただこの先には、カミルの話が本当であればもう一人のゴーレム使いがいる。

 あの公爵崩れが嘘を言っているとはさすがに思えず、恐怖に喉がごくりとなる。

 もし、石神のようなゴーレムの使い方ではなく、本来のゴーレムの使用方法であるならば、それはあまりにも絶大な戦力である。


 だが、それはこちらも同じ。

 石神がゴーレムによって戦闘を行なってくれれば勝ち目は充分にある。

 それほど、池目君はラビの力だけは認めていた。

 あれだけ、ゴーレムを自由自在に使いこなすことができる力量は、才能の言葉だけでは片付けられない。


「まさに、選ばれし者だ」


 その選ばれし者は池目君の腕に抱かれくーくーとすこやかな寝息を立てている。

 これまでラビは戦わないことで、戦局をひっくり返して来た。

 ここまでくると、ゴーレムの使い方間違ってない? とは到底言えない。


「いける。いけるぞっ」


 池目君の視界に水の道の源泉が入る。

 大きな窪みから泉の水が流れ出しているようだった。まるでそこだけ抉り取られたように窪んでいる。

 そこに何人かの魔族が気を失い倒れている。


「見かけたことのある顔だな」


 フジミノとキューリーと他の魔族だ。


「仲間割れか何かか? まあ、どうでもいい今はこいつらの数が少なくなってくれるのはありがたい」


「んん、んん?」


「石神、気づいたか?」


「ん~、ああ、よく寝た。おはようママ~」


「ママじゃない。池目だ、いやアーバンだ」


「――へ?」


 ラビが目をきょどきょどさせ、頬をぼうっと赤くする。


「きゃーーっ」


 ラビはスノーウルフから慌てて飛び降り、その場にちょんと座りこみ、こちらをちらちらと横目でチラ見している。

 その視線が池目君の足元に吸い付く。


「やだっ、先輩たちどうしたんですか?」


 瞬間、距離を詰めたラビが心配そうにフジミノ達を見つめる。


「あ? ああ。こいつらはここに倒れてたんだ。生きてはいるみたいだが、この様子ではもはや助からないだろう」


 ラビの顔は真っ青になる。


「ほっとけ。僕たちはいまこいつらに構っている暇なんかない」


「ほっとけないわ! この人には私色々教わったの。そのおかげでゴーレムさんの新しい可能性にも気づくことができた。きっと地盤が崩れて土砂に巻き込まれたのね。すぐに治療しなきゃ。ゴーレムさんっお願い!」


 池目君が抗議する間もなくラビが叫ぶ。

 すると、池目君たちが通ってきた洞窟の奥から言い知れぬ威圧感が押し寄せて来る。

 あっという間にドンっと眼前にラビのゴーレムが着地する。

 あまりにも一瞬で行なわれたこの移動速度。

 池目君はもはや言葉もでない。スノーウルフでさえあれだけ苦労してここまで辿りついたのに関わらず、一瞬である。


 もはや畏怖の念であった。

 彼女にはそれだけの力があるのだ。

 池目君がそんなことを考えている間も、ラビのゴーレムに対する指示は早かった。

 ゴーレムは大きなガラスを一面にはった球状の物体になり、倒れている彼女、彼らをその内部に取り込む。そしてぶくぶくと水が満たされていく。


「石神これじゃあ彼女らは息ができなのじゃないか?」


 ラビはウインクして口を開いた。


「大丈夫。この液体には魔力が入っているから、酸素も同様に供給しているの。きっとすぐに回復するわ」


 ラビの言葉どおり彼らの傷が消えていく。

 本来ではあれば、傷を癒す魔法は高等魔法である。それをいとも簡単に行なっている。


「……すごい。まさに神の力だ」


 ゴーレム球の中の魔族が目を見開く。

 口から空気がゴボゴボと漏れていく。

 

「ゲホっ、ゴホっ、な、何が? 私は一体、どうなって……」


 銀髪の魔族は咳き込みながら、記憶が錯乱しているのか、焦点の合っていない瞳で周囲を見回している。


「大丈夫? 痛むところはない?」


「ん? ああ、そうだな、そういえば持病の腰痛もなくなっているような……、ん?」


 湖水色の瞳がラビの茶褐色の瞳と重なり、ぐわっと目が見開かれる。


「――貴様、ゴーレム使い! なぜここに!?」


「私がなぜここになんてどうでもいいです。先輩も危なかったんですよ。いったい何があったのか知りませんけど。危いことしちゃメっですよ」


 ラビが人差し指を立て、銀髪の魔族の目の前でピコピコ動かす。


「う、いたたたた――? フジミノ? 無事か」


 他の魔族も気づきだしてきたようだ。


「あっ、こいつっ!」


 ピンク髪の幼女がラビを指差し声をあげる。


「あら? あなたも気づいたのね。よかった」


 ラビはにこりと微笑む。

 池目君はすっかりラビペースに嵌っている魔族たちに妙な安心感を覚え、はっとした。


「石神っ、そいつらから離れるんだ!」


 よくよく考えれば、こいつらは魔族で敵であることは変わりない。

 池目君はラビを背に守り、回復した魔族共から距離を取る。


「回復してすぐ申し訳ないが、そこをどいてくれないか? 僕たちはその先に用があるのでね」


 その様子に、銀髪の魔族は肩を竦め、鼻で笑った。


「何がおかしい!」


「おかしかったから、笑ったまでだ。この先に何が待っているのか分かっているのか? 地獄だぞ」


「え? 地獄? この先には賢者の泉があるんでしょ? だってほら、水が流れ落ちてきてるし。地獄じゃないわよね?」


 あっけらかんと答えるラビの様子に銀髪の魔族は笑い、ピンク髪の幼女も笑った。

 そして、ラビの足元に跪き、臣下の礼をとる。


「私は魔王軍第六師団曹長フジミノ・H・バレルシュタインそして」


「同じく魔王軍第六師団伍長キューリー・サモネウラ」


「「これより私どもはあなたを主とし仕えましょう」」


 他の魔族がどよめく。


「貴様ら正気かっ、アザリー様を裏切るきか!?」


「そういうことだ。私はもうあの方には付き合いきれん。ならば私は自身の命を救ってくれたこの方に仕えることを第二の魔生としよう」


 フジミノの言葉にキューリーも賛同する。


「そういうことだ。それとも貴様らはまだアザリーに仕えるか?」


 黙りこむ魔族。

 なぜか置いてきぼりを食らっていることに気づき池目君が慌てて入る。


「ちょっとまて、勝手に話を進めるなっ。ぼくは貴様らを信用などできない」


 フジミノはその言葉に鼻を鳴らし、肩を竦める。


「貴様に信用してもらわずともいい。というよりは貴様には興味がないので、貴様の意見はどうでもいい。我らはこの方に仕えるのであって、貴様は眼中にない」


 冷酷な目が池目君に浴びせられる。


 なんだかついこの間、同じようなことを言われた覚えがあるので、池目君はもう口を閉じて黙って言いように言われた。心中ではもちろん涙を流している。

 池目君の顔がフジミノの冷酷な視線から逃れるように下を向く。

 二人の間のピリピリムードに気づいた現代っ子のラビは「まあまあ」と割ってはいる。


「仲良くしましょう。この上には賢者の泉があるんでしょ? 私早く見て見たいわ」


「石神っ」


 池目君はラビの言葉に気を取り戻し、顔をあげる。


「よし! いこう。どちらにしても僕たちがやることは変わらない!」


 池目君は意気揚々と穿たれた穴に手を掛けた。

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