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ゴーレムさんゴーレムさん  作者: 九重 まぶた
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動きだす刺客

「石神ラビ! 君の、君のゴーレムの力を貸してほしい! あんな感じのじゃなくて! 無理を承知でいっているのは分かっている。でも君しかいないんだ。ぼくの村を、救ってくれ……」

 

 池目君は路地で泣き崩れ、ラビに懇願した。

 そのあまりの真剣な眼差しにラビは池目君の言葉に耳を傾けた。


「ぼくはこの世界の人間ではない。別の世界から来た。その世界は魔王なるものが猛威をふるいぼくたち人間の国を襲っている。目的は魔物だけの世界を作るためだろう。ぼくら人間は邪魔なんだ。もちろん、ぼくたち人間も対抗した。でも奴らは強力無比な存在だ。恐ろしい魔法の数々、鋼のような肉体、どれをとっても敵わなかった。それでもギルドのハンター達が強力して今現在はなんとかギリギリの所で均衡を保っている。ただいつまでもつかは分からない。魔王軍には直属の部下に四天王が存在する。そいつら幹部の連中はまだ出てきてもいない。彼らが出てくればきっとぼくらは――」


 池目君は自分の力のなさを嘆き苦しみ、苛立ちで地面を殴りつける。

 ラビは池目君の言っていることをあまり理解はしておらず目前で嘆き苦しむ池目君の姿にキュンキュンしていた。


(ああ、池目君がわたしの前で泣き崩れてる。苦しんでいる顔がなんかわたし胸がもえもえするわっ!)


 ラビは胸をおさえ、瞳をうるうるさせていた。

 とりあえずラビは池目君が自分をどこかに誘っていることだけは伝わっていた。


(ああ、でも、わたしはまだ高校生になったばかりのちょっと大人にあこがれる背伸びしているお年頃。池目君の申し出はちょっとハードル高めよ。話の内容的にはぼくのふるさと旅行に来てくれませんか? ってことで間違いないわよね? それって――池目君の親に紹介されるってことでしょ? それって――結婚を前提のお付き合い!?)


 ラビの興奮は最高潮に達し、鼻から血がつーっと垂れてきたと思ったら、ブボッと噴きだした。そしてラビの意識はそのまま夜の星を視界に映し、後頭部から伝わった衝撃に意識を失った。


「……いしがみ? 石神ー!」


 池目君は急に仰向けに昏倒したラビに仰天し、抱き起こしゆっさゆっさ動かした。


「えへへ、ダメよ、まだ、わたしには、はやいれす~。(でも、やぶさかではない。やぶさかではない~)」


 その顔は恍惚に彩られていた。まるでお花畑を手をひらひらさせながらスキップしている表情だった。


「石神――――――――っ!」


 池目君の悲痛な叫びが夜の住宅街に響き、近隣住民が我慢の限界だと窓を開き「うるせー!」と部屋にあったのでろう鉄アレイやペットボトル様々な物が池目君を襲った。


 その後、池目君は住宅住民の猛攻により致命傷を受けつつもラビをなんとか無事に自宅まで送りとどけた。


  ●●●


 生き物の声が鳴りを潜める裏山の森の奥。

 フジミノは一向に姿を見せぬ部下に落胆を覚えていた。


「どうしたフジミノ? 浮かない顔だぞ?」


 生い茂る葉の隙間から差し込む月の光を受けたそのなまめかしい姿態が暗闇から浮き上がる。彼女は同胞のキューリーに絶対零度と化した冷たき眼差しをむける。


「どうも彼らはしくじったようです」


 その答えにキューリーは肩を竦め、溜息を吐きだす。


「結局は私達の出番ってわけだ。まあ、大体予想はついていたがな」


「そうですね。もしゴーレム使いがあの村の者の味方についたのなら、彼らでは太刀打ちできませんから」


 フジミノの言葉にキュリーが目を細める。


「ふん、ゴーレム使いか。はたしてどれほどのものなのか? わたしの魔法とどちらが上だろうな?」


 その目に嗜虐的な色が浮ぶ。


「油断は禁物ですキューリー。我ら魔王軍の四天王様であるアザリー様のゴーレムの力は知っているでしょう? あれはまさに化物です」


「だからといって、この世界のゴーレム使いにあれほどの力があるとはおもえんが?」


「もちろんそうでしょうが。今の現状ではその噂のゴーレム使いの力あなどることはできません。そして、悪い芽は早い内に摘み取るにこしたことはないですわ」


「ふん。我ら二人でいくのだな?」


「ええ、いまのうちに排除しておけば、この世界の支配もやりやすくなりますでしょう?」


「奴らの始末はどうする?」


「奴ら? ああ、あの半端者達のことですか。どこぞで野垂れ死んだのか、それとも息の根を止められたのか知りませんが、興味がありません。ただこの時間まで報告が来ない。失敗に終わったことを察するに十分な材料です。まあ、もし今も無様な生き様を晒していたのならば、私が上官として責任を持ってその命を摘み取ってあげましょう」


 キューリーはその氷のようなフジミノの眼差しに背筋を寒くした。

 彼女と組むことは多く、並んでいれば言動と容姿のギャップにそして暴力的な性格に自身のほうが部下の恐れの対象になりやすいが、本当に恐ろしいのはこのフジミノであるとキューリーは理解している。こいつは仲間だった者をあっさりと切り捨てる。

 そこには何の感情も見えない。まさに軍人気質なのだ。

 任務の為ならば己のすべての感情を殺す。

 自分にはそれはできない。

 だからこそキューリーは自分も任務を失敗すればフジミノにあっさりと殺されるであろうことは覚悟していた。

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