32/61
第26話 睥睨
いくつかある大広場のうちそのひとつ、中央付近、その義手の男は鎚で蜥蜴の頭を緩く叩き、それは力なく顎から倒れ込む。その蜥蜴は、天へ向かって力を吐き出したそれそのもの。
義手の男へひとりの流浪の民が近づく。
「不甲斐ない………」
義手の男は鎚を腰に収める。
「その強さも、そこにいたるまでの弱さもご先祖様はいつも見てくださってる[最初はだれでも弱いから気にすんな]」
突風。
力が収束したときに発生する、その風。ばたばたと強烈にはためく髪と、体にぶつかる強風は、その規模の大きさを思わせた。
上空、“睥睨の法“の一部が動き出す。その下は魔術協会。
力の収束、そして放出まで、それはまばたきをする間に起きる一瞬のこと。
照射。
雷の如き、力が落ちた爆音。
その流浪の民はあぜんとそれを見上げている。
「またあの(開催のときのやつじゃないか?)」
義手の男は首を振る。
「いや、その術師たちは残らず捕まえた。そもそも違うかもしれん」
義手の男はがれきの埃混じった向かい風を受けながら突き進んだ。