表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/73

泣きそうになりました……注 泣いてません

 

 俺のバカーーーー

 なに、返事してるんだよっ!


 否定をする為、慌てて声を出そうとした……が、俺達のやり取りを静観していた、ジェスターとミカエルのニヤニヤした顔を目の端がとらえ、ゾクッとする。


 あれは、そう。

 悪魔が楽しく悪巧(わるだく)みをしている顔だ。


 あんなに怒っていたのが嘘のように、2人はニコニコと楽しげな様子でクラリスに話しかけた。


「婚約破棄に協力するよ」

「もちろん、僕も」

「ありがとうございます。2人とも! アルベルト様、2人が協力してくれるなら心強いですわね!」


 クラリスは、ぱぁぁと顔を明るくし、俺に向かって無邪気に「良かったですね!」と笑い、俺は目の前が真っ暗になった。

 

 心強い……ああ、2人は全身全霊をかけ、協力してくれるよ……


「いや……そんな、2人に迷惑かけるわけには……」


 予想外の展開に呆然とし、言葉をなくしていたが、これではいかん、とささやかな抵抗を試みる。ささやかだけどな!


「いやいや、義姉さまの婚約。義弟の僕としても無関係ではないからね」

「僕だって、大切な友人2人が意に染まない結婚をするなんて、心が痛む」

 

 俺に満面の笑みをむけるジェスターとミカエル。その目には強い意志が読み取れる。


『お前の思い通りにはさせない』


 と。


 ささやかな抵抗は、即、消し飛ばされた……


 クラリスは俺達のやり取りを微笑ましく眺めては「男の友情ねー」なんて、とんちんかんな事を嬉しそうにつぶやく。


「喧嘩中だったというのに、やはり、親友同士。困っている時は助けてくれるなんて、ジェスター様もミカエルも頼りになりますわぁ」

「いやいや、当たり前の事だよ。義姉さま」

「僕らは親友だしね」


 クラリスに優しく微笑みかけるミカエルに、早速、頭の中で婚約破棄の策を練っている様子のジェスター。


 なにが当たり前だよっ! なにが親友だよっ!

 3人で話を進めるなぁぁ!!

 ちくしょー


 反撃の言葉を思案していると、クラリスは屈託ない顔で、とどめの一撃を放った。


「アルベルト様、2人はいつでもアルベルト様の味方でいてくれますよ。アルベルト様も大船に乗ったつもりでご安心ください! 必ずや、婚約破棄を勝ち取ってみせますわ!」

「任せろ。アルベルト」

「安心してね。アルベルト」

「お、おう……」


 満面の笑みを浮かべる3人。(純粋な笑顔はクラリスだけだが)


 口下手な俺は、なんて言っていいのやら、どうしたらいいのやら、あまりにも想定外の事の成り行きについていけず、泣きそうである。


 王子だし、泣かないけど、泣かないけど……泣くもんかぁぁぁ。

 

 そんな俺を横目で見ながら、ミカエルとジェスターが顔を見合わせて、ニヤリと笑った。



「徹底的にぶっ壊そう……そう、徹底的……にね」

 


 俺が更に頭を抱えたのは、言うまでもない。



 ああ、そうだ、クラリスは婚約が嫌で泣いちゃうような令嬢ではない。っていうか、俺の方が泣きそうだし。

 

 初動がまずかった。


 こんなことなら、ロマンチックなんか捨てて、公開告白でもなんでもすりゃあ良かった……

 しかし、今の段階で告白しても、振られるのは火を見るより明らか。


 それこそ、公開処刑じゃないかっっ!

 


 一体、俺は、どうしたら良かったんだ?




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ