精神的ダメージを(勝手に)受けました……もうヘタレなのは認めます
甘い幸せな時間ってなんだよ……
2人はそういう関係なのか……俺には望みは残されてないのか……?
「クラリス嬢が上手だからですよ」
「褒めていただき嬉しいです。でも、それもバード様が良くしてくださるからですわ」
なんの話してるんだよっ!
上手ってなにがだよっ!
良くしてくれるってなにをだよっ!
なんなんだよ……やっぱり……そういう仲なのか?
あの2人は恋仲なのか……?
思考停止した俺の頭が必死に警鐘を鳴らす。
ここにいてはダメだと、絶望の底なし沼に落ちていくだけだと。
自分から来たくせに、もう俺はここにいることが耐えられなかった。
情けないのは百も承知。でも、限界だ……
この場を離れる為、よろよろと後ろに2歩下がった時……クラリスとバードの会話が再び耳に入ってくる。
「そうだ、バード様。今度、上質の小麦粉がありましたら、お売りくださいね」
「はい、わかりました。良さそうな品が入りましたら、クラリス嬢の分はよけておきます」
「わぁ、ありがとうございます。楽しみ! 今度はパンケーキを作ろうと思いまして……」
「それは美味しそうですね」
打ちひしがれていた俺は顔を上げた。
…………へ?
こむぎこぉ? ぱんけーきぃ? え? 何の話?
「先日のカカオも本当に質も良くて、上品なチョコレートが作れましたわ。一口食べただけでも、甘くて幸せな気持ちで満たされました。また売ってくださると嬉しいです」
甘い幸せな時間って……チョコレートを作って、食べたことか!?
「クラリス嬢は菓子作りがお上手ですから」
上手って……それかよっっ。
俺は顔を空にむけ、額を手で押さえると大きく大きく息を吐いた。
ああ、そういうことか。
ハミルトン伯爵家は他国との貿易を手掛けている。クラリスはお菓子作りの材料を少し分けてもらってたんだな……そういうことか……そうか……本当に良かった。まだ、俺にも希望はある。
全身の力が抜け、その場にしゃがみ込みそうになる。一方、クラリスがパーティールームに戻りましょうかと歩き出すと、突然、バードがクラリスの手を取り、素早く手の甲にキスをした。
「踊れなかったのですから、これくらいはお許しください。僕との結婚は考えていただけましたか?」
えっ?
ええっ?
えぇぇぇぇ!?
お読みいただきありがとうございます。
とうとう、ヘタレを自認しました。




