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恋敵が怒ってました……デスヨネ

 

 次の日……


 俺はアルフォント家にむかう馬車の中にいた。


 かすり傷とはいえ、落馬したのだ。

 まだ、寝込んでるかもしれないな……

 

 それに……

 

 婚約の件は聞いただろうか?


 昨日の天にも昇りそうなほど浮かれていたのはどこにいったのか……と思うほど、俺は暗澹(あんたん)たる気持ちに支配されていた。


 婚約内定が強引なのは百も承知。

 こうでもしないと、何一つ進まないから。

 それに、こんなチャンスを逃すわけにはいかない。


 ただ……ちょっと強引すぎたかも……

 クラリスも公爵令嬢である以上、王家との結婚は視野には入っていたとは思うけど。


 思うけど……嫌がって泣いてたらどうしよう。


 

 いやいやいやいや。


 俺は首をぶんぶん振り、馬車の窓から流れる景色を見つめながら「弱気になるな」と自分に言い聞かせる。


 まず、クラリスに会わなきゃ始まらない。

 悩むのはそれからだ。



「あー、落馬したって聞いてな……って、お前らもいたのかよ!」


 アルフォント家のメイドに先導され、クラリスの部屋に入ると、クラリスと恋敵2人がのんびりとお茶をしていた。


 義弟(おとうと)のミカエルがいるのは予想していたが、なんでジェスターもいて、3人でちゃっかり、優雅に楽しくお茶を飲んでいるんだよっ!


 俺、すごぉく心配したんだけど!


 俺が驚きすぎたのがツボにはまったのか、クラリスはクスクス笑っている。


「アルベルト様、わざわざ来ていただいてありがとうございます。ご心配おかけして、すみません」

「お前の心配なんて……」


 してたけど。それしかしてなかったけど!

 俺も素直になれないんだよな……


 小さくため息をついていると、クラリスの義弟ミカエルが、頬杖をつきながらブスッと俺を睨みつけた。


「よくまあノコノコと……」


 そんなに怖い顔したら、美男子(ハンサム)が台無しだぞ、ミカエル。

 

「ああ、本当に。よくこれましたね」

 

 ジェスターは俺に笑顔をむけるが、眼鏡の奥にある深緑色の瞳が全く……本当にまぁぁぁったく笑っていない。



 …………デスヨネ。



 まぁ、2人が怒るのは無理もない。俺だって、反対の立場なら絶対に許さないもんなぁ。

 

 クラリスは3人の顔を順番に見ながら、きょとんとしていた。


 少なくとも、婚約を嫌がって泣いている素振りはなさそうで、ホッとしたが、親友達の激怒している睨みに俺は口ごもる。


「えっと……」

 

 俺達3人が不穏な空気を漂わせているのに気がついたクラリスは、なにかを察したのか、意気揚々と言葉を発した。


「まぁまぁ、2人とも、落ち着いて。アルベルト様が何をなさったかは知りませんけど、親友同士なんですから、多少のことはね? ね? アルベルト様」

 

 どうだ! と言わんばかりの得意満面な顔で俺達を見た。

 クラリスは俺が2人を怒らせてると思い、この喧嘩の仲裁を完璧にできたとご満悦のようだ。

 

 俺が2人を怒らせてるのは正解。

 だが、中心にいるのは、お前だからな!


 そして、間違いなく、あいつらにとっては()()()()ではない。

 天地がひっくり返るくらいの大事(おおごと)のはず。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 俺達3人は一斉に深い深いため息をつき、ある意味、心は1つになった。

 


 ジェスターとミカエルの怒りが、あの仲裁らしきもので「じゃあ、許そう」ってなるはずもないので、もちろん怒りは継続中。


 やっと俺の席を用意してもらい、お茶を飲む。

 緊張の為か、喉がカラカラで1杯をクイッと流し込んだ。


 ああ、2人の視線が痛い。


「アルベルト様、あの、婚約の件ですけど……」

「ああ……」


 クラリスは落ち着いた口調で俺に問いかけた。

 

 だよな。

 それ、気になるよな。


 照れてきた俺は、クラリスのことがまともに見れなくなり、視線を外す。


 婚約って事は、将来俺達は結婚をするわけで……

 クラリスと結婚かぁ。


「なぜ、私と婚約の話になったのかご存知ですか?」


 クラリスは不思議で仕方ないという顔で俺を見る。


 えっ!? だって、そりゃ、公爵令嬢の身分で魔力の強い魔道士だったら、王族の婚約者候補の筆頭にあがるのは必然だろ? 俺の気持ち云々は置いといても、なにが不思議なんだ?


「それは、父上が……魔力量の……」


 俺はクラリスの意図が掴めず、説明に困り、モゴモゴ答えたが、あとにして思えば、これが悪かった……


「王命ですか……ふむ……アルベルト様はどうお思いですか?」


 どうって……今、ここで言うのか!?

 公開告白を俺はするのか!?

 なんで、尋問されてるような雰囲気の中しなきゃならないんだ?

 長年の想いだぞ。もっとロマンチックに告白したいじゃないかぁぁ!!


「いや……その、俺は、別に……その……」


 とりあえず、この婚約を望んでると言う事を伝えるべく、考えながら言葉を口にした為、話し方がたどたどしくなった俺に、クラリスは心得てますと言わんばかりのしたり顔をズイッと近づけた。


「アルベルト様、お気遣いなく。アルベルト様にも選ぶ権利はございますわ」

「えっ?」


 俺は顔をあげた。

 

 

 ………えっ?




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