RE:Mission-13 AOW
(?)今回の話の中、私が何回も”非難する人物”が目に付くだろう……。だが、◯者の皆さんは勘違いしないで欲しい……それは、私一個人の”意見”であり……または私一個人の”解釈”にしか過ぎないのだ……。
その人が、本当に”非難されるに値する人物”かどうかは……今回の話の後、◯者の皆さんが、その人物の歴史を調べた上で……◯者の皆さんのそれぞれの判断によって決めて欲しい。
私に出来る事は、出来る限り……面白可笑しく分かり易く……ッ! ◯者の皆さんに向けて、実況や歴史をお送りする事ぐらいしか、出来ないのである……。
――”American Old West”……。
それは、日本では「西部開拓時代」と呼ばれる……十九世紀における、北アメリカの時代区分の一つである。
この頃の日本の時代区分は「江戸時代」と「明治時代」。そして”江戸から明治”へと移り変わろうとしていた”激動の時代”でもあった……!
飢饉……ペリーによる黒船来航……不平等な”日米和親条約”……その条約や幕府の対応に、納得できない侍達……そこから始まる、天皇大事に”尊王攘夷運動”……うるせェ黙れよ! ”井伊直弼”による、”安政の大獄”……テメェこそ黙れ! 粛清だ! 井伊直弼の暗殺、”桜田門外の変”……。
御用だ! ”新選組”だ! 尊王攘夷志士供めッ! お覚悟ッ! 新選組大活躍、”池田屋事件”……チキショウ、大損害ッ! だけど負けねェ! 長州藩の同志よ! 京都へ突撃ィィィッ! しかし大敗、後に追手も出されてしまう”禁門の変”……。
”坂本龍馬”奮闘! 犬猿の仲だけど、江戸幕府を倒すために手を取り合おうッ! 薩摩藩と長州藩が手を組む”薩長同盟”……。
ヤバいよ!? どうしよう!? 尊王攘夷志士達、マジ本気だよッ!? そうだ! 将軍を辞めよう……ッ! 最後の将軍”徳川慶喜”、天皇に大政を返還……ここに、”大政奉還”が成立する。
そして、日本の舵取りを取り戻した”明治天皇”によって、”明治政府”の樹立を宣言する”王政復古の大号令”……と、その他にも大小様々なゴタゴタが、その号令の前後にもあった訳だが……ここでは割愛させてもらおう。
ここまで非常かつ、駆け足気味に……”十九世紀前後の日本”を語ってきた訳だが、そうじゃあないッ! あくまでこれは◯者の皆さんに、興味を持ってもらうための”前座”に過ぎないのだ……!
ホラ、日本で起こっている事には『気を付けなきゃ!?』と思えど……外国で起こっている事には『ヘェ〜そうなんだ〜フ〜ン』……と、そんな程度で済ませないためにもッ! ……そういうイメージである。もっと言ってしまえば……”自分の庭が火事じゃあない限り、ど〜でもいい”……と言った精神を持たず、聞いて欲しいのだ……ッ!
さて、まずは大変恐縮ながら……「アメリカ合衆国」という国は、ヨーロッパの暗黒時代にも負けない程に、その広大な大地が……”大量の血”と”幾重もの屍”で覆い尽くされる程の、歴史の上に建国された……戦争の国と言っても過言じゃあない事を、宣言しておこう。
では何故? そこまで比喩される程に、戦争は起き続けたのか……? 今回フォーカスする「西部開拓時代」の終わりに至るまで……大小の規模に関わらず、おおよそ”五十以上”の戦争に対して”ほぼ勝利”を収めてきた、「アメリカ」という国の始まりを語るには……まずは十五世紀。「コロンブスの新大陸発見」から語らねばならない……ッ!
『ねェ〜? 西から”インド”に行くための資金〜、出資してよ〜! (意訳)』……そう語るのは、”クリストファー・コロンブス”。
……もしもの話だが……彼は、この物語の主人公である”ボス”と出会ってしまった際……真っ先に、頭に鉛玉をブチ込まれしまうであろう。そんな仕事をやっていた事に加え、実は後に解説する”新大陸”でもう一つのやらかしも、平然と行っていたりするのだ……。
だが(ただし、あくまでヨーロッパ側から見て)それでも、「新大陸を発見した」功績は称えられ、「コロンブス・デー」と今日でも”アメリカの祝日”となっていたりするのだ。
では何故? そんなクズ……失礼、偉大な冒険家はそう思ったのか? ザックリ言ってしまえばそれは、当時のヨーロッパの食生活に由来するのだ。”◯者の皆さん”は、よく『何ィ!? 胡椒だと!? それなら金貨十枚だ!』……という商人が出る”異世界の物語”を見た事ないだろうか……?
当時の中世ヨーロッパには「冷蔵庫や冷凍庫」といった、現代では”アタリマエ”に便利な保存技術はなかった。異世界だと「保存の魔法」と言った、中世ヨーロッパから見れば”チート”な技術があるかもしれないが……それでも当時に発達した「食文化」の中で”保存”は勿論、”臭み消し”や”風味付け”を目的にスパイス達は、その食文化を支えるために使われていたのだ。
「胡椒に金貨十枚」という価値を付ける異世界では余程、保存技術が発達していないのか……あるいは、「保存の魔法」が開発されていないのか……はたまた、それを必要としない技術が出来ているのか……と様々な推測が出来るとも言えるのだ。
話は少し逸れたが、当時の中世ヨーロッパの食生活を支えたスパイス達。だが、その”調達ルート”には問題があった。当時の胡椒などスパイスは、ヨーロッパから見て東側……中国などの”東洋の国々”で栽培され、取引されていた。
この際、主に取引に使われていた市場は”インド”である。宗教上の制約で、”紀元前から”様々なスパイスを用いては、今日に至る”インド料理”の文化を築き上げてきた国であった。
そんなヨーロッパから見れば、”スパイス天国”な場所は……”ローマ帝国”などの中世ヨーロッパの国々や、後に”東ローマ帝国”を滅ぼしては、自らの首都を築き上げたオスマン帝国など……様々な人々が殺到する程の、”人気スポット”だった訳だ。
だが、当時の時代は進み……情勢は変わった。主に中世ヨーロッパの国々が使用していた”交易ルート”である「シルクロード」は、易々と進めるルートではなくなってしまったのである。前述した”オスマン帝国”の侵攻……「コンスタンティノープルの陥落」という、大事件が原因だ。
現在はトルコ共和国の首都、”イスタンブール”の前身となったこの場所は……当時は「世界の中心」と言われていてもおかしくない場所であった。この場所は、古来よりアジアとヨーロッパを結ぶ東西交易ルートの要衝……”中継地点”と言ってもいい場所であったのだ。
そして……ここを管理していた”東ローマ帝国”が、”オスマン帝国”に占領された以上、簡単にヨーロッパの国々はスパイスを求め、インドなどの東洋の国々へと赴けなくなってしまったのだ。
つまり、簡単に行けなくなった以上……スパイスに対して”高まる需要”はそう簡単に満たす事が出来ず……”スパイスの品薄”により、スパイスに対する価値と言うのは、爆発的に上昇していく……! その結果が「胡椒一摘みは、金や銀と同等の価値」という、”価値観”が爆誕してしまったのである。
極端に言えば、”銃を持った農民”から……時代によって急激に”宇宙の悪の帝王”や”破壊神”へと、スパイスの価値が変貌したと、例える事が出来るのである。だが、そんな絶望的に近い状態でもヨーロッパの国々には、”新たな希望”が出来たのだ。
『ヴァスコよ、海からインドを目指すための”航路”を探すのだ……! (意訳)』……そんな拝命を受けたのは、”ヴァスコ・ダ・ガマ”。
クズ……失礼、”コロンブスさん”と比べると、彼は後輩と言える”探検家”であるが、ヨーロッパに及ぼした影響は大きい。1498年、そんな彼の功績は”インド直通の航路の発見”である。
ただそれは、現代の”南アフリカ共和国”……当時では、”アフリカ大陸の最南端”を目指すように迂回しては、様々な場所に停泊しつつも、現代の”モザンピーク”と”マダガスカル”に挟まれた海を渡り、”ケニア”辺りで停泊。そして、そこから真っ直ぐ……インドの最南端辺りの場所を目指して、突き進むと……現代の人達から見れば、かなり回りくどい航路ではあるが……。
それでも、その航路の発見は革新的であった。何せ、「シルクロード」の新しい検問官となった”オスマン帝国”の目を気にせず、好き勝手に海からインドへと向かえる道を手に入れたのだから……! 当然、その航路を使っては”スパイス”は勿論、当時高価であった”麻”や”宝石”などが持ち帰られた。……帰れた際には、連れていた艦隊はほぼ全滅していた状態で……。
そんな悲惨な目にも遭っていたヴァスコさんだが、彼の話はここまでだ。恐縮ながら……「西部開拓時代」に繋がる私の話の中では、彼が関われるここまでだからである。だが余談で言うならば……世界史のテストなどの際、彼を「マゼラン」と混同しないように気を付けて欲しい。
マゼラン……「フェルディナンド・マゼラン」が成した事は、世界一周である。彼もまた、クズ……失礼、”コロンブスさん”や”ヴァスコさん”よりもまた、”後輩”の探検家であった。
だが、現代のブラジルやウルグアイ、アルゼンチンの一部、チリの最南端に訪れた後……太平洋へと船を進める。そして、グアム、フィリピン諸島の各島々を巡った後、アフリカ大陸の最南端を経由し、ヴァスコさんの発見した「インド航路」の一部を逆走するようにして、国へと戻った……。
そうして彼は、世界初の「世界一周」を成し遂げたのだ。いいか? 世界史での”マゼランさん”は「世界一周」を成し遂げた男だ。トイレに八時間近くも籠もるにも関わらず、海底に建造された大監獄の”元看守長”を務めていた男とは、全く関係ないので注意して欲しい……。
さて、長々と話してきて大変恐縮だが……ここでようやっと、クズ……失礼、”コロンブスさん”の話に戻る。
コロンブス、ヴァスコ・ダ・ガマ、マゼラン……それ以前からも、十五世紀半ばから十七世紀半ばの間……海に船を走らせて活躍していた人達の時代は「大航海時代」と分類され、そう呼ばれている。
因みに、みんなが大好きであろう”海賊”が活発的に活動した、「海賊の黄金時代」と呼ばれる期間は……おおよそ「十七世紀の半ばから、十八世紀の前半」と、諸説も考慮してしまえば……意外にも百年にも満たない歴史だったりする。当時から見れば”褒められた行為”や”存在”じゃあないだろうが……儚くも、ロマン溢れる時代であったのだろう……。
更に余談だが、ボス達が第一章で”主力武器”として使用していた「フリントロック式」の”拳銃”や、(使ってはないが)”小銃”が全盛期的に活躍していたのも、この「海賊の黄金時代」にあたると言えるだろう。
さて、話を戻そう。ここでクズ……失礼、”コロンブスさん”は何故、西からインドへと向かう事を決めていたのか? と言う話になる。
前述の話で、長〜く語った通り……彼が活躍していた時代は、”オスマン帝国”が新たに検問官を務めるようになっていた時代である。様々な過程をスッ飛ばして言ってしまえば、アジアなどの東洋へと、容易に貿易や旅行に”陸路”で向かえない時代であったのだ。
だが、彼は”とある学説”を聞いて以来……下記のような考えに至るのである。
『……あれ? 地元にある地中海側の”西の航路”から行けば……東でジャマしてる”オスマン帝国”って、関係なくねッ!? (意訳)』
……まぁ、現代の世界地図を直ぐに拝見すれば、即座に”頭の悪い考え”という結論に至りそうだが……これに”GOサイン”が出たのも、訳がある。前述した”とある学説”……”大地球体説”である。
もうルビに表記された、”ザックリ説明”で察した人がいると思うが……聖書に記されていた時代からあった「地球平面説」に相反するような考え方である。こちらは、近いイメージで言うならば……とある海賊の冒険で、世界の端は”巨大な滝”となっていたという考えに近い物である。
ただし、この際に”マゼランさん”の「世界一周」によって、この「地球平面説」が覆されたと言うのは、長い事”間違い”だったらしいため……知ったからと言って、得意げに言わないように気を付けよう。
さてさて、この「大地球体説」を知っていたクズ……もとい、”コロンブスさん”。これを信じていたが故に、上記の「オレは、西からインドを目指すッ!」……と言った、後輩の”マゼランさん”が聞いていたら、鼻で笑われそうな事を言ってのけ……実現してしまうのだ。
前述していた「新大陸」の発見……及び、原住民である「ネイティブ・アメリカン」という、盛大な勘違いによって……ッ!
そう、このクズ……いや、”コロンブスさん”。ヨーロッパでは初めて発見された「アメリカ大陸」を……何の冗談か、当時のスパイス天国であった「インド」と、盛大に勘違いしていたのだ。
一応弁護するならば……当時の「大地球体説」は、彼が「新大陸の発見」を成し遂げたとあるように……新大陸の存在は抜きで唱えられていた。
時代が時代故に、まだまだ”無知”や”未知”に溢れていた……と、言い換えられるかもしれない。それでも彼の”浅はかな考え”を近いイメージで言うならば……「どこで◯ドア」だろう。扉を開ければ、すぐにインドッ! ……そう言った楽観的な考えだったのかもしれない……。
そんな頭無惨(?)な彼はまだまだやらかす。そこの原住民であった人々を、”インドに住む人々”という意味で……現代では”蔑称”ともされている「インディアン」と呼んでいたのだ……ッ!?
そうして、ここから始まってしまうのだ……! アメリカ原住民達と、ヨーロッパの国々の間で次々と巻き起こる、実に”二百年以上”にも渡って続いた……白人とアメリカ原住民の果てなき”入植合戦”が……!
トアル小説家は、こう語っている……「”インディアン”と”白人”が互いに相手を発見したのだ」……コロンブスがアメリカ大陸を発見した際は、原住民の皆さんは”黄金”を差し出すなど……お互い”隣人”としての付き合いが出来た可能性もあったというのに……。
どうしてそんな血で血を洗うような、戦争と報復の連鎖が起きてしまったのか……? そこは、興味が出た◯者の諸君が調べて欲しい。
ただ、誠に恐縮ながら……私がこうも”歴史の先生擬き”を務めているのは、”ボス達が使用する武器”に対して……より興味を持って欲しいからと言う目的が、あるからでもある。それに、とあるエルフが語った『知識こそ、真の宝』と言うのも、嘘ではないからだ。
でなければ、『温故知新』という”ことわざ”はこの世に生まれなかったであろう……。もっと言えば……”武器”と”歴史”は、『表裏一体』と言って言い程、人類とも密接な関係にあるからだ。
一つ例を挙げるならば……太古の昔、◯者の皆さんの祖先がまだ”原始人”であった頃……。その頃の、”マンモス”や”サーベルタイガー”などを狩り……食糧に出来ていたのは何故なのか? 方法は? 素手か? 投石か? はたまた、太古の超能力か……?
……最後は絶対にあり得ないだろうが恐らく、”狩り”や”部族間の争い”で必ず携えていたのは……石器だろう。石のナイフ、石の槍、石の斧、石製の鏃が付いた弓矢……。
そんな太古の昔から、人類は”武器”を製作しては……必ず”争い”に用いていたという訳だ。無論、争いが目的でなくとも……それが自らを守る”自衛”であったとしてもだ……。
……さて、最後に「何故、西部開拓時代と言う時代が出来上がっていったのか……?」……と言う歴史の授業をしてから、ボス達の視点に戻すとしよう……。とは言っても、ここまで語ってきた「歴史」を基に考えれば……意外と簡単な話である。
それはヨーロッパから見て、東側が東洋と言われていたように……アメリカ大陸に進出したヨーロッパの国々が、コロンブスが到達した西インド諸島……。
現代のフロリダ州に近い位置にある”サン・サルバドル島”と名付けられた島から……病原菌が侵食するが如く、現代のアメリカ合衆国東海岸辺りから、ジョジョに”植民地を増やしていた”と言えば、もう分かったと言えるのでないだろうか……?
新たに樹立され……膨張する”本国の期待”や、増え続ける”入植者達の住処”を確保すべく……アメリカ大陸に入植してきた人々は、まだ見ぬ”未開拓地域”を目指して……皆は西へ西へと目指したのだ。
ここまで、要点を摘むようにして語ってきたが……それが、「西部開拓時代」という時代なのだ。
Approximately 50 days after reaching another world...
(異世界到達から、およそ50日後……)
〜 チキキ……カチッ! パァァァァンッン! チキキ……カチッ! パァァァァンッン! チキキ……カチッ! パァァァァンッン! 〜
「……あぁ……! 当たらないよぉ〜ボスゥ〜ッ!?」
「……おいおい、もう何回目だと思ってるんだ? チャンと的に向かって、集中して撃ってるのか?」
――月明かりが差し込んでも、未だ暗闇に包まれた森の中……少し開けた森のトアル場所で、一つの”焚き火”による灯りがぼんやり浮かんでいた。この異世界で”航空ドローン”でもあれば、それは森という草原の中に咲く、一輪の花……とも例える事が出来る、明るさがあるのかもしれない……。
だが、そんな中……そんな静寂に包まれていた筈の森でまず、”科学”という言葉と無縁そうなこの場所の中で……森中の魔物達が一斉に飛び起きそうな”破裂音”が、何度も響き渡っていた……!
「……ねェボスゥ? このジュウ、バレルがチョッピリ曲がっているんじゃあ……?」
「銃の所為にする前に……まず自分の腕前を疑えって、言ってるだろ? オルセット?」
――ほう? どうやら、音の正体は射撃訓練を行うオルセットであったようだ。だが……その発射した弾は、数十メートル先に設置された”LEDランタン”の明かりによって浮かび上がる……”六つのトマト缶の空き缶”にどれも当たる事なく……発射された三発は、真っ直ぐと森の闇へ消えていったようだ……。
そして、その原因であると主張する”銃”を、オルセットは右手で銃把を握りつつ……銃身に左手を添え、眺めながらボスに進言していた……。だがそんな事はないと、焚き火近くのソファで寛ぎながら……欠伸混じりに彼女の訓練風景を眺めていたボスは、一蹴する。
「エェ〜?」
「エェ〜!? ……じゃあ、ねェよッ!? そんなクソエイムばかりの、”FPSプレイヤー”みたいな言いワケを言う前になぁ……?」
「……クソエイム? エフピーエス?」
――今や恒例となったであろう……軽く首を傾げながら、ボスに言葉の意味を問うオルセット。
「あぁ……オレが言っていた”ゲーム”の、ジャンルの一つだよ。主に銃だけを使って戦うゲームの事。そのFPSの由来は一人称……分かりやすく言うなら、銃を構えると基本的に”自分の両手”以外、自分の体は見えないだろ? その視点でずっと戦い続けるのが、FPSって言うゲームのジャンルなんだ」
「ヘェ〜。”アールピージー”とチガうのかなぁ……?」
「まぁ、基本的に、全く別のゲームだ。ただ場合によっては、FPS視点のRPGってのはあったりするかもな?」
――確かにだろう。恐らく、該当するなら……元祖RPGゲームや、国民的RPGゲームであろう。その戦闘画面が……と言えるかもれない。
「じゃあ、クソエイムって?」
「……今のオルセットみたいに、”全弾ハズレ”になっている奴の事」
「モォ〜! ボスのイジワルッ!」
――握っていた”SAA”を投げ出すような勢いで両腕を振り抜き、ボスに向けて怒りを露わにするオルセット。だが、それは”敵ガイ心”は全くなく……まるで撫でられた事に鬱陶しいと思ったのか、その手を払おうとするような猫のような……むしろ、微笑ましいモノであった。
「フッ……言われたくなきゃ、命中させろ。もう一ヶ月近くも教え込んでんのに……ほとんど命中していない奴は、逆に珍しいぐらいだぞ〜?」
~ ウィィ~ン、ピピピピピ! ~
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<シングル・アクション・アーミー>
全長 約26.6cm
重量 約1.00kg(銃のみの重さ)
装弾数 6発
使用弾薬 45ロング・ウォルト弾
供給コスト MP:0
(「フリーバイチケット」を使用。本来は”MP:149990000”の魔力が必要)
略称「SAA」。
1872年、西部開拓時代の真っ只中に設計され、同年代のアメリカ軍に20年近く正式採用され続けた、傑作リボルバーである。
1800年頃、雷汞……あるいは雷酸水銀が発明された。これはチョッピリの刺激でボッ! ……と発火する、爆薬の類であった。そしてその後の1807年頃に……スコットランド人の”フォーサイス”という牧師が、この雷汞を応用した……”雷管”及び”雷管式”を発明する。
これは、今まで主流となっていた”火縄式”や”燧発式”を駆逐する程の大発明であった。その後、”雷管式”は改良されて行った末に……1830年頃に、”銃用雷管”が開発される。それによって、”弾丸・発射薬・雷管”がワンセットになった”金属薬莢”も開発され、それに合った”拳銃”の研究も進んで行く……!
その先駆けとして、”ピン打ち式”という発射方式を用いた”リボルバー”が開発されるが……今も現代で主流であろうか?
……暴発の危険性が高かった”ピン打ち式”は、ほぼ同時期に開発された”縁打式”に比べると、性能の限界があったためだ。ただ、こちらも安価かつ大量に作れる反面、まだまだ不発の可能性が拭いきれず……薬莢の再利用も難しい構造であった。
そうして時代は進み、1860年代の頃……現代の銃火器の弾薬の礎となる「中心打式」が開発され、銃火器の進化は更に躍進していく……! その躍進の末に開発されたのが、この”SAA”である。
そんなSAAの性能は、”フリピス”と比較すると……一発の威力は劣るものの、何と言っても隔絶しているのは、「装填数」、「命中精度」、「装填速度」の三つである。
「装填数」は”フリピス”の六倍ッ!
「命中精度」は、”フリピス”にない「腔旋(ライフリング)」による”ジャイロ効果”によって、発射された弾丸がギュルギュル回り……”安定した弾道”と”更に長い射程”を実現ッ!
「装填速度」も画期的! まだまだ遅いですが、”一発を込める速度”は劇的に違いますよッ!?
そして余談ながら……この”SAA”は、軍用であった「キャバルリー」という長銃身モデルを短小化させた物で、「アーティラリー」という”5.5インチ”の銃身を持つモデルとなる。
また……西部の保安官達が好んで使用し、平和をもたらしていたとの事で、この銃は”ピースメーカー”と呼ばれる通称があるのだ。
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<基本性能>
(A) 300(ブラックパウダーモデルのため)
(F) 1.2秒
(M) 6
(R) 約2.5秒 × 6発(熟練程、短くなる)
<破損箇所>
All Clear
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「……それと一応、”スキャン”のスキルで調べたけど……そのSAA。壊れている部分全くないぞ? オルセット?」
「エェェ〜ウソだ〜!?」
――オルセットが握る”SAA”を「スキャン」しては、目の前の虚空に浮かび上がった……近未来orSFチックな”青白い画面”を眺めつつ、上記の発言通りにそう彼女に伝えるボス。
だが、認めたくないのか……嫌そうな表情と口調で、抗議する彼女……だったのだが……?
「イヤ待った! あったぞッ!」
「……ホラァ〜やっぱりアッタでしょ〜?」
――一瞬、口元がニヤけたボスが声を上げ……その反応に、『言ったトオりでしょ〜?』……と言わんばかりの”したり顔”で反応するオルセット。
「ナニナニ……該当箇所は、”オルセットの性根”って書いてあるな……」
「ぼ、ボクのショ〜ネ? ぼっ、ボスゥ? それって、どうやって直せば……!?」
「そうだなぁ……とりあえず、前に言った”テレビ”みたく……オルセットの頭をブッ叩いて……!」
「ッ!? ゼッタイ、チガうでしょッ!? ボスゥッ!?」
――ボスの話のノリに段々と慣れてきたのか……再び握っていた”SAA”をブン投げそうな勢いで、見事な”ツッコミ”を披露するオルセット。それに対し、ボスは大口を開けては豪快に笑う。
「ハッハッハッハッハッァ〜! オルセット? こう揶揄われるのがイヤだったらホント、銃の所為にしてないで……全弾命中ぐらいは、余裕でこなして貰わないとなぁ〜?」
「……フゥゥゥゥ……ッ!」
――弱々しい威嚇音を漏らすオルセット。
「……オレの事を守りたいんだろ? オルセット?」
「……フゥゥゥゥ……」
――項垂れつつ、更に弱々しい威嚇音を漏らすオルセット。
「ほら、もう寝る時間だってのに……急に『ジュウのクンレンがしたい!』……って言った、言い出しっぺさん? 落ち込んでる暇があんなら……サッサと三回くらいは、全ての的に全弾命中って偉業は成し遂げてくれよ……? コッチは眠いながらも、指導とかに付き合ってんだから……」
「……ムゥ〜ッ! 分かってるよ〜ッ!」
――膨れっ面で、首だけを動かしてボスを睨んだ後……再び標的である”トマト缶の空き缶”目掛け、”SAA”を構えるオルセット。
〜 チキキ……カチッ! カチンッ! 〜
「ッ!? あっ、アレッ!?」
〜 チキキ……カチンッ! チキキ……カチンッ! 〜
――【たっ、タマが出ない!? 何でッ!?】――そう心の中で慌てながら、二度も”撃鉄”を動かし”SAA”の発射を試みるオルセット。
「……六発だ」
「えっ?」
「ソイツの装弾数は、六発。フリピスは一発……! 残弾数は体で覚えろって……ソイツの撃ち方を教え始めた頃から、ずっと言ってるだろう!? オルセット?」
――どこぞの”伝説の傭兵”が言っていたようなレクチャーを言いつつ、口元を軽くニヤけさせるボス。
「ゴッ、ゴメンッ! ボスゥ!」
〜 カチャ、チキキ……チャキ、チャキ、チャキ、チャキ、チャキ、チャキ……カラン、カラン、カラン、カラン、カラン、カラン……! 〜
――”SAA”などの古いタイプの回転式拳銃は、”ハーフコック”と言う機構が存在する。これは現代の銃と違い、銃弾を発射させるのに重要な部品の”撃鉄”が、銃弾の発射薬に点火させるための”雷管”と密着するような構造となっていたからだ。
この場合だと、”撃鉄”を引き切っていない場合でも、手が滑って落とすなど……”強い衝撃が撃鉄に与えられた”際に、暴発してしまう危険性があるのだ。
そのため、回転式拳銃含め……古いタイプの拳銃には、それを防止するための”安全装置の一種”として、ハンマーを少しだけ起こした位置に留める、”ハーフコック”が存在するのだ。
……と言うよりも、昔の古いタイプの拳銃には、「サムセイフティ」や「トリガーセイフティ」と言った、現代では”アタリマエ”に付いている安全装置が、軒並みに存在してなかったからとも言えるだろう……。
「落ち着いて排莢動作を行え、オルセット。焦ってアツアツの”空薬莢”が、生身の脚とかに当たったりしたら、仕様もないぞ?」
「わっ、分かってるよ〜! ボスゥ!」
――今のオルセットが行ったように、”ハーフコック”は安全機構の役目以外にも……銃弾を再装填するための動作として、行う目的もあるのだ。”SAA”などの”ハーフコック”が行える回転式拳銃は、この状態だと自由に蓮根に似た形の”回転式弾倉”を回せるようになる。
そして、銃身の下に付属した”排莢棒”を使って、”空薬莢”の排出を行う。上記の描写で、六回も”チャキ”と言う音が鳴っているのは……現代で主流なまとめて空薬莢を排出出来る回転式拳銃違い……”SAA”では回転式弾倉を回しつつ、一発ずつ空薬莢の排出を行う手間が必要だからだ。
更に言えば、彼女がボスに謝った直後……一番初めの”カチャ”という音は……弾薬や空薬莢を出し入れする”装填口”に付いた”蓋”を開け閉めしている音になる。これも地味な手間になるのだが……装填中の弾薬が不意に滑り落ちないために必要であるため、致し方ない手間であるのだ……!
〜 ……チャキ、キリッ、チャキ、キリッ、チャキ、キリッ、チャキ、キリッ、チャキ、キリッ…… 〜
――そして、排莢動作と同じように……回転式弾倉を回しつつ、最大六発までの弾薬を回転式弾倉を込めていくのだ。この時、弾の込め方は色々とあるのだが……オルセットが行なっていたのは、良くある装填方法に近いであろう。
銃本体を、親指が回転式弾倉に掛かるように左手で握りつつ……もう片方の利き手で、一発込めては親指で回転式弾倉を回して、また一発を取り出してから込めるを繰り返す。
または……複数の弾薬を利き手に保持しながら、一発を込めたら親指で回転式弾倉を回して、弾薬を保持している手から滑らせるように……”込める指”へと送っては、流れるように素早く再装填していく……を繰り返すと言った感じである。
前者は、確実な装填方法であるが、如何せん……装填速度は遅くなりやすい。後者は、手慣れた者なら一発ずつ込める”SAA”でも、かなり早く装填出来るのだが……?
「……ウワッ!?」
〜 ……カランッカラン……! 〜
――このように、慣れていなかったり焦っていたりすると……弾薬を取り落としてしまう危険性があるのだ。そうして、少し引きつったような……慌てた表情をしながら、取り落とした弾薬に手を伸ばすオルセットに、ボスはニヤニヤしながら注意を促す。
「ホラァ〜焦るなって言ったろ? それと、何で六発目を込めようとしたんだ? オルセット?」
「いっ、今はセントウチュウみたいなモンでしょう!? ボスゥ!? だったら”ゴハツ”じゃあなくて、”ロッパツ”をコメなきゃイケナイっていったのは、ボスでしょッ!?」
「そうだ! オルセットッ! よく覚えていたな〜! いいか? 絶対に、敵と戦う時以外は……五発しか、弾は込めちゃあいけないぞ? そして、シリンダーの”空の穴”に、必ずハンマーを合わせておく事だ。良いな!?」
「もぉ〜分かってるよ〜ボスゥ……」
――この上記の二人のやり取りの意味は、先程言った”ハーフコック”などの”安全装置”の話に繋がる。当時は、”ハーフコック”をしていても確実と言った安全はなかったのだ。
そこで、西部のガンマン達は……六発目の弾を込めないようにしたのだ。こうする事で、撃鉄が起こされていない状態の時、空となっている回転式弾倉の穴に合わせた撃鉄に、何かしらの力が加わっても……絶対に暴発しないという状態になるのだ。
また、”ハーフコック”の状態や、”ハーフコック”から引き切った状態など、その二つの状態から……撃鉄を”安全に戻す”際にも戻すための技術……いや、最早「お約束」と言っても良いかもしれない事なのである……!
〜 ……スッ、チャキ、カチャン……! 〜
「いいか、オルセット? 何度も言っているが……銃ってのは、真っ直ぐ構えた際……銃口の近くにある”フロントサイト”と、ハンマーの近く……目の前に見える”リアサイト”が、重なり合うようにして狙いを付けるんだ」
「分かってる! タマが出る穴のトコロの、先っぽのデッパリが”フロントサイト”! ボクのオヤユビでオこした、ハンマー近くにあるのが”リアサイト”でしょッ!?」
「そうだ! じゃあ、そのままトリガーを引いて的に当たるか?」
「当たらないッ! 必ず、的よりも下をネラうように、ちょっとジュウコウを下げるッ!」
「そうだそうだ! じゃあ、何で的より下を狙う必要がある?」
「ウッたトキのハンドウッ! ”マズルジャンプ”ってヤツでしょう!? ボスゥッ!?」
「よしよしッ! じゃあ、”マズルジャンプ”が起こる際に気をつけなきゃいけないのは?」
「ボクのカマえてる、シングルアクションアーミー! そ〜ゆ〜リボルバーをカマえているトキは、ウツさいにウマくヒジを曲げて、ハンドウをニガす事ッ!」
「ご名答だッ! じゃあ、何で”マズルジャンプ”の際の反動を、リボルバーの時は逃す必要がある?」
「手やウデをイタメナイためッ! もうッ、しつこいよッ! ボスッ!?」
「おいおい……オルセット? そう怒るな? 強者及び熟練の兵士ってのは、そんな基本……”アタリマエ”を何度も確認しては、絶対に間違わないようにして……」
「分かったよッ! もうウツからねッ!?」
……私が言いたかった解説を、ほぼ言われてしまったが……それはともかく、ボスの”確認”に痺れを切らしたのか、オルセットは制止を振り払うかの如く……勝手に射撃訓練を再開してしまったのであった……!
〜 チキキ……カチッ! パァァァァンッン! チキキ……カチッ! パァァァァンッン! チキキ……カチッ! パァァァァンッン! 〜
「……おいおい、最後まで話聞けって……」
〜 チキキ……カチッ! パァァァァンッン! チキキ……カチッ! パァァァァンッン! チキキ……カチッ! パァァァァンッン! 〜
「……ンアァァァァァァッ! 当たらないッ! 当たらないよォォォォ〜ッ! ボスゥ〜ッ!?」
「……”撃つ時のルール”をチャンと覚えてんのに……何で、一発も当たらねェんだよ……?」
――オルセットが撃った六発の弾丸は、どれも虚しく後方の夜の闇へと飲まれていった……。そんな彼女にタメ息混じりにボヤいてしまうボス。だが口調から、呆れてはいるものの……”彼女の努力”は認めているような素振りはあった。
そもそも、ここまでに行った”再装填動作”は、まず素人には思えない滑らかさがあった。そして……狙いの方も擦りはするが、どれも吹っ飛ばすか弾き飛ばすには惜しいぐらいに、空き缶を掠めていたのだ……! どれも”一ヶ月近く”と言う、彼女の”努力の成果”が垣間見える賜物であろう……。
【こうなると……オルセットには”リボルバー”や”セミオート”の銃じゃあなくて……とりあえず、銃口を敵に向ければ当たりそうな”ショットガン”や、弾幕で敵に当てるようにする”サブマシンガン”の方が、似合ってんのかなぁ……】――と、彼も心の中では彼女に対する”ガンソムリエ”として、彼女に合う銃を吟味しているのであった……!
「……オルセット? キチンと銃を握ってるよな? 初めの頃に注意していた、皿の上にティーカップを置くような握り方じゃあなくて……オルセットの利き手、”右手”をシッカリ反対の手で包み込むような握り方でやってるよな?
後は、まだ火傷はしてないみたいだけど……リボルバーだと、”トリガーガード”上部に人差し指を置く構え方は、絶対にするなよ? 発射時にシリンダーから漏れた高温の発射ガスが、お前の指を燃やすが如く……」
「……モウッ! ボスがやってよッ!」
「……ハッ?」
「ボスやってッ! オテホン見せてッ!」
「……あのなぁ、オルセット? お手本なんて、お前が今みたいに癇癪起こす度に……そりゃあもう、腐る程見せてきて……!」
「サッサと見せてよッ! ボスゥッ!?」
――【……全く、”いいセンスだ”って、褒めれるようになるのは……いつになる事やら?】――そう内心、”やれやれだぜ”と言わんばかりに……首を左右に振りながら、オルセットの立つ射撃場へと歩いて行くボス……。
因みにだが……オルセット=サンは、癇癪のあまりサラッと流してしまったが……ボスが言っていた注意事項は、現実の射撃で実際に気を付けるべき事ばかりである。
そのため、旅行などで”射撃場”に行った際は、インストラクターの方の注意を聞きつつ……宜しければ、ボスの注意と照らし合わせてみて欲しい。
おっと、そんな事を言っている合間に……彼が彼女の隣、射撃をする際の地面に描かれたラインの傍に立ち止まる。
「……フゥ……皇帝ッ!」
〜 ……ポワァァァァァァ……メギャンッ! 〜
……色々とまたツッコミたいトコロがあるが……今は黙っておこう……。
「見てろよ……? オルセット!」
――シッカリと両手で構え、空き缶に狙いを付けては引き金を絞り込んでいくボス。
〜 チキキ…パカァァァァンッン! チキキ…パコァァァァンッン! チキキ…パチャァァァァンッン! チキキ…パコォォォォンッン! チキキ…パカァァァァンッン! チキキ…パカァァァァンッン! 〜
――すると、放たれた弾丸達は……空き缶達へと軽快に穴を開けつつ、それらが並べられた”折りたたみ式のキャンピングテーブル”から次々と、缶が吹っ飛ばされて行く……ッ!
〜 クルクルクルッ、クルクルクルッ……ガシッ! 〜
「……フゥッ……まぁ、ザッとこんなモンだ……」
――全ての空き缶を見事撃ち抜いた後……”用心鉄”人差し指を掛け、そこから銃を前へ後ろへクルクルと回す……”ガンプレイ”の一種を披露する。
そして、回している最中に”銃把”をしっかり握ったかと思うと、僅かながらもまだ銃口から上っていた、白い”硝煙”に軽く息を吹き掛けては……上記の台詞を言うのであった……!
いやぁ……”スタ◯ドごっこ”は楽しいねェ〜! 「フリチケ」及び、「ガンクリ」と「マナバック」様々よッ! ……まぁ本物のように、”弾丸だってス◯ンドなんだぜェ〜?”……とかは出来ねェけど……。
けど、何故か知んないけど……”皇帝ッ!”……って叫んだ際は、必ず”メギャンッ!”って、”SE”が、脳内に響くのがもう……堪らねェ……ッ!
「ブゥ〜ボォスゥ、ズ〜ル〜イ〜ッ!」
……”ジョジョな歓喜”に浸っている中、恐縮だが……オルセット=サンが、返事して欲しそうな膨れっ面で、君の事を見ているぞ……? ボス君……?
……分かってる。
「……オルセット? ズルイもクソもねェぞ? オレだって……銃を初めて握った頃は、全然当たらなかったんだぞ?」
「……え?」
「けど、この世界に来る前に……たくさん練習していたからこそ、今みたく”カッコ付けられるような腕前”が出せるんだよ、分かるか?」
「……ん〜まぁ、タシかにィ〜?」
――銃のセンスはなくとも、やはりそれ以外のセンスはあるのか……ボスを少し見つめた後、そっぽを向いては、先程彼がしていた”ガンプレイ”を再現しながら、それを見つめるオルセット。
「だろゥ? カッコよかっただろゥ?」
〜 ……プッツン……! 〜
「なら、オルセットも頑張って練習を……!?」
〜 ジャキィィンッ! 〜
「バッ、ババババババッ!? バカッ! オルセットッ!? 例え、弾切れだったとしても……絶ッ対ッ! 銃口は味方に向けるなって、最初の頃から言ってるだろうがッ!?」
――まるで溺れそうな鳥の如く……”SAA”を持ったまま、両手をブンブンと高速で動かしては、オルセットが向けた”SAA”に対し、とことんビビり散らかすボス。
この様に大袈裟だなぁ……と思う、◯者の諸君が多いだろうが……一つ、実話を言っておこう……。
2010年代……アメリカのとある州で、本物の銃そっくりに見えるエアガンを所持していた少年がいた。その少年は、ただ遊んでいたつもりなのだろうが……やがて通報を受けてしまう。
やがて少年の元に現れたのは、新米の警官とベテランな警官の二人組。『あっ! ポリスメンだ〜!』……的なノリで、ギャングごっこでもしたかったのだろう……その少年が持っていたエアガンを抜いた瞬間……ッ!
”ズダァァァァンッン!”……その直後、少年がエアガンを抜く動作を見た警官の一人が、少年に向けて発砲していたのだ……!
このように、”おもちゃの銃”であろうと……場合によってはとんでもない誤解を招いてしまう危険性を孕んでいるのだ。それ以前に、誰だってナイフなどの”武器”を……自身の急所に突きつけられたら、”楽しい気持ち”や”嬉しい気持ち”になる人が、居るのであろうかッ!?
……この問い掛けに手を挙げた人は一旦、置いといて……賢明な◯者の諸君は、海外に行った際には必ずッ! 本物でも弾薬が入ってなかろうと……おもちゃで人を傷つけられる訳ないからと……絶対に、銃口を人に向けないようにしよう……!
無論、”くだらない事”で……命を落としたくないのであればだが……?
「……チョッピリ、ムカついたから……!」
〜 ガスンッ! 〜
「フギャアァァァ〜アァァッ!? イッタイよォ〜ッ!? ボスゥッ!?」
……うわぁ……”SAA”を握ったまま、その”銃把の底”でオルセットの頭頂部をブン殴ったボス……! ”銃の破損”や最悪、”撲殺”にも繋がる事で……大変、宜しく無い行為なのだが……。
流石は獣人と言うか……それに耐え切り、普通に拳で殴られては、両手で頭を押さえるような程度で済む彼女も、ある意味凄いが……彼女の気持ちも分からなくはないが……だが有罪ッ! 有罪であるッ!
例えムカついても……悪者以外、絶対に銃口を人に向けてはならないぞッ!?
「このッ! バカ野郎がッ! その行為は、ブン殴られて当然の事なんだよッ!?」
「でっ、でも……!」
「でももクソあるかッ!? オルセットッ! 例え冗談だとしても、この世界で銃を持ってるような奴がいなかったとしても……! 武器を向けられるってのは! 気分の良い事じゃあないって事はッ! 分かり切ってる事だろうがッ! エェッ!?」
――散弾銃や機関銃の如く……物凄い剣幕かつ、唾を撒き散らす程の勢いで、オルセットに向けて怒鳴り立てるボス。
それに対し、彼女は彼に逆らう実力が十分あるにも関わらず……もう殴られた痛みも忘れる程、白旗を上げる寸前という感じに、その場の地面に座り込んでは今にも泣き出しそうになっていた……!
「……ご、ゴメン……ボスゥ……! ゴメンッ…てば……ッ!」
「……ゴメン? ゴメンで済んでんなら……こんなブチギレねェよ、クソッタレがッ!」
「ニャヒィィィィィィィィッ!?」
――”静かな飛翔をした末に、着弾したかのような……対戦車ロケット弾の一撃”の如き一喝を響かせるボスッ! そしてついに涙を流しては、悲鳴をあげてしまうオルセットッ!
「なぁ……おい? 冗談でも武器を仲間に向けて……それで誤って、”人殺し”してすみませんでした〜って……それで済まそうとする、最低な野郎なのか……? エェッ? オルセット……? テメェは、そんな最低な”クソ野郎”かって聞いてんだよッ!? オイッ!?」
「ち、チガウ……! チガウってボスゥ……! ボッ、ボクッ、そんなつもりじゃあ……!?」
「そんなつもりじゃあって、済まねェ事なんだよッ! クソッタレがッ! アァッ!? テメェ、今まで何回同じ事をやってきたと思ってんだッ!? そして、そん時毎回ッ! オレが見逃すような、”軽い説教”で済ませてきたと思ってんだッ!? エェェッ!?
”仏の顔も三度まで”……ってッ! そん時に、ヤンワリとも教えていただろうがッ!? クソッタレッ!」
「ぼ、ボスゥ……! オッ、オネガイ……! ハナシを……キいて……ッ!」
「……あぁ、そうだよな? 話を今まで聞いて、軽〜く免除してきたよなぁ……? ……そして、その結果が……今みたいな”絶対にフザケちゃあいけない事”を、ヤラかしているんだよなぁ? コレの何処に……怒らないで下さいって、偉ソ〜に言える隙間があるって言えるんだよッ!? エェェッ!? クソッタレがッ!」
〜 ドガァァッ! ガサガサガサガサガサ……ッ! 〜
……今度は、何も知らずに地雷原へと足を踏み込み、数十歩の静かな時間の後……突然、地雷が爆発してしまったかの如く……ボスはその怒声をもうとっくの昔に、”尻尾を片足に巻き付けていた”オルセットに向けて、ブチ撒けていた……!
その彼の怒り様は、臨界点をもうとっくに天元突破しているのであろう……。だが、そんな怒りに飲まれる中でも、理性は残っているのか……近場にあった樹木に”前蹴り”をブチ咬ましては、数十枚近くの木の葉を落としていた……!
本当は、オルセットに向けて……という気持ちが、ない訳でもなかろうに……。
〜 ……ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ……! 〜
「……ボスゥ……! ……ボスゥ……! ゴメン……ってば……! ……ボスゥ……ッ!」
……”ブルー◯リーみたいな色をした全◯の巨人”に、追っかけ回されていた訳でもないが……体操座りの状態から、両手で頭を抱えるようにガッタガタと震えては、怯え切ってしまったオルセット……。
恐らく、一ヶ月以上の間でも……基本的に、彼女に対して穏やかで優しいボス以外、全くと言って良い程、見た事がなかったのだろう……。
そんな様子の彼女に、一方のボスはと言うと……?
〜 ……ボリボリボリボリボリ……! 〜
「……あぁ〜参ったなぁ……コリャァ……」
――流石にヤリ過ぎたとでも思ったのか……後頭部を無造作に掻きむしった後、困惑するかのようにボヤいていたのだった……。
〜 ……トン、トントン……。 〜
「……おい、オルセット? お〜い?」
――ヤンキー座りの状態から、優しくオルセットの肩を叩いては、彼女への呼びかけを試みるボス。
〜 ……ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ……! 〜
「……ボスゥ……! ……ボスゥ……! ゴメン……ってば……! ……ボスゥ……ッ!」
――だが以前、本気で怯えたままであった……! それでもめげず、彼女への呼びかけを試みるボス。
〜 ……トン、トントン……。 〜
「……おい、お〜い? オルセット? もう、怒らねェから……おいっ?」
〜 ……ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ……! 〜
「……ボスゥ……! ……ボスゥ……! ゴメン……ってば……! ……ボスゥ……ッ!」
――だが以前、本気で怯えたままであった……! この様子にボスは、思わず頭をガックシ落としてしまう……。
「ハァ……まぁ、ヤリ過ぎたか……」
――左右に軽く頭を振りつつ、反省するボス。そうして何を思ったのか……スクッと、素早く立ち上がると……?
「……トレーニング、リセット」
〜 ギュゥオォォォォォンッ! ……キュルキュルキュルキュル……ピロリン! Reset complete 〜
「……ニャ、ニャレ? アタマのイタみがキュウに……!?」
「おい、オルセット?」
――突如として、ボスから殴られた痛みが消えた事に戸惑うオルセット。そこに、今度は片膝をつくようにして、彼女の目線に合うよう姿勢を低くするボス。
「ニャヒィッ!?」
「おい、落ち着け。そう、後ろに逃げんなよ? もう、怒んねェから……」
――尻餅を付いたような状態で、未だ怯え切っては……後方に逃げようとしていたオルセットに対し、そう優しく語りかけるボス。
「……ホ、ホント……?」
「あぁ、ホントだ。マジ。後、嘘だと思うなら……コッチ来なくてもいいぞ?」
――チョッピリ疑わしいと思ったのか……何故か、背後をチラリと一瞥するオルセット。
だが……彼女がこの時以前からよく見ていた、口角だけを僅かに上げるボスの”不器用な微笑”と……まるで小動物かのような動きで、小さく逆手に手招きする”彼の右手”を見た彼女は……ジョジョに……ジョジョに、ジョジョにと、彼の元へと……その一メートル近く離れた間を、擦り寄るように縮めるのであった……!
「……フゥゥゥゥ……」
――それでもまだ警戒心があったのか……未だ怯えきったような、弱々しい威嚇音を口から漏らすオルセット。
〜 ポン、サラサラ…サラサラ…サラサラ……。 〜
「……フニャァ……ッ!?」
――しかし、ようやくボスの元に擦り寄った、オルセットに待ち受けていたのは……彼の右手が、彼女の頭にポンと乗せられた事と……その後に間髪入れず始まっては、いつも良く味わう……耐え難い心地良さであった……!
だが、そんな呆気に取られた、彼女の”間抜け面”に対して何も言わず……彼は優しく語り出す……!
「……ゴメンな? オルセット。咄嗟とは言えど……”SAAのグリップ”で、ブン殴るような事をしてな……? コレだけは、流石にヤリ過ぎだと思ったよ……」
「……エッ?」
「……何だよ? それだけ? ……って、感じの表情しやがって……。悪リィけど、それ以外は謝れねェよ……。何たって、それは絶対……オルセットに対して、絶対に怒らなくちゃあいけない事だったからだよ。
……今まで、オレが甘過ぎたって……一瞬、思っちまう程にな?」
「……ボクに、オコんなくっちゃあ……いけないコト……?」
――今もポロポロと涙を流すオルセット。そんな彼女にボスは一旦、頭を撫でるのを止めたかと思えば……ズボンのポケットからハンカチを取り出しては、彼女の両目を優しく拭うのであった……。
「オレはな? ”正しい”と思ったからやったんだ。ここはシッカリ、オルセットの事を……例え、ブン殴るような事になったとしても、怒っておかないと……ってな? 今後絶対、オルセットがそう言った”間違い”を犯さないためにも……って事だよ。……分かるか? オルセット?」
「……ボクのため……?」
「そうだ。決して、オルセットの事が嫌いだったり、憎かったり、殺したいとか思って……さっきの事をやったんじゃあねェんだよ? ホント……今後、オルセットには”間違って欲しくない”からこそ……厳しく怒ったんだよ……」
――『涙を流す女性に、優しくハンカチ』……なんて、結構なイケメンム〜ヴを咬ましている癖に……その後は”口説き”じゃあなく、随分ご立派なお説教な事で……?
……クソ無粋な事、言ってんじゃあねェよッ!? 間違った事を、間違っているって……ハッキリ注意しないで、何が”正しい”って言えるんだよ……ッ!?
……立派だねェ……ボス君。不器用な程に……。
「……ジュウコウを……ボスとかの……”ナカマ”に……向けちゃあ……ダメ?」
「……勿論、ダメだ。銃以外の武器でさえもだ。……それとも何だ? またフザケては、今度は頭以外にも……手足もボッキボキにして欲しいのか?」
「……それだと、ボクが勝っちゃう……」
〜 スコンッ。 〜
「イタッ!?」
――ボスの態度に、だいぶ緊張が解れていたのか……何を思ったのか、軽口を叩くオルセット。それに対し、ボスは右手で軽く”手刀打ち”を彼女の脳天に喰らわせるのであった……!
「茶化すな、オルセット? それで嫌がらないなら……お前をボッコボコにした後、木とかに縛り付けて、置き去りにするぞ?」
「ッ!?」
〜 ブンブンブンブンブンブンブンッ! 〜
――その発言に対して、瞬時に顔面蒼白になっては……首が吹っ飛びかねない勢いで、高速かつ左右にブンブンと首を震わせるオルセット。
「……嫌だろ? 今回、オレの”ホンキ度”ってのは、そんだけあったワケだ。そんだけ”怒ってた”って事だ。……分かったか? オルセット?」
「……ウン。分かった……。ジュウやブキは……ナカマに向けない……だね?」
「……そうだ。そして出来れば……”無関係な人”にだって向けるんじゃあねェぞ? 絶対にな?」
「……ウン……」
「ヨシッ! じゃあ、もう……仲直り……って、事でな? オルセット?」
〜 ポン、ワシャワシャワシャワシャワシャ……ッ! 〜
――『それは仲直りの◯手の代わりだ』……と、荒々しい事をした”ナントカ院さん”とは違うモノの……それでもボスは、荒々しく彼女の”頭頂部”を……まるでミキサーで生クリームを掻き立てるかの如く、撫で回すのであった……!
「ちょ、ボォ〜スゥ〜ッ!? カミが……ミダれちゃうよ〜ッ!」
「エェ〜? 何だって〜? 一ヶ月前はそんな事ォ、とことん無頓着だったクセにィ〜? 髪がサラサラになった途端、急に乙女に気になりだすってのか〜? エェ? ホレッ、ホレホレッ!」
〜 ……ワシャワシャワシャワシャワシャ……ッ! 〜
「ちょ、ボォ〜スゥ〜ッ!? ヤメテ……ヤメテよ〜ッ!」
「ハッハッハッハッハッ……。ホラ、これに懲りたら……今後、絶対にすんなよ〜? オルセット?」
「……ウン、分かったよ……ボスゥ」
「ヨシッ、良い子だ」
――サラサラなモノの……チョッピリ、”ライオンっぽい髪のハネ方”に掻き乱されていたオルセットの髪を、軽く手櫛で直した後……再び彼女の頭を優しく撫でるボス。
それに対し、オルセットはボスが再び、折りたたみ式ソファの方に戻っていくのを見ながら……撫でられた所に手を当てた後、その手を眼前に眺めては……ホンのチョッピリ、頬を赤く染めていたのであった……。
「ヨシッ! じゃあ、オルセット? さっきの続きだ……! 全弾命中を三回……! ホラ、頑張れェ〜!」
「……モォ〜、分かってるよ〜ボォスゥ〜」
――そう言っては、先程の「トレーニング」のスキル効果で一緒に復元していたのか……弾痕一つなく、綺麗に横一列に並べられた”空き缶”目掛け、再び向き直っては”SAA”の”再装填”を始めるオルセット。
どうやら「トレーニング」の”リセット”は、細かくリセット対象を選定する事も可能なようだ。意外と器用な物である。……ところで気になったのだが……ボス君?
……何だよ?
「……リロード!」
〜 カチャ、チキキ……チャキ、チャキ、チャキ、チャキ、チャキ、チャキ……カラン、カラン、カラン、カラン、カラン、カラン……! 〜
……君の服……いつのまに、”リセット”されたのだろうか?
……何故か知んねェけど……「アウトドアセール」の中に、”ボスのスポーツジャケット”とか……ご丁寧に、ご一式があったモンでね……!?
〜 ……チャキ、キリッ、チャキ、キリッ、チャキ、キリッ、チャキ、キリッ、チャキ、キリッ、チャキ、キリッ、カチャン……! 〜
……ほぉ? それは良かったではないか……?
……愉快犯がしらばっくれやがって……クソッタレ……。
……失礼だなぁ? 一回イケナイお喋りをし過ぎてしまった事は謝るが……それでも、君達の損失になるような事は、私は一切していないぞ〜?
「……リロードカンリョウ! ウつよ、ボスゥ!」
「……あぁ、好きにやれ」
……どうだか? オレより先輩な”ナントカ・グレイラット”さんは……異世界で、”ゲス神”とか言う奴みたいに騙されて……それで、”戦闘力”の概念がある漫画の世界の話みたいに……”過去の自分に忠告する”って、ハメに陥ってたからなぁ……。
ちょうど、オレの頭の中に話し掛けてくるテメェ〜みたいな奴にな……?
……ほぉ? いい警戒心じゃあないか、ボス君? いい心掛けだ……。だが、私をあんな”ビチクソ神”と同じにしないで欲しい物だ……。あっ、◯者の皆さんは実際に”無◯転生”! 是非、原作小説などを買っては、私達の話の”真意”を探してみて下さいね〜? アニメも、気合の入った作画で制作されてますよ〜ッ!
……ホント……◯者の皆さんって、誰だよ……?
〜 チキキ……カチッ! パァァァァンッン! チキキ……カチッ! パァァァァンッン! 〜
「アタレ……アタレ……ッ!」
……さて、お遊びはここまでにして……!
……何だ? やっとオレらを、何かにハメる気にでもなったか……?
……いや全く。ですが……最後に一つだけよろしいですか?
……何だよ? ”右◯さん”みたいな事、言いやがって……!?
〜 チキキ……カチッ! パァァァァンッン! チキキ……カチッ! パァァァァンッン! 〜
「アタッて……! アタッてッて……ッ!」
新たに入手した筈の「”フリーバイ”チケット」……。
アレの効果は確か……『「ガンズクリエイト」で生産が可能状態の銃を、”一丁だけ無限に生産を可能にする事”』……だった筈だ。
それこそ、”散弾銃”なら、散弾を高速連射出来る物や……”小銃”なら、狙撃銃弾を連射出来る物を出すなんて容易な筈……! それなのに、何故出さない? 其れらを出せてれば、ボス君が常日頃からボヤいているであろう”異世界無双”なんて、すぐにでも……!
……バカかっての、テメェは……?
……えっ?
確かに……ドッチも強力な銃だ。特に”バトルライフル”なんてロマンがある……! 異世界で一丁でも携えてれば……鎧だろうが、固い外殻だろうが、容易くブチ抜けるだろう……! だけどなぁ……? どっちもダメなんだよ……それなんじゃあ……ッ!
〜 チキキ……カチッ! パァァァァンッン! チキキ……カチッ! パァァァァンッン! 〜
「アァァァァ……ッ! アタラナァァァァイッ!」
……と言うと?
いろんな異世界物や、アニメとかドラマとか映画とかも見てきたつもりだけど……その中で、二つだけツッコませて欲しい……! 恐縮だが、銃に対する描写が甘い作品……”銃の整備”とかド〜してんだぁ?
そして……ヤタラメッタラ、自分が好きな銃ばかり出してるアホってのは……”弾薬の互換性”ってのを、頭の中からほっぽり投げてねェかぁ……?
「……いや、もう一回ッ! リロードッ!」
〜 カチャ、チキキ……チャキ、チャキ、チャキ、チャキ、チャキ、チャキ……カラン、カラン、カラン、カラン、カラン、カラン……! 〜
”銃の整備”と”弾薬の互換性”……? そっ、そんな物……一丁、強力な物を出せれば……!
じゃあ、その一丁がブッ壊れたらどうするんだ? それも、修理したり……再調達が出来ないような状態だったら? 弾薬は? 無限なのか? 有限なのか? 容易に調達出来る状態や状況なのか? それに……その一丁だけで、その”世界全ての敵”に対して……有効な手段となり得る武器なのか?
それで? その武器が効かない敵が出てきたらどうするんだ? エェ? 新しい武器が調達出来ず、出来たとしても『好きな武器だから!』……って、後々使い道に困るような”規格違いの銃”を出しては、重い荷物を更に作るのか? エェッ? それで挙句の果てに……両手を上げて降参すんのか?
……エェェ……!? かっ、考え過ぎじゃあ……ッ!?
〜 カチャ、チキキ……チャキ、チャキ、チャキ、チャキ、チャキ、チャキ……カラン、カラン、カラン、カラン、カラン、カラン……! 〜
「……リロードカンリョウッ! コンドこそ……ッ!」
……異世界に来て、サバイバル生活に近い物を送っている、オレから言わせてもらえば……異世界に来る事を、ピクニックやハイキングに行く物だと勘違いすんな。
むしろ、何の装備持たずに……”未開のジャングル”や、溶岩流れる”火山地帯”、あるいは”北極”や”南極”に裸で放り出されるような……未曽有の連続が続く危険地帯だぞ? いいか? ポーカーで、”ロイヤルストレートフラッシュ”が出続けるような……”あり得ないような事”の連続だぞ? 異世界はッ!?
しかもほぼ無法地帯。日本どころか……地球の法律なんて意味を成さない、『自分の身は自分で守れ』を地で行くような世界だぞッ!? もっと言っちまえば、元の世界で何の”知識”も、”技術”も、”努力”でさえも……蓄えなかった奴が、別の世界に来て、”成り上がり”なんて……甚だしい。
現に、オレもそんな”ご都合主義”にハマってんなら……とっくの昔、一ヶ月経った今は”王様”か”英雄”な生活で、ご満悦な筈だ。……それがド〜よ? こんな”訓練漬けのテント生活”をやってんだ……異世界、舐めんなって……ッ!
まぁ、ただ……偉そうに言って恐縮だが……転生とかで、”奴隷”とかの最底辺から……ほぼ何の力もなく成り上がった奴に対しては……素直に、賞賛に値するかなぁ……。純粋な、”努力”の二文字で成り上がってる訳だろうし……。
〜 チキキ……カチッ! パカァァァァンッン! 〜
「ッ! あ……アタッたッ!」
……で? 結局、何が言いたいのだ?
〜 チキキ……カチッ! パコォォォォンッン! 〜
「……ウン! ……アタッてる! アタッてるッ!」
……悪い、愚痴を言い過ぎた……。まぁ、要するに……コイツの所為でもある……。
〜 ヴィィン 〜
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〈クリエイトメニュー〉
<拳銃弾>
・「38SP弾」
➡ MP:280(BC:Lev.3)
・「9mmパラベラム弾」
➡ MP:232(BC:Lev.3)
・「45ACP弾」
➡ MP:640(BC:Lev.3)
・「45LW弾」
➡ MP:0(本来はMP:840)
・「357マグナム弾」
➡ MP:736(BC:Lev.3)
<散弾>
・「12ケージ弾(バックショット)」
➡ MP:112(BC:Lev.3)
・「12ケージ弾(スラグ)」
➡ MP:122(BC:Lev.3)
・「12ケージ弾(ゴムスラグ)」
➡ MP:96(BC:Lev.3)
<小銃弾>
・「5.56x45mm NATO弾」
➡ MP:380(BC:Lev.3)
・「7.62x51mm NATO弾」
➡ MP:730(BC:Lev.3)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これがよォ……? 十発ずつでもなく! 百発ずつでもなく! 一発ずつの値段なんだぜッ!? 今のオレの魔力量で、一か二発ずつ毎日出して……補給が間に合うかよッ!? しかもどの弾も、対応する銃を出せない状況でだぞッ!?
弾を無限に出せるようになったとしても、その銃弾が効かない敵が出たら”一貫の終わり”……ってな状況で、一体ド〜すんだよッ!?
……じゃあ何で、拳銃にも短機関銃にも使える互換性も高い「9mm弾」じゃあなく、何故に「45LW弾」なんて選んだのだ? しかも旧式な”ブラックパウダーモデル”を……?
〜 チキキ……パチュゥゥゥゥンッン! チキキ……パカァァァァンッン! 〜
「……ヨシッ! ……分かってきた気がする……ッ!」
……カッコイイからに決まってんだろう?
……えッ!?
……冗談だ。もっと安い「ロケットボール弾」とかの古い弾薬だの、「22LR弾」とかもあったが……前者は、互換性もクソもねェし……後者はいくつかの互換性があっても……威力の問題が……!
……だから、威力が高い「45口径」を?
「……フゥゥゥ……」
……そうだ。それもあるが……まともな”掃除キット”なく、簡単な銃器分解は出来ても……専用の工具もないこの状況で、”掃除ナシ・整備ナシ”がある程度長く続いても、”大丈夫な銃”と言えば……リボルバーだ。
それに、「9mm弾」や「45ACP弾」と言った……有名かつメジャーな弾より、僅かながら威力が高いしな。ただ……出てきたのが、”ブラックパウダーモデル”だったのは誤算だけどな……カッコいいけど……。
……えっ?
〜 パコパカァァァァンッン! 〜
「フニャァァァ……ッ! ヤッタァァァァァッ! ボスゥッ! ボスが言っていた”ファニングショット”ッ! デキたよ〜ッ!」
「……えっ? え、エェェェェェッ!? 嘘だろッ!?」
「ウソじゃあないよォ〜ボスゥ〜? ホラ〜、ミテミテ〜ッ!」
……先程の最後辺り、もう一度問い質したい物だが……まぁ、良いだろう……。左手で手招きしつつ、右手に握った”SAA”で、オルセットが指差す先には……一列にお行儀良く並んでいた筈の”空き缶”達が、悲惨な壊滅状態となって地面に転がっていたのだ……!
【あの”実況野郎”と話していると……大抵、上の空だからな……オルセットのファニングショットを見逃ちまうとは……】――何かと残念そうな心境だが、ソファから動かず……彼女が指差す方を見ては、目を丸くさせるボス。
「おぉ〜、やるじゃねェかッ! オルセットッ! ファニングについては半信半疑だが……それでもやっと、この一ヶ月で初の”全弾命中”を果たしたかッ!」
――そう言いつつ、軽く口元を緩ませながら……軽い拍手を彼女に送るボス。
「……ムゥ〜! ちゃんと見ててよ〜ボスゥ〜ッ!」
「悪ィ、悪ィ……悪かったって。ちょっと考え事をしてて、見てる場合じゃあなかったんだ……ゴメンな? オルセット」
「……ムゥ〜!」
――完全に納得がいかないのか……膨れっ面のまま、可愛らしい呻き声を上げるオルセット。
「ハハッ、悪かったって……。今度はチャンと見てるから……ホラ、先にリロードしておけ」
「エェェェ〜」
「最低でも……”三周”はって、言ったろ? ホラ、リロードを始めて。ガンバレ後、二周ッ!」
「……モォォ……ンッ?」
〜 ヒクッ、ヒクヒクッ……。 〜
「ねェ、ボスゥ? どっかケガした?」
「あぁ? 何でだ?」
「イヤ、だって……チョットマエまで……”シングルアクションアーミー”のショ〜エン? ……のクッサイニオイで、気づかなかったケド……ボスのイるホ〜コ〜から、血のニオイがするよ〜?」
「……オレの居る方向? 血の臭い?」
――”フリピス”や”SAAのブラックパウダーモデル”の発射薬として使用される”黒色火薬”は……”木炭”、”硫黄”、”硝石(硝酸カリウム)”の三つを、適度な分量で調合する事で、作成出来る。
その内、”硫黄”は活火山などで採取される。温泉街で嗅ぐ事のあるであろう……あの臭いの元となる物だ。一方の”硝石”は……なんていうか……その…下品なんですが…フフ……主な材料は……”排泄物”でしてね……? より…詳しい……詳細は……◯者の皆さんが……調べて……フッ、フフ……。
……何、あの”変態殺人鬼”みたいな事言ってんだよッ!? ……いや、それよりも……! オルセットが言ってた方向って、確か……まだ”防衛用のトラップ”を仕掛けてなかったハズ……ッ!?
「……オルセット、直ぐに”SAA”をリロードしとけ……ッ!」
――おっと、私とした事が余計な”ツッコミ”を受けてしまった……申し訳ない。さて……? 『ボスがいる方向』と言われ、自身の背後辺りの風景を警戒するように眺めては……そうオルセットに、指示を飛ばすボス。
「えっ?」
「早くしろッ! 何かしらで、手負いになった”魔物か何か”が、コッチに向かって来てるって事だよッ! 今直ぐに戦闘準備に入れッ!」
「えっ、じゃあ……ボスのテキッ!?」
「あぁ、そうだッ! その可能性が高いから、戦闘準備をしておけって事だ!」
〜 ……プッツン……! 〜
「……フゥゥゥゥ、フゥゥゥゥゥゥッ!」
――腹の奥底から沸々と湧き上がってくる、抗い難い”怒り”をオルセットは感じていた……。
”尻尾の毛”がジョジョに逆立ち……獣人特有の立派な”犬歯が見える歯”を剥き出しになっていき……チョッピリキツくもカワカッコ良かった”吊り目”は、今や鋭い眼光の”猛獣の眼”へと、なろうとしていた……!
……恐らく、一ヶ月以上前からの”後悔”が……彼女をこのように駆立てているのであろう……。
「おい、オルセット! 闘志を燃えさせるのは後にして、早くリロードをしとけッ!」
「……ゥゥゥゥゥ……えっ!? で、でも……ッ!?」
「でももクソもあるかッ!? さっき出来たって言う、”ファニングショット”! オレに見せたくないのか!?」
「ッ! ……う、ウン! 分かった、ボスゥッ! リロード!」
〜 カチャ、チキキ……チャキ、チャキ、チャキ、チャキ、チャキ、チャキ……カラン、カラン、カラン、カラン、カラン、カラン……! 〜
――ほう? だいぶ、彼女の扱い方が上手くなってきたようだねェ……ボス君?
当たり前だろ。一ヶ月も”問題児”の相手してりゃあ……嫌でも上手い扱いするよう、考えるようになるわッ!?
〜 ……チャキ、キリッ、チャキ、キリッ、チャキ、キリッ、チャキ、キリッ、チャキ、キリッ、チャキ、キリッ、カチャン……! 〜
「リロードカンリョウッ! いつでもオ〜ケ〜だよッ! ボスゥッ!」
「ヨシ、いつも通り……オレが近づく。後、オレが指示するまで……絶対に撃つなよ、オルセット?」
「分かってるよッ! ボスゥッ!」
――【周囲の警戒も頼むぞ?】――そう言うとボスは、左手に逆手に持った”ナイフ”を……右手にズボンの腰のベルト、その背中側に挟み込んでいた”SAA”を引き抜いては……先程警戒した方面へと、”SAA”を両手で構えつつ……ソロリソロ〜リと、慎重に歩みを進めるのであった……ッ!
〜 ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…ザッ……。 〜
『……オルセット、血の匂いの方向は?』
『……トクにカワッてないよ、ボスゥ……』
……おや? ボス達の口は、ピクリとも動いていないッ!? だが”腹話術”のように、音が漏れている訳でもないッ!? なっ、なのに……! まるで真横に並んで喋っているように……いや、むしろ”無線通信”しているかのように、意思疎通が出来ている……ッ!?
〜 ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…ザッ……。 〜
『……けど……なんだろう……?』
『……ん? どうした、オルセット……?』
『……いや……今までにクンクンしてきた、マモノのニオイとは……ゼンゼンチガウ……』
『……って事は、野盗か?』
――ボスから離れた位置に残ったオルセットは、”SAA”を両手で強く握り締めつつも、軽く首を横に振る。
『……ウゥ〜ウ〜ン、チガウ。ボスゥ……キミョウだとオモうケド……血は血でも……”サワヤカなニオイ”がするんだ』
『……爽やかなニオイ? ……どんなニオイだ?』
『……ナンだろう? ウマク言えないけど……”モリ”かな? ニンゲンクサくないと言うか……』
『……人間臭くない……か。それと”森”だな?』
『ウン、”木”とか”ハッパ”のね。マエにボスが話していた、”トッタド〜!”とかじゃあなくて……』
『……いや、”無人島○円生活”の話はしたけどさぁ……!?』
――ハッ! 二人とも”首の頸動脈”に、人差し指と中指を添えている……ッ! これが恐らく、この”無線通信”のようなスキルの……ッ!
……おっと、失礼。つい自分の発見に興奮しては、お恥ずかしい醜態をお見せしてしまった……。重ね重ね申し訳ない……! ……ただ、現在のボスは……結構余裕のある会話をしつつも、問題である「罠を仕掛けていない付近」に到着したようだ。場所的には……ボスのテントがある東側”のようである。
『……ヨシッ、オルセット? いつも通り警告するぞ? 後、確認だが……オレが合図するまでは……』
『ボクはウッちゃいけない! ……でしょ? それに、ボスがタイショできないテキだったら……マッサキニ、ボクがハシリデルって……ッ!』
『そこは”躍り出る”な? ”走り出る”じゃあなくて……』
『……ウ〜ン、”ニホンゴ”……ムズカシイ……ッ!』
『ハハッ、焦るなって。ゆっくり覚えてけば良いからな、オルセット?』
『……ウン』
〜 ……ガサッ……! 〜
『『ッ!?』』
――ボス達のテントがある小さな広場と、森の境界線……その境目に向け、ボスとオルセットは目を光らせていた。だが、その現場近くのボスと……離れた場所だろうと、彼以上の身体能力を持つオルセットは……その僅かな”葉が擦れる音”を聞き逃す筈もなかった……!
『……始めるぞ? オルセット……?』
『……ウン、分かった。気を付けて、ボスゥ……!』
「スゥゥゥゥ……オイッ! 武器を捨てて、両手を上げろッ! こっちはもう、お前達に向けて武器で狙っているッ! おかしな真似をせずに、大人しく出て来いッ!」
――赤子や幼児であれば、聞いた瞬間に泣き出しそうな……ドスの効いた怒鳴り声を、ボスは”不審人物”のいるらしき方向に向け浴びせ掛ける……ッ! ……しかし、何も反応は起きず……彼の声は虚しく、夜の森に響くだけであった……。
『……臭いはどうだ? オルセット?』
『……ウゴイてない。止まってるよ、ボスゥ。けど……マヨッてる?』
『……迷う? ……それじゃあ、ここら辺に迷い込んだ”旅人”か?』
『……ウ〜ン、分かんない……!』
『……分かった。オルセットはそのまま周囲の警戒を頼む。オレはこのまま、呼びかけを続ける』
『リョ〜カイッ! ボスゥッ!』
「スゥゥゥゥ……オイッ! 武器さえ捨ててくれれば、こっちもそちらを攻撃しないッ! だから……変な真似をしないで、大人しく出て来きてくれッ! もし、食糧に困っているなら……交渉次第で、幾らか分けてやる事も出来るぞッ!?」
――再び呼吸を整えた後……夜の森にボスの大声が響き渡る……! だが、その声にはもうほとんど”怒り”の感情はなかった……。彼が推測した”旅人”と言う予測から、相手がある程度安心するような”内容”と”声色”に、彼は変えていたのだ……!
『……今度はどうだ? オルセット?』
『……まだウゴかない。けど……オビえてる?』
『……何だ? ボクみたいだって、言いたいのか? オルセット?』
『ちょ!? ボスゥッ! 今、ダイジなトコ何でしょ!? フザケないでよッ!』
『……ハハッ、悪ィって。けど後、もう一押しって所か……魔物とかにでも襲われて、疲労困憊で怯えているのか……?』
『……ボクにキかれても、分からないよォ……!?』
『……まぁ、そこはオレが考えなきゃいけないって所か……。オルセット。引き続き、警戒を頼む』
『ウン、ダイジョウブだと思うけど……キをツけて、ボスゥ』
『あぁ、お前もな?』
――ちょっとした軽口を交えつつも、ボスは再び大声を上げる。
「スゥゥゥゥ……オイッ! 魔物とかに襲われたのかッ!? オレらは”奴隷商人”とかみたいな、クソ野郎供じゃあないッ! 捕まえて売り飛ばすとか考えてねェから……頼むからッ! 武器だけは捨てて出てきてくれッ! そっちがコッチに危害を加えたら、助けたくとも助けられなくなるからなッ!? 分かったか〜ッ!?」
――最低限の用心は残しつつ、ボスは森の闇に潜むらしき”不審人物”に向け……最大限の譲歩を提示するのであった……! ……だが、ボスの声は虚しく……!?
〜 ……ガサッ……ガサッガサッ……! 〜
『『ッ!?』』
『ボスゥ、ウゴいてる……! ボスの方に、マッスグ向かってキてるよ……ッ!』
『……オルセット、トリガーからまだ指は離しておけ。後、ハンマーもまだ起こすなよ?』
『分かってる! けど、ボスがアブなくなったら……オネガイがなくても、ボクはオドリデルからねッ!?』
『……頼りにしてるぞ、オルセット?』
〜 チキキキキキ……カチッ! 〜
――そうオルセットに、念話(?)で伝えると、ボスは自分が向いていた森の闇に向けて”SAA”を構え……相手に聞かれないためか、”撃鉄”を静かにゆっくりと上げるのであった……!
「オレの声が聞こえるな!? 聞こえるなら……武器を捨ててから、この声の方向に来てくれッ!」
〜 ……ガサッガサッ……ガサッガサッ……! 〜
――【……ぎこちない動きっぽいな……やっぱり、負傷してるのか?】――そう思いつつも、葉音の方向に照準を合わせ続けるボス。
〜 ズッ…ズリィ……ズッ…ズリィ……ズッ…ズリィ……。 〜
「……手を貸さなくて大丈夫かッ!? 頼むから、何か返事をしてくれッ! だけど……武器は捨ててくれよッ!?」
『……ボスゥ、ホント……ダイジョウブ?』
『……大丈夫だ、指示があるまで待て。オルセット……!』
――【……フゥゥ、人間……と思わして、今まで倒した事のない……新手の魔物でも来るのかぁ……?】――緊張感で、手汗が湿ったのか……両手に握る”ナイフ”と”銃”を再び握り直しては、照準を音の方に向け直すボス……。
〜 ズッ…ズリィ……ズッ…ズリィ……ズッ…ズリィ……。 〜
「……ハァ……ハァ……ハァ……!」
――蚊が鳴くような息遣いが、引きずる音に混ざるようになってくるが……残念ながら、この声はボスに届いてなかった……!
「……おいッ!? 本当に大丈夫かッ!? 本当……済まないが、武器を持っていない事を確認しないと……助ける事が出来ないんだッ! 本当に、済まないけど……頑張って、この声のトコロまで来てくれッ!」
――未だ銃を構え続けるも……相当悲痛かつ、歯痒そうな表情で大声を上げるボス。
〜 ズッ…ズリィ……ズッ…ズリィ……ズッ…ズリィ……ガサァ……ッ! 〜
――ボスの献身(?)とも言える呼び掛けが続いた末に……ようやく、先程から音を響かせる”不審人物の正体”が、茂みの中から姿を現す……! その正体は、ボス達のテントからパチパチと燃え上がる”焚き火”によって……暗闇にボンヤリと浮かび上がった……!
それは、二人の……?
「……ハァ……ハァ……ハァ……!」
「……こっ、子供……ッ!?」
――そう……それは、”ボロ雑巾”では生温いような状態に成り果てた……”少年”を背負う”少女”の、二人組の子供であったのだ……ッ!
「……ハァ……ハァ……ハァ……! ……フフッ……」
〜 フラッ……バタンッ! 〜
「……おい、おいッ! シッカリしろッ! おいッ!?」
――少年を背負っていた少女は、何を思っていたのか……一瞬、微笑んでいた……。膝から崩れ落ちるように倒れる直前、未だ銃を構えていたボスを見て……何故か、微笑んだのだ。
彼女達は、初めから武器どころか、何も持ってなかったかのように……服と言えるかどうかの”襤褸切れ一枚”しか、身にマトっていなかったにも関わらず……!?
〜 カチャ、チキキ……ペイッ、カチャン、キリッ、チキキ……! ザッザッザッザッ……! 〜
「おいッ! しっかりしろッ!? おいッ!?」
――少女が倒れたのを見るや否や、ボスは”SAA”の最も安全な状態である”五発の安全装置”の操作を素早く行ってから、仕舞った後……即座に横たわった少女に向け、飛び掛かるような勢いで走り寄ったッ!
だが……離れた位置からの、焚き火のボンヤリとした灯りでは不十分だったのか……ボスは、片手で持てる”LEDライト”を素早く、上着のポケットから取り出しては、少年と少女の容体を確認する……ッ!
「おいおい……こりゃぁ、ミイラかよ……ッ!?」
――ボスの言うように、その少年と少女の肉体は正に骨と皮だけな人という表現がピッタリ当て嵌まってしまう程に、ガリガリに痩せ細ってしまっていた。
……想像が付かない? それならば恐縮だが……ダイエットに目が眩み過ぎた”拒食症患者”や、骨格標本一歩手前な”肋骨が目立つ日本兵”など……そういった人達が、この少年と少女の悲惨さを物語るイメージに近いであろう……。
【クソッ! 極度の栄養失調か何かか……? あぁけど……男の子の方なんかは、女の子よりも傷が多いし……ッ! 右腕と左脚が……あらぬ方向に曲がっちまってるし……ッ!? あぁ、クソッ! 自分の医療知識のなさに、マジでクソッタレッ! ……って、言いたくなるぜ……ッ!】――懺悔もいいがボス君? 早くしないと不味いのでは……?
……んな事、分かってんだよッ!? クソッタレッ!
『オルセットォォォォォォォォッ! 早く来てくれッ!』
〜 ザッギュゥゥゥゥンッ! キキキキィィィィィィッ! 〜
「モォォォォォッ! ボスゥッ!? ウルサイよォッ!? イッシュン、アタマがパッカンッ! ……って、ワレちゃうかと……ッ!? ……エッ、ナニコレ……ッ!?」
――物凄い頭痛が起きた後のような……涙目なオルセットが、ボスの頭に”跳び蹴り”を咬ますような勢いで、彼の後方辺りに駆け込んで来た……ッ!
だが、実際に蹴り飛ばされる事なく、彼女は急ブレーキを掛けるかのように立ち止まると、その怒りをボスにブチ撒けようとした。したのだが……ボスが直視する、重なり合うように横並ぶ”二つの何か”によって、その言葉はそれ以上出なくなったのであった……!
「怒鳴ったのは済まねェ! けど、それよりも今はコッチに手を貸してくれッ! 時間がねェんだッ!」
「エェ……ボスゥ? ど〜ゆ〜事……!?」
「エルフだッ! 傷だらけのッ! しかも子供二人ッ!」
「エェェッ!? エルフッ!? しかも、キズだらけッ!?」
……そう、僅かな間だが……オルセットがスッ飛んでくる間、ボスが手早くながらも隅々まで体を調べた結果……その”二人の耳”には、ある特徴がある事が判明したのだ……!
枯れ木や落ち葉のような”茶色い肌”と……涙でクシャクシャに汚れ切った、悲痛な表情のまま気絶している”紅葉の如き赤髪”を持つ少年に……!
透き通った”雪”や”水晶”……あるいは”ビスク・ドール”の如き、芸術的とも言える”肌の白さ”と……少年に負けじと、こちらも涙袋が腫れ上がる程のクシャクシャさで顔が汚れ切った、”鮮やかなイチョウの葉を彷彿とさせる金髪”を持つ少女に……!
お互い、その筆舌に尽くし難い程の傷だらけの体に……その神の声を聞かんとばかりに……その耳は天に向かうかのように、”縦に尖っていた”のだ……!
「とにかく! テントに運ぶぞッ! オルセット! こっちの女の子の方を頼むッ! オレはこっちの黒肌の男の子を運ぶッ!」
「エェ……ハコび方ァ……?」
「今からやるから、それをマネしろッ!」
「りょ、リョ〜カイッ! ボスゥッ!」
――必死な怒鳴り声をオルセットに向けつつも、ボスは少年エルフを”横抱き”という運び方で、慎重に持ち上げる……! だがボスがある意味、拍子抜けしてしまう程……少年の体重は軽かった。
その少年は、日本で言えば”中学生”くらいの体格であったのだが……ボスの持ち上げた感覚としては、”羽毛布団”を持ち上げたと錯覚するかのような、軽さだったのだ。人を持ち上げたような重さじゃあない。
【……ヒドイ。ボスに助けられたトキの、ボロボロだったボクよりヒドイや……!】――ボスに怒鳴られ、少々困惑していたオルセットだったが……彼に言われるまま、彼の行動を真似して少女エルフを持ち上げると……その少女エルフの軽さに、オルセットのボスに対する困惑は、真っ先に掻き消えていたのであった……!
〜 ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ……! 〜
「派手に揺らすなよッ!? 焦らず、ゆっくり素早く運べッ!」
「ボスゥ!? ハコぶのはいいけど、この子タチ……ド〜するのさッ!?」
〜 パチパチ、パキッ、パチパチパチパチ、パキパッ! 〜
「……とりあえず、俺らの寝床に寝かせよう……!」
「エェッ!? 血だらけだし、ヨゴレマミレだよッ!? それをボクタチのトコロにッ!?」
「んな事、言っている場合かッ!? 早く寝かせるんだッ!」
――少々納得のいかない様子のオルセットだったが……ボスは、彼女のテントに少女エルフを寝かせるように指示を飛ばす。無論、そう指示したボスは何の迷いもなく……両手に抱える今にも”消えそうな命”を救うため、少年エルフを自身のテント内にあったエアーベッドの上に、そっと寝かせるのであった……!
その時、オルセットがボスのテントに駆け込んでくる……!
「ネかせたよ、ボスゥ!」
「ヨシッ! チャンと、ゆっくりそっと寝かせたな?」
「もう、ダイジョウブだって! ボクもボスに言われてばかりじゃあないからッ! ボスだって、『ジブンで考えてウゴけるように、ウゴくコトが大切』だって、マエから言ってたでしょッ!?」
「……だったな、済まねェ。……じゃあ、次やる事は分かってるか? オルセット?」
「モチロン。シュウノウバコから、”キュウキュウキット”をモラっていい? ボスゥ?」
「あぁ。ついでに資材テントから、備蓄している”水”や”タオル”もいくらか持っていけ。それで傷口の洗浄や、ついでに体の汚れも拭き取ってやるんだ。応急処置の方法は大丈夫だよな? オルセット?」
「ダイジョウブ。アルコールショ〜ドクしたり、ホ〜タイをマくぐらいなら、ボクだってデキるよ。それに、ボスにやってモラッているのを、ナンドも見ているからね」
「フッ、そうか。もし骨折とか……処置が分からない傷があったら、オレに言ってくれ」
「ウン、分かった!」
「頼んだぞ! オルセ……!」
「オラァッ! ガキ供ッ! 隠れてないで出てこいッ!」
「「ッ!?」」
――ボスとオルセット。この二人の素晴らしいコンビっぷりが見られて……と言うところで、酷く汚い怒鳴り声が響き渡る。どうやら、その声の持ち主は……少女エルフ達が来た、夜の森の方向から聞こえて来るようであった……!
「ガキドモって……まさか、ボスゥ……!?」
――ボスとオルセットの視線が、エアーベッドに横たわる”黒肌の少年エルフ”に一斉に集まる……!
「……人違い……イヤ、エルフ違いだと願いたいが……!」
「出て来いッ! 長耳のクソガキ共がッ! 特に黒肌のクソガキッ! ブッ殺してやるッ!」
「……ですよね〜、クソが……ッ!」
――少年や少女エルフの特徴と共に、穏やかじゃあない発言を耳にしては……悪態を隠しきれないボス。
「……計画変更だ。オルセット、収納箱の中から……ポーションを持っていけ」
「エッ!? オバアちゃんのポーションをッ!? ぼっ、ボスゥッ! アレもうノコりスクないんじゃあ……!?」
「外の奴らの所為で、応急処置をしている時間がねェんだッ! それに、どっちみち”骨折”とかしているなら、ポーションを使わざるを得ない時が、オレ達にもあっただろうがッ!?」
「そっ、そうだけど……」
――ボスの事を思ってなのか……彼の意見を渋ってしまうオルセット。
「……オレの事は心配すんな。適当にアイツらと”O・HA・NA・SHI”して……オルセットが二人に”ポーション”を飲ませる時間ぐらい、稼いでやるって……!」
「でっ、でも……!」
「じゃあ、オルセットがたぶん”人間”なアイツらと上手く”O・HA・NA・SHI”しては……時間を稼いでくれるのか?」
――恐らく、思っている事と違う事を言われたのだろうが……それでも、ボスが言った事が図星だったのか……低く唸りつつも黙り込んでしまうオルセット。
「……それに、あのポーションは何もオレ達ばっかに使ってくれって、ベルガの婆さんが頼んでた訳でもないだろ? なら、使える時は使わなねェといけねェだろうし……その使う時ってのが、今なんだよ……!」
「ボスゥ……!」
「フッ、じゃあ……頼んだぞ、オルセット? ただし……心配過ぎて、雑な処置をするんじゃあねェぞ?」
「し、シツレイだよォッ!? ボスゥッ!? ボクだって……ッ!」
「……チャンと出来る……だろ? 分かってる。だから行ってくるよ、オルセット」
――そう言っては立ち上がり、足早にテントの中から立ち去るボス。
「……気を付けて、ボスゥ……!」
――心配は拭いきれないのか……ボスが出て行っても数秒は、彼が出て行ったテントの入り口を見つめ続けるオルセットであった……。
<異傭なるTips> ボス達の野営基地
「Base Camp」
登山や探検を行う際、根拠地とする固定天幕の事。または、軍隊の根拠地の事。
上記の「本来の意味」と照らし合わせると……ボスが設営したテント群は、厳密には意味が違うが……彼はこの呼び方が”カッコイイ”からと、そう呼んでいる。
そして、ボスとオルセットの現状の拠点となる……”ボス達の野営基地”では、下記の”施設”を利用する事が出来る。
・「ボスのテント」
日本有数のテント専門メーカー「Okawa」の、ちょっとした小屋ぐらいの広さに迫る、居住性抜群の高級テント。防水、防風に強い生地が使われており、夜中や朝方の寒々とした空気をほぼ遮断してくれる。
オルセットもデザインは違うが、同じような物が彼のテントの傍に設営されており……そこで寝泊まりしている。(だが、大抵夜中に抜け出しては……ボスの横で寝ているのがオチだったりする)
この彼のテントを調べれば、”休憩”や”就寝”、”収納箱”の利用が出来る。”休憩は、テント内のエアーベッドに座ったり、寝転びながらボ〜ッとする事で、ジョジョに”HP”と”ST”、”MP”を回復させられる。(ただし、どれもも”全体の三十パーセント分”しまでしか回復しない。また、あらかじめ出し貯めておいた「救急キット」を負傷していた際に使っているため、負傷も治療される)
”就寝”は、フカフカのエアーベッドの上に置かれたシェラフにその身を潜り込もませ……その日を終了させつつ、これまでの行動を思い返す事が出来る。翌日になると、”HP”と”MP”は全回復する。
(ただし、”ST”は”全体の五十パーセント分”までしか回復しない)
また何故、”就寝”を行うだけで”HP”を回復するかと言えば……就寝前、負傷している際は回復魔法が使えないボス達は、あらかじめ出し貯めておいた「救急箱」や「救急キット」を使って、治療している。
これを使って、”応急手当て”や”簡易手術”を行なってから寝ているため、様々な負傷をしていても(異世界に来て変わった”理”も相まって)翌日には、ほぼ完治しているという感じなのである。
テント生活初期……寝起きしたボスが、包帯を外した部分を見た際に『……傷の治りが、早い……? チャンと処置したからか……?』と、ボヤいていたりもする……。
話は変わって……オルセットも同時に就寝するため、彼女が負傷していた際などにも役立つ。ただし、下記にある「防衛機構」を設置しておかないと、就寝中に魔物や野党などの襲撃に遭ってしまったりする。
その際は戦闘が完全に終わらないと、再び就寝に戻る事は出来ず……最悪、戦闘に負けて仕舞えば、そのまま死亡してしまう危険性があるため、注意が必要。
”収納箱”は文字通り、収集してきた資材や、木の実などの食料を仕舞っておける。ただし、食料は”干し肉”や”燻製肉”などの保存加工をしていない物は長期保存はできず……入れてるだけでも、腐って食べられなくなってしまうため、注意が必要。
また、場所を移動する際……”収納箱”の中身は、ボス達のバックパックに全て収納される。そのため、あまりに収納している数が多いと、その重さに彼らが動けなくなってしまう。そのため、出発前にはいらない資材がないかなど……入念な”整理整頓”が必要になる。
・「資材テント」
ボスのテントの真横に設置されている、彼のテントより少し小さいぐらいのテント。勿論、「Okawa」製である。素材はボスのテントと同様で、防水防風などに耐性がある。
その他にもテント内には、ボスのテントの中にあった”収納箱”よりも、大きな収納箱が複数置かれていたり……食材の保存用なのか、”ポータブル冷蔵庫”や”ポータブル冷凍庫”に加え、外には折りたたみ式の”ソーラーパネル”や携帯式の”大型充電器”も存在しており、簡易的ながらも様々な物を仕舞い込む、「倉庫」として使われている模様。
この”資材テント”は文字通り、ボスのテントの”収納箱”と同じように……収集してきた資材や、木の実などの食料を仕舞っておける。だが、”収納箱”と決定的に違うのは、保存加工をしていない物でも、ここに保存しておけば長期保存が可能な事。
ただし、永久保存はできない上に……”収納箱”よりも”多い収納容量”はあるとは言え、それでも収納容量には限度があるので、注意が必要である。
また、場所を移動する際……”収納箱”と同様に、「資材テント」の中身も、ボス達のバックパックに全て収納される。そのため、あまりに収納している数が多いと、その重さに彼らが動けなくなってしまう。そのため、出発前にはいらない資材がないかなど……入念な”整理整頓”が必要になる。
・「焚き火」
野営基地の中央付近に設営された、小さな焚き火。その周辺には焚き火を維持するための”小枝や薪及び火口や着火剤”、煮炊きをするためのステンレス製ダッチオーブンなどの”調理器具類”、ボスとオルセットそれぞれ専用のフカフカの”折りたたみ式ソファ”や、洗う手間を省くために用意された”各種紙皿類”が、ソファの真横に置かれていたりする。
ここを調べる事で、ボスが自分のソファに座った後……”料理”や”工作”の利用が出来る。
”料理”はその名の通り、手持ちや”収納箱”及び”資材テント”に備蓄した”食材”を用いて、料理を作成できる。翌日を迎えたボス達は、必ずと言って良いほど「”ST”が全体の五十パーセントまで減少(それ以下だった場合は、そこまで回復)」しているため……食糧や作成した料理を食べておかないと、充分に動けなくなってしまう。
また、作成した料理は採取してからすぐに食べられる”食糧”と違い、料理でしか得られない”増幅効果”がある。食べてから消化し切るまで効果は持続するため、採取や狩猟、戦闘に赴く際に食べれば、通常よりも有利に事を運びやすくなるかもしれない。
料理に用いる”食材”は、一部の魔物を討伐した後に解体して入手出来る”魔物肉”の他……周辺を探索して自然に生育している”木の実”や”野草”、”キノコ類”などを採取する事で現地調達が可能。また、「アウトドアセール」の”食料”の項目から、魔力を消費して供給させる事でも入手可能。
ただし、ボスは植物及び魔物肉における”安全性”は、ベルガから教えられていても一部しか知らないため、「スキャン」のスキルを使って安全性を調べておかないと……!?
”工作”も、その名の通り、手持ちや”収納箱”及び”資材テント”に備蓄した”資材”を用いて様々な物を作成できる。「アウトドアセール」から供給した、新たなテントなどの”施設”の設営もここで行う。
他にも、(お遊び程度の意味しかないが……)木の枝と、石、蔦などのロープを用いて”石斧”を作成したり……「アウトドアセール」で出せる物を加工して、「即席ホルスター」などのちょっと便利な収納アイテムを作ったり……銃弾に加工を施して、より強力な弾薬や武器を作成したり……と、資材と工具次第で様々な物を作成できる。
また、下記にある「防衛機構」を設営する際に、使用する罠などの専用資材も、ここで工作する事が可能。ただし、現状のボス達では現地調達出来る物を含めても……”資材”と”工具”及び、”製作技術”に”製作知識”が、圧倒的に不足している。
更に豊富な種類の”工作”をするためには、それらに詳しい”仲間”を探さなくては……これ以上の発展は望めないだろう。
・「射撃場」
野営基地の「ボスのテント」の向かい側付近に設営された、小さな射撃場。周辺の茂みや小さな樹木を切り開いて作られた”小さな広場”で、そこに射撃用の的を置く”折りたたみ式キャンピングテーブル”や、夜間でも射撃訓練ができるように、”LEDランタン”が置かれていたりする。
ここでは”射撃訓練”の他、オルセットなどの仲間相手に”実戦訓練”を行える。尚……弾薬の消費や、仲間の負傷の心配があるかもしれないが……ボスの「トレーニング」のスキルよって、”弾薬を使用した事”や”仲間を◯傷させた”事でさえも、全て”0”に出来る。
……要は、”治療アイテム”や”弾薬の消費”は、気にしなくて大丈夫である。
余談だが……ボス達が”実戦訓練”を行う際は、設置してある”射撃訓練場”を片付けて、そこに出来た”小さな広場”で、斬り合いや投げ合い……そして殴り合うなどの死合っては、お互いの強さや技術を高め合っているのだ。
・「防衛機構」
野営基地の周囲に設置出来る、簡易的な罠達。これまで紹介した施設を、グルッと囲うように設置出来るようになっており……前述した”就寝”中に、魔物や野党に襲撃される確率を減らす事が出来る。
「襲撃される確率」は、周辺に設置したトラップの数によって変化する。設置した数が多ければ多い程……夜中に安心してグッスリ眠れると言う訳である。
罠を設置するには、まず先に「焚き火」で”工作”を行なって”罠”を作成しておく必要はある。作れるタイプは下記。
(警報タイプ)
「即席空き缶鳴子」:”ロープ”と”複数の空き缶”で作成可能。
「即席警報」:”ロープ”と”防犯ブザー”と”テントペグ”で作成可能。
(殺傷タイプ)
「木製の棘杭」:”木材”と”サバイバルナイフ”で作成可能。
「木製の棘杭(毒)」:”木製の棘杭”と”毒物or排泄物”で作成可能。
「木製の棘柵」:複数の”木材”と”ロープ”と”サバイバルナイフ”で作成可能。
「落とし穴」:”シャベル”で作成可能。
「木製のパンジ・スティック」:複数の”木製の棘杭”と”シャベル”で作成可能。
「木製のパンジ・スティック(毒)」:複数の”木製の棘杭(毒)”と”シャベル”で作成出来る、強力な罠。
「鉄製のパンジ・スティック」:複数の”テントペグ”と”シャベル”で作成可能。
「鉄製のパンジ・スティック(毒)」:複数の”テントペグ”と”毒物or排泄物”と”シャベル”で作成出来る、強力な罠。
「丸太罠」:”丸太”と”ロープ”と”サバイバルナイフ”で作成可能。
「強化丸太罠」:”丸太”と”ロープ”と”テントペグ”と”サバイバルナイフ”で作成可能。
「強化丸太罠(毒)」:”丸太”と”ロープ”と”テントペグ”と”毒物or排泄物”と”サバイバルナイフ”で作成出来る、強力な罠。
(「落とし穴」など、一部の罠は”必要な道具”さえあれば、作成可能)
「警報タイプ」は、就寝中の襲撃による”ダメージを完全に防げる効果”がある。設置すれば設置する程、その成功確率は高まる。ただし、襲撃そのものを防げる訳ではないので……音によって逃げない”魔物”や”野盗”相手には、寝床から起きた後に襲撃してきた相手を、撃退する必要があるというのが、デメリットだろう。
「殺傷タイプ」は、就寝中の”襲撃そのものをなくす”効果がある。更に言うなら、上手く行けば、倒した魔物から”肉”や”皮”を剥ぎ取ったり……野盗から”お金”や”武器”などの戦利品を鹵獲する事が可能。また、トラップで倒しきれなくても……敵の”HP”が低下した有利な状態から、戦闘を始められるメリットがある。
無論、設置すれば設置する程、その成功確率は高まる。ただし、トラップで倒した相手からの”経験値”は入手出来ない上、魔物を倒した際の”肉”や”皮”の品質が劣化してしまう。もっと言えば”(毒)”と書かれたトラップは強力な反面……完全に倒した魔物の”肉”や”皮”が使えなくなってしまうのが、デメリットだろう。
また罠の作成には、どれも時間が掛かるため……手軽で便利な効果を持つ物でも、作成に時間が掛かり過ぎると、”食料調達”などの生存に必要な作業が行えなくなってしまう。
更に、場所を移動する際には……設置していたトラップは、全て破壊してしまう。その際、使用していた一部の資材(”テントペグ”など)は破壊した際に還元されるが、ほとんどの資材は戻ってこない物だと思って欲しい。
最後に、「工作」の場合と同様……魔法が得意だったり、工作が得意な仲間が増えれば……ボスだけでは現状限界なこの防衛機構を、より充実させられるかもしれない……。
……余談だが、ボスの仲間である”オルセット”や……今後増えるであろう”仲間”や”重要人物”は、その時の気分によって、上記のそれぞれの施設を各々が利用していたりするのだ。