RE:Side-Boss1 Hello To The New World
(?)今回は、私の”有難さ”というのを……存分に味わって頂こう……ッ!
――我々はこの男を知っている! いや! このまなざしとこの顔の傷を知って……!
〜 PiPiPiPiッ! PiPiPiPiッ! PiPiPiPiッ! ……カチャン! 〜
――あぁ……クソッ、確かに顔に傷はあるけどさぁ……何で”ス◯ード◯ゴンのジイさん”っぽい事を、オレが言われなきゃいけないんだよッ!? オレはまだ老けこんじゃあ……!
〜 ムニュゥゥッ! 〜
「ブッ!?」
「……ス〜ニャ〜ス〜ニャ〜ス〜ニャ〜……ボスゥ……もっと、オニクタベタイよぉ……ス〜ニャ〜ス〜ニャ〜ス〜ニャ〜」
「……」
……またかよ、オルセット。エェッ? また、オレのテントに勝手に入り込みやがったのかッ!? エェッ!? 最初はカワイイと思ったけどサァッ!? この足! このオレのほっぺたを押し潰している足ッ!
寝相が悪いって程じゃあねェ〜ぞッ!? クソがッ!
「……オラ、オルセット……! 目覚ましはもう鳴ったんだよ、起きろ……よッ!」
〜 ガッ、バサァッ! 〜
――ちゃぶ台返しならぬ、シェラフ返しじゃあッ! クソッタレッ!
「フギャッ!?」
〜 ゴロゴロゴロゴロ……ドサッ! 〜
「ウ〜ン……アレェ? ボォスゥ……? オニクはぁぁ?」
「……寝起き一発、寝ボケ眼に朝メシを要求してんじゃあねェよッ!?」
「……エェェ〜おナカ空いた〜」
「……ハァァ、分かったよ。いつも言ってるけど……オレが朝メシを準備している間に、そのライオンみたいな寝癖、チャンと直しておけよ?」
「……エェェ〜ボスゥ〜、やってよ〜」
「甘ったれた事言ってんじゃあねェよッ!? てかここまでのやり取り、何回目だと思ってんだ!? オルセットッ!? 身だしなみとかに詳しい”女”とかじゃあねェんだぞ、オレはッ!?」
――全く……一応、オメェの”保護者”だけどさぁッ!? オメェの”オカン”とかじゃあねェんだよッ!?
「……エェェ〜ボスゥ〜、やって〜」
「だから断る。キャンプセットと一緒に初日に供給した”ヘアブラシ”が壊れたワケでもねェだろ? それにシャンプーで髪質も良くなって、ブラシも通しやすいハズだろ? それ以前に、オレだって腹減ってんだ。
それとじゃあもしもだが、やってもらった後……その代わりにオルセットは、ここ数週間で”マトモなメシ”を一度でも作れた事がないのに……朝メシ作り、やってくれるって言うのか?」
「……」
「ねェだろ? なら、自分でやってくれ。オレは朝メシの準備をするから。いいなッ!?」
「……ハ〜イ」
〜 ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ……。 〜
……ハァ、もう……こんなやり取りが一ヶ月近くかよ……クソッ……!
〜 カッ、ペカァ! ボドボドボドボド……! ……カスカスカス……ッ! 〜
――青々とした空! サンサンと照りつける太陽(?)! そして周囲はマイナスイオンがプンプンするであろう、原生林の数々! こんな絶好なキャンプ地で、ダッチオーブンを使ってのワイルドな料理が出来るなんて最高ですよ〜ッ!?
〜 カッ、ペカァ! ボドボドボドボド……! ……カスカスカス……ッ! 〜
――宿泊施設も充実ですよ!? 日本有数のテント専門メーカー「Okawa」の、ちょっとした小屋ぐらいもある、広々とした居住性抜群の高級テント! 夜でもグッスリ、朝になっても永眠したくなる程の「Musuka」社製の高級シェラフ!
更には(手動だけど)地面の石などのゴツゴツさとオサラバできる、高級エアーベッド!
〜 パカァ! サラサラサラサラサラ……。 〜
――そして私ボス! そうッ! ボス自らが、毎日作る手作り料理もありますよ!? 三つ星級じゃあなければ、何でも作ります! 特に奥さん? オススメしたいのは、原生林の中でスクスクと育ってきた、新鮮かつ活き良い”魔物肉”ッ!
煮ても焼いてもメチャメチャ美味いんですよッ!? 特に、猪と鹿ッ! コイツらのどちらかでも狩れた日にはもう、優勝ですよッ! ホント、優勝間違いナシッ!
〜 ゴソゴソ……シャラン……! シャッ、シャッ、シャッ、シャッ……! 〜
……あぁ、クソ。テンション上げるために今日は”ジャ◯ネットた◯た”的なセールストークで、周囲の状況を思い浮かべてみたけど……もう三度目くらい? ……やっぱ忘れたわ……。
〜 パカッ、ゴリッゴリッゴリッゴリッゴリッ……。 〜
――いやぁ、初めてと言っていいキャンプ暮らし……楽しいよ? けど、これが一ヶ月近くも続いてみ? 最初は楽しめていた”自然の中の楽しさ”はって奴は、有り難みを失ってくるし……。ほぼ定住してれりゃ……最初は迷い、冒険してる! ……って、思えてた頃の森の風景が懐かしく思えてくるんだよ……。
〜 ……パコッ、コトン。チャプ……クルクル、クルクル、クルクル……。 〜
要はな? 絶望的な暇に襲われるんだよ……! マンガも、ゲームも、ネットも、ウェブ小説とかとかとか……現代に浸りきっていたオタクなオレだと、せっかく飛び切りの異世界美人な”オルセット”って相手がいたとしても……! こんなショ〜もない”独り言”を思い浮かべるぐらいにな……?
……ていうか、オレ誰に話してるんだっけ? ……ハハッ、何考えてんだが……クソ。
「……フニャァァァァァ……! オハヨ〜ボスゥ〜」
「あぁ、おはよう……オルセット……」
……和やかでイイけど……もうちょっと、シッカリして欲しいよなぁ……オルセット。寝グセ直し切れてねェトコロあるし……。
「……ンッ? このニオイ……エェェ〜また”トマトリゾット”ォォォ〜?」
「現状のスキルとかで調達して、作れる朝メシはこれぐらいしかないって、何回も言ってるだろ〜? それに、トマトは体に良いし水分も取れるし、肉ばっか食っていると体に悪いって事も言ってるだろうが〜?」
「エェェ〜」
「つべこべ文句言うなら、メシ抜きだぞ〜?」
――ホラホラ……言葉のジャレ合いそこまでに、サッサと向かいでもコッチでも良いから……席に着いて飯食えや。
〜 ……クルクル、クルクル、クルクル……ストン。 〜
「……ンッ? アレ? チョット、ニオイがチガウ……?」
――おおっ、オルセット? コッチでも良いと思ったけど……肩、近〜よ……! 後、混ぜてるトコ覗くな〜。
「おっ、流石獣人〜! 鼻が利くな〜。今日は随分前から作っていた”試作品”を、この朝恒例のメニュー……”無水トマトリゾット”さんに、ブチ込んでいるんだ」
「……シサクヒン?」
「……あんまりオマエが煩いから、数週間前から試してたんだよ……で、今日がそのお披露目ってワケだ」
「……オヒロメ?」
「……知らせる事。大抵は、オメデタイ事に対して言うんだが……オレみたいにちょっとした事を、大袈裟に言いたい時にも使えるな。まぁ所詮、粋な言い回しって奴だ」
「……オオゲサ……ショセン……イキ?」
「……とりあえずメシを食おう、オルセット。勉強はその後でだ」
「……ハ〜イ」
〜 チャポッ、トクトクトク……チャポッ、トクトクトク……。 〜
「ホイッ、トマトリゾット大盛りお待ちィ!」
「フニャ〜気はススまないけど……イイニオイ〜」
「……お前なぁ……」
……そりゃぁ……さ? 生の肉とか野菜とか……そう言った”生鮮食品”を出せるなら、もうちょっと良いヤツ作ってやりたいと思うけどさぁ……? 現状、「アウトドアセール」で出せるのが……”缶詰”とか”袋入りオートミール”とかの……そういった”加工食品”ばっかしか出せねェんだぞッ!?
そんな食材が限られてる中で、何とか遣り繰りして料理してんだけどなぁ……? 自炊出来るボッチだったけど!? 元から作れるのは、手軽な”漢飯”しかなかったんだけど!? これでも頑張ってんですよッ!?
後、前から言ってるけど……頼むからガマンしてくれよ……ッ! オルセットォ〜?
「まっ、いいやッ! ボスが作ってくれるのは、毎回オイシ〜しね! イッ、タダッキ、マ〜スッ!」
……あぁクソッ、聞き飽きてるハズなのに……毎回その不意打ち……ズリィって……。
〜 ニャァァァ〜ン……パクッ! 〜
「……お味はどうだ?」
「……」
〜 ガツッガツッガツッガツッガツッガツッ! 〜
――おっ、おぉぉ!? この初めて”無水トマトリゾット”を作った際に似た反応は……ッ!?
「オイッ、シィィィィィッ!? 何コレボスゥ!? 何コレェェ〜!? 何入れたのォォォォ!?」
――う〜ん……お久しぶりの、この目がギラギラとした幸せ一杯、感動一杯そうなこの表情……! 待ったり、装置作ったりするのがクソ面倒だったけど……作った甲斐はあったわ〜ッ!
「……知りたいか? オルセット……?」
「ウンウンッ! 何入れたのォ!? ボスゥッ!?」
――説明含めて、聞いた後……今度こそ手伝ってくれるとイイんだけどなぁ〜?
「それはな? 削った燻製肉だ」
「……ケズッタクンセイニク? ……あっ、この……ホンワリお肉のニオイがする……黒っぽい線がそ〜お?」
「そ〜だそ〜だ! 簡単だけど、作んのは大変だったんだぞ〜?」
――いやぁ〜しかし、”異世界に来たら、サバイバルはアタリマエ”……って思って、色々と調べておいて良かったわ〜! 昔から、他のクラスメイトとかが残した食べ残しが、ゴミ箱に落ちていくのを見てメッチャ虚しい思いをしてたからなぁ〜。
コッチに来ても、食い切れない”狩った肉”をどうにか保存できないかと、記憶を絞り出した甲斐があったわ〜! 特にな〜”脂身の除去”と、”燻製装置”を作るのに苦労したわ〜。
”脂身の除去”は、まず鹿や猪の解体自体が……”スキル”があっても大変だったし……実戦時に脂身も勿体無いと思って、幾つか残したまま干したのを味見したら……結局、吐いちまうゲロ不味さだったし……! あぁぁ……マジで勿体なかった……! 吐いちまった奴……ッ!
〜 ガツッガツッガツッガツッガツッガツッ! 〜
――それに、”燻製装置”を組み上げるのに必要な、丁度良い”木の枝”探しもホンット苦労したからな〜。魔物の襲撃がフツ〜にある森の中、銃とサバイバルナイフを肌身離さずしながらじゃあないと……いけなかったからな〜。アイツら〜たぶん……地球の獣よりも好戦的なんじゃあないかなぁ〜? ハッハッハッ……クソがッ!
……それで、燻す前の下準備として……オーガニックのニンニクチューブとかのハーブ類をたっぷりブチ込んだ、”ソミュール液”を作ってからは……干して燻すだけの”イージーゲーム”だと思ったのに……! そう、思ったのに……ウルエナ! あのクソッタレのウルエナ供ッ!
乾燥中の生肉を掻ッ喰らって行くんだよなッ!? 地上で干してるとッ!? それも、塩っ辛いハズでまだまだ食えたモンじゃあ無いハズなのにッ!? ……まぁ勿論、喰った奴は”経験値”として美味しく頂きましたけど? おかげで、樹の上で干さなきゃいけない苦労を作りやがって!? クソッタレがッ!
「……プニャ〜! ボスゥ! オカワリィィィッ!」
――まっ、久しぶりなこのオルセットの笑顔を見るだけの苦労は……あったって事か……。
「……オゥ、大盛りでか?」
「ウンッ! モチロンでしょ〜ボスゥ? ボク、いつもオオモリでしょ〜!?」
「ハイハイ、ちょっと待ってろ……」
〜 チャポッ、トクトクトク……チャポッ、トクトクトク……。 〜
「ホラよ、大盛りお待ちドォ!」
「ウワァァヤッタッ! イッタダッキ、マ〜スッ!」
〜 ガツッガツッガツッガツッガツッガツッ! 〜
――フッ、ホント……色々まだ言いたい事はあるけど……作った甲斐はあるよなぁ……。
〜 チャポッ、トクトクトク……チャポッ、トクトクトク……チャポン。 〜
「……頂きます……」
〜 ア〜ン……カプッ! 〜
……ウン、いつもの”トマト缶”に、たっぷりの”オートミール”と”レンズ豆”、”胡椒”だけをブチ込んだモノより、断然ウメェなッ! こう……市販の牛肉とかの干し肉なんかで、出汁を取るよりも……随分と味わい深いと言うか……魔物だけど、”ジビエ肉”だからこそ出る”ワイルドな味”だからこそと言うか……!
オレはグルメレポーターじゃあねェけど……まぁ、とにかく……メチャクチャ美味ェッ!
「ねェ、ボスゥッ!? コレ! この”クンセイニクリゾット”ッ! おヒルも食べられるッ!?」
「……悪いな、オルセット。これは朝限定のメニューだ」
「エェェ〜なんで〜ッ!?」
「……”塩”を食べ過ぎると病気になりやすくなるって、前言ったよな?」
「エッ? ……ウン、そうだね……」
「んで、この燻製肉……作るのに大量の”塩”を使ってるんだ。と言う事は……分かるよな?」
――多分、内陸なこの土地じゃあ……庶民どころか、お貴族様もおったまげな量の塩を使ってるだろうな〜。まぁ、それに普段の料理も……”地球の歴史”は勿論、”異世界もの”じゃあ定番の高価商品、”胡椒”様をガンガン使ってますからねェ〜。後、その他諸々のスパイスも……。
それと確か、塩分の取りすぎは……「高血圧」とか「胃癌」とか……他にも色々な病気になりやすいんだったけなぁ……? まぁ、獣人がそうなるかは分からねェけど……用心に越した事はねェからなぁ……。
「エェ〜そんな〜」
「……そう、残念がんなって。この燻製肉は、結構大量に作れたし……しばらくは朝メシのメニューとして出せるぞ?」
「ホントォッ!?」
――おっ、おォゥ……。だから……その嬉しい時とかに、頭突きする勢いで顔近づけんの……地味にやめてくれェ……! カワイイけど、心臓に悪いッ!
……後、最近”マジックソープ”で洗い続けた所為か……会った当初は、恐縮ながらもキツかったワイルド臭が……今じゃあ、こう……ラベンダーと、オルセット本来の香りが……混ざったような……あぁ、理性が……ッ!?
「……ただし、大量にあるからって……オレが居ない隙に摘み食いすんじゃあねェぞ? オルセット?」
「ヒド〜イ! ボクがツマミ食い〜?」
「……以前、オレが森で見つけた……デザートにしようと思って持ち帰った”フルーツ”を、勝手に食べていたのは誰かなぁ〜?」
「……にゃ、ニャンノハナシカナァ〜?」
「……惚けんな? 普段から強い魔物とかに対して、対処してくれたりする感謝はオルセットにあるけど……『親しき中にも礼儀あり』って言葉がオレの世界じゃあ、あるんだよ。オレとオルセットの仲が良くても、守らなくっちゃあいけない”約束”や”決まり事”はある……って、感じの意味でな……!?」
「……ツマミ食いしちゃあ……いけないとか?」
……学がないのは仕方ないけど……ホント、オルセットに”ものを教える”際は……「小学生」……悪く言っちゃえば、「幼稚園児」に”道徳”とかを教えるような気分になってくるなぁ……。
コレ、ホント面倒だけど……まぁ、やり甲斐はある。物覚えは悪い方だけど……チャンと学んでるみたいだし……!
「……そうだぞ? オルセット君? オレだから、軽い説教で済んでるけど……これがオレ以外の人間とかにやってみ? 多分だけど……良くて、ボコボコ。最悪の場合じゃあ……武器とかナイフ、更には魔法なんかが飛んでくるかもしれないぞ〜?」
「そっ、それはヤダなぁ……!?」
「だろ? だったら、オレに何も言わず、摘み食いとか……物を持ち出すのはやめるようにして、他の人にしないよう”予習”しとかないとな?」
「……ハ〜イ、ボスセンセ〜!」
――こ〜ゆ〜”悪ノリ”にノッてくれるのも、イイんだよな〜。オルセットは……ッ!
「ウム、日々精進だぞ! オルセット君ッ!」
「ハ〜イ、ショ〜ジンしま〜す……! ……だから、オカワリッ!」
――おい、オレが食っている間も掻っ込んでたのは知ってるけど……それでも食べんの早すぎだろッ!?
「……オルセット? 言っとくが……次で最後だぞ? 大盛りでも……!?」
「ケッキョクあるんでしょ〜? だったらチョ〜だいッ!」
……オレも結構食う方だけど……”二〜三人前”ずつで、考えて作ったんだけどなぁ……?
「……ハァ、OK。待ってろ……」
〜 チャポッ、トクトクトク……チャポッ、トクトクトク……。 〜
「ホラよ、コレがラスト……!」
「ウワァァ〜ヤッタッ! じゃあ、イッタ、ダッキ……!」
「ただしだ! オルセット?」
「……ナニ?」
「この後の昼までの食糧調達……! 一人でもサボらずやれるか?」
「え〜ナニやんの〜? ボスゥ?」
――ホント、説得大変だよなぁ……懐いてくれるのは有り難いけど……。
「オルセット? 前から”分担作業”は大事だって言ってるだろ? ここら辺の”野営基地”を建てるのに、大部分をやったのは誰だった?」
「……ボスゥ?」
――イヤ……疑問文にする事でもねェだろ、オルセット!? どっか認めたくないのかもしれないけど……!?
「そうだろ? オレのテント設営を、『ボクも手伝うよ〜ボスゥッ!』……ってウキウキに言いつつ、ウキウキに一つ……テントブッ壊したのは何処のドイツだ? えぇ? その後片付けをしたのは?」
「……」
……なんか、一ヶ月も同居(?)してきて分かってきたけど……オルセット、認めたくない事があると……ジョジョに目線を逸らすように、そっぽを向くんだよなぁ……。
相変わらず……この幅広い”折りたたみソファ”なのに、肩が打つかりそうなぐらいに近いけど!? オルセット用のも反対側にあったのに、近いけどッ!? オレの理性を狂わせそうな匂いも、近いけどォォォッ!?
「……少しでも、オレに対して悪いとでも思ってんなら……チャンと協力してくれよ? オルセット」
「ハ〜イ」
「……フゥ……あっ、そう言えば……リゾット作ってる際に、一緒に仕込んどいた”ローズヒップティー”! もう出来たと思うから……それ食べ終わったら、オルセットも飲んどけ」
「エェェ〜あの、”スッパイ味”のオチャ〜?」
「頼むから、ブ〜タレないでくれよ……オルセット。生野菜とかをほとんど食えない現状、病気やウイルスから体を守るのに必要な”ビタミンC”って栄養が、このお茶にはタップリ入ってんだよ……。
それに病気やウイルスは、銃とかの武器で倒せる敵じゃあないんだから、予防……防御できる手があるなら……積極的にやっておくべきだって、何回も言ってきただろ?」
「……分からなくないケドさ〜? ボスのリョウリとか食べてきて……前よりィ……体がカルくなった気がするし〜?」
「だろう? だったら、そこのソファ近くに置いてる紙皿類から、紙コップを取って……!」
「でも〜? やっぱ〜? スッパくて〜イヤだなぁ〜?」
……コイツ、味を占めたなァ……?
「……まぁ、朝だし良いだろう。”砂糖”入れてやるけど、慣れるようにはなっとけよな?」
「ウワァイ! ヤッタァ〜ッ! ボス大好き〜ッ!」
――真横に居るウッキウキなオルセットが、トマトリゾットを装いだ紙丼を手早くソファに置いては、電光石火の如く……二人分の紙コップを突き出してくる。
……ウン、他にも”チョコ”とかのデザートをたまに食わせてるハズなのに……意外と文句言う割には、この砂糖入りの”酸っぱ甘い味”が好きなのかねェ……? ……出せるようになったら、”アセロラジュース”でも勧めてみるかァ?
〜 トクトクトクトクトク……。 〜
「ホラよ。ただ、飲むならトマトリゾットもチャンと食い切れよ? 後……最終的に”砂糖抜き”で飲めるようにもなれよ? じゃあないと、虫歯菌の大群がオルセットの立派な歯を……襲撃しに来ちゃうぞ〜?」
「モォ〜シツレイだよ〜? ボスゥ? ボクがチャンッ、とッ! キバとかをミガいてるの〜ボス見てるでしょ〜?」
――そう言えば、ここだけ記憶がハッキリしてるのか……オルセット、歯の事を”牙”って言ってるんだよなぁ……。ここだけ、ファンタジーぺぇ〜なぁ……。
「……まぁな。歯磨きサボんじゃあねェぞ、オルセット?」
「……分かってるよ〜ボスゥ。あっ、カクザトウは、”サンコ”オネガイね〜?」
……全く、イヤしんぼめ。一個でも充分な甘さだってのに……!
「ちゃんと、歯ぁ磨けよ? ホラ」
〜 ガサササァ……チャポポポン、クルクルクルクル……ズズッ……。 〜
「フニャァ〜。スッパイけど、オイシ〜」
――フッ、まぁ分からなくはねェな。オレも初めはその強烈な酸っぱさが苦手だったし……。
〜 トクトクトクトクトク……ズズッ……。 〜
「……あぁ〜酸ッペェ!」
「……カクザトウ入れる?」
「おいおい、何度も言ってるだろ? オレは良いんだよ」
「フ〜ン……」
〜 パチパチ、パキッ、パチパチパチパチ、パキパッ! ……ズズッ……。 〜
……ウン、この世界……朝と深夜ぐらいが、こう……目の前で”焚き火”してても特に冷え込む感じなんだけど……やっぱこう、あったかい飯とか……お茶とか飲むと、随分マシになるよなぁ……!
「……後はコーヒーがあればなぁ……」
「コーヒー? ナニそれ?」
「んッ? あぁ……コーヒー豆って言う種を、真っ黒になるまで炙った後……それを擦り潰したりした奴に、お湯を入れて飲むお茶だよ。入れた見た目は真っ黒で、”泥水”みたいだけど……朝とかに飲むと頭がシャキッとするんだよ。何故か「アウトドアセール」の”食料”のリスト内になくて……チョッピリ……恋しくてな?」
――ホンット、解せない。キャンプでコーヒーなんて、スッゴイ”ド定番”そうなのに……! アメリカ軍のレーションにも、確実に入ってんだぞ? それがインスタントでさえないなんて……!?
まぁ、向こうに居た頃は朝昼晩と、ガバガバ飲んでいて……その内にヒドい目にあって……しばらく”お茶”とかだけにして、飲まなくなってたんだけど……こうも飲めないと分かると、朝だけでも無性に飲みたくなってくるんだよなぁ……。
「……えっ!? ドロ水? そんなの、オイシ〜のッ!?」
「まぁ、苦いしな? まだまだ……ローズヒップティーに角砂糖を三個も入れてる、お子様舌なオルセットじゃあ……分からねェ、”大人の味”だよ……」
「……ム〜オトナノアジ……かぁ……ボスゥ? それ今すぐ作れるゥ?」
「……比喩だよ、例え話。それに材料が一切ないから、そう簡単に作れる物じゃあね〜し……オルセットにはまだまだ”美味しい”って感じるには……早い味って事だよ……」
「……それ、イジワルに言ってる?」
「言ってねェよ……事実を言っただけだ……」
〜 パチパチ、パキッ、パチパチパチパキッ、パチッ、パキパチンッ! ……ズズッ……。 〜
……さて、食べ終わったら紙丼や紙コップは、焚き火にシュ〜ッ! ……って、エキサイティングにはしないけど、エコに処理して……オルセットが森に食料調達に行ってる間、オレは”戦力増強の作業”でもしてますかねェ……!
〜 ガスッ、ドカッ、ボコッ、ゲシッ……! 〜
「オラァッ!」
〜 ブゥゥンッ、ボコォォォッ! 〜
「フギャアッ!?」
〜 ズザザザザザザザザッ……! 〜
「ハァ、ハァ、ハァ……フッ、オラどうしたァッ!? ラッシュを捌ききれず……顔面ブン殴られる程度ってのが、獣人の実力なのかぁッ!?」
「ニャァ、ニャァ、ニャァ……フゥゥゥゥゥゥゥ……ッ! ニャァラァァァァァァッ!」
〜 ザッギュゥゥゥゥンッ! ドゲシャァァァァッ! 〜
「オバァァァッ!?」
……ヤベェ……! やっぱ、速過ぎ……!?
〜 ヒュゥゥゥゥ〜ンッ! ドガンッ! ザザザザザザ……ッ! 〜
「ニャァ、ニャァ、ニャァ……ニャフフ、コンドはボクの”ダッシュゲリ”……サバく事デキなかったねェ〜? ボォ〜スゥ〜ッ!?」
「……ゲホッ、ゴホゴホッ! ゴハァッ!?」
〜 ビシャァァッ! 〜
「ニャ〜らら、アバラボネがナイゾウにササッっちゃったかな〜? ニャフフ……そのジョウタイじゃあ、もうオき上がれなさそうだし……コレじゃあ、ボクのカチ……!」
〜 キンッ! シュボッ! ズバンッ! ビスッ! 〜
「にゃ、ニャレ……?」
〜 トク、トク、トクトクトクドクドクダラダラダラダラダラ……! 〜
「……ゲホッ、ゴホッ! ハァ、ハァ……前から、言ってるだろ……!? 人間とか……勝つためなら、こう言った……”死んだフリ”とかの……卑怯な手は……ハァ、ハァ……平気で使うって……!」
「そん……にゃ……!? あ…たま……き…をつ……け…てた……のに……ッ!」
〜 グラッ……バタンッ! 〜
「にゃ、ニャブッ!? ニャブブブ、ニャブボボブブブボボボォォ……ッ!?」
……うわぁ……喉撃たれるとあんな感じになるのかぁ……? 水の中じゃあないのに、溺れるような感じって……!?
「ハァ、ハァ、ハァ……まぁ、オレの機転勝ちだな……。フゥ……トレーニング、リセット」
〜 ギュゥオォォォォォンッ! ……ダラダラダラダラダラ……ピタッ! ……ダラダラダラダラダラドクドクトクトクトク……!〜
……うわぁ……スゴッ、地面に流れ出たハズのオルセットの血が、ドンドン戻っていく……!
〜 キュル、キュル、キュルキュルキュルキュルキュルキュル……!〜
……そして、今さっき撃った”フリピスの弾”も……オレの折れた肋骨や、内臓の傷から来ると思う激痛や、些細な傷でさえも……! 全てが、元に戻っていく……ッ!
〜 キュルキュルキュルキュル……ピロリン! Reset complete 〜
「……イテテ、アァァ〜……時は巻き戻る……っと」
〜 ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ペチ! ペチペチッ! 〜
……ホ〜ント、キレ〜な顔してるよなぁ……オルセット。……まぁ、オレの「トレーニング」のスキルのおかげで、こんな紛らわしい事言っても……死んじゃあいないからな? 純粋に褒めだよ、褒め。
「ホラ、起・き・ろ! オルセットッ! 反省会するぞ〜?」
……そ〜言えば、もう一ヶ月近くこの殺傷武器アリだったりする、”実戦訓練”やってるけど……何勝したっけな〜? 数えてないけど……ほぼ五分五分だったかなぁ……?
ハ〜ハッハッハッハッ! ……ただ、勝因が”ほぼ搦め手”だったのは……イヤでも覚えてんだよなぁ……。
うわっ…私の戦闘力、低すぎ…? ハハッ、マジで解せねェ……。そして、真っ向勝負のオルセットは、マジ強ェ……! 真っ向勝負だと、マジで勝てねェ……! 戦う度に、仲間で良かったと思える程に……ドンドン強くなってくる……ッ!
……ハハッ、マジで解せねェ……成長が嬉しいケド……!
〜 ペチ! ペチペチッ! ペチ! ペチペチッ! 〜
「ホラ、オルセット〜? 起・き・ろ! 反省会するぞ〜?」
「……うっ、ウ〜ン……」
……おっ、ようやくお目覚めかぁ〜? んじゃあ、手を貸して……ッ!?
〜 ブゥォォンッ! バッ! 〜
……アッ、ブねェ!? クソッ!? 仰向けに寝た状態からの蹴りィ!? しかも……オレの顔面を正確に狙えてるッ!? だが……オレも少なからずレベルアップして、軽く人外にはなってるから……!
〜 ガッ! 〜
――この突き出した右脚を掴んで、”背負い投げ”を噛ます事なんて造作もねェッ! まだやるってんなら……このまま地面にビッタンッ! ……って、叩きつけてやるッ!
「オッ、ラァッ!」
〜 ブゥォォンッ! ゲシャァッ! 〜
「グオォッ!?」
……マジかよ!? 投げられている最中に……もう片方の脚で、オレの腹を……ッ!?
〜 ドシン! クルクル……スタンッ! 〜
……イテテ……クソッ! しかも、余裕タップリなのか……蹴った後、前方に空中回転した後の”四点着地”……! 身体能力の格差が、恨めしくなってくるぜ……!
「ア〜ア、ザンネ〜ン。やっとボスが言う”フイウチ”ってのが、ウマくいったと思ったのになぁ〜?」
「……フッ、オレから言わせてもらえば……何度もそれで殺られてんのに、今更やっと覚えたのか……って、言いたくなるぜ……」
……なんて、カッコ良く言っちゃうけど……さっきの蹴り、実際はギリギリだったからなぁ……危ねェ……!
「ボクはイヤなんだよ? こう……ウマくセツメイできないけど……戦うッ! って、決めたら……ボスのテキは”コザイク”ナシに、思いっきりブットばしたいんだよッ!」
……いやなんで、そこで”シャドボ”するんだよ!? ……まぁ、教えたオレが言うのもなんだけど……カワイイけどさぁ……? 何故か”猫パンチ”っぽい動作も混ざってるしで……?
「……いい志だが、毎回それで勝てる程……戦いってのは甘くねェんだぞ? オルセット。特にこの世界、このオレが住んでいた世界よりも……危険に満ち溢れてるウォーダリアじゃあ、そういうキレイ事ばかりでマカり通るのは難しいと思うぞ?
油断すれば”即死”って感じにな? オルセット? あぁぁ……イテテ、クソッ」
「……大丈夫? ケッコウ、カルくケッたつもりだけど〜?」
「お前は軽くとも、コッチが受けるダメージはデカいんだよ……トレーニング、リセット」
〜 ギュゥオォォォォォンッ! ……キュルキュルキュルキュル……ピロリン! Reset complete 〜
……あぁぁ……軽くでもオルセットの蹴り、金属バッドでフルスイングされたぐらいに痛ェからなぁ……。こうやって、手軽に致命傷だろうと”なかった事”に出来るのは……この”トレーニング”のスキル様々だよ、ホント……。
「ホント、スゴいよね〜そのスキル。ボクもそのスキルがなかったら……何回もボスに、ウたれちゃったり……サされたり、切られたり、ナグられたり……そうして、シンじゃうような目に……何度もあった事かぁ……」
――ホンットな!? しつこく言っちゃえる程に、この”トレーニング”のスキル様々だよ……ッ!
このスキルを発動させれば、殴り蹴りしようが……ナイフで滅多切りや滅多刺しにしようが……フリピスで脳天をブチ抜こうが、全て”0”になる。どれだけ負傷しようが、初めからなかったかのように……”どんな負傷”も、”使用した弾”や”武器の状態”でさえも……あっという間に元に戻っていっちまうんだよなぁ……。
マジでビックリするスキルだよ……。例えるなら、まるで殴ろうが斬られようが撃たれようがビクともしない……ゲームで言う”フレンドリーファイアOFF”な状態。
あるいは、スキル名のまんま……格闘ゲームなんかの”トレーニングモード”みたいに、もう……キュルキュルッ! ……って感じに、ダメージが巻き戻るように無くなっていくんだよな……! さっきからもう一時間ぐらい……オルセットと死合ってる、今でさえもッ!
ただ……実戦で使えそうにない”能力制限”があるのがヒジョ〜にッ! 残念だけどな〜。いくら敵の攻撃を受けても、全て”0”になるって……正にあのゴールドでレクイエムなスタンドみたいで……絶対チートなんだけどなぁ〜。
まぁ、ただ……今の発言は見過ごせねェなぁ……?
「おい、”死ぬ”だなんて……縁起でもねェ事言うなって、前から言ってるだろ? せめて言うなら、”ヤラレチャッタ”って感じに言えって……!」
「あっ、ゴメン……」
「……まぁ、オレもオルセットの圧倒的な”スピード”と”パワー”の前には……何度も”ヤラレチャウ”一歩手前まで、追い詰められたからなぁ……ホント、仲間で良かったって思うよ……」
「ホントゥッ!?」
「……お、おう……」
……だから、顔! 顔近ェってッ!? ……あぁ、そうだッ!
「オッ、オルセット? ちょっと……休憩しないか? あぁ、ホラ! 飲み物持ってくるからさ!?」
「……なんか、ボスゥ? ウソツいてる〜?」
……もうッ!? なんで分かんのッ!? 汗を舐められるよりも、難しいハズでしょッ!? 嘘発見ってッ!?
「……吐いてねェよ。オレも喉乾いてるから、取ってくるよ」
「……フ〜ン」
……ウワ〜あの素気ない返事も”納得していませんよ?”って、感じだと良く言ってくるんだよな〜。恐ロシア〜早よ持ってこよ……。
〜 ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ……。 〜
「ホラ、オルセット。昨日から用意しといた”スポドリ”だ。後、タオルも」
「ウワ〜ヤッタァ! ヘンな味だけど、甘いからスキなんだよね〜」
……ホント、何で”アクエリ”があって、”コーヒー”がねェんだよ……?
「一気に飲むなよ〜? それ一本で、”MP100”もするんだからな? そうポンポン出せるモンじゃあ……!」
〜 プシッ、ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……! 〜
「……飲んだら、汗も拭いとけよ……」
……イイ飲みっぷりだよなぁ……。後、オルセットがフツ〜に学生生活を送っていたとしたら……陸上部? ……とかの運動系の部活に、絶対在籍してそうだよなぁ……。”スポーツ推薦”、待ったナシの身体能力ッ! ……って感じで。
まぁでも……万年赤点の追試でいっつも、部活前に”補修の先生”とかに引っ張られてそうだけどもなぁ……。
後、”ダース”の奴には悪いと思うが、その根拠に今着ている服もあるしなぁ……。「アウトドアセール」で出せる衣服ってのは、その名の通りアウトドアやキャンプ用に関連した物しか出せないってのに、服を選ばせた際に『コレ! コレ出してボスゥッ!』……って、直感的かつ喰い付くように言ってきたからな〜。
んで、今着ているのが……取り敢えずの”スポブラ類”の下着に、半袖Tシャツ。今は前を開けているけど、オレンジ色と肌色(?)がベースの”マウンテンパーカー”。そして下が何故か、黒色かつカーゴパンツっぽい”トレッキングパンツ”……しかも、半ズボン。それに”素足”って言う……。
そう、”半ズボン”に”素足”……虫にガンガン噛まれそうな森の中でだぜ? しかも、それ以外に枝に引っかかったり……そもそも、戦闘時の負傷を減らすためにも、選んでた際に『長ズボンにしとけ! 後、靴ッ!』……って、オレが勧めたのに、断固として嫌がったからなぁ……。理屈話してもダメだったし……何なんだろう……?
……それに、半ズボンだと……オレの目のやり場が困るってのも……ッ!?
「プニャ〜、オイシ〜ッ!」
「おいおい、全部飲むなって言ったけど……そんな半分近く飲むのも……!?」
「え〜イイじゃん。チャンとボスの言う事〜マモってるし〜?」
「朝とは言え、ほぼ毎日”角砂糖”食ってるからな!? 不摂生な生活を送らないよう、管理してるオレの身にもなってくれよ……オルセット……!」
「う〜ん、でも〜コワクないの……? ボスゥ……」
「……えっ?」
……いきなり何だよ? オルセット!? あぁ……おい、そんな……急にしおらしく……木にもたれ掛かるよう滑り落ちては……体操座りっぽくするって……!?
「……サイショは何度も……ボスをナグッたり、ケッたり……ジュウをウッたりするのはイヤだったけど……し……あっ、ゴメン……何度も……”ヤラレチャウ”コト……ボスゥ、コワくないの?」
……あぁ、ナルホド。頭で分かってるし、実際何度も”0”になっているから、どうしようもないんだけど……それでもやっぱ、オレを何度も殺すような事をしている以上……心配なのか。……ここは”タフガイ”を演じるまでもないな……。
「……クソ怖えよ……」
「……そう。だったら……もう、こんな事……!」
「だけど……恐怖しない奴は”人間”じゃあねェよ……」
……”トレーニング”のスキルあれど、オレもチョッピリ疲れてるしなぁ……。オルセットみたく座って話すかぁ……。
「……ど〜ゆ〜事? ボスゥ?」
「……チョッピリ長い話になるけど……その間、質問せず聞けるか?」
「……ウン、イイよ」
「……人間ってのはな? ズ〜ット昔からそうなんだよ……。暗闇が怖いからこそ、人は火や明かりを見つけて……敵が怖いからこそ、人は枝や棒、そして剣や弓、更には銃とかの武器なんかを作り上げては武装し……人が怖いからこそ、人は目に見える家や城壁とかの壁や……心の壁を作っては、親しくない人間を遠ざける……」
「……」
「オレだって、こんな慣れない世界で……”ヤラレチャウ”のは怖ェよ……。オルセットが”ヤラレチャウ”のも、スッゲェ怖ェよ……ッ! でも……不謹慎であれど……! この「トレーニング」のスキルで、その”ヤラレチャウ運命”を、何度でも繰り返し学べる事ができるなら……!」
「……」
「オレやオルセットが強くなれるなら……ッ! 何度でも、オレは仮初の”ヤラレチャッタ”になろうとやってやるッ! そう覚悟してんだよ……ッ! オマエの拷問された姿を見て以来、二度と死に……すまない、”ヤラレチャウ運命”なんて、お互いがならないために……ッ!」
「……そんなの、ボクだって……!?」
「オルセット? 言っとくが……スキルのおかげといえど、慣れるなよ?」
「……えっ?」
「これは、「トレーニング」ってある意味”反則的な効果”を持つスキルだからこそ、出来てる訓練だ。分かっていると思うが……このスキルのない、本当の敵と行う”戦闘”ってのは……負ければ確実な……”ヤラレチャッタ”……って、事になる」
「ボスゥ……」
……聞きたくない、厳しい事だろうけど……現実だって事は、ハッキリさせとかないとな……。
「それにな? これからは、魔物以上にオルセットは”人間”と戦っていくハズだ。そんな中には、オレの”不意打ち”なんかが可愛く見える程の悪辣……悪どい事を、平気で行う”クソ野郎”は少なからずいるハズだ。そんな奴と戦う事がもしあって……それで対応しきれずに……って、考えるとな……?」
「……ボスゥ」
「だからこそ、「トレーニング」のスキルの効果を知ってからは……そんな目に合う前に……! どんなにオレが、オルセットの手で”ヤラレチャッタ”になろうが……どんなに…どんなに、思いつく限りの”卑怯な手”を教えるために、オレが……オルセットの事を……!?」
〜 グイッ! ズキュゥゥゥンッ! 〜
「モゴォゥッ!?」
……おっ、オルセット……!? また……ッ!?
〜 ギュゥゥゥゥゥ……ブチュゥゥゥゥゥゥゥ……ポンッ! 〜
……りょ、両手で後頭部を……抱きしめての……キッ、KISSゥゥゥ……ッ!?
「……ボスゥ、もう…イイよ。ゼンブ、分かったかは……自信、ないけど……それでも、言わなくて……ダイジョウブだよ……?」
「おっ、オルセット……?」
〜 ギュ、ギュゥゥゥゥゥ……! 〜
……いっ、色々と嬉しいが……アカン、おっ、オルセット? そう……正面から、そうギュ〜って抱きしめられてると……あっ、当たってる! 色々当たってるッ! 色々と当たってますからぁッ!?
こう、前に三回上も熱烈な”KISS”をされて、彼女宣言された以上……多分! 彼女な事を色々お願いしても大丈夫なんだろうけどッ!? こんなテント暮らしで!? こんな立派な”家”や”基地”とかの”拠点”もないで!? それ以前に、こんな立派な”医療施設”でさえもない状況でッ!?
こっ、こんな……こんな……ハーレム万歳ッ! ……とか思ってやがる”エロ主人公”が思うような……無責任な事を……!? かっ、掻き立てられるような……せっ、性欲を持て余しそうな事を……ッ!?
〜 ……ポン、サラサラサラサラサラ〜。 〜
「フニャ……?」
「だっ、大丈夫だ……オルセット。……あっ、ありがとうな……」
……オレは無責任野郎じゃあない。オレは無責任野郎じゃあない。オレは無責任ヤロウじゃあない……ッ! オレはオルセットが好きでも分別は付けられる! オレはオルセットが好きでも分別は付けられる! オレはオルセットが好きでも分別は付けられるッ!
そうだ、そうだ! そうだ! オレはボスだ! オレはボスだ! オレはボスだァァァァァァッ! クールで、カッコ良くて、こう色々と無自覚なオルセットへの好意も”頭を撫でて”ッ! こう……控えめながらもチャンと伝えられるッ! エロガキじゃあくて、大人な男なんだァァァァァァァァァァァァァァッ!
「……そっか。良かったぁ……ボスゥ……」
……あっ、カワイイ……。そんなまた、しおらしく……こう、たぶん…ネコが好意のある人物に……頭を擦り付ける行為の如く……オレの胸に、頭を擦り付けてるの……。
一ヶ月の間で、そこそこオレに見せるようになった行為なんだよなァ……。まぁ、|オレの知らないところで《テントに潜入しては》……もっとされてんのかもしれないけど……。
……だっ、だが断るッ! 今は”色ボケ”している場合じゃあねェんだよッ!? 三度目かは知らねェけど!? 色ボケした末で、”転生保険”が補償されてないであろう以上! そんな事は血涙流しても、お預けッ! 理性の大勝利なんだよォォォォォッ!? クソッタレェェェェェェェェェェッ!
「……ホラ、オルセット? もうオレは大丈夫だから……! このタオルで、汗拭いた後……もう少しだけ”実戦訓練”を続けるぞ?」
「……エェ〜もうちょっとボスのニオイ、クンクンしたかったのになぁ〜」
……そ・れ・が、目的か!? オルセットッ!? ……いや、落ち着け……前半のハグは本心なハズだ……! そしてコイツも嘘偽りない本心のハズだ……ッ! なんたって、ある意味”本能のまま生きている”感じがするからなぁ……言動から時折。けど……最近、随分と遠慮もないような……?
「……気持ちは有難いけど、バッチィから! やめなさいな!?」
「イヤ〜だ〜! スキなニオイなのに〜!」
〜 ギュゥゥゥゥゥ……! 〜
……こんのぉぉ……! 離れないようにまた抱きついて……!? ……よぉぉし! そっちがその気なら……ッ!
〜 ピコッ、ピコピコッ、ピロリロ〜リン! 〜
「ニャフフ〜ン、ボスゥ、ボスゥのニオイ〜♪」
〜 ググッ、ググィグィグィグィグィ……! 〜
「ふっ、フニャ!? なっ、何コレ……?」
「オ、ラァ……よっとッ!」
〜 ゴロゴロン……! 〜
「フギャァ!?」
……ヨォォシッ! 後転、成功ッ! 起き上がりも完ペキッ! オルセットは……あぁ、優しく押したのに、仰向けに倒れてんなぁ……?
「もう、ボスゥッ!? いきなり何すんの……って、ニャレッ!? かっ、体が……? 何で……ッ!?」
――おうおう、フラついてんな〜? まぁ、今は”いつもの慣れた体”じゃあ、なくなってるからなぁ……?
「……ヘブン○・ドアー。お前の基礎能力値は、並の人間と変わりなくなるッ!」
「エェェッ!? またソレェッ!?」
まぁ、実際のそのスタンドみたいにオルセットを本には出来ないけどね? 書き込める内容も限定的だし……後やっぱ、神さんゲーム好きだわ。何でか……カーソル選択音が”バイオで2なゲームの奴”で、決定音が”ドンキでコングなゲームの、樽を飛び越えられた時の音”な奴なんだよなぁ全く……。ゴチャ混ぜじゃん……!
……まぁ、ゲーマーなオレだからこそ、嫌いになり切れないチョイスだけど……。
「相手の能力を弱体化させるような敵なんて、オレの世界にあった物語じゃあ珍しくもない敵だったぞ? だからもしもだが……この世界でも、オルセットの最大の強みである”速さ”とか、そう言った強さを奪ってくる敵が出てきたとしたら……? 今回は、そう言う事を想定しての実戦訓練だ」
「ズルいよ〜! ボスゥ〜!」
「オルセットの事を本気でブッ殺そうとする敵を目の前にしても、そんな冗談を言い続けられるのか?」
「そっ、それは……」
「オレの事を好きだって言ってくれたからこそ、コレをやっているんだ。オレだって、好きなオルセットが……簡単に”ヤラレチャッタ”、なんて事になんて欲しくないからなぁ? ホラ、ボサっとしてないで……早く立って、ナイフを抜け」
「え?」
「ナイフを抜けェ! その腰に装備させたのは”飾り”や”オシャレ”として、オルセットにプレゼントしたワケじゃあねェぞォッ!? 後、渡したタオルで汗拭いとけ」
「う〜ん……分かったよォ……」
〜 スクッ、パンパンッ! ゴシッ、ゴシゴシッ! ポイッ! スッ……シャランッ! 〜
「……おい、タオル! タオル地面に投げ捨てるなって、何回言えば分かるんだよ……!?」
「別にボスが洗ってくれるんでしょ〜?」
「洗う苦労を考えてくれよッ!? 後、首に掛けておくとかで、もう少し繰り返し使うとかさぁ!?」
「イヤだ、ウゴく時ジャマ」
「……おい、オルセット……! お前なぁ……!?」
〜 ……プイッ! 〜
「よし、構えろ。そんな悪い子ちゃんには、とことん”CQCの基本”を思い出してもらうぞ……ッ!」
「ウッ、ボスのイジワル……!」
「イジワルで結構。ただ、そんな減らず口叩いて、ヘッピリ腰してる暇があるなら……オレに何度もブッ殺されないよう……歯ァ食いしばれやァァァァァッ!」
〜 ザッ! ザッザッザッザッザッザッザッ! 〜
「ッ!?」
〜 ザッ! ザッザッザッ、ザッ、ザッ……! 〜
「あっ、そうだった!?」
……おいおい、動揺しすぎだろ? いつもの速度で逃げられないからって……足を止めるなんて……!
「おい、死ぬぞ?」
「えっ!?」
〜 グサァッ! 〜
「フギャァ!? カッ、カハッ……ッ!?」
……全く、何回やっていると思ってんだよ……?
「……まずは、首を一突き。……トレーニング、リセット」
〜 ギュゥオォォォォォンッ! ……キュルキュルキュルキュル……ピロリン! Reset complete 〜
「……ニャハァッ!? ニャハァ、ニャハァ、ニャハァ……!?」
「ほら、刺された所を押さえてる暇があったら、構えろッ!」
「……ニャハァ、ニャハァ、ニャハァ……ボスゥ、ズルい……!」
「ズルいもクソもあるか。戦闘じゃあ、勝つか負けるか……殺るか殺られるかの二択だけだ。ズルいだの卑怯だの言える奴は”弱者”だけ……。そして生き残るのは強者……”強い奴”だけだ……ッ! オラァッ!」
「ニャヒィッ!?」
〜 ブゥオンッ! ブゥゥンッ! 〜
「ホラァ、どうしたぁッ!? 身体能力がオレと同じぐらいになっても、オルセットは反射神経は良いだろ? だから、躱すだけじゃあなく掛かって来いッ!」
「ま……まだ、このカラダにナれてな……!?」
「そんな泣き言ォ! 戦闘中に敵は無視するか笑い飛ばすだけだぞッ!? オラァッ!」
「ニャッ!?」
〜 ブゥオンッ! ブゥゥンッ! ガスッ! ゴスッ! ブゥオォォンッ! 〜
「良いぞォ! オルセット! チャンと、オレの”左フック”をガード出来たな? オマケに……ガードした後に、顔への”左ジャブ”からの”右後ろ回し蹴り”! キチンと反撃も出来てる……!」
「ニャァ、ニャァ、ニャァ、ニャァ……フゥゥゥゥ、フゥゥゥゥゥゥッ!」
「良し、闘志も湧いてきたな? だが……そのナイフは飾りじゃあなく、使って良い事を忘れるなァッ!」
〜 フォンッ! ファッ! フォンッ! フォンッ! キィィンッ! カァァンッ! キィィン……ッ! 〜
……良し、オレのナイフを躱したり……ナイフを使って防御や、斬撃……それに逆手持ちの使い方も上手くなってきてるし、今までなかった”突き”も混ぜてきたりしてるな……!
〜 キィィンッ! カァァンッ! ブゥゥンッ! フォン! ガスッ! ゴスッ! ゴスゴスッ! ブゥオンッ……! 〜
……時折、フェイントや緩急を付けるために入れている、ジャブ、裏拳、アッパー、ローキック、ミドルキック、ボディブローなどなどの対処も出来てキテいるな……! ……初めて組み手を行った際、一方的にボコボコにされていた頃と比べりゃあ……随分な上達具合だ……ッ!
〜 フォン! ファンッ! キィィンッ! カァァンッ! ブゥゥンッ! ガスッ! ガスッ! ゴスッ! ブゥオンッ……! ブゥオンッ……! 〜
……この一ヶ月……全部覚え切らなくてもいい……ゆっくりでも良い……そう言って現状、オレが知る限りの事を教えてきたつもりだが……言葉の意味とか漢字、後は簡単な読み書き計算とかの”勉強”はほぼからっきしだったが……オルセット?
〜 キィィンッ! フォン! ファンッ! カァァンッ! フォン! ファンッ! ブゥゥンッ! ガスッ! ガスッ! ゴスッ! ガスッ! キィィンッ! キィィンッ! 〜
お前はやっぱ……戦闘に関しては、天才的だよ……! 今の攻防の後半戦、同じ身体能力でも……もうオレの攻撃はほぼ躱されるか、防御されるかの二択にしかなっていないからな……ッ! それに、冗談とネタ的に教えた”格ゲーな技”も……まさか再現しちまう程だしなぁ……ッ!?
〜 カァァンッ! 〜
「ニャハァッ!?」
「しっかりしろォッ!? 顔面、ガラ空きだぞォォォッ!?」
〜 フォォォンッ! グンッ! 〜
……ホォ? ボクシングにおける”ダッキング”か? ”逆手切り付け”は躱されたが、このまま背中にナイフを……ッ!?
〜 バッ! ブゥォォンッ! 〜
――なッ!? 脚ィッ!?
〜 ドガッ、ゲシャァァッ! 〜
「グッ!?」
……クソッ!? こんな”カポエイラ”みたいな……!? イヤ、むしろコレは……倒立する際、壁に両足を付ける動きかッ!? おいおい、こんな土壇場でこんな奇抜な技、決めるような軍人は……!?
〜 ググッ……バッ! 〜
「ッ!?」
……そうだよな、オレが相手にしてんのはそもそも”軍人”じゃあねェ……ッ! ”オルセット”だもんなッ!? そんな両腕の力だけで……さっきの奇襲で怯んでいるオレの頭上より上へと、跳び上がっては……!
〜 ブゥォォォンッ! 〜
「ニャラァァァァァァッ!」
……両手に持ったナイフで、オレの頭目掛けての”下突き”……ッ!? 大乱闘に出演する勇者もビックリな、意外性ある一撃だよッ!? クソッタレッ!? ……だがなぁ?
「まだまだ隙だらけなんだよッ! オルセットッ!」
〜 スカァッ! 〜
……”倒立二段蹴り”は驚いたが……持ち直せばこの”下突き”は”、バックステップ”で容易く躱せる……ッ!
「クッ、ニャラァァァァァァッ!」
〜 ダッ! フォォォンッ! 〜
……今回は”突き”だが……この一ヶ月、オルセットは距離を取られると今みたいに……突っ込むように攻撃してくる”癖”があるから、ソイツを利用して……!
〜 ガシッ! グリィッ! 〜
「フギュウッ!?」
……ナイフを持つ手首をキャッチ&ツイスト! それで、緩んだ手からナイフを叩き落として……ッ!
「オラァッ!」
〜 ……カラァンッ! グォォォォンッ! 〜
……すかさず、ナイフを逆手持ちに持ち替えてから、”裏拳フック”の要領でオルセットの首に叩き込むッ! これで、2回目……! チェックメ……!
〜 ガシィッ! グリィッ! 〜
「ウグッ!?」
……なっ、何ィッ!? オルセットが……受け止めて……!?
〜 バシィッ! ……カラァンッ! 〜
「ニャラァァァァァッ!」
……ナイフを叩き落としてからの、”右ストレート”……! だが、甘いッ!
〜 ガシィッ! グリィッ! 〜
「フギュウッ!?」
……さっきの”ナイフ弾き”の要領で、拳を受け止めた後に、手首を折り畳ませるように拳を押し込みつつ……!
「オラァッ!」
……「CQC」のスキルで体得した、合気道の”小手返し”って技をアレンジをして投げ飛ばす……ッ!
〜 グルンッ! ドタァァンッ! 〜
「フギャアァッ!? ……イッタァァァ……ッ!?」
〜 グゥォォォンッ! 〜
……悪いが今は、「トレーニング」中だッ! このまま、頭を踏み抜かせて貰う……ッ!
〜 ブゥォォォンッ! ゲシャンッ! 〜
「ドゥオォォッ!?」
〜 ドデンッ! 〜
……痛ツツ……マジか!? 今度は、ブレイクダンスみたいな”足払い”で……オレに尻餅を付かせやがって……ッ!?
〜 バッ! フゥォォンッ! フゥォォンッ! フゥォォンッ! フゥォォンッ! フゥォンフゥォンフゥォンフゥォン……スタッ! 〜
……んで? 窮地を脱した後に、一旦距離を取るため……”連続バック転”で離れた後、お得意の空中連続回転から……余裕の”四点着地”か……。
「……フニャァァ〜、アブなかったァァ〜」
……この野郎……!
「おい、オルセット?」
「ん?」
「さっきの動き……オレのナイフを叩き落としたあの動き……いつの間に覚えた?」
「ニャフフ〜ン……そのウゴき、さっきイタダイちゃった〜」
……口に出すと調子乗りそうだから言わないけど……これだから、戦闘の天才っぽいんだよなぁ……。最初はダメでも、いつの間にか学んで使いこなしてやがるからなぁ……!
「……良しッ! なら、こっからはお互い武器はナシだ」
「あっ、じゃあ……ボスをマッショウメンから、ボッコボコにデキるって事だねェ〜?」
……フッ、この野郎……! 一ヶ月間、死合ってきて分かったけど……オルセット、結構負けず嫌いなんだよなぁ……。最初期でも、技術が全くなくてボコボコにされても、我武者羅に立ち向かって来たしなぁ……。
まぁ、最近じゃあ……この”弱体化戦”とか、オレに勝てるようになってきては……今みたいな発言のように、チョッピリ”生意気”になってきているのが……地味に心配だけどなぁ……。
「図に乗るな、オルセット? オレに勝つ事が出来るからって……それがずっと、オレを守れるような力であり続ける訳じゃあないんだ。敵は絶対、侮るな。敵を侮って、”雑魚”と思って油断してたら……オレを守れないぞ?」
「モォ〜分かってるよォ〜ボスゥ〜ッ! ボクの耳がチギれちゃいそうなぐらい……モォ〜何回もキいてるしィ〜?」
「……悪いが、そう言う”真面目な態度”をあまりしないからこそ……心配して何度も言ってるんだよ? それに、人が何度も言う事は大事な事。”言われるうちが華”って事も、何度も教えてるだろ?」
「……ねェ〜ボスゥ〜? 早くハジメよ〜?」
……全く、オルセットったら……どんだけ”運動バカ”なんだか……ッ!
「……じゃあ、オレの言う事を全く聞かなくなって……オレに見捨てられたりしたらどうするんだ?」
〜 ビクゥッ! 〜
「……や、ヤダよぉ……ボスゥッ!?」
「……そっちの方が断然、嫌だろ? だったら……聞けてやれる事は大人しく聞いて、お互いに”生き残れる確率”を少しでも上げていくぞッ!」
「……ウン、じゃあボスゥ……! そろそろヤル?」
……おっ、分かり易いぐらいに尻尾をユラユラとくねらせてるなぁ……? そんなに、死合をやりたいのかぁ……?
「……良し、じゃあ構えろ! オルセットッ!」
「ウン、負けないよ……ッ!」
〜 ザリィ…ザリィ…ザリザリィ…ザリィ……! 〜
……フッ、なんか……洋画に良くある、両者睨みあったまま……すり足でお互いが円を描くように動きつつ、様子を伺うなんてシチュエーション……オルセットと会わなかったら、絶対やらなかったと思うなぁ……。
〜 ザリィ…ザリィ…ザリザリィ……ピタッ……! 〜
「ニャラァァァァァァァァァァァァァァッ!」
「オラァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
〜 ザッザッザッザッザッザッザッザッ……ッ! 〜
……さて? 仕切り直しからの、初撃を決めるのは……ッ!?
〜 ……グンマァァァァァァァァァァァ……ッ! 〜
「「ッ!?」」
〜 ピピタァッ! 〜
「……ハァ、挑戦者現る……って所か? 不粋だなぁ……」
「……フゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!」
……ウォッ!? 牙剥き出しだし、尻尾の毛が逆立っているしで、声の方向に向けてムッチャ怒ってるよ!? オルセットッ!?
〜 ……ダダダッ! ダダダッ! ダダダッ! 〜
「さっきの銃声に釣られてきたのか……? でもまぁ……これじゃ一旦、勝負はお預けだな……ゲームセット」
〜 ギュゥオォォォォォンッ! ……キュルキュルキュルキュル……ピロリン! Training END 〜
……よし、痛みも無くなったし……叩き落としたナイフも、鞘に戻っているな……!
「……オルセット? 迫ってくる不粋なアイツ……一人で殺れるか?」
「……フゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……エッ!? ぼっ、ボスはァッ!?」
「以前、オルセットさんに”クソザコナメクジ宣言”されたボスさんは……大人しく銃を使って、援護に徹します……!」
「エェェェッ!?」
「ハハッ、と言うのは冗談で……オルセット? ここ最近……ちょっとした大物な魔物でさえも相手してないだろ? それに……別個体だが、マグズリーへの”リベンジマッチ”って事で……この一ヶ月の訓練の成果を、オレに見せてみろ……!」
「……エッ、エェェ〜? デキるかなぁ〜?」
「おいおい、オレとの死合で見せていた生意気さは何処いった? それとも……オレを守りたいって事は嘘なのか?」
「ッ!? ちっ、チガうよッ! ウソじゃあないモンッ!」
「フッ、だったら見せてみな?」
〜 ……ポワァァァァァァ……バシュンッ! クルクルクルクル……チャキッ! 〜
「安心しろ、オレは逃げはしねェ。危なくなったら援護する」
「エッ? ボスも戦うんじゃあ……?」
「オマエみたく、オレが素手でマグズリーと殴り合えるって思うんじゃあねェよッ!?」
……悲しいけど……まだまだ「人外(笑)」な身体能力なんだよなぁッ!? クソッタレッ! ”冴島の兄貴”が羨ましいぜッ!
〜 ……ダダダッ! ダダダッ! ダダダッ! 〜
「ホラ、来るぞッ!」
「エェ……でも……!?」
「あのクソ熊を仕留められたら、今日の夜はお肉をたっぷり食べられるぞッ!?」
〜 ピィィィンッ! 〜
「ウンッ! マカせてェッ! ボスゥッ!」
……ウワァ、ホンット食いしん坊なやっちゃなぁ……尻尾もピンッ! ……って、天に向かって立っているし……。でもまぁ、コレホント合理的なんだよなぁ……”実戦訓練&食糧調達”って感じで、咄嗟に思いついたけど……。
〜 ……ダダダッ! ダダダッ! ダダダッ! ……グンマァァァァァァァァァァァッ! 〜
「来いッ! デカブツッ! ボクがオマエをブットバシテやるッ!」
〜 グッ、ザッギュゥゥゥゥンッ! 〜
……フッ、良い啖呵だ。成長してんなぁ……オルセット……ッ!
〜 パチパチ、パキッ、パチパチパチパチ、パキパッ! パチン……ッ! 〜
「……ニャアァァァ〜ン」
〜 ガブッ! ミッチィチィチィィィィィ……ブチッ! 〜
「ニャグ、ニャグ、ニャグ、ニャグ、ニャグ……ウゥ〜ン、マグズリーのオニクって……カミゴタエスゴイケド……味はスゴくコクて、オイシ〜ねェ〜ボスゥッ!」
〜 シャッ、シャッ、ポイッ、シャッ、シャッ、ポイッ、シャッ、シャッ、ポイッ……。 〜
「……ムゥ〜、ボォ〜スゥ〜?」
「……エッ? あぁ……そうだな……」
……いやぁ、さ? 強いし美人なオルセットさんと楽しくお喋りしながら……ウマイ”マグズリーの焼き肉”に、オレもガブリ付きたいとは思うよ? 最終的にトドメ刺した、功労者さんなオルセットさんとよ〜?
何たって、最終的に……カベキックからの、スピニングバックキックで、華麗なフィニッシュッ! ……を決めてたし……。
……しかも、その一蹴りで首を一回転させた事もしていて、【アレ? オレ、ハリウッドの撮影現場に来てたっけ……?】――って、アホみたいにビックリしてたからなぁ……。おニューの銃で、援護してたオレェ……。
ただ……その後よ。その後が大問題だったのよ……!? ノリと打算で、”お肉バイキング”をオルセットに言ったのは地味に失敗だった……ッ!
訓練してたのが昼間なのに、”解体作業”とバイキングのための”精肉加工作業”に時間が掛かり過ぎて、もう夜ッ! もう夜なんだよッ!? そしてその重労働で、クッタクッタなんだよ……ッ!
〜 シャッ、シャッ、ポイッ、シャッ、シャッ、ポイッ、シャッ、シャッ、ポイッ……。 〜
「ボスゥ〜? オ〜イ、ボォ〜スゥ〜?」
……呑気でイイよな〜オルセット……? 一応は解体作業時に、マグズリーの死体を持ち上げて、捌きやすくするのを手伝ったりしてくれたりはしたけど……結局、捌いたのは全部オレだからなッ!?
しかも、夜まで掛かっちまった所為で、元々”予定していた訓練”は結局やれなくなっちまったし……こうしてゆっくりメシを食うハズの時間に、”火力アップ作業”を、もう経験する事もないだろう……”残業”の如くやんなきゃいけないってッ!?
それにオルセット!? 今もカブリ付いている、”肉の香ばしい匂い”と”疲れからの眠気”の所為で……地味にオレのストレスヤバイからな!? オレも食いたいのにッ!? ……って、感じだからなッ!?
「ハァ……”獲ったど〜ッ!”……とか、やってるワケじゃあねェのになぁ……」
「ねェ〜ボスゥ? 食べないの〜? 早くしないと〜ボクがゼ〜ンブ食べちゃうぞ〜?」
「……エッ? あっ、あぁ……全部食うなよ……?」
〜 シャッ、シャッ、ポイッ、シャッ、シャッ、ポイッ、シャッ、シャッ、ポイッ……。 〜
「……ムゥ〜! ねェ〜ボスゥ? さっきから何やってんの〜?」
〜 シャッ、シャッ、ポイッ、シャッ、シャッ、ポイッ、シャッ、シャッ、ポイッ……。 〜
「……エッ? あっ、あぁ……コレか? コレはなぁ……”十字弾”を作ってるんだ」
「……スプリットポイントダン……?」
「あぁ、簡単に言えば……この弾が敵の体内に入ると、普通の弾よりも多くのダメージを与えられるんだ。ただ、普通の弾よりも……鎧を来た人間や、硬い皮膚とかを持ってる奴には……通用しにくくなっちまうけどな……」
――これは”レッドデッドでアウトローなゲーム”をプレイした時に知った知識だが……鉛が露出した弾頭に”十字状の傷”をナイフで刻んでやれば……たちまち、着弾した相手の体内をボッロボロにする”ダムダム弾”の出来上がり! ……って感じなんだよなぁ……。
まぁ、科学知識とかに疎いオルセットには……今ぐらいの説明で、今は充分だろうけど……。
「ハーグ陸戦条約」? ……知るかっての。 ここは異世界だぞ? 地球のルールをお行儀良く守っていちゃあ……命がいくつあっても足りねェってのッ!
それに加工した弊害で多少、弾の命中率が悪くなったり、ダムダム弾だと銃が傷みやすくなったとしても……現状は少しでも”火力の底上げ”をしなくちゃいけねェからなッ!?
まぁ、ただ……あのゲーム……金庫にダイナマイトを使用しない”銀行強盗”をする際は……めっちゃスリルがあったよなぁ……。ハハッ、まぁただ同時に……西部開拓時代は、地味に”無法な異世界”とあんまし変わらず……混沌としていたって事も分からされたけども……。
「ヘェ〜。じゃあ、さっきの”マグズリー”の時も、それをウッテたの?」
「あぁ、狩りの時にも使えなくはないからな。こうやってナイフで弾頭に傷を入れるだけで簡単に作れるから……まぁ、時間がある時はコツコツと作ってんだよ……」
「……手伝おっか?」
……うわぁ、これも成長かなぁ……? 今まで、あんまり進んで”手伝い”を申し出した事なかったオルセットが……!? クソォッ!? オレはオマエの”オカン”じゃあねェのにッ!? 涙が……ッ!
「サンキューな。ただ……悪ィけど、メシを食った後で頼むな? その肉汁塗れな手で作業したら……弾を込めた際、銃に悪影響が出るかもしれないからな……?」
「アッ、ゴメン……」
「……そうショゲんなよ……。ゆっくりで良いから味わって食っとけ。オレも、もう少ししたら……焼けた肉を貰うからさ……」
「ウン! 分かった、ボスゥ!」
〜 ガブゥッ! ミッチィチィチィィィィィ……ブチッ! 〜
「おいおい……ゆっくりで良いって言ったろ?」
……しかし良く食うよな〜。最初は焼肉屋で出されるような”薄いサイズ”を、焼いて出してたけど……急に『物足りないよ〜ボスゥッ!?』……って、言い出したから”ステーキサイズ”……そして挙句の果てに、今食っている骨無しなマンガ肉サイズにカブり付いてやがるからなぁ……ッ!?
もう……何人前だ? 確か……肉屋で販売される肉は、”百グラムが一人前”だったけなぁ……? それで考えると……もう十人……いや、五十人前近い重さの肉を食ってるよな……ッ!? 戦闘力だけじゃあなく、食欲もスゲェけど……大丈夫かぁ?
それにジビエ肉って、普通の肉よりもジックリ火を通さないと……ヤバい菌が多いって聞いた事があるから、『ホルモンはな? 焼かれて焼かれて……真っ黒なるまで焦げて、脂落として味を磨くんや(意訳)』……って、言っていた”冴島の兄貴”みたく……真っ黒焦げになる程、シッカリ火は通したつもりだけど……。
マジで大丈夫かなぁ……? 特に、今食ってるマンガ肉……二時間ぐらい、ジックリ火を通したんだけど……生焼け、ないよな? ……あぁ、クソ……! その時間があったらって、思い出すと……!
〜 シャッ、シャッ、ポイッ、シャッ、シャッ、ポイッ、シャッ、シャッ、ポイッ……。 〜
「……ねェ、ボスゥ?」
〜 シャッ、シャッ、ポイッ、シャッ、シャッ、ポイッ、シャッ、シャッ、ポイッ……。 〜
「……エッ? あっ、あぁ……どうした、オルセット? ……手伝いはまだいいぞ? まだ、肉が食い掛けだろ?」
「……ボクタチ……このままでイイのかなぁ……?」
〜 シャッ、シャッ、ピタッ……。 〜
「……急にどうした? オルセット? 何か不満な事があるのか?」
……エッ、エェッ!? 倦怠期ッ!? まだ”結婚式”どころか”夫婦”にもなっていないけど……これが噂の倦怠期ッて奴かァッ!? かっ、解消出来る事は、解消しないとな……ッ! 今、オルセットに”仲間を辞める”とか言われるのはマズイッ! 非常にマズイッ!? 打算的にもッ! 個人的にもッ!
「ウゥ〜ウゥン、チガウ。ボク、キオクソウシツだけど……タブン、その時よりも……今のボクはシアワセだと思うよ? ボスが作ってくれるゴハンはオイシイし……サイショは…ヤダだったけど……ボスと戦うのはタノシイし……ボスと狩りをしたりするのもそう……ボスのおカゲで、ボクがツヨくなっていく事も……!
イロイロ……ボスと会えて……ボスの事、スキになって……良かったと思ってるよ……ボスゥ」
〜 ……ポロッ、ポロポロ……! 〜
「……エッ!? ど、どうしたのォッ!? ボスゥ!?」
……チキショウ……ッ! つ、疲れてるからかな……? 目から汗が止まらねェや……。
……正直、こんな……こんな”問題児”だったとは……ベルガ婆さんの所で、同居した際に気づけよッ!? ……って、自分にツッコミたくなる程、オルセットには……スンゲェ手を焼かされて来たけど……ッ!? 今まで経験から……努力しても報われねェって思って来たけど……ッ!
『努力は必ず報われる』……それを今日、初めて知ったような気分だよ……ク、クソッタレェェェ……ッ!
「ダッ、ダイジョウブッ!? ボスゥ!? ドコがイタイのォッ!? ……アッ! キュ、キュウキュウバコッ! ボスのテントにある”キュウキュウバコ”モッテクルよッ! ボスゥッ!」
……おっと、サッサと汗は拭かないとなぁ……オルセットの”優しさ”が暴走しちまう……!
「……大丈夫だ、オルセット。救急箱は、持ってこなくて大丈夫だぞ……?」
「エェ!? でも……」
「……ちょっとな? 目にゴミが入って今、涙で流したトコロだからな……心配すんな。メッチャちっこい魔物に襲われたワケでもねェから……落ち着け」
「そ、そう……? ……良かったァ〜」
……フッ、全く……まだまだガキっぽいけど……可愛らしいモンだなぁ……。今も、ヘナヘナと座り込んじまってよぉ……?
「……フゥ、それはそうとオルセット? さっきオレに対して色々良く言ってくれたみたいだけど……じゃあ、何が不安なんだ?」
「……あ、そうだったね……。ねェ、ボスゥ? ボクタチ……ズ〜ッと、”ヨウヘイ”ってヤツでガンバッテるのは知ってるけど……」
「オウ?」
「ホカのムラとか……”ヨウヘイ”として、ゼンゼン行ってないけど……ダイジョウブ? オカネとか……?」
「あぁ〜ナルホドなぁ……」
……まぁ、オルセットはまだまだ”ボキャブラリー”が少ないからなぁ……。純粋に”心配してくれている”……って思いたいが、要はこのほぼ訓練漬けなサバイバル生活を続けてたから……【”ニート”なままで大丈夫か?】……って予想はすれど、思ってて欲しくないけどなぁ……。
「……結論から言えば、オルセット? 一応大丈夫だ」
「……ド〜して?」
「ど〜しても何も、オレ達がまだまだ”弱い”からだ……! 後、傭兵じゃあなくても”金を稼ぐ手段”は、この一ヶ月である程度考えてる」
「えっ? ど〜ゆ〜コト?」
「まず、今後もあの”記憶玉”を持っていた”ドス”野郎が……あの盗賊団長と、ずっと同じ強さってのは絶対にないッ! だからこそ……力を蓄えられる時は、とにかく訓練をしたり、魔物や盗賊とか悪い奴をブッ倒しまくって……とことんレベルを上げるための経験値と、実戦経験を稼ぎまくるッ!
それが今大事だからこそ……このサバイバル生活をやってるんだ」
「ニャ〜るホドォ? じゃあ、”オカネをカセグシュダン”ってのは?」
「朝に、”燻製肉”入りのトマトリゾットを食べたのは覚えてるよな?」
「ウンッ! ボスゥ? 明日のアサも、作ってくれる〜?」
「あぁ、まぁ……作るけど……今後毎日ってのは、考えなくっちゃいけない」
「えっ? ド〜して?」
「ベルガの婆さんが話してくれた一般常識で、”行商人”なら……冒険者や商業ギルドを介さなくても、品物の売買……売ったり買ったりする事で、金を稼げるって聞いてたからな。
だから、オレらが仕留めた魔物肉を”燻製肉”に加工して売ったり……森とかで見つけた、高価だったり珍しい植物なんかを、村とかでやっていけば……貯金するぐらいにはコツコツ貯まるんじゃあないかと思ってる。
これならもし、村とか町を回って……”傭兵の仕事”がなかった時でも、金を稼ぐ事が出来るしな。それに宿に泊まる金がなかったとしても……ここ一ヶ月で、オレが出したテントの住み心地は良かっただろ? オルセット?」
「ウン! シャラフとかフッカフッカだったしねッ! ボスの作ってくれるゴハンもオイシ〜しッ!」
「ハハッ、シェラフ。寝袋な? まぁ、コレで納得してくれたか? オルセット?」
「ウンッ! 分かったァ〜ッ! だからボスも早く、オニク食べてねェ〜」
〜 ガブッ! ミッチィチィチィィィィィ……ブチッ! 〜
「アァ、もうちょっとだけ……”十字弾”を作ってからな?」
〜 パチパチ、パキッ、パチパチパチパチ、パキパッ! パチン……ッ! ガブッ! ミッチィチィチィィィィィ……ブチッ! 〜
「ニャグ、ニャグ、ニャグ、ニャグ、ニャグ……ニャハ〜ン……ッ! マグズリーのオニク、オイシ〜ッ!」
〜 シャッ、シャッ、ポイッ、シャッ、シャッ、ポイッ、シャッ、シャッ、ポイッ……。 〜
……それと、時間は掛かっても……まだ治りきらないオルセットの古傷……アレは絶対、何とかしてェよなぁ……。本人はもうイイって、言ってくれるけど……関係ねェな。手間が掛かる問題児とは言えど……オレはオルセットの保護者だ。怪我を負わせちまった責任がある……!
それに……”命の恩”がある以上、キッチリ火傷に対する”ケジメ”は付けておきたい。ただ……模索しようにも魔法に関しては、からっきし……! 今んトコ全然分かってないんだよなぁ……。
古傷に効く”回復魔法”の可能性はなくはないだろうけど……あるかは分からないしなぁ……。けど、もっと確実なのは……婆さんが渡してくれたあの”エリクサー”。入手経路は恐らく……婆さんの”師匠であるエルフ”からなんだろうけど……どうだろう?
〜 シャッ、シャッ、ポイッ、シャッ、シャッ、ポイッ、シャッ、シャッ、ポイッ……。 〜
この世界のエルフは……「エリクサー」を”人間”に売ってくれる程、友好的なのか……? まぁ、あのクソ団長の発言から推測するに……”無理”の二文字な可能性が高いだろうなぁ……。
それでも、そんな可能性のある魔法か……あるいは、”エリクサー”を売ってくれるエルフを何としても探し出すか……最悪、持ってる奴から奪うか盗み出すかだなぁ……。これはホント、最後の手段だが……。それを”ドス探し”の合間にしなきゃいけないのは……地味に大変だよなぁ……。
……贅沢言っちまえば、”エリクサー”を作れるか……あるいは”エリクサー”に匹敵する回復魔法を習得してるような……そんなエルフが、仲間になってくれねェかなぁ……? こう”狙撃手”兼”衛生兵”って感じで……!
エルフと言えば、弓の名手だしッ! たぶん、”狙撃銃”だって扱いこなせるだろうしなッ!
〜 パチパチ、パキッ、パチパチパチパチ、パキパッ! パチン……ッ!〜
……やれやれ……今日程、濃い一日はこの一ヶ月で久し振りだったけど……こんなんでも……明日はまた続く……ってか。
<異傭なるTips> ウォーダリア・フード・セレクション2
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<ディリィジナ>
木の幹に成る、他のフルーツと比べて群を抜いた大きさを誇る、巨大なフルーツ。その大きさは、小さくても女児や成人女性の頭に迫る程で、大きいものは成人男性の頭を余裕で越す大きさに成長するようだ。
ただ、このフルーツ。全く知らない人物が見ると【ヒェッ!? なっ、なんで……大量のゴブリンが木に居るんだ!?】……と見間違われてしまう程の気持ち悪い色合いと形を持つ。例えて言えば、外見は”痛くない棘を持つドリアン”であり……果実の色は、”気持ち悪いグラデーションのスイカのような色”と言うべきか。
だが、その気持ち悪い見た目の反面……実を割ると見える果肉の色は鮮やかな黄色で、芳醇かつ爽やかな甘い香りをホトバシらせる。更に果肉は、”巨大なコーンの粒”ように分裂するようになっており……その一つ一つがカブり付くと、ヨーグルトのような粘性のある、トロトロとした甘酸っぱい果汁が溢れ出てくる。
オルセットに先に完食され、再び必死に探してきたボスが食べた感想によると……【”甘みの強いパイナップル”というか……”少し酸っぱい桃”と言うか……ただ、食感はバナナに近ェなぁ……! 不思議だが……ウマすぎるッ!?】……だそうで。(因みに、安全性は「スキャン」のスキルで確認済みであった)
人の手がほとんど入らず、魔物が多く生息するような原生林でしか育たないため、市場や商人の間でも滅多にお目にかかれない”貴重な甘味”の一つとなっており……冒険者の間では、「黄金の果実」と言われているらしい。
(熟した物は、僅かながらに黄色っぽくなる事と、その希少さ故に「黄金の果実」と言われているんだとか……。ただ、未成熟の物でも取引価格は高いが、それでも「ゴブリン頭」や「ゴブリンの実」……と、成熟した物より価格が低い所為か、一部の冒険者からは罵倒される事がある)
無論、「マグズリー」など……一部の魔物も、この「ディリィジナ」が好物だったりするため、「ディリィジナ」の成る樹木の周辺を”ナワバリ”にしている可能性がある。それも入手難易度を上げる要因になってしまっている……。(表皮がドリアン並に硬く、一部の魔物はこれを”投擲武器”として使う事もあるんだとか……)
そんな「ディリィジナ」。ウォーダリアでは、富裕層の間では当たり前な”おやつ”としての”生食”は勿論……未成熟の果実は”野菜”の一種として、シチューの具の一部になったり……一部の地域では、これを”ピクルス”にして食べる習慣がある村があるんだとか……。(ピクルスとしての味は、”らっきょう”に近い味わいと食感になるらしい……)
また、ボスは食べてはいなかったが……果肉の中に混ざっていた”種”も実は食べられる。生は食べられたものじゃあないらしいが、これを”コーヒー豆”如くじっくり焙煎する事で、酒場での”高級なおつまみ”として出されるらしい。
(味や食感は成熟具合によって変化。若い程”カシューナッツ”などの柔らかな種実類、熟す程”胡桃”や”ジャイアントコーン”などの、硬く歯応えのある種実類に近くなるらしい)
総じて言えば……『気持ち悪い見た目かつ、斧が必要な硬さだが……それを除けば非常に食べやすく、食欲ソソられる異世界の”ドリアン”っぽいフルーツ』との事だそうで。(ボス、心の談)
尚、しつこいかもしれないが……。
この世界の大気には魔力の源となる「マナ」という物質が存在しているおかげで、どんな食料を食べても微量だが、魔力が回復する。
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<基本性能>
(SR) 10000(10.0kg物を完食時)
(CA) 1個
(ME) <MP回復+10%>、<耐毒10%(300秒)>、<視力強化+5%(300秒)>、<自然治癒強化+5%(100秒)>、<整腸作用>
(未成熟の物だと、表記した”ME”の効果が全て半減する)
(DE) >重量+10.0kg〜50.0kg<
(大きさによって誤差あり。表記は異世界で採れた、現状最高or最低重量記録)
(ED) 72h
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