意味がわかると
全ての電気を消した和室の中、火のついた蝋燭が一本だけ立ち、それが唯一の明かりとなっている。
そんな部屋の中に、4人の人影がある。
そのうちの1人が声を出した。
「そう、これは私の友人から聞いた話なんですけど、仮にその人をAくんとしましょう。そのAくんに、その他友人のBくんから不可解なメールが届いたそうです。
『かずきへ、元気ですか。こちらはとても暑いです。
雑木林が生い茂ってきました。刈るのが大変です。
国中で、今、オリンピックが盛り上がっています。
日本が勝つと国中で盛り上がります。父が
殺されました。父の墓に
ロウソクを立てに行きました。もちろん線香も。
さすがに、敬語は疲れるな。もうやめよう。
連絡あとでしてくれよ。ケータイ没収されててさ、
留守番してるから、今だったら話せるぞ!』
なんだこのメール?と思い『俺はかずきじゃないぞ』とだけ送り、その日は携帯を閉じてしまったそうです」
語り終え、その人がふぅ。とため息を漏らす。
ピョコンと耳を…人の耳ではなく、犬のような耳…否、ようなではない犬耳を立て水色の髪をした少年が聞く。
「えぇと、つまり?」
首を傾げる少年を見、少し得意げに赤い髪をした、頭から角の生え、狐耳も生えた、周りから見ればまだ少女と言われそうな女性が答える。
「ふふん、これは『意味がわかると怖い話』と言うものじゃ!」
すると、残りの2人が
「そうだね、多分これ縦読みじゃないかな?」
「まぁ良くあるよね」
頭に何も見られない人の形をキチンとした男性と
今度は頭に狐耳を生やした男性が言う。
それに対して「ちょ、待って!まだネタバラシしないで!」と、手を振るも、水色の少年は縦に読み始めた。
「か
ぞ
く
に
こ
ろ
さ
れ
る
。おぉ…」
「ぐぬぬ…」
その時だった、玄関のインターホンが鳴り「すいません」と言う声が聞こえた。
赤髪の少女は「はーい」と答え、蝋燭の火を消し、部屋の明かりをつけた。
玄関へ向かい戸を開けると、そこにはグレーの死装束(と言って良いのかは分からないが)を着た少年が立っていた。
「こんばんは、たけのこさん。偶然近くに立ち寄ったもので、少しお土産を持った来ました。」
と、ビニール袋を手渡す。
「どこのじゃ?」
「ポーランド」
「ぽっ!?」
と、たけのこと呼ばれた少女が驚いた声をあげると、
ぞろぞろと部屋にいた人たちが玄関に集まってきあ。
「あー!ゆめしさん!」
水色の髪の少年が歓喜の声をあげる。
「どうも、シュウくん」
「あれ?その袋は?」
と、聞かれ先ほどと同じ事を繰り返すゆめしと呼ばれた少年。
「そうだ。ゆめしさんも怖い話大会やらない?」
と、この中では1番人間味のある人が聞く。
「すいません、葉波さん。この後も用事があるので」
そっかぁ。と少し残念そうにするシュウを見たゆめしは
「わかりました。では僕も意味がわかると怖い話を」
「やったー!」
「これは僕の知り合いが体験したんてますけどね?
その知り合いには愛犬がいました。とても優しい性格をしていて、その知り合い…えぇとCにしましょうか。そのCさんが、不安を感じたりすると、手を舐めて、『大丈夫?』と目線を送ってくれたりするそうです。そんなある日の夜の事、Cさんが寝ていたら、突如ガタリと、大きな音が鳴りました。Cさんが不安に思っていると、ペロリと、手を舐められる感触がしました。あぁ、愛犬が落ち着かせてくれてるんだなと、そう思い、Cさんは眠りにつきました。
そして、翌日音のした方を見に行くと、そこには、無惨にも殺された愛犬の姿がありました」
「愛犬んんんん!」
「確かにそれも怖いですが、もう一つありますよ?」
すると、狐耳を生やした少年が
「最初にガタンって音がした後、音は鳴らなかったの?」
「はい」
「じゃあもうその時点で愛犬が殺されてるもするなら、手を舐めたのは多分…」
「はい。正解です」
全員が「おぉ」と、声を上げる。
「あ、そうそう。この知り合い、本当に実在しています。」
「え?!じゃあその後どうなったかとか」
「はい。…といっても僕の職業を考えれば多分分かりますけどね」
「…あぁ」
ゆめし:死神
全員が納得の声を出し、頷く。
「じゃあ、僕はまだ用事があるので、じゃあ」
そう言って外に出て行きました。
「じゃあ続きをしよう。」と言う事で部屋に戻ろうと…ピタリと葉波の足が止まる。
「……今さ?ゆめしさんなんてった?」
「?」
「…『僕も意味怖を』って…」
「それがどうし…」
「何で僕らが意味怖してたのを…」
全員の動きが止まり、暫く悪寒が4人の間に流れました。
水色髪の少年→睦月 柊青
赤髪の少女→里野たけのこ
狐耳の生えた男性→狐月翔
この中で1番の人間→親里葉波
グレーの死装束→ゆめし