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No.1 Hydrain
最初は、「アメフラシ」と呼ばれたバケモノの記録だった。
彼女の記録は、ある日を境にして何も記述されていなかった。
どこまでも灰色で、どこまでも空虚な世界だった。
自分の耳にはいつも雨の音しか響いていなくて、どこに向かって歩いているのかさえわからなくなっていた。
誰かと出会ったのかもしれない。誰かを傷つけてしまったのかもしれない。大切な何かを手放してしまったかもしれない。
そんな日々も今日で終わりを告げようとしている。
薄れゆく視界に、空の青さがだんだんと写っていくのが感じられる。
ああ、もう一度。もう一度だけ青空の下、もう思い出すことのない貴方と歩きたかった。
さよなら、私の太陽。
この雨を連れて、また遠くへ行くよ。
「その日の空の青さは、今までで一段と青かった」と最後に書かれていた。




