第96話:バーベキューの表と裏
「じゃじゃ~ん!皆さんのおかげで、最高ランクのバーベキューです!」
「おぉぉぉ!!」
お刺身用に用意した新鮮な魚介類だけじゃない。
アワビやサザエ、伊勢海老や越前ガニといった鉄板焼き用の食材も、たっぷり用意した。そして、鰻のかば焼き、青さノリやエビ、椎茸や長芋の天ぷらも、準備できてる。
肉類も、日本の有名和牛、様々な部位のステーキや焼肉を用意させていただいた。ハンバーグや自家製ソーセージ、みそ漬けにした黒豚なんかも揃えてありますとも!
野菜や果物も、鮮度の高いものを揃えた。重要なアクセントになるハーブ類、天然岩塩や自家製タレも、多種多様な品ぞろえ。神々のリクエストに対応できるようになってる。
もちろん、神々が好むお酒類やジュース、紅茶類も取り揃えてある。抜かりはないはずだ。
何よりも、本日の隠れた主役と言っていいだろう…… 白米!
組み合わせの祝福を生む白米は、新潟と福井県産のコシヒカリを用意した。あとでガーリックライスにするも良し、海鮮丼や焼肉丼にするも良し、そのまま噛みしめるも良し!
しかし、これだけの食材と神々の数に、オレ一人では対応できない。
ふっふっふ。もちろん、この点も解決済みだとも。
「さぁ、登場するがいい! 料理の鉄神よ…!」
後方を指さしながら宣言する。
徐々に盛り上がるステージに、煌めくスポットライト!
さすがロココさん考案の演出! いい感じだ。助かります…!
「ご覧ください! 和の鉄神、鉄板焼きの鉄神、バーベキューの鉄神たちです」
仰々しい言い方をしたけども、何のことはない。
全員、オレだ。
正確には、オレの分神体。
神の名を称えよの神権で生み出した、数時間限定のコピーたちだ。
全員、ちょっとずつ髪の色を変えたり、服装を料理に合わせて変えたりしている。
禁断型神権をこんなことに使っていいのかと悩んだけど、ロココさんが六体くらいならギリOKですと許可してくれたので、気にしないことにしよう。
それにほら、せっかくのいい環境なんだしね。
ビーチの撮影セットは、美しい陽射しと波のきらめきが再現されているんだ。
夏! バーベキュー!! って感じがして、テンション上がる…!
「それでは皆さん、食材を手に取って、身近なオレに天ぷらや鉄板焼きなど、調理方法をご相談、ご要望ください。また、少しずつ調理した品をテーブルにお出ししますので、そちらもご賞味ください。自分たちで焼いてみたいという要望があれば、そのお手伝いも致します!」
もちろん、本体のオレは、バーベキューに参加させていただきますとも…
分身体のオレには、バーベキュー終わったら好きに食べていいよと、説得してある。
「白米と和牛ステーキと、あと、この天ぷら食べたいです!」
「オレっちは骨付きカルビと自家製ダレのハラミ、あと、味噌豚も!」
オロチ君、シヴァっち、いいチョイスだ。
その様を見て、残りの神々も、わらわらと動きだした。
自由に、中央のバーベキューテーブルや、鉄板焼きコーナー、天ぷらコーナーに座り、食事を楽しみ始めてくれた。
良かった。皆、食材や調理法に興味を持ってくれたようだ。
「アポロンさん、隣いいですか?」
「ボス、もちろんだとも」
赤ワインのグラスを傾ける太陽神、とても楽しそうで良かった。
その隣にいるポセイドンは、じっとワインを見つめておられる。解析中なんだろうか…
「何を頼んだんです?」
「今、伊勢海老とフィレ肉を焼いてもらってるところさ」
「じゃあオレも!フィレ肉とアワビお願いね」
「はいよ~」
それにしても、自分に対して注文するシーン、なかなかにシュールだ。
調理してるオレも乾いた笑いを浮かべてるので、同じことを考えてるに違いない…
「ワインとチーズ、いかがです?」
「ブルーチーズ、癖になる味だね」
アポロン満足そうに笑う海神は、チーズの盛り合わせプレートを楽しんでいるようだ。やはり絵になる神である。
「お口にあったようで嬉しいです」
「ボスの星の食文化は、すばらしいね」
「アポロンの言うとおりだよ。食材、調味料、調理法…… 全てが奥深い」
アポロンとポセイドンが、隣のブースにある天ぷらコーナーを眺める。ホクホクのエビ天ぷらを味わってるオロチ君の幸せそうな表情を眺めて、微笑んだ。
「あっちも興味深いね」
アポロンが指さした方向には、正神教の神々が集まっている。バーベキューコーナーにも、興味を持ったらしい。
「これぞ組み合わせの祝福! 」
「あい!!」
ウリエルが感動を連発し、焼肉丼を堪能している。ミカエルやガブリエルが楽しそうだ。はしゃぎながら肉や野菜を焼いている。
そっか。調理するって経験も、乏しいのかも。
ターニャも幸せそうで良かった。
ターニャは、バーベキューから参加。煉獄に来てウリエルに会えないとなると、泣きわめくこと間違いなしだったから...
「こうして神々が食事を共にすることは、今までほとんどなかったんだ」
「他の神と交流はあったけどね。こういうのは、ボスが来てからさ」
ポセイドンとイブ姉さん、始めて会ったとき言ってたっけ。守護神たちは千年以上も会議を開いてるって。
その時、皆で何かを味わうってことは、なかったのか。いや、そもそも、会議ってそういうもんだよな。
あれ? オレ、会議といいつつお茶会ばっかり開いてるけど...
ひょっとしたら、神々の理を変えてしまったんじゃないだろうか…
まぁ、誰にも怒られてないから、気にしないでおこう…
「興味を惹かれる食事がなかったことも大きいのさ」
アポロンの指摘は、よくわかる。精霊が去り、大地が貧しい状態が続いていたわけだし。
「はいお待ち!」
綺麗に盛り付けられた鉄板焼きが並べられて、ゴクリと喉が鳴る。アポロンもポセイドンも、目を見開いている。解析中なんだろうな…
レアな焼き加減のフィレ…… その赤身と肉汁、そして焦げ付いた醤油とワインベースのソース! 絶対に美味しいやつだコレ...
「いただきます! 」
せっかくだから、ゆっくりと噛みしめよう。
「くぅ~…… うまやば!」
何たる単品の勝利!
アポロンとポセイドンは、どうだろ?
あ、ナイフとフォークを握りしめたまま唸ってらっしゃる。どうやら、かなりお気に召したらしいな。無言だけど、顔は思いっきり緩んでる!良かった、本当に口にあったっぽい。
カウンター越しに、自分の分神とハイタッチ! おもてなし作戦、成功だ!
「そろそろ、アレもお願い! 」
「了解! 」
最後のひと品は、もちろんアレ。
テンポよく鉄板の上で食材が踊り、いい匂いが立ち込めてくる…
「はいお待ち! 」
大きめの白い皿に盛りつけられた逸品に、神々は釘づけだ。
絶賛、解析中とみた!
「カイト、これは何だい?」
「組み合わせの祝福、ガーリックライスです」
「さすがボス、またも興味深い料理だね」
「思いっきり頬張っちゃってください!」
お口に合うかドキドキしたのは束の間。
神々は無言で肩を組んで、感動を分かち合ってる。
「これはもう…… ガーリックライスを称える唄を創ろう!」
「あぁ、それがいいだろう」
ポセイドンからまさかのビックリ発言!
ガーリックライスの唄!? ダメだ、大爆笑が止められない...
個人を称える唄なんて、オレは師匠のしか知らない。
つまり英雄ラグナと同列扱いじゃないですか! このガーリックライス…!
「どうしたんだい? 」
「いや、すいません。師匠とこれが同列扱いだって思っちゃって…」
ちょっとの沈黙の後、ポセイドンが吹きだした。
「なるほど!」
「確かに!」
そのまま、アポロンもポセイドンも、珍しく大声を挙げて爆笑モードに突入。
大爆笑のオレたちのところに師匠が現れたことで、更に笑いは止まらず。
「何事だ?」
「師匠、あのですね…」
経緯を話すと、差し出されたガーリックライスを味わって、両眼を見開いた。
「うむ。これなら、我がライバルとして不遜はない」
ニヤリと、珍しく師匠が悪ノリしてくれた!
これはもう、創るしかないだろう…!
気が付けば、皆で笑い転げながら、歌詞やメロディーを口ずさんで... ガーリックライスの唄を創り始めてた。ガーリックライス、恐ろしい子…!
遠くの方では、ツクヨミさんとアマテラ、イブ姉さんにディーテさんが、甘いものに手を伸ばし始めている。クレープにかき氷、そしてパフェ類も取り揃えてあるので、どれにしようか迷っているのかもしれない。
思い出作り、ここまでは順調のようだ。
良かった良かった。
けど、オレ的には、本番はここから。気を引き締めていこう。
本日もありがとうございました!




