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マッチとポンプで異世界神様業  作者: ゆうと
第Ⅰ部:ダンジョン創設編
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第8話:神様業はまったりお風呂付きです

 


 のんびりと風呂につかる。これ、日本人的にはご褒美のひとつ。

 四十五度。温泉のような乳白色の湯がたっぷりの露天風呂。

「本日は、源泉かけながし。乳白色。肩こりや腰痛、リュウマチなどに効く……」

 ロココさんのイケボ泉質紹介が、浴室内に響き渡る。イケボだと温泉紹介までカッコよく聞こえる不思議。

「はぁ~……綺麗だなぁ」

 空中に浮かぶ光の粒たち。星々の煌めきのようで、とても奇麗。プラネタリウムを見ながら入浴してるような感じかも。

「はぁ……いい気持ち」

「はぃ……お風呂って……いいものですねぇ」

 ロココさんも、プカプカと湯船に浮いておられる。

 てかそれどういう原理? 沈まないの? 重さ三十キロとか言ってなかった?

「まぁ、気にしても意味ないか」

 ロココさんだし。

 あ、そうだ。

「あのさぁ」

「なんでしょう?」

「その言葉遣いって、素?」

「素とは?」

「意識してないっていうかさぁ。いつもそんなしゃべり方してるっていうかさぁ」

「カイト様には、丁寧に話すように心がけております」

「じゃあ、友達とかと話すときはタメ口なわけ? 」

「おっしゃる通りです」

「友達? いるの? や、そういう意味じゃなくて。友マジロ? って言うの?」

「他の神に仕えている者たちが、友とも、同僚とも言えますね」

「そっか~。ちなみにみんな、アルマジロ?」

「いえ。そういうわけではありません」

 皆、何の姿してるんだろ。

 てかタメ口のロココさん、ちょっと興味あるけど……。

 楽しみは取っておくとしよう。なにせ今、互いに完全無防備状態。ロココさんなんて、プカプカとまるでラッコのように背泳ぎ状態だし。思いっきりお風呂を満喫してくれてるんだし、今はいいや。

 それにしても……いい気持ちだなぁ……。

「あ”~~~」

 唸りたくもなるってもんだよ。でもなんでだろ? なんで風呂に入ると、低音ボイスで唸りたくなるんだろ?

 まぁ……あれだな。神の摂理。うんうん。

「でも、オレがこうやってのんびりしている間に、ヒュムは願い事してんだろうなぁ」

「おっしゃる通りかと」

 プカプカ浮かんでるロココさん。本気で風呂が気に入ったらしい。表情がすっごく緩んでる。

 食事と一緒で、これまでの神は、こうして一緒に入ったりしなかったんだろうな。

 いや、そもそも風呂に入る必要ないか。

 神体、いつもクリーンだし。汗かかないし。汚れとかホコリとか、そもそも神界にはないっぽい。

 それに室内も綺麗。オレらの住んでる建物―――(やしろ)は、いっつも清浄!いや、ひょっとしたら、神体がそういうのを寄せ付けない仕様なのかもなぁ。

「しかし私どもからすれば、かの星の者たちの時間は、とてもゆっくりと流れております」

「え⁉ そうなの?」

「はい。ちなみに、世界○見得(みえ)発動時は、かの星と我々の時間はシンクロしております」

「……なんというご都合設定。でも、そこもふわっといい感じに調整されてんだね」

「ご明察です」

 どこからか、小川のせせらぎが聴こえてくる。

 鈴虫やコオロギの合奏も、遠くから響いてきた。

 なんて心地いい空間演出。さすがですよロココさん…!

「また、世界○見得(みえ)をキープモードに設定しておきました」

「それはまた便利機能の話?」

「はい。使い方によってはたいへん便利かと」

「へぇ~……どんな機能なの?」

「私どもがこうしている間に唱えられた願いを記憶し、必要に応じてリストアップ可能です」

「じゃあ、百……千くらいの願いがリストアップされる可能性もあるわけだね」

「適切なご理解かと」

 便利って言えば便利だけど……確かに使い方次第な機能だ。リストが莫大にならないように、定期的に神様業する必要があるわけだし。

 こう考えるとやっぱり、そこそこ重労働だなよなぁ。神様業って。

「私に命じてくだされば、その中から検索も可能です」

「検索?」

「キーワード検索です。また、条件検索、例えば仮説と合致する百五十字以上の願いのセリフを抽出したり、同じセリフの繰り返しで百五十字を超えたものを除外したりすることも可能です」

「マジで?」

「はい」

 なんて有能なんだロココさん!!

 これでリストから、神樹へアクセスさせる者を選びやすくなる。多様な事例を選んで、仮説の検証をはやく進められれば、多くの人の願いを叶えられるようになる。

「ちなみに、早送りとかは可能なの? 」

「厳密には不可能です。創造神様を除けば、時の操作は特別な精霊のみが行使できる力とされています」

「……なるほど」

 まだ非開示になっている神権のなかにも、時の操作は存在しない可能性が高いってことか。

「早送りはできませんが、後の世がどうなる可能性が高いかを、シミュレーションすることはできます」

「ほほぅ?」

 これはまた、心をくすぐる近未来的機能が登場したようである。

 要チェックやで……。

「例えば、先ほどの弟の火傷がその後も治り続けているかどうか。これを予測して示すことは可能です」

 ……なるほど。これも成功率を上げるために役立つ機能だな。

「世界○見得、そしてロココさんマジ有能! 大感謝!」

 ニシシっと笑った後、湯船の中に頭まで沈め込む。

 全身でまったり湯を味わうために。息が苦しくない神体ならではの入浴法に挑戦しとかないとね!

 生身の肉体なら、湯船のお湯も多少は汚れちゃうけどさ。神体は清浄! ゆえに湯船のお湯も綺麗なまま! 全身丸ごと長時間どっぷり温泉につかれちゃうわけである!

 ま…………………だからと言って楽しいわけじゃないっぽい……。

 素潜りしてるだけって感じだし。

「ふぅ~」

 風呂の縁に腰掛けてさ。天を見上げて、星々の輝きで視界を埋め尽くしてさ……。心も体も癒されないと。せっかく最高の露天風呂にいるんだから……。

「カイト様」

「ん~?」

「今後についてはいかがなさいますか? 」

「う~ん…… 仮説の検証を、もう何回か重ねたい。仮説以外の細かな要素を見逃していないか確認を忘れずにね」

「なるほど」

「それと……」

「効率化でございますね?」

「そうそう。そっちも考えないとねぇ」

 あと二百九十八人分の信仰心を集めなきゃ……フルリメイクができないのであるからして。

「何かアイデアを思いついておられるようですね」

「まぁね。まだ、試す価値はあるかなってレベルの案だけど」

「ヒントだけでも頂けませんか?」

 ヒントか。

「マッチとポンプを使う予定」

「それはそれは……楽しみでございます」

 ニヤリと笑えば、ロココさんもニヤリと笑った。

 何か察したんだろうな。

 さすがロココさん。オレら息が更に合ってきた気がする。

「ロココさ~ん……」

「何でございましょう?」

「ありがとうね。ロココさんがいてくれて本当に助かってるよ」

「もったいないお言葉……たいへん恐縮です」

「ほんと、かたいよね」

 口調が。あと皮膚も。

 でも、その声音は、いつも、とっても優しくてさぁ。

 オレの気持ちをやわらげてくれるんだ。






最後まで読んでくださりありがとうございます。続きのUp、ぼちぼち頑張ります。


<20210504:セリフ等加筆修正済み>

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