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マッチとポンプで異世界神様業  作者: ゆうと
第Ⅰ部:ダンジョン創設編
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第6話:お困りの際は図表を用いて

 

「………ふぅ」

 百件の事例を一覧表にまとめたみた。でも、ストレスフリーっていうの? 高性能ツールのおかげで、作業はサクサク進んだんだ。<いい感じボード>が大活躍! タッチパネルになってるし、音声が即座に文字化されるし。指示を出せば、文字や図表の修正も、即反映される。

 で、肝心の内容なんだけどさ。

 まず、登場人物の関係性の整理する欄をつくった。姉妹、兄弟、母娘、父娘、双子とかっていう血縁関係。あと、それ以外の友人や恋人関係。そしてお一人様ね。願い事のセリフの中に登場してくる人物には、色々なパターンがあるってことがわかった。

 その下に、各事例の動画から、願いごとのセリフを抽出した欄をつくったんだ。抽出なんだけど、なんとこれ、動画から自動的にコピペされたんだよね。 <いい感じボード>、やっぱ超いい感じ!

 さらにその下に、願い事の結末を書く欄をつくった。ここには、「誰が(何が)どうなったか」を箇条書きで記してある。

 こんな感じで、表の縦軸にこの三つを観点を設定したわけ。登場人物の関係性、願い事のセリフ、結末の三つね。

 で、横軸は事例の番号。左から右に、一番から百番まで並べてある。事例の番号に触れると、その動画が再生されるようにもなっててさぁ。やっぱいい感じすぎる!

「ロココさん! 協力ありがとう!」

 百事例じゃきっと、サンプルとしては少ない。

 けど、いったん問題解決に繋がりそうな仮説を見出したいよね。残りの事例を分析する際のヒントになるしさ。

 でもまぁ、少ないとはいえ百事例が横にズラっと並ぶ様は……なかなか壮観! 表を見るだけで、ちょっとした達成感あるし!

「カイト様、いったん休憩されていはいかがでしょう」

「うん、そうする!」

 確かにちょっと疲れた気がする。

 神体だから、疲労とか蓄積されないんだろうけどね。気持ち的な部分でリフレッシュしたい感じだし。

 それにさぁ……達成感を味わいたいじゃん? 五千ピースのパズル完成したらニヨニヨ見つめちゃうのと一緒な感じ? 頑張ったせいか眺めて「オレ偉い! 超がんばった!」って自分を褒める時間大事だし!

「今回は何を召し上がられますか?」

「あ、えっとあれ! あれが飲みたいかも……」

 テーブルに座ったとたん、酸味と甘みとジューシーさが何とも言えないあの飲み物が恋しくなる。

 今回も、名前が思い出せないけど……。

「果汁百パーセントのブラッドオレンジジュースでしょうか?」

「そう! それそれ!」

「かしこまりました」

 マジ有能! 助かります!

「では私も失礼して……」

 ちょこんと椅子に座ってブラッドオレンジを口に含んだロココさんは、満面の笑みを浮かべた。とっても癒されるよね。

 それに、ハッピーな気分になってきた。だってほら、好きな食べ物を共感してるって感じると、無性に嬉しくなっちゃうじゃん!

「美味しいねぇ~」

 それにしても……うまい! 果肉のジューシーさが超たまんない!

 百パーセントは贅沢品! だからめったに飲めないけどさぁ。なんかオレ、これが大好きだった気がする。思い出そうとすると……やっぱり頭がモヤモヤしちゃうから。確証はないんだけどね。

 でも、ちいさいことは気にしないったら気にしない。

「カイト様、この後はどうなさるのですか?」

「う~ん……」

 <いい感じボード>を眺めながら、手順を確認する。

 この後、まずは願い事のセリフと、結末との対応関係を確認する。で、〇▲×の記号を使う。

 願い事が期待通り叶っていれば〇。

 期待とずれていれば▲。

 願い事が叶っていなければ×。

「………って感じかなぁ」

「なるほど」

「ざっと見た感じ、〇は十五事例、▲が六十事例、☓が二十五事例くらいだね」

 次は、共通点探し!

 〇の十五事例に、どんな共通点があるのかを探すんだ。もちろん、▲の六十事例と×の二十五事例のそれぞれにも、どのような共通点があるのかを確認していく。

 例えば、恋人関係なら〇、親子関係なら×、登場人物一人(お金が欲しいとか私利私欲系)なら▲みたいに、○には〇の共通点、▲には▲の、×には×の共通点があるかもしれないし。

 まぁ、この可能性は低いだろうけど……確認は必要。

 共通点探しが終わったら……次は比較!

 ○と▲の比較、○と×の比較、▲と×の比較ね。このの3ペアの間で何が違うのか―――相違点を確認する。

「………こんな感じで進めてさ。○や▲、×って結果をもたらす要素が見つかるといいなぁって思ってるんだ」

 ちょっと大変だけどね。ここは地道にやるしかない。

「なるほど。では、オーダー承りました」

「へ?」

 ピカリと光ったロココさん。

 次の瞬間には、<いい感じボード>の情報に下線が引かれたり、斜線が引かれたり、フォントが変更されたり……次々と情報チェックが進んじゃってる。

 手順通り進められているか目視で確認可能なように、スピード調整までしてくれてるっぽい。

「……すげぇ」

 思わず賞賛の言葉が口からこぼれる。

 まさか自動で進められるとは思ってなかった。なんて便利なんだ<いい感じボード>!

 そしてやっぱロココさん超絶有能!

「結果をご報告しても?」

「お願いします!」

「願いのセリフ内容と、願いの結末の間に有意な関係性が見出せません」

「なるほど」

 特定の願いしか叶わないってことはなさそうか。

 例えば、蘇生なら叶うけど、病気快復は叶わないとか。願いの内容に基づいて○▲×の判定が下るってルールがあるわけではないらしい。

「次に……〇▲×の結果と、登場人物の関係性の間にも、一貫性は見受けられません」

「やっぱりそっか」

 〇、▲、×それぞれにの欄に整理された登場人物の関係性には、一貫性がない。親子関係、恋人関係、一人パターンが、どの結果にも混在している。

「願い事のセリフに用いられている文字量が多いほど〇に、少ないほど▲や×になるという傾向性が確認されました。○の場合、少なくとも百五十字を超えています」

「おぉ……そう言われてみると確かに」

「可能性があるとすれば、次の三点です」

 ロココさんがどこから取り出したのか、パネルを抱えている。色塗りテープをめくったら、その下から答えが登場してくるアレっぽい。あの、有名なおじちゃんが朝八時をまたいで使ってたっぽいやつ!

「では、第一の可能性ですが……」

「願い事のセリフが多いほど必死な信仰心、良質な信仰心だと判定されて、〇という結果になる可能性だね」

「ご明察です」

 一番上のテープをめくって、答えを見せてくれる。

「もう一つが、願い事の内容ではなく、願い事の文章表現が結果に影響している可能性」

 答え終わると同時に、ロココさんが二段めのテープを捲ってくれる。

「私も同意いたします」

 これは、願い事のセリフにある細かな条件設定が、結末に影響している可能性があるってことだ。

 〇以外になる結果を排除するような条件の設定が、願いの実現に影響したのかもしれない。プログラミング得意じゃないけど、条件分岐処理ってヤツかなこれ。ま、違うかもしんないけど。ちいさなことは気にしない方向でいこっと。

「そして最後が、その両方の可能性」

 ニヤリと笑うと、ロココさんもニヤリと笑ってくれた。

「カイト様が同じ意見で、私も心強いです」

「オレもそうだよ。ロココさんと同じ意見で心強い!」

 ハイタッチしながら互いを認めあう。

 この一緒に謎解きしてる感じが……超いい感じ!


<いい感じボード>=========


 A:他の結末を迎える可能性を排除した条件を設定することで、願い事が期待通り叶う

 B:願い事のセリフを長くすることで、願い事が期待通り叶う

 C:上記のAとBの両方を同時に満たすことで、願い事が期待通り叶う


 ==================


「Aが本命かな。百事例眺めた感じ」

「では、この仮説を、今回の百事例でいったん再検証しますか?」

「そうだね。その後に、量と質の双方で検証を重ねていこっか」

「ご提案に賛同いたします」

「ありがと!」

 今回の百件以外で仮説を検証して、矛盾がないかを再確認する。

 その後、事例を追加して、仮説が支持されるかを検証する。これは追加される事例の量が多いほどいい。

 とりあえず追加四百事例くらいかなぁ。そうなると、合計で五百事例。これがロココさんの手持ち事例全体の何パーセントに相当するのか不明だけど。

 あと、この作業と同時に、可能なら質的な方法でも検証したい。今回の仮説をヒュム族に使ってもらってさ。その結果がどうなるか確認して、仮説の妥当性を検証したいんだよね。


「………百事例の検証終了。仮説A、B、Cに反する事例なし」

「はやっ」

「引き続き約四千の事例から、新たに四百事例をランダムに抽出の上、同様の処理を実行します」

「グイグイいくロココさん…… 最高です!」

「仮説から逸脱した事例なし。仮説A、B、Cを同様に支持。報告以上です」

「ありがと!」

 ギュムっとロココさんを抱きしめつつ、<いい感じボード>で再現されている検証のプロセスを確認する。

 素晴らしいよロココさん! 皮膚硬いけども!

 これはもはやファンタスティックロココだよ。もうロココの前に、ヘッドとか付けてもいい気がする。そう言ったらきっと、ロココさんから前脚パンチくらうだろうから、ここは我慢我慢……。

「となると問題は、どうやってヒュム族に仮説を使ってもらうか……う~ん」

 悩まし。

「基本的神権③ヒュム族への天啓が有用かと」

 ぼそりと呟いただけなのに、きっちりキャッチしてくれるロココさん素敵です!

「その③、詳しく!」

「承知しました。これはヒュム族に語り掛けることができる力です。寝てても起きていても、かれらは夢を見ている感じになります」

 なるほど。寝てなくても、ちょっとぼんやりして意識が飛んじゃったような状態になるってことね。「は⁉ 今一瞬、記憶が飛んだ」って感じかな。

「じゃあその神権、採用決定で! で、名称変更!【夢で逢えたら】にしよう!」

「承知しました」

 神権って、すごく便利なんだね。

 名称が長かったり堅苦しかったりするけども。そこは変えちゃえるし。

 神権、それにロココさんのサポートがあれば……うん。いけそうだ。新米のオレでも、なんとか神様できるかも!






連続投稿、終了。お付き合いありがとうございました!


<20210504:セリフ等加筆修正済み>

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