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マッチとポンプで異世界神様業  作者: ゆうと
第Ⅰ部:ダンジョン創設編
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第4話:神様業は小休憩


 

「カイト様。このあたりで、いちど休憩なさいませんか?」

「ありがと!」

 休憩。

 何度聞いても実に素敵な響き……。嫌いな人は滅多にいないはず。

 確かに、この世界についての情報収集は大事。

 だけど、詰め込み過ぎると記憶の定着度が下がるかもしれないし。大事な情報を聞き洩らしちゃうかもしれない。

 もちろん、これを正当化だって言う人もいるだろうけどね。

だけど正当化は、人類がほぼ全員の共通体験に違いない。つまりこれ、重要な理論武装ってこと。きっと誰もが、正当化によって自分の心の平和を守りながら生きているのであるからして。

 それにしてもオレって、学校でどれくらいの成績だったんだろ? あまり勉強が好きじゃなかった気が、何となくするんだけどなぁ。頭がモヤモヤする……。ふむ。都合の悪い記憶だから忘れちゃってる? わけじゃないよな? 信じてるぞオレ……。

「カイト様?」

「あ、ごめん。考え事してた」

「ひょっとしてお邪魔しましたか?」

「ぜんぜん! 大丈夫!」

「それならよろしいのですが……」

「マジで大丈夫!」

「では、準備を進めます」

 またも背中の隙間的なところに、手? 前脚? を突っ込んだよロココさん。そっからニョキニョキっと……おぉぉぉ。テーブルとイス! しかも木目調のカッコいいヤツ!

「こちらにどうぞ」

 そっと椅子を引かれて……座るタイミングでうまく差し戻してくれる。チープな感じのお店だとしても、デートで恋人にこれされたらキュンキュンするだろうなぁ。覚えとこ。後学のために。だってほら、アレだよアレ……。

…………………アレ。

………………………………そう! 神様業だよ!

ひょっとしていつの日かオレにもデート的なイベントが発生するかもしれないのであるからして………ないか。そんな都合のいいお仕事……。

「それでは……コーヒーと甘いものでも召し上がられますか? 紅茶や日本茶がよければそちらもご用意しておりますが……」

「じゃあアイスコーヒーお願いします。あと、う~ん何だろ……」

 何かしら食べたいものがある気がするけど、ちょっと思い出せない。記憶のモヤモヤが発生してる……。

「……ひょっとして、バスク地方発祥とされる、チーズを用いたお菓子では?」

「それそれ!」

「かしこまりました」

 全て背中の隙間的なところから取り出される。

 コーヒーは冷たいし、チーズのお菓子もいい感じに冷えてる。

最高ですロココさん…!

「はぁ~癒される」

アイスコーヒー、たいへん良きかな良きかな……。

「ではこっちも頂きます………モグモ……グッ⁉ うんま! これ最高に美味い!」

「恐縮です」

「……モグモグ……モグ……はぁ~……ご馳走様!」

「よろしければお使いください」

サササッと口元を拭うウェットティッシュまで……。こんのイケメン有能執事!

「ありがと! てかいいの? こんなにもてなしてもらってさぁ」

 休憩って言われて喜んだけど……オレまだお仕事してないし。こんな時、報酬が優ると罪悪感が大きくなるので注意が必要なのであるからして。

「福利厚生の一環です。お食事や身の回りのお世話など、何なりとお申し付けくださいませ」

かっっっけぇ……。

てかオレ……初めて遭遇したよ。

うん、ガチだガチ。ガチのジェントルマン。セバスチャンとか爺やって呼ばれる類のアレだ。

だって、ペコリとお辞儀する仕草が妙にしっくりくるんだもん。アルマジロだけど……ロココさんマジかっけぇ。

「あ! 先に食べちゃってごめん!」

しまった……。

「私のことはどうぞお気になさらないでくださいませ」

「……え⁉ ロココさんは? いいの? お腹いっぱい?」

「いえ、そうではございません。」

「あ、そっか。人間とは食べるものが違うか。アルマジロって何食べるの?」

「飲食物はカイト様と同じものが摂取可能です。この姿は擬態のようなものですので」

「そっか。確かに、普通のアルマジロなわけないもんね」

 何かしらを取り出したり、イケボで話したり、褒めて認めてくれたりしてくれてるわけだから。あと、超有能執事だし!

「じゃあこれからはロココさんも一緒にテーブルついて! 同じもの食べよ!」

「よろしいのですか?」

「うん! その方が楽しいしね」

「ありがとうございます」

「うん! じゃあ……どうぞこちらに?」

ペコリとお辞儀するロココさんに席を勧める。もちろん、さっきのマネしてね。復習は大事!

「……恐縮です」

モグモグと、器用にお菓子を食べる。

はぁ~癒される。

だって本当に……とっても美味しそうに食べてるから。

 でもそっか。あんま食べたことないのかも。地球の食べ物なんてさ。

 オレが地球からの転生者だから、このお菓子も要望できたわけだし。

 それに……何人いるのか知らないけどさ。歴代のヒュム族の守護神は、ロココさんと一緒に食べたり飲んだりはしなかったのかも。

「あ、そういえばさ」

「……モグモグ………なんでございましょうか?」

「いいよ、手と口止めなくて。食べながら聞いて?」

夢中になってるところ邪魔しちゃ悪いしね。

「ではお言葉に甘えて……モグモグ……モグ」

「でさぁ……オレ、味覚はあるんだね。心臓とか、痛覚みたいなものがない不思議ボディなんだけどさ。食べると美味しいし、幸福感得られたりしてるんだけど……なんでだろ?」

「カイト様……」

「うん?」

「小さいことはどうかお気になさらずに」

「………そっか。そうでした。いい感じにしてくれてるんだね? ロココさんが!」

 にこやかに微笑み返してくれたロココさんが……モグモグし終わって。

モゾモゾっと、いい感じボードを取り出した。

「こちらをご覧ください」

「えっと……神体?」

なにそれ?

「はい。カイト様の御身体は‘神体’と呼ばれております」

「神専用のボディってこと?」

「概ね適切なご理解です。神体は生身―――ヒュム族とは異なります。排泄の必要もなければ、入浴などの身体のケアの必要もございません。食べたものは神体へ還元されますが、食物の摂取が必ず必要なわけではございません」

「……なるほど」

清浄で恒久的な神ボディってことね。

「でもオレ、風呂とか……あ、シャワーとかでもいいからさ。たまには浴びたいんけど……」

「ご用意いたします。ご安心ください」

「ありがと! 助かります」

 ペコリと頭を下げて御礼を伝える。即座に、「神様がそのような!」と慌てふためいたロココさん。最後には、「もったいないお言葉です」と言いながら頭をペコリと下げてくれて。まるでコントのようなやり取りに、どちらともなく笑いがこぼれた。

うん……やっぱりロココさん、いい。

 初対面で前脚パンチを食らったけど。でも、あれはきっと、大いなる脅威からオレを守るための非常手段だったに違いない。

「カイト様、お代わりはいかがですか?」

「大丈夫! 超満足!」

 満足感もあるし。気分もリフレッシュできた。ロココさんの心配りに大感謝!

「ってことでそろそろ基本的神権②に行こうか!」

 エネルギー満タンだし! ここはテンション高めでドンドンいこう!

「承知しました……でも、多少、不快な思いをなさるかもしれません」

 ロココさん……せっかくのイケボが、ちょっと切なそうだよ?

「不快?」

「はい」

 不快って………どういうこと?

 なんかちょっと嫌な予感がするんだけど……。




決して、そのチーズお菓子を食べながら書いたわけではありません……。


<20210504:セリフ等加筆修正済み>


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