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マッチとポンプで異世界神様業  作者: ゆうと
第Ⅰ部:ダンジョン創設編
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第2話:ちいさいことは気にせずに

 


「あのぉ~……ロココさん?」

「何でしょう?」

「つかぬことをうかがいますが……」

「はい」

「オレの名前知ってる? てかロココさんは、オレのこと知ってる?」

「ヒュム族の神様ですが?」

「や、転生前のことだよ。何か知ってる? オレ、名前も思い出せないっぽいんだよね。てかさっきまで―――パイセン女神に会う前まで……どこで何をしてたのかも思い出せないっぽいんだけど……。記憶喪失っていうのかなぁ」

 あ、ヤバい。

 思い出せないって自覚したら……ヤバい。なんか急に不安になってきた……。

 先輩女神の話が本当なら、オレ転生したらしい。つまり何かあって人生を終えたってことなんだろうけど……。

 その時の衝撃か何かで、記憶喪失状態ってこと?

 えっと……名前がまず無理。で、オレって何歳だった? 住んでたのは? 

「あ~……モヤモヤする」

 自分のことを考えようとすると、モヤモヤする。頭ん中に濃い霧がかかったような感じ……。

 でも、わかることもある。

 今、オレの口から出てる言葉が日本語だってことは、わかる。つまり、日本って国のことは、知識として持ってるってこと。

 けど、日本の……特に自分が住んでいた町、家、部屋は、どんな感じだった? すっげーモヤモヤすんだけど! 頭ん中、それに心の中が……モヤモヤする…………。

「マスターの転生前のことは存じ上げません」

「……そっか」

「はい。申し訳ございません」

 ペコリと頭を下げるロココさんを、思わずぎゅっと抱きしめる。

 だって今、ロココさんが悲しそうに見えたし。

 しかし……さすがアルマジロ。

 マジで硬い。

 超ゴツゴツしてる。

 触り心地は全く良くない……。

 でも、ちょっとだけ……なぜかホッとするんだよなぁ。

「まぁいっか! そのうち思い出すよ! てか思い出せないことを思い出そうとしても意味ないし!」

 ロココさんの丸めの背中? 甲羅? そこをバンバン叩く……。

 ちょっとだけ、だけども。嬉しそうに笑ってくれたから……オレのリアクションは間違ってなかったっぽい。

「前向きで素敵な考え方です」

「ありがと! てかロココさん、ちょいちょいオレに優しいよね! マジで助かるわー、その優しさ! ロココさんの半分は、いや、八割くらいは、優しさ成分な気がするよ!」

 ふいに口から出たセリフに、どこかまた懐かしさを覚えるけど……真実はモヤモヤの中だ。

「お褒めにあずかり恐縮です」

「いえいえ!」

 こちらこそ!

「そうなると……とりあえず名前だよね。自分の名前……何にしようかなぁ」

 思いつく案をリストアップして、しっくり来るのにしようか……。

 うん。

 そうだ。ここは日本で生まれた偉大なる神話の登場人物にリスペクトを表することにしよう。

「ルルーシュ」

「ダメです」

「シンジくん」

「それもダメです」

 ほほぅ?

「なら、その友達のカオ―――」

「―――絶対ダメです」

「オッス! オラ…」

「ダメに決まってますですよ!」

「なら海賊お―――」

「―――なれませんダメです!」

「ならオレってばヒュムの里の長になるんだってば―――」

「―――ダメだってばさ!」

 やるではないか!

 ジッと……次は何だと言わんばかりにまっすぐな視線を向けてくるロココさん。

 いいでしょう。ここはその気迫に免じて勝利を譲ろうじゃありませんか。

 両手を挙げて……降参のサインを添えてね!

「ロココさんさぁ。なぜか俺より日本のこと詳しい気配が濃厚なんだけど?」

「マスターにお仕えする者の、たしなみでございます」

 ペコリと頭を下げたロココさんは今、床を見ながらドヤ顔してるに違いない。

 でもそのダメ出し、なぜか安心感を覚えるよね。

 なんとなぁ~く、だけれども。日本のどこかで。とても偉い誰かが激怒しないように。線引きしながらダメ出ししてくれてるような気がするし。

「じゃあ、勝者の特権ってことで……ロココさんが付けてよ。オレの名前!」

「よろしいのですか?」

「うん。いい感じのヤツでお願いね!」

「でしたら……。カイト様―――そうお呼びしても?」

 ほぼ悩むことなく告げられた名前……いいね。

「いかがでしょうか?」

「うん、しっくりきた! ありがと!」

 喜んだオレを見て、ロココさんはなぜだか泣きそうな顔になってる。

「本当に……しっくりきたよ。ありがとう」

「いえ、喜んでいただけて……ロココは嬉しく思います」

 一瞬丸まったのは……照れ隠しってやつかな。アルマジロ流の、ね。

「それではマスター、カイト様。神様業について、幾つかお伝えしたいと思います」

「あ、その前に確認なんだけど……」

「何でしょうか?」

「オレ、神様業やんなきゃダメなの?」

 なんだか大変そうな予感だし、できるならサボりたい。

 てかなんでだろう……。

 無性に、そこはかとなく心の底からとめどなく……働いたら負けだと思っちゃうんだけど。

「メリットか何かあるの?」

「マスターの願いが叶います」

「う~ん……。願いごとねぇ」

「何かございますか?」

「オレ記憶ないし。だからもしれないけどさぁ。生き返りたいとか、元の世界に戻りたいとか、、、あんまり思ってないっぽい」

 誰か大事な人、愛する人、家族や友人とか。そういう人のことを覚えてれば違うのかもしれないけど。そもそも、そんな人いたのかどうかすらも思い出せないし。

「………左様でございますか」

 あ、しまった。

 なんかやらかしたっぽい。ロココさんが寂しそうな表情になっちゃった……。

「なんか……ごめんね?」

「とんでもございません」

 う~ん……直感だけどさぁ。

 やっぱロココさんは、オレの何かを知ってるんじゃないのかなぁ。

 けど、それを教えることはできない……。なんかそんな感じなんだよねぇ。

「ならば仕方ありません」

 え?

 ロココさん……えっ⁉

「……すごいね。後ろ脚で立てるんだ?」

「そういう仕様です。そんなことよりも、こちらをご覧ください」

 取り出された四角いパッケージは……ま、まさか⁉

「某国民的RPGゲーム第七作のフルリメイクでございます」

「マジか⁉ これめっっっちゃプレイしたかったんだよ‼」

 膝立ちになり、天高くパッケージを掲げるくらいには!

 自分の記憶はモヤモヤなのに、このシリーズはハッキリ覚えてる!

「フルリメイク版って公表された時さぁ、世界が歓喜の雄叫びを上げたんだよこれ!」

 パッケージに頬ずりしながら、高揚感に浸る。マジで神ですロココさん…!

「よっしゃ! オレは再び星を救うぞ!」

「素敵な心構えですカイト様!」

 パチパチパチと鳴り響く拍手に、思わず笑顔があふれる。ロココさん……心地いいよ。そのスタンディングオベーション……超心地いい。

「それで……取引というわけではないのですが。神様業を引き受けてくださるなら、そちらを差し上げます」

「ですよね! オレやります! 神様やります!」

 ギュっとパッケージを抱きしめる。もう絶対離さない。誰にも渡さないっ。

「さらに神様として業績を上げれば、そちらをプレイするための本体も差し上げます」

「くぅ……確かに本体がないと! あと、モニターも必要!」

「もちろん、超高画質モニターもセットでございます!」

「でも……お高いんでしょう?」

「それが今ならなんと、信仰心三百人分でハンマープライスです」

「やります! 信仰心三百人分とかわかんないけど絶対やってやります!!」

 ニョキニョキと、ロココさんの背中の隙間から飛び出してくる本体と六十インチモニター。てかそこ、青い狸ネコ型ロボットさんの四次元っぽい空間にでも繋がってるの?

 いや、今はいい。

 それよりもフルリメイク!

 セットで並んでいる本体とモニターを目の当たりにすると、もうドキドキが止まらない。あ……心臓なかったんだったオレ。

 でも!

 でもでもでも! マジでドキドキしてる気がする! マジ最高ロココさんあんたが神だよ間違いないっ!

 ―――はっ⁉

 ま、待てよ?

「でも、そういえばコンセントが……」

 ないよね?

「ちいさなことはどうかお気になさらずに。そのあたりは抜かりなく、ふわっと解決しておきますので」

 ペコリと頭下げてお辞儀するロココさんの有能感カンストです! イケメン(?)でイケボで有能とか、チートが過ぎるよ!

 でも、大感謝です!

 オレ、一生ついていきます!




最後まで目を通して頂きありがとうございました。ぼちぼち頑張ります!


<20210504:セリフ等加筆修正済み>

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[一言] ん?再び世界を救う???
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