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損失による起動

「あ?な、ない!?なんで!?バックアップも消滅してる!?嘘だろ!?」


元々格闘ゲームで生計を立てていた俺は、ゲームのプログラムに元々興味があったこともありゲーム会社に修正・プレイ動作の不具合確認として入社した


暇を潰してはゲームプログラムから新規のキャラを作ったことが多少あり、悪ふざけに創ったキャラが最初の叫び声の発端だ


そう、作ったキャラがデータから消えていたのだ


盛りに盛った属性性格、基本的ステータスはその作品に出る並キャラの1.5倍に設定しており


戦闘aiもまた人工知能を搭載させて1R目は遊ばせ、相手の様子を見て2R目、3R目に勝つという仕様となっている


このキャラは遊び半分で作ったものの、本部長の目に止まり一ヶ月後には担当している作品のボスキャラ、そして使用可能キャラとなるはずだった


一ヶ月後に迫っていたということもあり、情報規制はしていたものの何かの拍子に情報が漏れ、リリース直前まで顧客の評判がうなぎ登りとなっていた




────そのキャラクターが消えた


「いやいや待って!?ありえないでしょ!?俺のパソコンにしかデータ無かったのに!!ウイルスバスターも自家製で“菌殺し“の製品なんかより数倍強いんだぞ!?有り得ねぇ!!クソッ!」


しかも何重にもかけたはずだったロックキーを掻い潜ってまでデータを消されたなど本部長にバレたりしたら────



苛立ちは最高潮になり、ますます声が響くと、それを聞いたのか同僚が寄ってくる


「何騒いでんだよ……でも、良いよなぁお前は、本部長にキャラクター採用だろ?1年目でそんなやつ居なかったって先輩方も言ってたぜ?」


「煩い!!」


「な、なんだよ!褒めてんのにそんなこと言うなや!」


「知るか、んな事!こちとら────」


はた、とデータを探していた手が止まる



────もしやこいつが犯人か?


犯人探しは得意ではないが、俺の才能に嫉妬し、行動を起こしたと言っても過言ではない


「おいてめぇ!犯人か!?」


「は、はぁ?なんの事だよ!!」


同僚とはいえ、先も言った通り1年の飲み仲間でしかない


飲み仲間とはいえ、心の奥底でフツフツと憎悪を煮え切らしていたのなら動機としては合点がいく


「だ、だからなんの事だよ!!」


「とぼけんじゃねぇ!俺の作ったキャラが消えてるんだぞ!!」


「はァ?!まじ知らねぇよ!そんな事俺がするなら、パソコン自体壊すに決まってるだろうが!!」


確かに────


この同僚、俺と同じく暇つぶしにキャラクターをデザインし、持たせる武器をパイルバンカーなどと破壊目的の武器を持たせないほどの破壊主義者だ


実際それは創造主でもある同僚に影響しており、ネット対戦で惨敗し、屈伸などの煽りをされると機器を破壊してしまうほどの性格だ


改めて言うが俺は犯人探しは向いていないほど頭のキレがない


“そして同僚は犯人ではない“


「そ、そうだよな……悪い、少し苛立ってた……」


「まぁ落ち着けって、タバコでも吸ってこいよ…缶コーヒーくらい奢ってやるから」


同僚に促され、パソコンの電源を切り、喫煙所に向かった俺だが…



(この先、どうすればいいだろうか)


俺の作ったキャラクターのレシピは頭の中にいまだ保存している


一ヶ月…いや半月か、納期としては最悪だがギリギリ間に合う程度だとは思っている



……最悪だ


━━━━━━━━━━━━━━━━━━



ふと、我は今いる場所を見渡す


「ここは……何処か?」


障害物のない草原、遠くに村のようなものが見えるくらいか


時折、若い男の声が聞こえてくる程度


「進む、か…」


我の名は『ヤマト』、そして腰に下げる電動刀は『撫子』


『撫子』は何か伝えようと必要以上に唸っていた


「『撫子』、何を騒ぐ…我の最後を見据えたはずだ」


そう、我は弟子であり、共に成長し、ライバルとなり、敵となった男、『スザク』に封印された身であった


決別した理由は相違の勘違いであり、封印直後に真相を知ったのだ




しかし、て──


「この地は、異様である。何もなさすぎる──」



足元から響く駆動音を履き慣らし、歩を進めるも一向に着かない街


しかしそれは思考に耽けるという意味合いもあった


「フフ、この地は我のようだな…全てを失い、0の状態とは」


だが、何も無い訳では無い。目先に見える村がその証拠だ


「鬼が出るか蛇が出るか…楽しみよのう『撫子』よ」


その『撫子』は未だ唸っていた


──────────────────


(畜生…化け物共め!村の女全て寄越せだと!!)


俺は、今住んでいるこの村1番の狩人で、あともう2人狩人がおり、その後ろに若い連中という構成で、今目に見える化け物退治の真っ只中だった


と言っても対象は統制の取れない下位オークで、だらしない肉付きが特徴的な鈍足モンスターだ


なりたての狩人でも難なく倒せる下位のオークは、力は人間より強い程度で、一撃一撃が遅い


倒すには分厚い肉に纏われている心臓か、頭を潰せば戦闘不能になる



そのオークが数百単位で迫っている


(単体の討伐にゃ問題ねぇが、数いりゃ俺達には時間がかかる…まぁ指揮系統のキングオークがいないだけマシだが)


この世界のオーク種族は下位のオークがおり、次にハイオーク、そしてキングオークという序列になっている


ハイオークは戦闘経験を適度に積んだ狩人達が苦戦を強いられるほどで、英雄レベルではないと倒せないオークの亜種となっている



話を戻すとして、今いる下位のオークは未だ統制が取れていない


バカ正直に突っ込んでくるのをマスケット銃を用いた若い連中が遠距離で殺し、村の砦に近づいた下位オークは俺たち狩人の手によって討伐している


村の中では俺達が倒しているということもあって、オークの肉祭りの準備をしている



別に良いのだが…もう少し危機感を持てと言いたい


(しかし数が尋常じゃねえ…何かしら“脅威“でも発生したのか?)



この世界は善と悪により均衡が取れているというのは昔からある文献に記載されており、狩人になったものたちはそれを1番に聞かされる


その、均衡が崩れる傾向としてモンスターの増殖が挙げられる


モンスターの増殖における原因としては、世界のどこかで善か悪の“脅威“が発生することにより均衡を保とうとするのが原因だ



(つまり、魔王か勇者が生まれたってわけだ…そう考えると下位オークの増殖は理にかなう)


勿論、下位オークを野放しにしていると次第に知性と筋力を備えるハイオークとなる


それを止めるために狩人である俺たちが防衛戦をする羽目になっていた



(生まれたのは勇者か…っと、お仲間さんから合図だな)


狩人の男が顔を上げると、別の狩人がいる方角に光が点る


(なになに?ハイオーク出現…ね、まぁこんだけオークがいたら異常発生してもおかしくはないわな)


ハイオーク出現の合図を見た男は、そのあとの合図を待った


光の合図は、最初は少なかったものの、徐々に激しく点滅していく



その合図を見た狩人の男は顔を青ざめた


「う、嘘だろ!?ハイオークが100以上!?」


思わず声に出してしまい、防衛していた若い連中が聞いて驚愕し、恐怖で逃げようとする


「あ、いや待て!逃げるな!いや!退避が先か?!おまえら村の連中ひきいて村から出ていけ!!」


指示を出したものの、若い連中だけが脱兎のごとく村から出ていった


「何やってんだあいつら!村の人間も逃がさねぇといけねえってのに!!」


一人、残された狩人の男は持っていたショットガンのような武器で近付く下位オークを討伐しながらも、周囲を見渡した


背後の村、その中の村人たちは恐怖状態に


無理もない、若い連中が何も言わず叫びながら逃げていったのだ


状況説明欲しさに動揺するのも無理はない


前方を見ると、蔓延る下位のオークたちのその先、先行していた狩人からの光の合図が消えていた


間隔をおいて合図を送ると相談はしていた、その合図が無くなったということは────



「数、数えてるうちにやられた…のか?クソッタレ!!」


合図を見ていた男はもう1人防衛していた狩人に防衛、または村人の退避を指示する


ハイオークの群れが出た今、合図を見ていた狩人も逃げなければならない


なので、一心の思いで砦から降り、小型爆弾のようなものを地面に設置して、退りながら起動させる


起動した爆弾のようなものは砦ごと吹き飛び、下位のオーク達は肉片だけをその場に残した



「この村はもうおしまいだ!ハイオークの群れなんて滅多にねぇことなのに!」


その滅多にないことな目の前で起きた


それを頭の中で確認し、村人たちを逃がすように先導する





村の防衛する反対側


何故か動物系の血の匂いが濃くなる



熟練の狩人ならば匂いを嗅ぎ分け、その正体がわかるが狩人の男にはその境地には至ってはいない


「くそっ!なんの匂いだこ────あっ」


目の前に見えたのはちぎれた服と臓物


先に逃げた若い連中の物だった


「う、嘘だ!オークが待ち伏せなんて!!」


狩人の男の驚愕は、背後から聞こえた悲鳴で消え去った


逆に生まれたのは恐怖────


「は、挟み込まれた…!?行っても地獄!戻っても地獄かよ!!」




その地獄は死の急行ではあったが




──────────────────

ヤマトがようやく村に着いたのは何も残っていない状態の家屋に、散らばった食料のような骨に少し残る肉のゴミだけだった


「……どういうことだ?」


山積みになった、骨をみて解析を始めるヤマトはその結果に驚いた


「なんと…全て人間の骨か、かじったあとの歯形から見て犬歯の長い動物系、猿か…もう少しでかい…大猿の類であるか」


ヤマトからすれば以前、居たとされる封印された場所では、オークやハイオークの存在はなく大猿と呼ばれるモンスターが類似していた為、そのような結果となった



しばらく散策すると、生体反応を確認したヤマトは脚部のモーターを駆動し、対象に近づく


「対象は子供か、異臭に紛れて姿を隠したつもりだが我の目は誤魔化せんぞ?」


感知した異臭は人間の排泄物で、対象のいる場所は排泄物を捨てる小屋だった


ヤマトは小屋を覗き、人の影を見る


「失敬する、ここで何があったか教えて欲しい」



糞の匂いを纏う少女は小声ながらも答えた


近代SFの雷電をイメージしました

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