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東方異聞録 ~風華雪月~  作者: あんみつ
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再会

淀んだ空気。降り積もる雪。

幻想に慣れきった私には耐え難いものだ。だが、確かに感じたことのある空気だった。

間違いない。ここは……




……学校?

私が通っていた学校だ。

意味のない努力。

必要のない個性。

人の愚かさ。

たくさんのことを学ばされた場所だ。

どうして私はここに?

そっか、姉さんたちに会おうとして外に出たんだ。

ここに姉さんがいるのか?

よりにもよってここに?

校舎を見ていると、こっちにいたときの記憶が蘇る。

頭が痛い。思わずその場にうずくまる。

落ち着け。大丈夫だ。あの時とは違う。あいつらはいない。姉さんに会うだけだ。

考える時間は山ほどあった。今は姉さんのことも分かってる。

姉さんたちは、決して私のことが嫌いなわけじゃない。ただ怖かっただけだ。私が虐げられてたところを目の当たりにして、ああは成りたくないと思ってしまっただけなんだ。

守ってくれなかったことが許せるわけじゃない。ただ、私は姉さんたちを嫌ってなんかない。それだけはハッキリしてる。

姉さんたちに会ったらなんて言おう。姉さんたちはなんて言うかな。嫌いじゃないよって言ってくれるかな。

ううん、きっと言ってくれる。そしたら私も、大好きだよってちゃんと言おう。

もし本当に嫌われていたとしても、それでいい。少なくとも会えないわびしさはなくなる。私が姉さんたちを愛している。それだけで十分だ。


本当に?

本当にそれで満足するのか?

そもそもお前は本当に姉さんを愛しているのか?

分からない。私に愛は理解できない。

でも、私は姉さんを愛している。自分自身でそう思ってる。だから……

本当に思ってる?分からないのに?

それは、思ってる「つもり」だ。それは本当の愛じゃない。

真実だろうが偽りだろうが愛は愛。

いずれにせよ姉さんたちに会えばハッキリすることだ。


足音がだんだんと近づいてくる。

今日は学校は休みのようだが、一体誰が……

もしかして姉さん?

足音は一つじゃない、フウカ姉さんも一緒なの?

姉さん、会いたかっ


「あれ、お前ミツキじゃね?生きてたんだ」

「あ、本当だ。ミツキくん久し振り!」

忘れられない顔。

耳に残る声。

「オレだよオレ、覚えてる?」

ああ、覚えてる。いじめの主犯格だった奴だ。

「俺は覚えてる?」

もちろん、隣で嘲笑ってた奴だ。

「あたしは?」

見て見ぬ振りをしてた奴。

「ぼくは?」

友達の振りをして蹴落とした奴。

「私は?」

姉さんと比較してた奴。

「僕は?」

心の中で見下してた奴。


みんな覚えてるよ。


「中2ん時に家飛び出したまま帰ってないとか聞いたけど、成人式にはくるんだなww」

成人式?

「ちょっと、そんな言い方ないでしょ!あ、成人おめでとう、ミツキくん!」

ああ、そういえば言ってたっけ。成人式の日にここに集まろうとか。

その会話に私は含まれていなかったが。

「ミツキくん背高くなったね!なんか羨ましいな」

女とは思えないって言いたいのか?

「なんか言えよミツキ」


「……3年」

「……は?」

「私の幸せは、たった3年しか続かなかった」

「なんだよいきなり」

「ここを離れて5年……幸せを感じたのは、3年だけだ」

「ミツキくん、私たち……そのことでミツキくんに謝りたいの」

「……」

「ごめんね。あのとき、あんなひどいことして……」

「ごめんなさい!」

「ぼくも……ごめん」



どうする?

何が?

みんな口々に謝ってるぞ?

謝ってない奴もいるけどな。

許すか?

……許さなきゃダメかな。

お前が決めろ。

そっか。

さあ、どうするんだ?





許すわけないだろ。


くひゃはははははははははははは!!

アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!


それでこそ、私だ。




いつの間にか私の手には、一振りの刀が握られていた。

私の左手から伸びる長大な刃。その刀身は私の心を具現化したかのように真っ黒だ。

これが私の望んだもの?


そうだ、お前が望んだ「力」だ。


「ミ、ミツキ、くん……?」

「なに、それ……?」


ゆっくりと振り向く。

自分でも分かるほどの不気味な笑みを浮かべ、私の手の異物に怯える弱者を見て、ニタリと笑う。

「ねぇ……オトギリソウの花言葉、知ってる?」

「え?オトギリソウ?」

弟切草(オトギリソウ)

この花の秘密を漏らしてしまった弟が兄に切られたという話から名付けられた花。

「た、確か…えっと…迷信、秘密、あとは……」










「恨みだ」

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