表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方異聞録 ~風華雪月~  作者: あんみつ
10/16

恐怖

私は半妖。

人間とも妖怪ともつかない中途半端な存在。

皆は私をどう思うだろう。私が永遠亭で治療を受けた時、その場にいた永琳とルーミア、あとは妹紅や霊夢も知っているはずだ。

皆、紫と同じ理由で5年も黙ってたのか?

皆が私に優しいのも、その事実を知っていたからか?

半妖は疎外されやすいから、せめて自分たちだけでも友達でいてやろう、と……?

じゃあ、私が今まで感じていたアンタたちとの繋がりは何だったんだ?

そんなうわべだけの繋がりに私は……


「……ミツキ?」

「……なんだ」

「私たちのこと、嫌いになった?」

分からない。今私に分かったのは、


アンタたちとの繋がりは信用できないってことだ。


「でもね、ミツキ……私たちには、貴方が何者かなんて関係ないの。ここには色んな子がいるわ。人間も妖怪も」

その後に続く言葉なんて容易に想像できる。

「だから貴方が何者だろうと、貴方は貴方。私たちの

「何が分かる」

感情が声に出てしまう。だが私は、自分でも驚くほど落ち着いていた。

「アンタが私の何を知ってる?私の心を、アンタは理解できるのか?」

「貴方がどう思うかなんて、私たちの心には関係ないわ。貴方が何者だろうと、私たちにとって貴方は大切な友達よ」

そんな言葉は今の私には届かない。

信じられない。

いや違う。きっと私は、最初から皆のことを信じてなどいなかった。

私が人を信じるなんて、絶対にできない。


「ミツキ、一つ聞かせて」

「……なに?」

「どうすれば、貴方の心は一番楽になるの?」

楽になる?

「貴方の心が苦しみを感じない、一番の環境。私たちはどうすればいい?」

何故そんなことを聞く?

また気遣っているのか?

違う。紫は紫なりに、私の心を守ろうとしているのかもしれない。

頭では分かっている。心は信じていないが、これ以上余計なことを言ってわだかまりを増やすのは、私にとっても紫にとっても足枷にしかならない。

私が望むことをそのまま言うんだ。

「………………」

「ミツキ?」

「…………ごめん。帰るわ」

「え!?ち、ちょっとミツキ!?」

「本当にごめん。心配はしなくていいから」

「待ちなさい!ミツキ!」

外へ飛び出す。

全速力で走る。紫たちの姿が見えなくなるまでひたすら走り続け、気づけば見知らぬ森の中。近くの木にもたれ掛かる。

「はぁ……はぁ………はぁ………」

息が苦しい。肉体的な疲労と精神的な疲労が重なり、かつてないほど体が重い。

ついに耐えられなくなり、その場に倒れ込む。

「はぁ……はぁ……うぅ……あ、ああ……」

怖い。


何が?


何もかも。


何もかもって?


紫たちが怖い。


どうして?昨日まであんなに仲良しだったじゃないか。


もう、信じられない。


分かってるんだろ?


ああ……信じていい。


だったら何故?


怖いんだ。


何が?


ぼくを裏切る紫たちが……紫たちを裏切る自分が……


そうだ、信じられるのは自分だけだ。


お前が一番分かってるだろ?


うん……みんなぼくをうらぎった。ぼくもみんなをうらぎった。


つらかったよな。


うん。


苦しかったよな。


うん。


信じられるのは自分だけ。周りの価値観なんて邪魔なだけだ。


そうだね。


お前はずっと独りだ。今までも、これからも。


さみしいよ。


私を信じろ。


私はお前だ。


私が傍にいる。ずっと、ずっと。


でも、ここにはもうぼくのいばしょは……


安心しろ。


「力」を与えてやる。そうすればこの世界は思い通りだ。


おもいどおり?


ああ、誰もお前を裏切ったりしない。


お姉ちゃんたちも?


ああ、ずっと一緒にいられる。








そっか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ