恐怖
私は半妖。
人間とも妖怪ともつかない中途半端な存在。
皆は私をどう思うだろう。私が永遠亭で治療を受けた時、その場にいた永琳とルーミア、あとは妹紅や霊夢も知っているはずだ。
皆、紫と同じ理由で5年も黙ってたのか?
皆が私に優しいのも、その事実を知っていたからか?
半妖は疎外されやすいから、せめて自分たちだけでも友達でいてやろう、と……?
じゃあ、私が今まで感じていたアンタたちとの繋がりは何だったんだ?
そんなうわべだけの繋がりに私は……
「……ミツキ?」
「……なんだ」
「私たちのこと、嫌いになった?」
分からない。今私に分かったのは、
アンタたちとの繋がりは信用できないってことだ。
「でもね、ミツキ……私たちには、貴方が何者かなんて関係ないの。ここには色んな子がいるわ。人間も妖怪も」
その後に続く言葉なんて容易に想像できる。
「だから貴方が何者だろうと、貴方は貴方。私たちの
「何が分かる」
感情が声に出てしまう。だが私は、自分でも驚くほど落ち着いていた。
「アンタが私の何を知ってる?私の心を、アンタは理解できるのか?」
「貴方がどう思うかなんて、私たちの心には関係ないわ。貴方が何者だろうと、私たちにとって貴方は大切な友達よ」
そんな言葉は今の私には届かない。
信じられない。
いや違う。きっと私は、最初から皆のことを信じてなどいなかった。
私が人を信じるなんて、絶対にできない。
「ミツキ、一つ聞かせて」
「……なに?」
「どうすれば、貴方の心は一番楽になるの?」
楽になる?
「貴方の心が苦しみを感じない、一番の環境。私たちはどうすればいい?」
何故そんなことを聞く?
また気遣っているのか?
違う。紫は紫なりに、私の心を守ろうとしているのかもしれない。
頭では分かっている。心は信じていないが、これ以上余計なことを言ってわだかまりを増やすのは、私にとっても紫にとっても足枷にしかならない。
私が望むことをそのまま言うんだ。
「………………」
「ミツキ?」
「…………ごめん。帰るわ」
「え!?ち、ちょっとミツキ!?」
「本当にごめん。心配はしなくていいから」
「待ちなさい!ミツキ!」
外へ飛び出す。
全速力で走る。紫たちの姿が見えなくなるまでひたすら走り続け、気づけば見知らぬ森の中。近くの木にもたれ掛かる。
「はぁ……はぁ………はぁ………」
息が苦しい。肉体的な疲労と精神的な疲労が重なり、かつてないほど体が重い。
ついに耐えられなくなり、その場に倒れ込む。
「はぁ……はぁ……うぅ……あ、ああ……」
怖い。
何が?
何もかも。
何もかもって?
紫たちが怖い。
どうして?昨日まであんなに仲良しだったじゃないか。
もう、信じられない。
分かってるんだろ?
ああ……信じていい。
だったら何故?
怖いんだ。
何が?
ぼくを裏切る紫たちが……紫たちを裏切る自分が……
そうだ、信じられるのは自分だけだ。
お前が一番分かってるだろ?
うん……みんなぼくをうらぎった。ぼくもみんなをうらぎった。
つらかったよな。
うん。
苦しかったよな。
うん。
信じられるのは自分だけ。周りの価値観なんて邪魔なだけだ。
そうだね。
お前はずっと独りだ。今までも、これからも。
さみしいよ。
私を信じろ。
私はお前だ。
私が傍にいる。ずっと、ずっと。
でも、ここにはもうぼくのいばしょは……
安心しろ。
「力」を与えてやる。そうすればこの世界は思い通りだ。
おもいどおり?
ああ、誰もお前を裏切ったりしない。
お姉ちゃんたちも?
ああ、ずっと一緒にいられる。
そっか。